LinkedIn日本代表の“右腕”が語る、エグゼクティブ・アシスタントな私の生き方 ~金井由香里さんインタビュー~(2/2)
みなさんはエグゼクティブ・アシスタントをご存知でしょうか?日本で一般的にイメージされる日程調整や出張手配などのような秘書業務は、エグゼクティブ・アシスタントの仕事内容全体の2~3割ほど。では、その他の仕事内容とは・・・?
今回は、村上臣さんのヤフー在籍時からLinkedIn日本代表に至る現在もエグゼクティブ・アシスタントを務める金井由香里さんにインタビューを決行!仕事内容から外資系企業でEAとして働くことの難しさ、そして、金井さんと村上さんならではの働き方までお伺いしました。(文/QUMZINE編集部、土肥紗綾)
「普通に仕事ができる」を維持することの難しさ
QUMZINE編集部(以下、Q):お仕事で工夫していることや失敗談はありますか?
金井由香里(以下、由香里):絶対に失敗しないように24時間ボスのことを考えてるから失敗しようがないですね。致命的なミスはありません。というのも、常に150%の準備をしているので、何か抜けがあっても100%より下にはならないし、予想外にも対応できます。だからこそ、ミーティングに参加して背景や現在・未来、関わる人などいろいろ把握しておく事も大切だと思っています。
仕事のモットーの1つに「村上が普通に生活できる」というものがあります。私は普通を維持するのはとても難しいことだと思っています。たとえば、彼が「あれはどうだったかな?」と頭の隅で考えながら出張やミーティングに参加するのは駄目で、「あの情報はアレを見ればわかるな」と思って安心してもらえる「普通」を維持するようにしています。
あと、細かい部分ですが、OutlookのスケジュールにオンラインMTGのURLを入れるときに、「場所」の項目にURLを入力するとリンクにならないので、「本文」のところにURLを入力してリンクをクリックするだけで参加できる状態にしています。URLのほかに、ミーティング参加者や前回の会議内容、「会議ではこれを伝えてね」などの短いメモをつけておきます。これは「オンライン由香里メモ」って呼んでいるんですけど(笑)。スケジュールを開けば情報が全て載っていて完結する状態をつくるようにしています。
黒革の手帖ならぬ、由香里メモ!?
Q:普段お仕事でよく使っているツールはありますか?
由香里:「由香里メモ」ですね!
Q:先ほどのスケジュールにメモをつけておくのが「オンライン由香里メモ」で、こちらの「由香里メモ」はアナログ版ノート形式なんですね。IT系企業ということもあってWEBサービスが出てくるのかなと思っていたので予想外でした!
由香里:ヤフーのChief Mobile Officerの秘書だったのですが極度のIT音痴でして・・・。私たちは”得意な方がやる”というローカルルールがあって、通常あり得ないと思うのですが、ちょっとした携帯の設定やITトラブルについてはうちの場合はボスがやってくれます。日本で一番高額のITサポートが隣にいる感じですね(笑)。
実際私の手が止まって一番被害を被るのは村上ですが、それも含め常に効率を考えて「得意なことは得意な方がやればいいよ」と提案してくれたボスに感謝です。
Q:「得意なことは得意な方がやればいいよ」という関係性は、他の役員とEAにはなかなかないかもしれないですね。
「由香里メモ」についてもう少し教えて下さい。由香里メモは分厚いノートなんですか?
由香里:そこまで分厚くはないですよ。これくらいです。
由香里:私、小さい頃から日記が書くのが好きなんです。仕事用のことは全部この由香里メモにメモしています。ヤフーでは「黒革の手帳」って呼ばれてました(笑)。ここには、私の頭の中と心の中と見聞きしたことがすべて書かれています。とにかく何でもメモをしていて、この由香里メモはLinkedInに入って5冊目です。
絵も字も書けるし、何より手書きの字はその日の気分が出ます。イライラすると字が乱れるとか。そういう字の方が書いたときのことを思い出しやすいんです。村上とのミーティングで「これ面白かったよ」と聞いたモノをメモしておいて、後で調べたり。ほかにも必要じゃない情報もたくさんあるけど、必要になりそうな情報にはアンダーラインとか丸をつけておきます。
「この由香里メモを何十年か経って見返したら面白いよね」って言ったら、「怖いからいい」って言われました(笑)。
EAに向いている人は?
Q:お二人のような関係性を目指す時に、EAに向いている人はどんな人でしょうか?
由香里:そうですね・・・。EAはパートナーであること、自分はボスの代理でもあることを認識して動けるというのは大前提として、そういうことが苦じゃない人、プレッシャーを楽しめる人が向いているんじゃないでしょうか。
それから、空気が読める人ですね。空気を読むというのは余計なことをしないとか言わないということだけじゃないと思っています。よく、「ボスが忙しいから喋りかけるタイミングがわからない」と相談されるんですけど、それは空気が読めてないだけだと思います。重要な案件であれば、喋りかけるタイミングを探ることよりも、会議中だとわかっていてもメッセージをすることが必要です。やはり、間(ま)が大事だと思います。
同僚以上に一緒にいる時間が長いEAという仕事は、ボスの一番のファンであるべきだと思っています。ファンというのは、つまり、相手に対して興味を持つとか面白いと感じられるということなんですけど。これは、かつてのボスに「イエスマンではなくファンでいて欲しいと思っている。そういう存在がいてくれると頑張れる。」と言われたことに由来しています。
向いている人についてお話ししましたが「向き不向き」というよりは、ボス次第、相性次第です。これは秘書であってもEAであっても同じです。
今の私の働き方は、村上といっしょに仕事をしているからできている働き方です。ボスの意向や働き方と合致しているからストレスに感じません。常に「こんな人と仕事したい」とイメージしておくことはとても大事で、そうしておくことで、そういう人に実際に出会えた時に飛び込んでいけます。実際、私は彼に会ってヤフーに転職することを決めました。
由香里さんの野望
Q:今後の由香里さんの野望について教えてください。
由香里:村上が『転職2.0』を書いたのをきっかけに私も書こうかな?とか思ったんですけど、見ていてとても大変そうだったんですよね・・・!
Q:4月発売のこちらですね!
由香里:「第一想起される人でありたい」とよく村上も言っているのですが、私も「EAといえば由香里」というふうに思い出してもらえるようになりたいですね。
先日、ヤフー時代村上の部下だった方が初めて秘書をつけることになったときに「僕のイメージするアシスタントといえば由香里さんでした。」と言って、秘書の方と一緒に仕事するにあたってのアドバイスを求められたことがあったのですが、こんな感じで第一想起していただけるのはうれしかったです。
私の肩書きは、「外資系EA」じゃなくて「村上のEA」だと思っています。村上以上に私を信頼してくれて任せてくれる人じゃないと自分が成長できないし、そういう人は想像できません。これからも、彼の「あたりまえ」を作っていって、もう少し時間が経ったら本を書くとかができたらいいなと思います。
「何でもできるし私捨てられちゃったらどうしよう・・・!」と悩んでいたことがあって、それを本人に話したらきょとんとされました(笑)。最近は、「私がいるから彼は今のパフォーマンスを発揮できているんだ!」と思えるようになりました。将来的にはいろいろな仕事を好きなだけやりつくしてくれて、最後に「ゆかりのおかげだよ」って言ってくれたら最高ですね。
Q:由香里さんが本を出版されるときはぜひQUMZINEに取材させてください!
本日はありがとうございました!
由香里:ありがとうございました。
========
金井由香里さんがエグゼクティブ・アシスタントを務める村上臣さんからもコメントを頂戴しました!
村上臣さん/リンクトイン(LinkedIn)日本代表
経営者は、限られた時間を最大限に有効活用して、より大きなインパクト(成果)を出すことが求められます。EAの仕事は、その意思と意図を汲み取りながら、様々な調整や提案を行うことです。由香里さんには任せるところは大胆に任せて、私の仕事である「日本オフィスが最大のパフォーマンスを出す」ためには不可欠なパートナーシップになっています。
もちろんここに至るまでには色々な試行錯誤がありましたが、毎回オープンに議論することでより良い形にしていきました。また、私が関わる業務を知り尽くしているからこその提案もよくもらっています。このような仕事は、EAならではですね。
私の上司や関わっている社内外の海外エグゼクティブは、EAとこのような仕事のやり方をしています。それゆえに、転職のときもセットで動くことがほとんどです。由香里さんと私も引き続きこのチームで、社会にインパクトを出していけたらいいなと願っています。
(1/2はこちら)
【プロフィール】
金井由香里(かない・ゆかり)
リンクトイン(LinkedIn)エグゼクティブ・アシスタント
カナダNB州の大学を卒業後、フレンチレストラン立ち上げのためヨーロッパへ遊学。スペイン・フランス・ドイツ・イタリアで経験を積む。 大手商業施設のコンシェルジュ、東証一部上場企業監査役の秘書として実績を積み2014年10月より村上臣の役員秘書としてヤフー株式会社入社。2018年3月より現職。10年以上の役員秘書の経験を元に、その枠を越えて様々なステークホルダーの意思と意図を汲み取るプロフェッショナルとして活躍中。