NTT Comの脳の健康チェックサービスがついに無償トライアル開始!伴走支援してきたフィラメントが果たした役割とは
脳の健康チェック概要
武藤:NTT Comは9月21日に「脳の健康チェックフリーダイヤルの無償トライアルを開始」と題したプレスリリースを出しました。このプロジェクトの立ち上がりや背景をご説明します。
このプロジェクトの背景についてお話しすると、一つ目として私自身の体験が挙げられます。
私の祖父が認知症になり、父親が毎日神経をすり減らして祖父を介護していて、家族のきずなが失われていくのを目の当たりにしました。
また、私自身が父親になってからは、孫を祖母に会わせても、認知症によって毎回記憶がないということがあり、そこで祖母が残された時間、寿命が消化されているという心の痛みを抱えました。これを基に、社会課題解決のサービスを立ち上げようと決意しました。
二つ目として、高齢化社会においては労働者不足が挙げられます。パーソル研究所のレポートによると、2030年には労働者が600万人ほど不足すると言われています。10年後には労働力が1割不足することになり、これは危機的な状況かと思います。
さらには、認知症患者の急増も予想されています。2015年には525万人だったものが、2025年には730万人となります。これは10年で40%増加することとなり、その数は人口の6%に値します。
認知症になると資産凍結の恐れにさらされるといわれていますが、人口の6%となると200兆円の金融資産が凍結される恐れがあります。2030年には我々が想像しないような時代に突入していくのではないかと考えております。このような自己体験と社会的な変化からソリューションを組み立てました。
NTT Comの「強み」として電話や音声認識というコア技術、そして「社会課題」として認知症や労働力確保といった課題、「トレンド」として自分の健康状態を自分で確認しようという動きであるセルフメディケーション。「強み」「社会課題」「トレンド」これら3つの交点にビジネスを見出し生まれたのが、電話のインフラとAIを掛け合わせることで、電話越しに1分以内で認知機能を判断する「脳の健康チェック」というサービスです。
このサービスは、短時間でどこでも簡単に脳の認知機能をチェックできるもので、電話をして、年齢と日付を答えていただくだけでAIが判定してくれます。
パートナーである日本テクトシステムズ社の技術を採用し、発話する際の声の揺れや言いよどみ、遅れなどを要素分解したうえで、特徴量としてとらえてAIが解析しています。実際に認知症と診断された方の行為のデータを基に、機械学習モデルを作成しています。これは臨床研究もされている技術です。
今回のプロジェクトのコンセプトとして、認知症で不安になる本人・家族・企業が少なくなる社会を目指して活動しています。パートナーの企業様は家族・友人、本人、企業のそれぞれの軸でサポートできるようなアセットをお持ちです。それらを掛け合わせることで、認知症に対する意識を高め、衰えを緩和できる世界をパートナー様とともに作り、人生100年時代のQOL向上を目指していきたいと考えています。
続いて、協業モデルを説明します。
予見・余地、予防・ケア、安全宣言、既存ビジネスへの組み込み、集客・CM利用、広報・啓発活動と6つのカテゴリーがあります。
また、協業ビジネスパターンとしては大枠として3パターン想定しています。
まず1つ目は「ミドルBへのSaaS提供型モデル」、2つ目は「ミドルBサービスへの組込型モデル」、3つ目として「利用者基盤の企業活用モデル」です。1つ目は例えばタクシー業界の方に専用のフリーダイヤルを貸し出し、従業員の方に使っていただくようなモデルを考えています。2つ目は、自社で実装しているスマートフォンアプリに脳の健康チェックの機能を実装していただくイメージを考えています。3つ目は、個人の方がかけていただいて、健康について興味を持ったり、脳の機能について不安を持った方々に対して、CMを提供することで、困っている個人とサポートいただける企業をおつなぎするというビジネスです。
最後に、ロードマップと今後の展望です。
まずSTEP1として、9月21日に報道発表をさせていただきました。我々のプロジェクトの中ではPoSS(Proof of Social Service)と位置づけ、脳の健康チェックというソーシャルサービスが世の中に受け入れられるのかということを確認しています。あわせて、パートナーの募集や共創の宣言をします。続いて、STEP2として、既にご賛同いただいているパートナ―と想定した協業モデルの具体化として、各企業の意見を組み込みながらサービスに仕立てていきます。STEP3では、サービス化フェーズとしまして、もっと早期の段階で検知できないか検討したり、無償提供サービスでご利用いただいた利用者データを収集しながら、サービスの向上に向けて検討をしていきたいと思っています。
以上が、本サービスの概要です。
トライアル開始までの日々を振り返る
角:ここからはパネルトークのお時間です。モデレーターを務めさせていただきます、株式会社フィラメントCEOの角と申します。開発を担当された武藤さんと田中さんに今回のサービスのこれまでの歩みと展望についていろいろと伺います。よろしくお願いいたします。オンラインでは伴走支援で何度もお会いしていますが、リアルで対面するのは実は今日が初めてなんですよね。
武藤:かれこれ40回以上は打ち合わせしていますけど、実際にお会いするのは今日が初めてなんですよね。
角:脳の健康チェックサービス無償トライアル開始に至るまで、社内的にはどのように進めていったのか、改めて振り返っていただけますか。
武藤:最初、ニッチなところに入ってしまうとビジネスがスケールしないから、社会課題という形でまだ顕在化はしていないけど漠然とある不安をテーマにしたいと話をしていました。チームを立ち上げたときは、立ち上げて何をしていくかというフェーズがあり、次にどう取り組みを事業化していくかというフェーズ、そして社内でどう認知化していくかというフェーズがありました。その中で乗り越えなくてはいけない山は、その最後のフェーズでした。個人でやっていると妄想が拡がっていくだけになってしまうので、それを施策として仕立てるために、社内の人に認知してもらう必要があります。その課題を解決するために社内ビジネスコンテストであるDigiComに参加しました。
現在は「人生100年」チームとして5名で活動していますが、2020年の当初は3名でDigiComに出場しました。当時は「思いはあれど形にならない、どうしよう」という悩みだけがありました。
角:DigiComはNTT Comの社内ビジネスコンテストですが、僕が最初にNTT Comとかかわりを持たせてもらったのが、まさにそのDigiComの審査員をさせていただいた時だったんです。まだコロナ禍の前だったので、リアル開催で600人とか650人とかいう大きな規模だったんですよね。出てきているアイデアがどれも面白かったんです。その後コロナ禍になって、DigiComもオンライン化され、2020年のDigiComははじめてフルオンラインで開催された回だったんですよ。我々フィラメントは企画や設計の部分でも携わらせていただいて、参加チームのメンタリングもさせていただきました。その中の1チームが「人生100年」チームなんですよね。だからその頃からのお付き合いとなります。だから今回の記者発表は僕らにとっても感無量という感じでした。立ち向かっている課題が最初から大きいと、課題を解決するときに具体論に落とし込んだときにあやふやなものになりがちなんですよね。でもこのチームが素晴らしかったのは、「 こういうアプローチなんです」という軸がはっきりあったということ。だから、DigiComの中でも勝ち残っていけましたし、光っていましたよね。DigiComの話で記憶に残っていることはありますか?
武藤:DigiComでは3~5分のピッチをするんですけど、時間が短いので自分が思っていることをすごく凝縮してしゃべる必要があるんですよね。20分くらいのプレゼンに慣れているので、3分のプレゼンって全くイメージがわからなかったんです。角さんに当日「武藤さんよろしくね、頑張ってね」と言われたんですけど、実際に思いが溢れすぎて3分の尺に15分くらいの資料を作って、4割くらいしか話せず終わるという感じでしたね。
角:覚えています。確か資料の枚数が多いから「これサクサク送らないと終わりませんよ」とみたいな話を前日くらいにして、当日は結局話し終わりませんでしたね。
武藤:終わらなくて講評に入る前に角さんに怒られましたね(笑)
角:田中さんもその時のこと覚えていらっしゃいますか?
田中:よく覚えています。いつまでしゃべるんだろうなと(笑)
角:短い尺の中で人の気持ちを動かしたりとか、「これはぜひやってみたい」と思わせるようなところまで至るのに難しさはありますが、やはり1回失敗すると、成長の元になっていくってことですよね。 そこから予選や本選があったんですが、本選の時はさすがにぴしっとしゃべれましたね。
武藤:はい。10回以上練習をして、まず尺に納めるというところからはじめました。
角さんに教わったのは、短い時間では、全てのことを伝えきれないので、聞いていただいた方に何か持ち帰っていただく、もしくは心に残してもらうものを作る必要があるということです。そういう意味で、最初にお話しした自己体験を自分事としてお伝えして、相手にも何か自分事として捉えていただいて共感していただけたのではないかと思います。
角:原体験のお話っていうのは、「あ、確かに自分にも起こりうる」とみんな思うし、エモーションをすごく揺さぶられる感じがするんですよね。大体のプレゼンって、人の心を動かして、やる気にさせることが目標なんですよ。そのためには、エモーションとロジックの2軸があって、その両方とも必要なんですよね。 そして、今回それらの両方が兼ね備わっているから、受賞するまで至ったという感じだったんです。 審査員特別賞も受賞していましたよね。やっぱり審査会の場でも、「これはありだよね」いう感じで審査員の皆さんが仰っていたように思います。
武藤:気付きとしてあったのが、我々の周辺では盛り上がっているんだけど幹部層とか、会社としてどうなんだろうとずっと思ってたんですよね。社内ビジコンみたいなイベントって一過性で、終わったら消えてしまうようなイベントだなと思っていたんですが、社長も含めアイデアに共感していただいて、「このサービスはやるべきだ」とお墨付きをいただいた。社会課題解決ソリューションについて、捉え方はそれぞれ違えど思いは一緒なんだろうなと。経営層からも承認いただいたのは励みになりましたので、社内を動かすためには重要なイベントだったと思います。
角:DigiComの審査中に社内の審査員の方の声も聴くのですが、社会課題の解決をちゃんとやっていかなくちゃいけないという思いにあふれていまして、NTT Comってそういう会社なんだという意識が多分すごくあるんだろうなと思いました。だからこそ、こうやって社会課題を解決するような事業が実際にローンチしていくことが可能なんだなと思います。
武藤:DigiComも含めて社内で認知してもらわないと、取り組みを許可してもらえなかったりします。でもうちの会社で本当にいいなと思うのが、取り組みを許可してもらえたら、その継続的な取り組みを支援するような社会制度がある事なんですよね。まさに角さんにメンタリングしていただいている制度なんですが。
角:DigiComで入賞した後の話ですね。NTT Comの素晴らしい制度として、BIC(Business Innovation Challenge) がありますよね。DigiComで入賞したり、すばらしいビジネスプランがあった時に、それを伸ばすために、支援していくような社内インチベーションの制度がありました。このチームもDigiComで入賞された後は乗っかって、僭越ながら我々フィラメントがメンタリングして伴走しながらビジネスとして可能性をどんどん突き詰めていくという、フェーズを一緒に歩ませていただいたんですよね。
田中:「こんなことを聞いたら恥ずかしいな」というのも結構あったんですけども、意外とあっさりと受け止めていただけたっていうのが非常にありがたかったですね。他にも、他の企業との関係性を構築する方法であったり、どうやって社外に広めるかというところも参考になりました。我々はどちらかというと法人向けの事業が多いので、今回のような一般の方向けに理解してもらうにはどうしたらいいのかということは角さんの話を聞きながら参考にさせていただきました。
角:すごいなと思ったのが自治体です。 奈良県生駒市の市長に直接お話をして、そこから実証実験第1号になりましたよね。保健福祉分野の方とかとお話することは、あんまりされたことがなかったんじゃないかなと思うんですけど、そこからどんどん巻き込んでいって、今や生駒市の皆さんが味方みたいな感じになりました。皆さんの一緒に寄り添う力がすごく高いと思いました。
田中:おっしゃる通り、その住民の方とその自治体の方に寄り添うというところですね。そして私だけではなくチームの他のメンバーも巻き込んで短期間でシステムを構築をすることができましたので、彼らにはここで改めてお礼を言いたいですね。
角:やっぱり、みんなその志を一緒にする仲間が集ってこそ、結果に繋がりますもんね。
田中:そうですね、そしてその先にある社会課題の貢献を解決していくモチベーションというのは、弊社のどの社員でも持っているということは、改めて認識できているところですね。
角:なるほど。そうやって開発されてきたサービスが、この度無償トライアルを開始したということになるんですね。リリースされてからの反響はいかがですか?
田中:アクセス数はすごく爆発しまして。当初の予測をはるかに超える方に利用いただきました。そこで急遽対策を行い、なるべくたくさんの方に使っていただけるように対策しました。それだけ脳の健康に多くの方が興味があるのだなということを改めて認識しています。
角:すばらしいですね。今後の発展にも期待しています。今日はありがとうございました。
実際にサービスを体験するには以下のサイトをご参照ください。
開始1週間で25万コール超!
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申込URL: https://openhub.ntt.com/event/4060.html
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