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商工中金が企業内大学を開校!伊藤羊一・角勝が語る「社会人が身につけるべき“自分の軸”」とは

商工中金が4月から企業内大学「人づくりカレッジ」を開校して人的資本投資の充実を図ります。キャリアアップのための講座をオンラインと対面を合わせて約100種類用意し、職員の自律的な学びの意識を高め、能力開発を多面的にサポートするのが目的です。フィラメントも独自開発した事業創出人材育成プログラム「ビジネス創出講座」を提供しており、「人づくりカレッジ」の中で重要な研修の一つとなります。4月17日には参加者募集説明会が行われ、その中で、Zホールディングスの企業内大学であるZアカデミア学長であり、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長の伊藤羊一氏、そしてフィラメント代表取締役CEOでZアカデミア認定講師の角勝がゲストとしてパネルディスカッションを行いました。本記事ではその模様の一部をお伝えします。(文/QUMZINE編集部 永井公成)

商工中金は、フィラメントが昨年度からビジネスコンテストの運営や参加チームの伴走メンタリングによる新規事業創出支援をお手伝いしています。3月にはビジネスコンテストの最終発表会であるDemo Dayが行われ、QUMZINEでもイベントレポートを掲載しました。

そんな商工中金で、2023年4月から企業内大学「人づくりカレッジ」が始まります。

職員のキャリア自律、リスキリングをサポートする企業内大学「人づくりカレッジ(ヒトカレ)」の開校についてhttps://www.shokochukin.co.jp/assets/pdf/nr_230405_03.pdf

4月17日には参加者を募集するために説明会が開催され、商工中金未来デザイン室の垣沼陽次郎氏とZアカデミア学長の伊藤羊一氏、そしてフィラメントCEOの角勝によるパネルディスカッションが行われました。

パネルディスカッションに先立ち、説明会のモデレーターを務めた商工中金の垣沼氏から、4月に開校する商工中金の企業内大学「人づくりカレッジ」(通称:ヒトカレ)について説明がありました。

人づくりカレッジは職員自身が社会の変化に対応しながら、「お客様の企業価値向上のため、変革しつづける人財」の育成を目的に作られた商工中金の企業内大学です。
「人づくりカレッジ」の中にある「未来づくりアカデミー」は、「正解のない課題を追及して未来を見据えることができる人材を育成する」という目的の講座で、新規ビジネス創出講座はこの中で開講されます。そもそも、人づくりカレッジのコンセプトで特に大事な2つは「ともに考え、ともに創る」と「『わかった』から『できた!』へ」のです。この新規ビジネス創出講座をこのコンセプトに照らすと、「ともに考え、ともに創る」は、全国の職員が参加し、外部の専門家と一緒に取り組むこと、そして、「『わかった』から『できた!』へ」は、この講座が実践型であり、自分で手を動かして学ぶプログラムであることから、これら2つのコンセプトを実際に体験できる講座になっていると思います。商工中金の「企業の未来を支えていく。日本を変化につよくする。」というパーパスを実現するためのスキルが本講座で身につけることができる、といっても過言ではないのかもしれません。たくさんの方の参加をお待ちしております。


脱皮できない蛇は死ぬ

パネルディスカッションには3つの質問がトークテーマとして用意されていました。
1つ目は、「企業内大学『Zアカデミア』では何を目指しているのか?『Zアカデミア』の中で学長として何をしているのか?」です。「Zアカデミア」は、2014年に設立されたヤフー株式会社の企業内大学「ヤフーアカデミア」が、2020年に受講対象者をZホールディングスグループ全体に拡大する際に改組された企業内大学です。今回のゲストである伊藤羊一氏は2015年から現在に至るまでヤフーアカデミアおよびZアカデミアの学長を務めており、他社の動きを知るという意味で、この質問を企業内大学の先駆者である伊藤羊一氏にお答えいただきました。

伊藤:当時のヤフーの社長だった宮坂学さんがよく話していたのが「脱皮できない蛇は死ぬ」ということです。常に学び続けることが大事ということですね。どんどん新しいものが出てくる中で、過去に経験したことだけで生活し続けられるほど世の中は甘くありません。だから学び続けることが大前提でした。このアカデミアでは3つのフェーズに分かれていて、今が3フェーズ目です。

第1フェーズはヤフーのときで、とにかくリーダーシップを育てるということで、部長・本部長層に次の役員になっていく人たちを中心に「一人一人の才能と情熱を解き放つ」ということをしていました。「Lead the self(リード・ザ・セルフ)」ということで自分自身をリードさせるということですね。具体的にはひたすら対話をし続けました。

第2フェーズはZホールディングスが生まれたてで、LINEとかも加わってきたころで、いろいろな会社が集まってグループになってきたんですね。でもいくら「Zホールディングス」といったところで、皆それぞれヤフーとかLINEとかそれぞれの会社でそれぞれの事業をやっているのでZホールディングスに対する思いなんてものはないわけです。だから2フェーズ目はとにかくいろんな人が集まる場を作って、その集まってきた場が「Zホールディングス」なんだ、と認識させました。ピザパーティーを開いても人は来ないので、企業内大学の体を取って、セッションを提供するようにしました。セッションの中で対話が行われるようになり、Zホールディングスとしての一体感が出てくるようになりました。

第3フェーズは今年の4月からになりますが、ヤフーとLINEが合併することになったので、合併にフォーカスして、新会社のDay1を迎えるまでにそれぞれの会社の人がお互いに対話して、合併へのモチベーションを作る場にしていこうとしています。企業内大学はその会社のフェーズによって求められることは違っているので、僕はZアカデミア学長としてフェーズごとにその方向感を出すようにしています。

垣沼:なるほど。商工中金の場合、今は「キャリアの自律」が人づくりカレッジの大事なメッセージとしてあるので、リーダーシップを育てる「リード・ザ・セルフ」が我々のフェーズなのかと思いました。

伊藤:実は「キャリアの自律」をやっていくと、辞めていく人が増えるんですよね。ヤフーアカデミアの退職率は一般の社員の退職率より明らかに高くなってて。それで一瞬「俺は何のためにやってるんだっけ?」と思ったことがあったんですよね。「気づいたら自分のいるべき場所はヤフーじゃなかったです。気づかせてくれてありがとうございます。」とか言って辞めていって、すごく複雑な気持ちになったんですけど、気づいた結果やめていくのはウェルカムなんですよね。それが怖いんだったら「じゃあ思考停止させてロボットみたいに働いているのが良いんですか?」ということですね。とはいえ辞めてしまうのは経営陣としては嫌じゃないですか。だから「気づいた結果、自分のいるべき場所はヤフーでした」という会社にするのが経営の仕事だということです。キャリア自立というのはこれくらい覚悟を持つことが必要なんですよね。

角:大人が学ぶ場を提供するっていうことは、気づくきっかけを提供するっていうことだと思うんですよね。気づくきっかけがあって目覚めた結果、「俺これがやりたかったんだ」と旅立っていく人になっていく。でも、50人に1人が辞めたとしても残りの49人は貢献していく能力を身につけているわけなので、プラスの方が絶対大きいはずなんですよね。

伊藤:本当にそうですね。そういう意味で言うと、学ぶ場所は、 単に学ぶだけで終わったらイマイチで、参加する方々が「俺は何のために学ぶんだろう」「私はどうしたいんだろう」というのを常に1人1人考えることがすごく大事だと思います。


これから求められる能力とマインド


質問の2つ目は「これからの銀行員(社会人)に必要な能力や資質は何だと思いますか?」というものです。変化の激しい時代ですが、そこで求められる能力や資質にどんなものがあるのか、尋ねました。

角:一般論として、銀行のミッションは企業を育てることだと思います。そして事業の成長を通じて企業は成長します。銀行はお金を貸すという手段を通じてそのミッションを実現してきたわけです。もうひとつ取り上げたい問いがあります。それは「企業は何からできているのか、企業の構成要素は何か」。そのこたえは「人」です。企業は人の集合体です。ゆえに事業を成長させる主体は人であり、事業を成長させることで人も成長し、その結果として企業も成長するわけです。銀行は企業を育てるのが仕事で「お金を貸す」という手段によってそれを実現してきたけれども、これからはさらに一歩踏み込んで、事業を成長させられる人を育てるためのサポートをお金以外のところでもどんどんやっていかなくてはならなくなるんだと思います。そして、そのために、「事業とはどんなものか」、「人間とはどんなものか」ということを常に自問自答し続けることが大事です。目の前の仕事を片づけるのではなく、その仕事の中の人間的な要素を理解するようにしていると、その先に「人を育てる」ということが身につくと思います。

僕がフィラメントを立ち上げるまでは20年間大阪市役所の職員をやっていて、そこでも起業する人を支援する取り組みもやっていました。 自分が事業を作ったことがないのに起業家を支援するようなことを言っても、自分の中で腹落ちしないというか、「俺やったことないのにな」みたいな負い目があったんです。自分で起業してみると、「事業を作る」ということの解像度が上がって、「こうやった方がいいですよ」と言えるようになったので、それと同じことのように思っています。

垣沼:ありがとうございます。最近いろんなところで、「銀行員は銀行の仕事をしていない」みたいな苦言を聞くことがあって。 昔は「地域の会社を育て、産業を育てる」ということをやってきたけど、どこかでやらなくなって「銀行の仕事がイマイチになった」とか、「銀行員の仕事が変わった」ということも結構聞いたことがあるんですよね。

伊藤:40年前はお金を出すだけで勝手に企業が育ってたんですよね。その理由としては、当時は正解があったからで、 今はないわけですよ。企業経営において、経営者もめちゃめちゃ悩んでるんですよね。だから「育てていく」というのは「回答を教える」のではなくて、「一緒にディスカッションできるパートナーである」ということがすごく重要なんだと思います。

そのときにまず必要な力は、質問して、聞いて、整理して返すということ。つまり壁打ちですよね。そこでスキル的に大事なことは「そもそも」「なんで」「それで」の3つの問いなんです。「そもそも、それでいいんでしたっけ」「なんで、そうなんでしたっけ」「それで、どうなるんでしたっけ」この3つをしっかり聞ける人になることが大事です。クリティカルシンキングそのものなんですけど。でも、単にそれらを聞いて答えるだけだったら、それこそChatGPTみたいになってしまうわけですよ。そうではなく自分なりの軸を持つこと。取引先の社長と比べたら経験はないだろうけど、自分の軸をしっかり持って「俺はこう思う」ということ。そうすると信頼されるようになっていきます。これはスキルではなくシップ(精神)ですね。経営者もやっぱりキャリア自立をした人に聞きたいわけですよ。そういうマインドを持った人に「いや、あんたはそういう風に言うけどどう思う?」「俺こう思うんだけど」というガチの喧嘩みたいなことができるのはすごく重要です。お客様の要望に全部答えるのはある意味でAIで良くて、これから人の力というのは、首根っこ捕まえて言うくらいの感覚でお取引先の社長と対峙できることが大事になるかなと思いますね。

垣沼:ありがとうございます。問いを立てるスキルと、自分の軸を明確にするマインドの両面が必要ということですね。 

角:僕も経営者として経営していると、自分がやりたいこととか、することとかは自分で決められるんだけど、でも、自分で「決めることができてしまう」んですよね。 だから、自分で決めたことが本当にこれでいいのかがわからない。もう毎日わからないわけですよ。毎日わからないから、誰かの意見を聞きたくなるんです。誰かの意見と自分の意見を対比して、「なるほど、こっちがいいのか」とか思いたい、他の人の軸とかも比較してみたい、となるんですね。そうなった時にもしイエスマンしか周りにいなかったら聞ける人がいないわけですよ。いくら掘っても違う意見や、違う観点が出てこない。企業経営者の壁打ち相手がいて、違う論点を差し込まれることが、経営者が成長するきっかけになると思うんですよね。


素通りせず、何にでも面白がってみよう

最後の質問は、「どうしたら、これから必要となる能力や資質を開花させることができるか?」というものです。これはゲストのお二人に尋ねました。

伊藤:先に述べたようなスキルはスキルとして、もう「とっとと勉強せいや」ということでしかないですよね。クリティカルシンキングのスキルなんて、学べば誰でも身につけることできます。それは大前提として、「社長とも話せる人間力」とか、「ChatGPTにも負けない人間力」を身につけるためには、どうしたらいいかというと、「自分自身を鍛える」ことですね。「自分は何者で、どこから来て、どこに向かおうとしてるのか」をずっと見続けて、「今この仕事をやっているのは、自分の人生にどういう意味があるんだろうか」を毎日問い続けながら、自分の軸を明確にするのが何より重要だと思います。まずは全職員が自分の軸を明確にしたらいいと思いますし、皆自分自身を見つめるのが何よりその近道なんだと思うと良いかと思います。そして、そのためには「とにかく人とたくさん喋る」ことですね。「自分はこういうことがしたい」とか、「自分はこう思ってる」とか、とにかく「自分」を出して喋ってるうちに、だんだん言葉になってくるので、 それが自分にまた返ってきて、「あ、そういうことか」と気づいたりする。

角:自分を見つめることによって、自分の軸ができてくるから、「自分がこう思う」が言えるようになってくるってことですね。

僕からも一つお話させてください。人間の認知の仕組みの話で、「システム1」と「システム2」という言葉があるんですけど、システム1の方は、自動的な認知のことを言います。例えば「3×5」といったら何も考えずに「15」って出るじゃないですか。考えなくても体が動くのが、システム1です。そしてシステム2は考えるのにコストがかかることです。「57×82」は考えないと出てこない。システム1で片付くものの間はシステム2が出てこなくて、システム1で片付かないからシステム2が出てくるんです。でも、システム1で全部過ごしてると、何か見ても気づかずにずっと素通りしちゃうんですよ。僕が普段心がけてるのは、できるだけ素通りせずシステム2で見るということです。普段からいろいろなものに目を向けて面白がって考えてみたり、自分に目を向けたら、「自分でこんなに面白いことができるんだ」と思ったり、そういうことにもたぶんつながってくる能力だと思います。フィラメントが大事にしている言葉に「面白がり力」というものがあるんですけど、「なんでも面白がって見てますか」ということは周りの人には時々言う言葉ですね。

商工中金の企業内大学「人づくりカレッジ」は「手上げ制」を基本としており、多くの講座で職位や年齢による申し込み制限はありません。その中でも、フィラメントが提供するワークショップや相談会、動画とフィードバック付き課題からなるフルオンラインの新規ビジネス創出講座のプログラムは5月から9月まで開講されます。事業を作るための着眼点、思考方法、具体的な手法を習得することで、新規事業を作るのに役立つのはもちろん、既存業務にも役立つ能力が身につきます。商工中金の皆さん、ぜひご参加いただきフィラメントとともに楽しみながら成長していきましょう!


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