新刊『進化思考』が話題の太刀川英輔さんと、妄想トークしました 3/3
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新刊『進化思考』が話題の太刀川英輔さんと、妄想トークしました 3/3

こんにちは、フィラメントの宮内でございます。太刀川英輔さんとの対談ラストです。
しつこいようですが、僕は太刀川英輔さんとリアルでお会いしたことがまだありませんし、インタビューをするというのに新刊の『進化思考』を読んでいないわけです。ラストはほとんどどう関係するのか分からない、進化の系統樹でいうと「枝葉の雑談」が続きます。でもどこかで、『進化思考』のエッセンスにほのかに繋がっているんじゃないかと思います。ブルース・リーも「Don't think,Feel」と言ってます。感じ取ってください。

宮内:あと海外の大学の仕事もやっているんですよね。

太刀川:はい、理事になりました。カンボジアの大学。

宮内:カンボジア!「なんですかそれは?」みたいに思いましたけど(笑)。

太刀川:謎ですよね。そういう世界の辺境からイノベーターをバシバシ送り込むという不思議な活動をしている方々がいて。ちょっとアドバイスしたら、「なんか理事っぽいから理事で」みたいな感じになって就任しました(笑)。

宮内:理事っぽいから理事(笑)。

太刀川:「あ~!じゃあやります」みたいな感じで巻き込まれて(笑)。

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宮内:「辺境」ってイノベーションが起きる場所であると思いますが、そもそものきっかけはなんだったんでしょうか?

太刀川:カンボジアには前から少しだけ関わってたんですよね。「かものはし」というNGOのブランドづくりを手伝っていたことがあって。「SALASUSU(サラスースー)」というブランドをつくって、利益率が劇的改善しました。

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それもあってたまにカンボジアに行ってたんですけど、そこで見たのはトゥクトゥクに乗っているお兄ちゃんたちが、今から5年前とかなのに普通にスマホを使っているし、トゥクトゥクがなんならEVなんですよね。しかも電気の通っていない地方のお家とか行くと、気候がいいからあんまりインフラなくても呑気で、そのへんのバナナ食べている感じで。

宮内:死なないしね。暖かいから。

太刀川:でもインフラ通っていないお家なのに、ソーラー発電なんですよ。小さいパネルで、これで夜の電気は全てまかなっているみたいな。いわゆる蛙飛びってやつですね。

宮内:リープフロッグね。僕らはそういう辺境の強さってものにちゃんと気づけるのかということと、そこからどうやったら学べるのかみたいな問いに対する答えはありますかね。

太刀川:同じ構造が世界中のあらゆる所で起こっていて、その全体に対してのメタな構造にアプローチをするなら、未開であるか単位が小さいか、そういった場所でしか試しづらいですよね。今回海士町、東京から8時間かかる人口約2,000人の島からこの本が出るんですけど、もちろんその島唯一の出版社であって。新しい出版社だから今まで出版社がやったことないようなトライができるかもしれない。海士町全体がちょっと実験場感があるんですよね。それは図書館でもそうで。海士の図書館ってすごい素敵な図書館なんです。

宮内:担当者が自由にできそうな印象がありますね。

太刀川:例えば僕は横浜市に住んでいるんですけど、横浜市だと人口約400万人。そこの図書館という仕組みを変えろって言われたらステークホルダーが多すぎて難しいけど、海士町みたいに数人を変えろだったらできる。そういう意味で辺境って「サンドボックス」、いわば実験場なんですよね。

宮内:そうだよね、まさに。

太刀川:しかも構造はフラクタル的にできますから。2人で作った構造がすごい良ければ、そのアイデアを全体に流し込めるかもしれない。つまり全国に広げることができる。

宮内:そこでフラクタルが出てくるのは面白いですね。自然から学ぶ進化思考的な捉え方だし、それを日本に拡大して適用できそうな気がすごくしました。

太刀川:僕が海士町を好きな理由の一つは、海士町を航空写真で見るじゃないですか。僕はこれ見るたびに、なんか右側の島はアメリカ大陸っぽい、左側はユーラシア大陸で、ここがインドで、このへんが日本、このへんがアフリカみたいに見えてくる。

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宮内:たしかに似ていますね。

太刀川:似ているでしょ。なんだか世界地図や地球に見えてきます。もちろん偶然なんですけど、僕の中でこの場所を「惑星の縮図」として想像してみたら面白いんじゃないかっていう感覚がある。惑星で試すことを、まずは海士町で試すのは面白いんじゃないかという。

『進化思考』をここから出版して、もし世界中の「創造性」をアップデートするような構造を世の中に示せたら、海士町の産業にできますね。教育分野とかで。小規模な漁とか農業とかに比べると、知恵の輸出は結構レバレッジも利く気がする。

宮内:いま話を聞いていても、太刀川さんは「メタ認知」がめちゃくちゃあるし、イノベーターはそういうメタ認知力を培うべきというのがフィラメントのアプローチでもありまして。よく全然関係ないことやるんですよ。自分の自慢会をやったり、ビジネスとは関係ない文化カルチャー的なイベントをやったりと。でも、それが「無駄なことはないんだ」ってことに気づかせるやり方だったりするんです。

太刀川:まさに「創造的な人を増やしたい」ということで、フィラメントとすごい一致してますよね。あとやっぱり適応の話って、結局は「関係」の話なんです。さっき宮内さんが言われた自慢会みたいな話も、一見イノベーションと何が関係あるの?と思うかもしれないんですけど、越境した繋がりが生まれることがいかにイノベーションに役立つかということ。「関係」という意味では、パーソナルな人の繋がりとか緩いネットワークとかも同じですね。

宮内:創造的な人をどんどん増やしていきたいというところがすごい近いので、ぜひまた一緒に何かできるといいなと思いました。

太刀川:ぜひフィラメントでも『進化思考』をご活用ください。コンサルティングしている企業それぞれのフィールドで系統樹を描いてみたりとか、できそうですよね。

宮内:それは面白いよね、絶対。

太刀川:きっと面白いと思います。意外と見落としていることが見つかります。乗り物の進化図を描いて僕が驚いたことは、この本にも出てくるんですけど、電気自動車の特許っていつ頃出たかご存じですか?

宮内:2、30年前とかじゃないの?

太刀川:実は1830年。200年前の特許なんです。

宮内:やばいね、それは。

太刀川:見落としがやばいでしょ? もちろん今のは意地悪な質問で。最初の特許は200年前なんだけど、バッテリー技術が追いついてなかったから、電気自動車は製品化されなかったわけで、電気自動車関連の特許は出続けているんです。ただポイントとしては、系統発生しなかったからといって現代にも発生しないとは限らない。他の技術が追いついてきて発生することもあるということです。

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宮内:実は人間の見えない領域で生命進化は続いていたり、外的要因によって新たな系統が生まれる可能性があるってことだよね。

太刀川:だからかつてのトライアルの中に、今だったら通用するかもしれないことって本当に無限に眠っている。でもモビリティの会社に、電気自動車の特許はいつ出たのって聞いても多分正解は出てこないと思うんですよ。それぐらい見落とされている。

宮内:技術が進化すればイノベーションが生まれるみたいな思考の仕方、考え方が一般的だと思うんだけど、でもそれが社会実装されないと結局普及しないというところが、わりと見落とされていますよね。例えばその社会実装のためにアーティストってのはある種の未来的な問いとか妄想を形にして、人々に見せているわけじゃないですか。そこの思考がこれから求めてられていくんでしょうね。系統樹を描いたら気がつくかもしれないみたいな。

太刀川:「自分の中に偶発を飼う」ってことが大事です。

宮内:すげえいい表現。偶発を飼う?

太刀川:偶発性を養うというか。探求のフィールドが広ければ広いほど、偶発を生む可能性は高くなりますから、この2つはセットなんです。僕の場合はイノベーションや創造性教育という探求のフィールドが広かったので、『進化思考』という偶発に出会えたわけなんです。そんなふうにみんなが考えると面白い。

宮内:素敵だなと思います。長々ありがとうございます。

平井:僕から1つ質問させてもらってもいいですか。よくワークショップをやる時に、技術ドリブンではなくてビジネスモデルとか事業のアイデアをベースにして考えてくださいみたいな感じのアプローチでやるんですけど、『進化思考』の系統樹をちゃんと理解している人であれば、技術ドリブンから考えるという発想法もあるんですかね。

太刀川:重要なのは、変異と適応は両輪であって、片方だけでは創造性は回らないということです。それは進化も同じです。変わり続けるDNAのコピーエラーの仕組みがあって、それが自然選択され続ける状況があって、勝手に起こったこと。なので、この考え方でいうと、馬鹿と秀才と両方が必要なんです。

エンジニアリング的に考えたり技術ドリブンで考えるというのは、適応でいうと、特に解剖にフォーカスをあてている感じです。そうすると、解剖的に見た時にもっと効率的にできる方法があるというのがイノベーションだと考えるのは狭すぎる。そう考える人たちが学ばなきゃいけないのは、「じゃあ誰がユーザーか、その先の生態系はなにか、なんのためにやっているかちゃんと理解していますか?」という点です。だからマーケッターや経営者が考えているような、生態系的な探求というのが必要なのかもしれない。

宮内:そうですよね。

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太刀川:進化思考的に考えると、今のやり方なんて100年後にはどうせ使われていないという前提に立つので、代案もあるよねと考えることができる。その代案が適応した時に、人はそれをイノベーションと呼んだり、発明と呼んだり、創造と呼んだり、デザインと呼んだりしているわけです。だから代案をたくさん出せないと、そもそも話にならないってことでもあるんです。

宮内:変異がたくさん起きてそれが適応になっていくから、変異がたくさん起きないと駄目ですよね。

太刀川:生物は有性生殖をそのために獲得したんです。精子がたくさんないといかん、卵がたくさん生まれんといかん、という前提があるんですよ。

平井:決め打ちでアイデア1つだけ出してくるケースってありますよね。その時には、これとは別の代案を3つ出してくださいってアプローチになるんですか?

太刀川:もちろんそれもアリです。もう1つのアプローチは、決め打ちのアイデアを適応的に補強することができます。今日大学の授業で、そこでちょうど同じような話をしてました。

例えば「水筒のイノベーション」を考える時にどうやるかというと、まず視界に入ったものは全部水筒だとする、みたいな発想をして。例えば「マスク型水筒」というアイデアが出たら、普通はそんな商品はいらないって考えちゃいますが、じゃあそれがフィットするのはどういう状況なのかって考えるわけです。すると例えば手術室で医者が長時間ストレス下にいる時に、手を離さなくてもすぐに水分補給ができる、といった状況が思い浮かんだりします。そうやってアイデアがどんどん補われていく。アイデアを何周か育ててみることができるんですよね。

平井:とても参考になります。

宮内:ありがとうございます。こうやって話していると、ほんとに早く本がきて読みたいみたいな感じなんですけど(笑)。結局読まなくても対談はめっちゃ盛り上がっちゃったし、原稿的には「まだ来ていないんだが」みたいに書いちゃうと思います。面白いので(笑)。

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【プロフィール】

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太刀川英輔(たちかわ・えいすけ)
NOSIGNER代表 / 進化思考家 / デザインストラテジスト / 慶應義塾大学特別招聘准教授

デザインの社会実装で美しい未来をつくること、自然から創造性の仕組みを学ぶ「進化思考」を提唱し変革者を育てることを理念に活動を続けるデザイナー。
プロダクト、グラフィック、建築などの領域を越え、様々なプロジェクトで総合的な戦略策定を行う。これまでに100以上の国際賞を受賞し、多くの国際デザイン賞の審査委員を歴任。
主なプロジェクトは、東京防災、PANDAID、2025大阪・関西万博日本館基本構想など。
著書に『進化思考』(海士の風、2021年)、『デザインと革新』(パイ インターナショナル、2016年)。


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