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商工中金のパーパスを実現するためのビジネスアイデアが勢ぞろい!~第3回商工中金ビジネスコンテスト2022 最終DemoDayレポート~

商工中金が本気で取り組む社内ビジコン「第3回商工中金ビジネスコンテスト2022」。その成果発表会となるデモデイが、3月20日に虎ノ門ヒルズインキュベーションセンター ARCHで開催されました。
昨年12月の二次選考キックオフイベントから約3か月。9チームがこれまでブラッシュアップしてきたビジネスアイデアを商工中金の社内外の審査員にピッチ形式で直接プレゼンテーションしました。参加者、商工中金の関根社長をはじめとした経営幹部、伴走支援してきたフィラメントメンター陣、そしてビジネスの一線で活躍してきた外部審査員が一堂に会したデモデイの様子をお届けします。(文・写真/QUMZINE編集部 永井公成)


ガイダンス

まずはオープニングとして商工中金でビジネスコンテストの事務局を担当している垣沼陽次郎氏からガイダンスがありました。

今回のビジコンのテーマは「パーパスを体現する事業」。昨年度、商工中金が設定したパーパスを体現するような新規事業を作ってほしいという思いが込められています。

商工中金ウェブサイトより引用

約1年前に始まった今回のプログラムでは、勉強会やセミナー、1次選考会、対面でのワークショップを開催し、昨年12月以降は定期的にオンラインでフィラメントとのメンタリングを行ってビジネスアイデアを磨いて来ました。本当にたくさんの時間をかけてこの日のために準備してきたことになります。特に業務時間外でテキストメンタリングやチーム間のやりとりをするためのビジネスチャットツールであるSlackでは総投稿数が1万件以上にもなりました。今日は発表の成果を楽しみながら聞いていただきたいと思います。

開会の案内を行う垣沼氏

社長挨拶

続いて、商工中金の代表取締役社長である関根正裕氏から挨拶がありました。

チームの皆さんは昨年夏から努力を続け、厳しい戦いを勝ち抜いてここまで来られました。この間様々な経験を重ねられたことと思います。目の前にある仕事だけではなく、それ以外のところをどう経験し、考えられるかが、本当の皆さんの成長につながっていくと思います。本日のコンテストに入賞しビジネス化することは素晴らしいことですが、入賞という結果だけが意義のあることではありません。ぜひこの経験をこれからの人生に活かしてください。

開会のあいさつをする関根社長

審査員紹介

続いて、今回のコンテストの審査員を務める6名から挨拶がありました。
内部審査員は、商工中金の代表取締役社長・関根正裕氏、取締役副社長・中谷肇氏、常務執行役員・牧野秀行氏が務め、外部審査員は、Zホールディングス・Zアカデミア学長伊藤羊一氏、SUNDERED株式会社CEO留目真伸氏、フィラメントCEO角勝が務めます。

外部審査員を務めた伊藤氏による挨拶
外部審査員を務めた留目氏による挨拶

ピッチ

いよいよ9チームによる発表です。これまで各チームが顧客の課題を発見し、ユーザーインタビューを行い、仮説検証を繰り返しながらビジネスアイデアへと昇華させてきた渾身のピッチが始まります。持ち時間は8分で、その後10分程度審査員と質疑応答の時間が設けられています。

今年で3回目となる商工中金のビジネスコンテストですが、今回からはフィラメントがパートナー企業としてサポートをしています。フィラメントは、今回のデモデイに向けてビジネスアイデアそのものをブラッシュアップするためのオンラインメンタリングや、Slack上でのテキストメンタリング、ピッチの指導や外部審査員のアテンド、エンゲージ施策、デモデイ当日のロジ周りまで幅広くお手伝いしてきました。今回のデモデイではこれまでオンラインで指導してきたメンターも全員現地で参加し、直接チームを勇気づけてピッチを見守りました。

チームと伴走を続けてきたフィラメントのメンター陣

・Going LR

まずはGoing LRチームの発表です。このチームは全ての働く女性を応援することを目的としたビジネスアイデアを提案しました。ワークライフバランスの改善に取り組み、女性が活躍している企業の方が生産性が高く業績も良い傾向にあるにもかかわらず、日本は女性が活躍していません。その原因について深堀りし、中小企業の女性推進を総合的にサポートする仕組みを提案しました。女性の活躍を後押しすることで、中小企業の秘めたポテンシャルが発揮され、日本社会の活性化に貢献できると述べました。

Going LRチームによる発表
質疑応答をする外部審査員の角

・RESILION

RESILIONチームは、災害発生時に被災地で復旧するための機材がなかなか手に入らないという課題を解決するサービスを提案しました。なぜ手に入らないのかについて深掘りし、機材の調達方法の問題点を検討しました。ヒアリングを進めることで、チームが考えていなかった調達方法があることが判明し、その方法を基に、よりスムーズに機材を調達できるサービスを考えました。災害時の復旧が長引くことは、倒産リスクにもつながります。企業の未来を支えていくためにも、商工中金が取り組む意義があるとまとめました。

RESILIONチームによる発表
質疑応答をする外部審査員の伊藤氏

・3KL

3KLチームは長距離輸送に携わる企業が新しい業務形態を取り入れることで、ドライバーの拘束時間を減らし、2024年問題を解決することを提案しました。日本の物流を支えるトラックによる長距離輸送は、長距離ドライバーの減少を一人当たりの労働時間の増加で補ってきました。業務形態を変え、1泊2日で働くことが当たり前だった長距離輸送のドライバーが日帰りで業務出来るようにすることで、拘束時間を減らします。全国の運送会社と取引がある商工中金だからこそできるサービスだと強調しました。

3KLチームによる発表
質疑応答をする審査員の中谷副社長

・Boy meets Boys

Boy meets Boysチームは、中小企業の製造業の生産性を改善するソリューションを提案しました。人口減少、円安などの要因で、中小企業の製造業は生産性改善が急務となっていますが、人材不足や資金不足などにより生産性向上のためのデジタル投資ができていません。生産性向上のためにソフト・ハードの両面で支え、継続的にフォローを行い、データ活用、他社との交流機会創出を目指します。全国規模で本腰を入れて中小企業を支援する組織は商工中金しかないからこそ支援すべきだとまとめました。

Boy meets Boysチームによる発表
質疑応答をする審査員の牧野常務

・m!kke

m!kkeチームは、中小企業の後継ぎ問題に取り組みました。創業100年以上の企業の数は日本が一番多いということを示し、中小企業の後継者である”アトツギ”を支援することをテーマとしました。ヒアリングを通じて、創業者と前提条件が全く異なるアトツギたちは自社を変化させる時に困っていることがわかりました。その原因を深掘りし、アトツギが新しいチャレンジをすることができるように企業の文化を変化させることを助けるサービスを提案しました。

m!kkeチームによる発表
質疑応答をする外部審査員の留目氏

・かけはしもと

かけはしもとチームは、人手不足、高齢化により年々弱体化が進む日本の農業を救うためのサービスを提案しました。国内の生産量の減少により加工業務用の野菜の輸入量は増加しているものの、日本で作られた野菜のうち3割が廃棄されています。その原因を深堀りし、廃棄野菜を効率的に高い付加価値をつけて流通するサービスを作ることで、農家の新たな収入源とすることを目指します。商工中金の主要な取引先である二次・三次産業などを支える土台となる、農業という一次産業を支援することが、商工中金のパーパスを体現することにもつながると熱く語りました。

かけはしもとチームによる発表
質疑応答をする関根社長

・玄鳥

玄鳥チームは、多重下請け構造が常態化し、また2024年問題が近づいていることで非常に厳しい状態になっているトラック運送業者の課題解決に取り組みました。現在のコスト体系が続くと確実に将来は採算が合わなくなるといいます。運賃の低さの原因として、運送業者の交渉力が弱いことを挙げました。このチームはIoT機器を活用しながらトラック運送のデータ活用をサポートし、運賃向上の交渉を助けるサービスを提案しました。商工中金の広いネットワークを生かして実現したいと語りました。

玄鳥チームによる発表
質疑応答をする伊藤氏

・ふるさと

ふるさとチームは、中小企業の人材確保をサポートするソリューションを提案しました。
地方の中小企業の8割近い企業が人材確保を課題に考えています。高卒の就職率は地方が高いため、地方の中小企業にとって採用基盤として重要ですが、都心部の大企業に引っ張られる形で地方の高卒就業者が県外に流出しています。企業と高校生、学校それぞれの課題とニーズ、現状の解決策を深掘りし、それらを満たせるようなサービスを複数考え提案しました。

ふるさとチームによる発表
質疑応答を受けるふるさとチーム

・北の国から’23~絆~

北の国からチームは、地方の中小企業において、深刻な問題である人手不足の課題の解決に取り組みました。ヒアリングによって把握できた実際の課題と現状の解決策を紹介したうえで、これを解決して雇用の流動化を実現し、さらにはリスキリングの支援にもつながるサービスを提案しました。また、これは地方の中小企業との取引実績があり、幅広いネットワークがある商工中金だからこそ取り組むべき課題であると強調しました。

北の国から’23~絆~チームによる発表
会場遠景

どのチームもスライドや発表について入念に準備を重ねてきたことがうかがえる、非常にクォリティの高いピッチでした。インタビューによってしっかりと課題の深掘りをし、芯をとらえたうえで、ソリューションを考えられています。また、多くのチームがピッチの中で商工中金のパーパスに言及していて、商工中金だからこそ取り組む意義があると強調していたのが印象的でした。実際のピッチでは、各チームが課題に対するソリューションも述べていますが、今回の選抜で入賞したチームがそのソリューションについての検証を進め、事業化を目指していくことになります。

ゲストトーク

全9チームの発表と審査員らによるそれぞれの質疑応答が行われた後、別室にて審査会となりました。審査中の30分間はこれまでに商工中金のビジネスコンテストに出場し、入賞した社員によるゲストトークが行われました。ビジネスコンテストに出場するまでのいきさつや、どういったアイデアを提案したのか、そして入賞してからどのようなことが待っていたのかについて臨場感たっぷりにお話しされました。審査待ちでドキドキしていたであろう参加者が和むような和気あいあいとした雰囲気でした。

ゲストトークの様子
会場の様子

結果発表

別室から審査員が戻ってきて、いよいよ審査結果の発表です。
関根社長より各賞が声高らかに発表されました。

まず、「職員特別賞」です。
各チームが過日実施されたワークショップのアウトプットとして、ビジネスアイデアをプレスリリース形式にまとめていました。それをもとに商工中金の職員が投票で決めた賞が職員特別賞です。プレスリリースという形式にすることで、ビジコンに参加しておらず予備知識のない社員も投票という形でビジコンに参加することができました。

職員特別賞:Boy meets Boys

中小企業の製造業の生産性を改善するソリューションをプレゼンしたBoy meets Boysチーム

続いて「フィラメント賞」です。フィラメント賞は、今回のビジネスコンテストをサポートしたフィラメントが選んだ優秀賞となります。

フィラメント賞:m!kke

中小企業の後継者である”アトツギ”を支援するアイデアをプレゼンしたm!kkeチーム

そしてついに「優秀賞」の発表です。
優秀賞を受賞したチームは次のステージに進み、商工中金の新規事業を生み出す未来デザイン室の兼務となり、仕事の一部として事業アイデアを進めていくことになります。

優秀賞 1チーム目:北の国から’23~絆~

地方の中小企業において、深刻な人手不足や余剰の問題を解決するアイデアをプレゼンした北の国から’23~絆~チーム

優秀賞 2チーム目:かけはしもと

人手不足、高齢化により年々弱体化が進む日本の農業を救うためのサービスを提案したかけはしもとチーム

優秀賞 3チーム目:Going LR

中小企業の女性推進を総合的にサポートする仕組みをプレゼンしたGoing LRチーム

優秀賞 4チーム目:3KL

長距離輸送をするドライバーの拘束時間を減らし、2024年問題を解決するアイデアをプレゼンした3KLチーム

また、司会の垣沼氏からは来年度から新たに開始される新規事業の基礎教育や研修プログラムなどについてお知らせがありました。なお、これらのプログラムにも、引き続きフィラメントがサポートを続けてまいります。多様なプログラムをご用意しておりますのでどうぞお楽しみに。

講評

クロージングとして審査員から講評がありました。

伊藤羊一氏

講評を述べる伊藤氏

皆さんお疲れ様でした。昔日本興業銀行につとめていて、皆さんと同じような熱い思いを持って仕事をしていたのですが、今その銀行はなくなってしまいました。今日は15年ぶりくらいに皆さんの“同志”としての想いを聞くことができて本当に胸が熱くなりました。銀行を辞めてから気付いたのは、顧客基盤からもたらされる取引先の情報が他の人は知らない貴重な情報であるということです。これをぜひ活かして新しい商工中金を目指してほしいと思います。そのためには、「パーパスに徹底的に集中すること」、一言で重要なことを言い切る能力である「コンセプチャルスキル」、そして不可能を可能にする「断固たる決意」の3つが重要になると思います。今後も応援していきます。ありがとうございました。

留目真伸氏

講評を述べる留目氏

皆さんお疲れ様でした。このような会に招かれる機会は多数ありますが、今回は本当にレベルが高かったと思っています。だからどなたが優秀賞になってもおかしくなかったと思います。特に課題の設定がすごく良かったです。ハイレベル過ぎず、小さすぎず、現実的で取り組むべき課題にしっかり取り組めていました。一つ付け加えるならバックキャスティングがこれからは大事になってくると思います。現場の課題や賃金の問題は今すぐ解決する必要はありますが、他の誰かが解決するかもしれないし、時間が経てば解決するかもしれません。しかしその本質はもっと大きなところにあるわけです。現場の課題ではなくどうやったら皆ハッピーになれるのかの意見のぶつけ合いをぜひやっていただきたい。それがうまい具合に埋まる事業計画こそが本来取り組むべき事業計画になると思います。ぜひそのあたりも意識していただきたいです。本当に素晴らしい発表ばかりでしたので、賞に選ばれたか否かを全然気にする必要はありません。選ばれなかった方も何らかの形で続けていただきたいと思っています。

関根正裕社長

講評を述べる関根社長

皆さん本当にお疲れ様でした。本当にどれが賞に選ばれても不思議ではないくらい、どのビジネスアイデアも実現性が高いと思います。でも、どれかを選ばなくてはいけないということでこの結果になりました。本業だけでも大変だと思いますが、そのほかにこの活動を進めてこられたのは本当にすごいと思います。
自分が日常として行っていること以外に、どれくらいのことにチャレンジできるか、どれくらい経験を得られるか、そういったことがすごく重要だと思います。今回は、それを皆さんやってこれたというところが本当に素晴らしいと思います。 大変だったと思いますが、得るものもすごく多かったと思います。 皆さんみたいな素晴らしい職員がいっぱいいるので、これからの商工中金は安泰だなと思いました。今日は皆さんに会えてすごくよかったと思います。 本当に嬉しく思いました。今回の経験を糧に、引き続き実りある人生を送れるよう頑張っていただきたいです。

この後、参加者はARCHに併設されたARCH CAFE & BARにて懇親会に出席しました。参加者やメンター、外部審査員、商工中金の役員がフラットな場所でこれまでの活動をねぎらいました。

集合写真

また、デモデイの参加者と受賞者には、それぞれこの日のためにフィラメントが作成したステッカーを記念としてお持ち帰りいただきました。

ステッカー

受賞したチームはフィラメントによるオンラインメンタリングを受けながらフィージビリティスタディやPoCを行い、事業化に向けてよりソリューションの解像度を上げるべく活動を続けていきます。
今後どんなビジネスが商工中金から生まれていくのか、今から楽しみですね。

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