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【商工中金×アナザー・ジャパン】日本のものづくりの未来を描く地域産品開発プロジェクト始動

学生主導の地域産品セレクトショップ「アナザー・ジャパン」が新たに「地方の作り手との商品開発」プログラムをスタート。
アナザー・ジャパンでは、これまでも企業とのコラボ商品は発表・販売されてきましたが、今回はパートナーである株式会社商工組合中央金庫(以下、商工中金)を交えた、商品開発プロジェクトとのことです。
・株式会社中川政七商店(以下、中川政七商店)による商品開発講座を受講した企業の一部は「アナザージャパン」の学生と商品開発に取り組むという、一連のプロセスを、商工中金と協働で実施する
という特徴を持った商品開発プロジェクトについて、それぞれの担当者である垣沼 陽次郎 氏(株式会社商工組合中央金庫)と安田 翔 氏(中川政七商店/アナザー・ジャパン プロジェクトマネージャー)にお話を伺いました。アナザージャパンの学生の皆さん・地方の中小企業の皆さん・中川政七商店・商工中金という強力コラボレーションはどのように誕生したのでしょうか?(文/土肥紗綾)

【商工中金プレスリリース】
地域産品の開発支援サービスの提供開始について https://www.shokochukin.co.jp/assets/pdf/nr_230929_07.pdf


商工中金と中川政七商店による「商品開発」プログラムとは?

――まずは、今回の「地方の中小企業と学生による商品開発プログラム」の内容と、商工中金さんの関わりについて教えてください。

安田 翔 (以下、中川政七商店・安田): 商工中金さんには「アナザー・ジャパン」への協賛企業という枠でご参加いただいています。協賛企業様の中でも、一緒にプログラムを開発していくというスペシャルプランで参画いただきまして、そのプログラムが今回の「商品開発プログラム」です。

商工中金さんに、このプログラムに参加して学生と商品開発をしたい「地方の中小企業」を募っていただき、中川政七商店からは「地方の中小企業」と「プログラムに参加する学生」へのノウハウ提供を行います。それによって開発した商品のテストマーケティングをアナザー・ジャパンの店舗で行います。

スケジュールとしては、まず中川政七商店から参加いただく中小企業様向けに全3回の商品開発講座を提供させていただきます。中川政七商店 商品開発チームの監修で私が講師を務めます。例えば宿題のフィードバックなどは商品開発チームと連携しながら行っていく形です。

商品開発講座のあと、モチベーションの高い企業様と共同開発を進めていきます。この共同開発した商品をアナザー・ジャパンの店頭で販売することを目指します。 
アナザー・ジャパンでは2か月毎に企画展という形で、47都道府県の魅力をお届けしているので、中国四国の企業さんであれば3月までに商品開発を終えて4〜5月に販売、中部の企業さんであれば5月までに商品開発を終えて6〜7月に販売というスケジュールになります。

垣沼 陽次郎(以下、商工中金・垣沼):開発した商品をアナザー・ジャパンの店舗で2ヶ月間、テストマーケティングのような形で使えるのは非常に魅力的ですし、商品開発のノウハウも中川政七商店さんの講座を通じて学ぶことができます。これまで商工中金では、新規事業創出講座などを提供したことがあります。しかしながら、講座のあとの具体的なアウトプットまではなかなか繋がりにくかった部分がありました。

垣沼 陽次郎 氏(株式会社商工組合中央金庫)

アナザー・ジャパンさんは日本各地のいいものを発見して東京から発信するという取り組みをされているので、我々のお客さま(日本各地の中小企業)を紹介してその企業さんから仕入れてくださいということもできなくはないんです。むしろそっちの方が話が早いかもしれません。ただそれよりも、今回のように新しい商品開発と新しい売り上げの種をご提供していくことのほうが価値があると思い企画しました。

今回のプログラムでは、プログラムに参加される中小企業さんに対しては、商工中金の支店営業担当も一緒にサポートしていく予定です。何かわからないことや困ったことが出てきたら、我々の営業担当を通じてキャッチアップしていただいたり、学生さんやお客さんとの関わりのサポート、商品開発における協力企業のご紹介をする、といった裏方の役割をしていく予定です。

プログラムが生まれたきっかけ

――商工中金さんと中川政七商店がつながるきっかけについて教えてください。

中川政七商店・安田: まずは佐藤さん(フィラメントCXO)との関係を説明しないといけないんですけど、説明が難しいんですよね(笑)。佐藤さんとは「奈良友達」でして、ご飯をご一緒させていただいたりする奈良のコワーキングスペース利用仲間みたいな感じです。

佐藤さんには普段からアナザー・ジャパンを気にかけていただいてまして、ある時、「アナザー・ジャパン第2期としてさらに企業さんとのパートナーシップを強めていきたいんですけど、興味を持ってくれそうな企業さんをご存知ないですか?」とお尋ねしたんです。そこで商工中金さんの名前を挙げていただいたところから今回のプロジェクトが始まっていますね。

安田 翔 氏(中川政七商店)

――実際にお会いされる前の互いの企業に対しての印象を教えてください。

商工中金・垣沼:フィラメントの佐藤さんのご紹介をきっかけに中川政七商店の安田さんと知り合い、全国のいいものを集めて発信していくというアナザー・ジャパンの取り組みと、全国でいいものづくりをしているお客さまがいる商工中金と、すごくフィットする部分があるなと思いました。

実は、アナザー・ジャパンには個人的にお伺いしたことがあってハイセンスなお店だなあと思っていました。会長である中川政七さんのブランディング力は書籍やメディアで拝見していましたし、我々も色々なブランディングを見てきて難しさを感じていたこともあって、お会いする前から楽しみな感じがありましたね。

中川政七商店・安田:もちろん商工中金さんのことは存じ上げていましたし、ご一緒できる機会が持てるなら光栄だなと思っていました。一方で、我々の新しい取り組みにどれぐらい共感していただけるかなという不安な気持ちもありました。お会いしてみて良い意味で予想を裏切られ、すごく嬉しく思ったのを覚えています。垣沼さん自身が所属されている未来デザイン室で様々な新しい取り組みをされているということからもすごく刺激を受けています。

【商工中金の取り組みの1つである企業内大学「人づくりカレッジ」】

商工中金・垣沼:私もアナザー・ジャパンにお邪魔したときに、空間から若さというかフレッシュ感をすごく感じたんですね。安田さんがフットワーク軽く、テンポよくプロジェクトを進めてくださるのでやりやすいなと感じています。

――本プロジェクトはかなり速いスピード感で進められたとお伺いしました。

商工中金・垣沼: 最初にお話を聞いたのが、2023年の3月に、フィラメントさんに伴走支援をしていただいている商工中金のビジコン打ち上げの時でした。

佐藤さんがビール片手にアナザー・ジャパンの説明をしてくれて、そのあと2023年4月上旬には実際に色々やってみようとなって、5月の連休明けには安田さんから企画のイメージをいただいてました。プログラム内容や対象地域などの年間スケジュールは6月中には固めていたので、半年間でものすごいスピードで決まって動き出しましたね。

中川政七商店・安田:商工中金さんのスピード感には非常に驚きました。垣沼さん自身が仕事ができる方というのももちろんあるんですけど、決裁のスピードから実行に至るまで本当に理想的なスケジュールで動けまして、本当に素晴らしい企業さんにご一緒していただけているなと思っています。

アナザー・ジャパン1期目を終えてみて、必死に店舗をなんとか回していたのが実情でした。2期目の今も店舗運営を安定させるのが最重要というのはもちろん変わらないんですけど、1期目でいろんな企業さんとご一緒させていただいて先方にも可能性を感じていただいたり、アナザー・ジャパンとしてもこの取り組みをより大きな社会運動にしていけるきっかけがたくさん見つかったと感じました。

企業さんとの取り組みを継続していくために、アナザー・ジャパンの学生たちに商品開発に関する知識を伝えて、企業さんとの共通言語を作って、さらに商品開発を進化させていきたいなと考えていたんです。そう考えていたところに、商工中金さんが間に入ってくださって、地方の企業さんと繋いでいただいたおかげで今回のプログラムに昇華できたのは大変ありがたく思っております。

地方の中小企業の抱える問題と学生が持つ強み

――どのような企業さんに今回のプログラムへの参加をおすすめしたいですか?

商工中金・垣沼:新しいことにチャレンジしたい企業さんや、新商品開発に取り組んでいて難しさを感じている企業さんにはぜひご参加いただきたいですね。あとは、例えば自動車部品といった工業系のBtoBでものづくりをされてきた企業さんも、BtoCの商品開発の最初の一歩として使っていただけたらと思います。

中川政七商店・安田:先にちょっと補足だけさせてください。中川政七商店における「工芸」の定義なんですが、必ず伝統的なものである必要はなくて、
・日常生活に取り入れられるもの
・製造工程の中に手作りのプロセスが一部でも入っている
というのを弊社としての「工芸」の広い定義としています。なので、いわゆる皆さんが一般的にイメージされる伝統工芸的なものももちろん扱うのですが、取り扱っているものはもう少しそこから幅広いものになります。

「やっぱりうちの商品は工芸品じゃないよ」という場合でも、私たちがお伝えする商品開発講座というのは工芸品でなくとも役立つ講座になると思っています。講座を受けられた方が、必ずその後の大学生と協業して商品開発しなくても、講座単体でメリットを感じていただけるなら、それは私たちにとって十分嬉しいことです。 なので、まずは講座を受けていただくところからご参加いただくのも大歓迎です!

――地方の中小企業が抱えている課題は何だとお考えですか?

中川政七商店・安田:いいものをしっかりつくり、適正な価格で販売して選んでいただくことが、これからの中小企業のものづくりの課題かなと思っています。そのために、商品開発のプロセス、その上段にある経営やブランディングまで見直す必要があると思います。

商工中金・垣沼:BtoBとして下請けの仕事をされていると、やっぱり経営者の方も安くするのが当たり前だと思っていて、安く作るために、新しい機械の購入といった投資を控えたりするんですよね。リスクをとった次の一手になかなか踏み切れないという部分があるんです。だからこそ、安田さんがおっしゃった「いいものをしっかりいい価格で売ることに挑戦する」はやっていかないといけない部分だと思います。
我々として一番嬉しいのは、アナザー・ジャパンでの販売が終わったあとに、「新たな納品先が決まったから設備も整えないとね」といった前向きな流れが加速していくことですね。そのきっかけが生まれたらいいなと思っています。

――学生と商品開発に取り組むときの魅力はなんでしょうか。

中川政七商店・安田:やはり、商品開発を一緒にした学生が店舗で全力で販売をする点ですね。 もちろん売れる売れないっていうのは出てくると思うんですけど、当事者意識を持った売り場スタッフがお客様の反応をしっかり企業様にフィードバックをさせていただきます。
あとは、商品開発のプロセスにいわゆるZ世代の価値観を反映させられる点ですね。Z世代と括るのはあれですけど、彼ら彼女らが重視してるのって、やっぱストーリー性だと思うんです。地方の企業さんは、きっと長い歴史があって、ストーリーや思いをお持ちだと思いますのでそこを一緒に見出して発信していくという部分での親和性がすごく高いのではないかと思います。

商工中金・垣沼:地方の中小企業さんが「うちの地元は若い子がいないから、若い子向けにやろうと思ってもできないんだ」とおっしゃっていて、そもそも若年層をターゲットにすることを諦めてるような印象がありました。そういう意味でも、「若い世代」「東京」「ストーリー重視」といったキーワードを持った学生のみなさんと商品開発ができるのは良い機会になるのではないかと思います。

これから始まるプログラムについて一言

――最後に、参加いただく企業さんと学生さんに向けたコメントをお願いします!

中川政七商店・安田:企業様に関しては、ぜひ新しい挑戦に向けた1歩をご一緒できると嬉しいです。地方にチャンスがたくさん来ている中でそれを生かせるかどうかは企業経営者の力量にかかってると思いますし、それに向けた挑戦の1歩を踏み出せるかどうかにかかってると思っています。その1つとして今回の商品開発講座、そしてその先の共同商品開発を1つの機会として捉えていただければ幸いです。

学生に関しては、まず学生にとって貴重な機会をいただけるということに感謝をして、アナザー・ジャパンとして介在する価値を発揮した他ではできない商品開発ができるように私自身もサポートしていきます。

商工中金・垣沼:企業さんに対しては、安田さんとも近いんですけど、新しいチャレンジ1歩のお手伝いをしたいなと思っています。我々も色々なリソースを使いながら、最大限バックアップしていきたいなと思っています。

学生さんに関しては、基本的に中小企業の社長っていい人しかいないので、 本当に失敗を恐れず楽しみながら取り組んでいただけたらと思っています。

――ありがとうございました!本プログラムが活動開始したら、また取材をさせていただけたらと思います!

【プロフィール】

垣沼 陽次郎(かきぬま・ようじろう)
株式会社商工組合中央金庫
経営企画部 未来デザイン室 調査役

2011年に商工中金に入社後、渋谷支店(現副都心営業部)・大阪支店にて中小企業向け法人営業に従事。その後、社内の新規事業創出部署立上げメンバーとして経営企画部未来デザイン室に配属。ビジネスコンテスト(社内公募制度)からの新規事業創出や企業内大学「人づくりカレッジ」を通じた人財育成を担い、新たなデジタルツール導入・活用を積極的に実施し、事業開発とデジタル人財育成に取り組んでいる。

安田 翔(やすだ・しょう)
中川政七商店 教育事業グループ グループ長 兼 アナザー・ジャパン プロジェクトマネージャー 

2021年より中川政七商店入社。 「N. PARK PROJECT」などのまちづくり事業、「経営とブランディング講座」「アナザー・ジャパン」などの教育事業を担う。 会長・中川政七と共に、中川政七商店が培ってきた経営/ブランディングのノウハウを全国の中小企業に向けて展開するプログラムを設計している。

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