学生が主役の地域産品セレクトショップ「アナザー・ジャパン」が東京駅前にオープン!内覧会でこれまでのあゆみをお聞きしました
2021年、東京駅すぐ近くにオープンしたTOKYO TORCHの常盤橋タワー。TOKYO TORCHに関しては、以前QUMZINEでも三菱地所の谷沢さんや新潟県小千谷市の大塚市長にインタビュー取材をさせていただきました。
そして、昨年12月にはこのTOKYO TORCHを舞台として三菱地所と中川政七商店がタッグを組み、これまでになかったようなプロジェクトを開始するという記者会見に参加しました。それが全国各地出身の学生が出身地域の産品を仕入れ、店舗を経営し、プロモーションを行う大型プロジェクト「アナザー・ジャパン」。
今回はその続編となります。
選考を通過した学生たちが2022年3月より活動を開始。学生たちがセレクトした地域産品を扱う店舗が、8月2日にオープンしました!本記事では、オープンに先がけメディア向けに開催された店舗内覧会のレポートをお届けします。
商品セレクトから接客まで各地域出身の学生が行う「アナザー・ジャパン」
「アナザー・ジャパン」は2か月ごとに特集地域が入れ替わる地域産品セレクトショップ。8月2日に東京駅すぐ近くにあるTOKYO TORCHの敷地内、銭瓶町ビルディング1階ぜにがめプレイスにオープンしました。最大の特徴は商品のセレクト、仕入れ、店舗経営、プロモーション、接客販売などを各地域出身の「学生」が行っているということ。まずは第1弾として九州出身の学生3人がセレクトした九州の企画展「アナザー・キュウシュウ」がオープンしました。
このプロジェクトはTOKYO TORCHを開発する三菱地所がプラットフォームを提供し、中川政七商店が小売業のノウハウ教育とメンターを担います。まさに経営に関する学びとその実践を最強の立地で行えるというプログラムですね。
内覧会では、このプロジェクトに参加している学生から直接店舗の説明を聞くことができました。
「アナザー・キュウシュウ」のテーマは「宴」。”キュウシュウという宴が、あなたを待ってる。”をコンセプトに、7つのテーマにそって棚を展開し、商品を集めています。仕入れにあたっては、学生が実際に九州8県をめぐり、商品をセレクトし、メーカーと交渉。学生が接客販売も行うので、メーカーから直接商品に関する思いを聞き、売り場でお客さんに伝えられるのもメリットです。
棚は「宴」というコンセプトをもとに「乾杯」「宴席」「彩り」「装い」「お祭り」「贈り物」「余韻」の7つのテーマに分けて展開。酒や食器、食品など地域の産品が並びます。
商品の傍らには手書きの説明POPが置かれています。商品への思いを感じますね。
店舗中央には試着室のようなスペースも。実際に試着室として使用できるほか、ライブコマース用のスペースにも使われるとのことです。また、週末には各県あたり1回ずつ絵付け体験などのワークショップも開催されるそう。
地元では人の温かさを感じた
内覧会後には、個別にインタビューを実施することができました。
お話をうかがったのは、本プロジェクトの参加メンバーである長崎県出身の学生、山口晴さんです。
ーー「アナザー・キュウシュウ」のコンセプト「宴」はどのように決まったのでしょうか?
山口さん:コンセプトはなかなか決まらなくてエリアメンターの方と壁打ちしてもらいました。メンターの佐藤かつあきさん(BRIDGE KUMAMOTO代表理事)からは、「九州がある日突然なくなったとしたら、何がなくなると思う?」という問いかけを受け、連想ゲームのような感じでいろいろなキーワードを出していきました。そうすると「親戚と話すこと」「祭り」といった宴の時間や場であることに気付きました。これまで九州だけを見て考えていましたが、メンターの方と話すことで日本の中の九州というように視点が広がり、その中で「宴」というワードが出てきました。
ーー普段慣れ親しんだSNSをビジネスに活用することへの難しさは感じましたか?
山口さん:「伝える」と「伝わる」の違いについて考えることがありました。現在では情報があふれており、人が見たいと思う情報と私たちが伝えたいという情報はなかなか一致しないという難しさを感じました。Twitterではリアルタイム性のあること、Instagramは商品紹介、noteでは私たちの思いなど、役割を持たせて運用しています。
ーー今回の活動を通してどのような地元・九州の魅力を再認識しましたか?
山口さん:人の温かさやご縁を感じる機会が多くあり、そこで九州の人の仲間意識の強さが魅力だと感じました。地元の人と交流する中で、地元の好きなところを聞いたら「地元の人が好き」と答えた人が多くいらっしゃいました。売り場では、商品の仕入れを通じてどういう人に出会って、どういうコミュニケーションができたのかをお伝えしたいです。
ーー具体的にはどのようなお客さんに来てほしいですか?
山口さん:暮らしにまつわる商品が多いので、こだわりのある方に来ていただきたいです。また、個人的には同じ世代くらいの人にも来てほしいと思っています。仲間になるような人をつくりたいですね。
学生は責任感が身についた
続いて、株式会社中川政七商店 ビジネスデザイン事業部の安田翔さんにお話をうかがいました。
ーー学生の選考基準はどのようなものでしたか?
安田さん:「フロンティアスピリット(開拓者精神)と郷土愛を持つ学生求む」と募集していましたので、これら2点を感じる学生を採用しました。「フロンティアスピリット」は経営者マインドを持ち、自律的であるということ、そして「郷土愛」については地元に愛着があって発信したい意欲を持っているということです。何をしたいのかについて自分の言葉で語れるかどうかは面接時に見ていました。「自分が参加できることになった暁にはこういうことをしたい」とプレゼンできる人を採用しました。
ーー中川政七商店はメンターとしてどのように支援されましたか?
安田さん:中川政七商店の経営のフレームワークを伝え、現場のレベルでフィードバックを行いました。また、TOKYO TORCHの全体のプロジェクトからみての位置づけなど、俯瞰的な視点を与えました。一方、商品セレクトに関しては、学生が選んできた商品に対して、中川政七商店としてはOKもNGも出していません。
ーー活動に取り組むことで、キュウシュウチームの学生はどう成長されましたか?
安田さん:責任感が出てきたと思います。メーカーさんから多大なご協力をいただいていていることを学生自身も深く理解しており、学生たちからは「その分絶対売らなきゃ」という気迫を感じました。
九州チーム以外の15人の学生は、これから仕入れを行いますが、「プロダクト」「オペレーション」「コミュニケーション」といった持ち場をきちんともって仕事しています。本プロジェクト責任者である当社会長の中川政七からは「良いレンガを1つ1つ積まないと、崩れるのが早い」と話しており、一人一人が緊張感を持って仕事をしています。レジの設定なども学生が自分たちでやっていて、ミスがあっても自分たちでカバーしています。
まとめ
内覧会での説明やインタビューでは学生がしっかりとした口調で伝えており、非常にプレゼンが上手だと感じました。何より全部自分たちで作り上げてきたのでイキイキとしていて、とても楽しそうな雰囲気を感じます。これから1年かけて2か月ごとに日本全国のエリアの企画展が展開されますが、その違いも感じてみたいと思いました。
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