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NTT Comが「脳の健康チェック plus」の有償トライアルを開始 ~“認知症になる一歩手前の状態”を6分間の電話で確認~

NTTコミュニケーションズ株式会社は、「認知症で不安になる本人・ 家族・企業が少なくなる社会へ」をコンセプトに掲げ、世界アルツハイマーデーである9月21日より、認知症の早期発見に向けた新たなサービス「脳の健康チェック plus」の有償トライアルを開始しました。「脳の健康チェック plus」は6分程度の電話でAIにより認知症になる手前の状態を確認できる新たなサービスです。
本サービスの説明会が開催されるとのことで、QUMZINE編集部は大手町プレイスウエストタワーに向かいました。サービスの背景からビジネスモデル、今後の展開まで説明会の様子をレポートします。(文/土肥紗綾、写真/平井征輝)


説明会会場にはQUMZINE編集部を含めた取材陣がズラリ。「脳の健康チェック plus」への注目度の高さが伺えます。説明会はNTTコミュニケーションズ 代表取締役副社長 菅原 英宗 氏の挨拶から始まりました。

NTTコミュニケーションズ 代表取締役副社長 菅原 英宗 氏

NTTコミュニケーションズ 代表取締役副社長 菅原 英宗 氏(以下、菅原):
本日は足をお運びいただきまして本当にありがとうございます。
この会場は私どもとパートナー企業様とがミーティングやイベントを行っている共創の場です。本日発表させていただく「脳の健康チェック plus」は、パートナーの皆様方とコラボレーションをしていくことで社会課題を解決していくものだと思っております。このような共創の場から「脳の健康チェック plus」について発信できることを嬉しく思っております。

取り組みの背景

認知症により認知機能が低下することで、物忘れのような記憶力・計算・言語などの能力
が低下し、日常生活全般に支障が発生します。高齢化が進む日本社会においては、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になるのではと言われています。
自分にとっても家族にとっても身近になってきている認知症を自分ごととして捉えて対策をしていくにはどうすればよいのでしょうか?

認知症は一般的に、治療を早く始めるほど効果があるといわれ、早期発見が重要です。そこでNTTコミュニケーションズが注目したのがMCI(軽度認知症障害)。MCIは認知症予備軍とも呼ばれていて、日常生活に影響はないけれど認知機能の低下が見られる状態を指します。NTTコミュニケーションズではこの低下傾向を早期に発見して対応していく仕組みを社会実装しようとしています。

昨年リリースされた「脳の健康チェックフリーダイヤル」とは

ちょうど一年前、世界アルツハイマーデーでもある2022年9月21日に合わせて、「脳の健康チェックフリーダイヤル」がリリースされました。

「脳の健康チェックフリーダイヤル」は電話をかけて簡単な質問に答えるだけで、かけた人の認知機低下の疑いを短時間で確認できるサービスです。医療行為ではありませんが、利用者の方に脳の健康状態についての気づきを与えられる重要なサービスです。

実はこのアイデアはNTTコミュニケーションズの新規事業創出コンテスト「DigiCom」に出場した社員の方の実体験をきっかけに生まれたものなんです。

生駒市での実証実験を経て実施された無償トライアルは、1週間で30万コールの電話、そして90社以上からの問い合わせがあったそう。そして、この反響を受けて新たにリリースされたサービスが、本日発表された「脳の健康チェック plus」です。

「脳の健康チェック plus」とは

「脳の健康チェックフリーダイヤル」のコンセプトである「認知症で不安になる本人・家族・企業が少なくなる社会へ」はそのままに、より早期かつ詳細な認知機能の変化を判別できる 「脳の健康チェック plus」がリリースされました。

前回はチェックにあたり「時間見当識」「音声の特徴」をもとに日時を把握できるかを確認していました。今回はこれに加えて「即時記憶」「ワーキングメモリ」をもとに情報をどれだけ覚えられるかなど複数の要素を確認しています。この技術は、新たに日本テクトシステムズと共同開発されたアルゴリズムが採用されています。

電話をかけて簡単な質問に答えるという方法は同様で、認知機能チェックに関わる設問数が増えています。これにより、脳の健康状態をより早期にかつ5段階で認知機能の変化をチェックすることが可能となっています。 ※利用にあたっては通話料金が発生します

昨年リリースされた「脳の健康チェックフリーダイヤル」と、今回発表された「脳の健康チェック plus」の違い

昨年リリースされた「脳の健康チェックフリーダイヤル」と、今回発表された「脳の健康チェック plus」の違いについては、ビジネスソリューション本部スマートワールドビジネス部スマートヘルスケア推進室長 久野 誠史 氏から説明がありました。

ビジネスソリューション本部スマートワールドビジネス部スマートヘルスケア推進室長 久野 誠史 氏

ビジネスソリューション本部スマートワールドビジネス部スマートヘルスケア推進室長 久野 誠史 氏(以下、久野):
昨年リリースされた「脳の健康チェックフリーダイヤル」では20秒でチェックができましたが、今回発表しました「脳の健康チェック plus」ではチェックに6分必要です。設問数が増えたことによるものですが、これによってより詳細な情報がわかるようになりました。
前回は二区分(健常・認知機能の低下)でチェック結果をお答えしていましたが、今回はより細かく五区分(1・2・3・4・5)でお答えできるようになりました。前回「健常」とお伝えしたものが五区分の「2〜5」、前回「認知機能の低下」とお伝えしたものが五区分の「1」に相当します。

従来は「医師や看護師との対話」「スマホやタブレット等のアプリの使用」「血液検査」で検知していたのですが、「脳の健康チェック plus」は検査者が不要であり、身近なツールである音声電話で短時間でチェックができるのが大きな特徴です。簡易な方法であるが故に、早期発見に気づきやすいという部分が強みだと捉えています。

現在は、自治体や企業を対象とした法人向けサービスを検討中で、年度内のリリースに向けて取り組んでいるそうです。 
具体的には、昨年リリースされた「脳の健康チェックフリーダイヤル」と、今回発表された「脳の健康チェック plus」の両方を駆使しながら、経過を確認したり、再チェックやイベント参加等を促したりできる機能を包含したサービスなどが検討されているとのことでした。

今後の取り組みに向けては、

  • 認知機能の低下について、より気づきを促すことができるソリューション拡張のためのパートナー

  • 行動変容を促すコンテンツ拡充のためのパートナー

を募集しているそうです。
ぜひ、関心のある方は連絡してみてください!

質疑応答

発表後は質疑応答が行われました。その様子を一部ご紹介します。

――医療機関との連携予定はあるか?

菅原:認知症やMCI(軽度認知症障害)を判定するためには、今回発表している「脳の健康チェック plus」だけではなくて他の要素も必要となります。現在我々は医療行為までは想定してないので、医療機器とは少し異なるレベルでサービスをご提供しているところです。今後、もっとこの取り組みが発展したり、世の中から要請があれば、医療機器としてのご提供を考えていってもいいのかなと思っております。

――昨年リリースされた無償トライアルの「脳の健康チェックフリーダイヤル」は継続する予定か?その場合、有償トライアルの「脳の健康チェック plus」との使い分けはどのようなものか?

菅原:両方、ご提供していきたいと思っております。有償トライアルの「脳の健康チェック plus」は6分必要ということで少しお手間がかかるということもありますし、有償というものがどれほど受け入れられるかというのを見極められたらと思っております。
使い分けについては頻度を変えてそれぞれ利用をしていただけたらと思います。去年リリースした無償トライアルの「脳の健康チェックフリーダイヤル」は簡易的にできるので頻度を高く(例 2週間に1回)利用していただき、有償トライアルの「脳の健康チェック plus」は例えば1ヶ月に1回といった頻度で利用していただくことで、健康状態の傾向がわかるのではと考えております。

――自治体などでサービスを展開する場合、現在のフリーダイヤルなどの電話番号はそのまま使用するのか?独自の電話番号が使われるのか?

久野:実際に自治体さんなどに展開する場合は、専用の電話番号を設けたいと思っています。例えば、自治体さんの方で「市民にとって使いやすくしたい」ということであれば、フリーダイヤルを使用する可能性もあります。目的に合わせて提供の仕方を柔軟に変更できればと思っております

――昨年リリースされた「脳の健康チェックフリーダイヤル」と、今回発表された「脳の健康チェック plus」はAIを用いて判断しているが、それぞれ同じアルゴリズムを使っているのか?

ビジネスソリューション本部ソリューションサービス部担当課長 田中淑満 氏

ビジネスソリューション本部ソリューションサービス部担当課長 田中淑満 氏:今回の「脳の健康チェック plus」に関しましては、全く新しいアルゴリズムとして開発したものになっておりますので、昨年度リリースした「脳の健康チェックフリーダイヤル」とは全く別ものとお考えください。

それぞれ全く別のアプローチで開発をしていまして、昨年度リリースした「脳の健康チェックフリーダイヤル」は認知機能の低下が見られるかどうかといった後ろの段階を判定するものだったんですが、今回はもうちょっと認知機能の初期段階を検知するものとなっています。

おわりに

昨年の世界アルツハイマーデーである9月21日には「脳の健康チェックフリーダイヤル」が、そして今年の世界アルツハイマーデーである9月21日には「脳の健康チェックplus」がリリースされました。

登壇された皆さんが手首にオレンジ色のリングをつけていたのが印象的でした。このオレンジ色のリングは認知症サポーター養成講座を受講した際にもらえるもので、「認知症の方を支援します」という意思を示すリングです。本サービスに関わるメンバーの多くが取得されているそうです。(登壇者のみなさんの写真の手首付近をチェックしてみてください)

ちなみに、世界アルツハイマーデーに合わせて京都タワーもオレンジ色にライトアップされていました。こちらの写真はQUMZINE編集部メンバーが取材帰りに撮影したものです。

みなさんもこれからオレンジ色を見たときには、少しでも認知症のこと、そして大事な人のことを思い出してもらえると嬉しいです。

まずは気軽に脳の状態をカンタンに知りたい方は「脳の健康チェックフリーダイヤル」(無償)に、脳の健康状態を詳しく知りたい方は「脳の健康チェックplus」(有償)にそれぞれお電話をしてみてください。

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