新刊『進化思考』が話題の太刀川英輔さんと、妄想トークしました 2/3
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新刊『進化思考』が話題の太刀川英輔さんと、妄想トークしました 2/3

こんにちは、フィラメントの宮内でございます。太刀川英輔さんとの対談中編です。
改めて繰り返しますが、僕は太刀川英輔さんとリアルでお会いしたことがまだありませんし、インタビューをするというのに新刊の『進化思考』を読んでいないわけです。でも『進化思考』の話でめちゃ盛り上がって、学びがたっぷりだったのがこの対談です。いよいよ『進化思考』の本筋に食い込んでいきますので、乞うご期待!

宮内:「進化思考」っていわゆるビジネスセクターでよくあるイノベーション思考的なものとも違うし、デザインシンキングとも微妙に違うし。なぜ進化思考に行き着いたのか想像するに、やっぱり太刀川さんの知に対する関心が広くて深いからだと思うんですよね。冨山和彦さんと入山章栄さんが訳した『両利きの経営』でいう、知の深化と知の探索、両方を突き詰めている。

太刀川:まさにそうありたいです。イノベーティブな人は探求力が強いということと、クレイジーであるという両方が必要です。ジョブズ的にはStay hungryとStay Foolishの両方とても大事だということだと思います。言い換えれば「ステイ秀才ステイ馬鹿」だし、「ステイ適応ステイ変異」なんですよね。

宮内:「変異」だよね、だから。ここでいうキーワードは。

太刀川:変異であるし、でも適応に対する探求ってのはなにより「好奇心」が重要なんです。文脈的探求とか解剖的探求とかも好奇心の賜物だし、ヤフーの安宅和人さんは予測的探求っぽい。探求者にもキャラクターがある。

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宮内:ありますね。最近『妄想する頭 思考する手』を出版された東大の暦本純一先生のような「妄想的探求」も、予測的探求に近いのかな。

太刀川:それぞれに探求のスタイルがありますが、スタイルを超えた探求の構造みたいなものを、僕は生物学に見たんですよね。生物の存在がやっぱり世の中で一番不思議な超常現象的なもの。そして人が自然をどうやって読み解いていったのかという、その読み解き方の構造というのが僕の中ではこの4つ「解剖」「系統」「生態」「予測」なんです。それは僕の中ではというよりは、普遍的にそうなんじゃないかと思っています。

でも、そういう普遍的で、説明されると意外とあっけないぐらい分かりやすいことを、なんで僕らは学校で習っていないんだろうと思うんです。誰も教えてくれないけど、むしろそういうものの方が国語・算数・理科・社会みたいな試験範囲を暗記させる勉強よりもよっぽど重要。いまの教育って、Whatのレイヤーとして国語・算数・理科・社会みたいになっちゃっているかもしれないですけど、Whyのレイヤーでは…。

宮内:Whyはね、もっとインテグラルな知を必要としますよね。

太刀川:その通り。

宮内:日本はリベラルアーツがないじゃないですか。統合知を育めないのはそれが大きいなと思っています。

太刀川:本来はサイエンスとアートが一緒だったんですよね。

宮内:中世までは一緒だった。それを欧米ではなんとなく体感していたり、歴史を受け継いでいるので、大学でリベラルアーツをちゃんと学びますし、今でいうとSTEAM教育みたいなアプローチが出てくる。日本はそこをどこかで切り捨ててしまったのかもしれませんね。いつの間にかWhatの教育になってしまって。

太刀川:それはとても残念なことであって。インテグラルな知や構造に注目すると、覚えなきゃいけないことって、圧倒的に減るんですよ。それこそ100分の1になる。解剖的探求の仕方を覚えれば、同じ探求の仕方が別のことにも生かせる。こういった観点が4つあるわけです。本をつくるでも、プログラミングをするでも、公園をつくるでもいいんですけど、進化思考で時空観学習と呼んでいる4つの探求をちゃんと学べば、他のことに応用が効くんです。

宮内:太刀川さん、ほんとに多彩なプロジェクトをやっていますもんね。

太刀川:探求の仕方さえ分かっていれば、他の人が探求していないところは僕が補ってあげて、彼らが知っているリテラシーと合わせてアクセラレートできるかもしれないって思っています。

宮内:いい話やな、それ。フィラメントも大企業が新規事業を考える際のサポートをしているんですけど、いくつか特徴があって。フィラメントのやり方って基本は「人ベース」で考えていて、人は最大のインターフェースなので。人というパラメーターが違えば別のイノベーションが起きるので、必ず企業の中に入っていって、イノベーションが起こせる人をつくるとか、その人をサポートするとかみたいなやり方でやっているんです。なのであまり体系化はしていないんですけど、無理やり体系化している部分でいうと「面白がり力」というのをかなり重要視していまして。

太刀川:めっちゃ大事ですね。

宮内:基本面白がれないと、多分変異はしないじゃないですか。

太刀川:んだんだ。んだんだですね。

宮内:んだんだですよね(笑)。進化思考においても、「面白がり力」みたいな力と、メタ認知のような力がすごく関連しているなと思って、それで太刀川さんにこのタイミングでインタビューしたいなと思ったんですよね。まだ読んでないんですけど(笑)。

太刀川:嬉しいですね。フィラメントネタで言えば、この本の中にフィラメントの話が出てくるんですよ。

宮内:電球の話ですか?

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太刀川:電球の話が出てきます。変化はエラーが引き起こすという項目で紹介しているんですけど、エジソンの言葉をそのまま引用しますが、「私は失敗したことがない。ただ1万通りのうまくいかない方法を発見しただけだ」という言葉があって。この言葉は誇張じゃなくて、彼は実際にフィラメントを十分な性能にするためにいろいろ試している。

宮内:ひたすらやって、最後京都の竹に行きついたってやつですよね。

太刀川:そう。6,000種類試しているんですよ。

宮内:気が狂っています(笑)。

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太刀川:頭おかしいですよね。6,000種類もどのフィラメントがハマるかっていうのを試し続けているという、もうフィラメントクレイジーです。ここで結構重要なのは、どれがハマるか分からないってことが1つですね。だからハマらなかったことをちゃんと記録していくということが重要です。さらにもう1つ言うなら、今は誰も京都の竹をフィラメントにした電球を使っていないじゃないですか。ってことはエジソンも結果不正解だったってことなんですよね。

宮内:なるほど。進化思考の中で考えると、単なる1通りでしかないということですね。

太刀川:だからポイントは、正解を探求する必要はなくて、正解は世の中に存在しない、今より適応しているものがあるだけってことなんです。

宮内:正解じゃなく、適応なんですね。

太刀川:だって究極の生物も、究極の道具も、今のところ生まれていないですからね。

宮内:確かに。イノベーションの考え方に時間軸を持ち込んだのは、太刀川さんの独自性がありますよね。

太刀川:進化から考えていくと、そこに行き着くんです。最適はなくて適応があるだけ。しかも適応している世界のほうが変化していくから、変わり続けないといけない。イノベーションってのがそのまま文化であるっていうことは、昔からそうなんだと思います。

宮内:当たり前なんですよね。

太刀川:昔から未来は分からないので。変わり続けたり試し続けたりする仕組みがあれば、未来を泳いでいくことは何も不安がないはず。そう考えた方がいいんじゃないかって思います。

宮内:僕はいろんな人と会って話す時に、「バグ」っていう表現もするんですけど。やっぱりバグをつくっている人とよく気が合うわけで、「バグ」という表現と、「変化と適応」という表現に共通性があるなと思っていて。フィラメントは新規事業をつくる時に、バグが生まれるような仕掛けを大事にしてます。「面白がる」というのはバグを生むための1つのアプローチだと思いますし、バグOK、失敗OKというカルチャーをまずは人ベースでつくらないと、なかなかイノベーションを目的にしているだけでは生まれてこないという課題感がありますね。

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太刀川:バグって人間誰しも備えているんです。赤ちゃんはもうなんでも口に放り込んでみて、そのうち放り込まないほうがいいんだって学んでいく。でもその学んでいくことは諸刃の剣でして、もう放り込まなくなるということと一緒なんですよね。でも未知のものは放り込んでみないとおいしいかどうかは分からないってことがついてくるんです。例えば「あれ、お前食うのか?」「あの魚を食べた後にあいつぶっ倒れたけど、まだ食う?」みたいなことです。

宮内:必ず過去にそういう人がいたわけですよね。

太刀川:フグの調理とか、ありえないでしょ! 毒があるのに、あれ食べるの?みたいな感じじゃないですか。

宮内:よくネタで、ナマコを最初に食ったやつめっちゃすげえなみたいな(笑)。めっちゃイノベーターじゃんみたいな話がありますよね。ああいうのと同じ。

太刀川:同じ同じ。でもナマコなんてガンに効くらしいですよ、アイツ。

宮内:身体にいいらしいよね。

太刀川:めちゃくちゃいいからナマコ。食ったほうがいいですよ(笑)。

宮内:確かに過去のそういう人たちって、みんなイノベーターなんだなって見えてくるね。進化思考を経ると面白い。

太刀川:だから一度学びを得てしまうと、変異を試し続けること自体が価値であるとはあまり考えなくなるから、変異しようとした人が咎められる世の中に構造的にはなっていきますよね。失敗したら駄目とかミスったら駄目って、そういうこと。でも「変異をした、やってみた」ということにまずOKをあげなきゃいけない。考えが浅かったという場合でも、その浅はかさはなにか改善できるということとセットです。その両方を構造として理解していると、自分でやって自分で反省するから、自分で回せるようになるんですよね。

宮内:無限試し状態、みたいな感じになる。

太刀川:そうなんですよ。無限トライアル&エラーができるんですよ。で、そのうち収束します、と。

宮内:それでいうと去年、塚田有那さんと出ていたイベントを見ていたんですけど。その反省が「人間や資本主義とかって、このままでいいんだっけ?」みたいな思考にまでもう行き着いていますよね。コロナ後ということなのか。

太刀川:1つはあらゆるものが誰かがつくったものですが、今よりも良いなら変えても良いっていう前提があると思うんです。その前提で言うと、今までは「人間中心設計」というデザインのあり方でした。でも結果的に、一番重要かもしれないステークホルダーである生態系リソースから資源を借りているという発想が、まるっと抜けていたわけです。

だからと言って、何かを製造するのは罪で、製造しないのが正義と考えるのは、僕は思考放棄だと思うんです。今まで認識していなかったステークホルダー、すなわち生態系のためにも製造する、という手段が、僕らには残されているわけですから。実際には生態系を破壊しまくっているし、地球6度目の大量絶滅時代を迎えていますけれども、僕らがそこを考えるなら今よりもマシな方法を再発明する手段が残されているはずで、それを世界が一斉に声高に言い始めている時代でもあると思うんです。

宮内:まさにそうですね。SDGsだってそれですよね。

太刀川:やっぱり創造性の課題なんですよ。別のクエスチョンが出てきた時に別のアンサーを用意できるのが創造性であって。これまでの資本主義のあり方も、これからのあり方も、ひと続きのものだって言いたい。

宮内:少しはマシな未来が作れるかもしれないですよね。

太刀川:だからWhyを本質まで探求するということと、Howをもっとクレイジーなトライアルがやりやすくなる構造を示すこと。結局は進化思考として考えても完璧なものは作れなくて、今よりもマシな未来、「適応」があるだけなんです。

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宮内:ちなみに太刀川さんは本当にいろいろなことやっているけど、最近は大阪・関西万博にも関わっているんですよね。

太刀川:日本館の基本構想クリエイターをしています。最近日本館の基本構想が発表されましたが見られましたか?

宮内:はい、めちゃ面白い議論を議事録で拝読しました。あれに参加している有識者も知り合いが多いので。

太刀川:すごいいいチームでした。みんな超ぶっ飛んだことをやっているんだけど、それぞれ言いたいことを言うというよりは、みんなの中にある「今、本当に万博で問うべきことって何か?」という問いに、フォーカスを当てたかったんです。

宮内:そもそも70年の大阪万博が、科学文明に対する問いをアートが提示したような万博だったわけじゃないですか。なのでアーティストも含めて、ああいう面白い人たちが集まって未来のこと、日本館のあり方をを考えるのは本当に素敵だな。

太刀川:このテの会合って何人もいると衆愚に陥りがちな側面もありますけど、今回は同時代的にみんなに共感する部分を探求して、1人ではたどり着けない地点にまで議論ができましたね。本当にすごくいいメンバーでした。

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【プロフィール】

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太刀川英輔(たちかわ・えいすけ)
NOSIGNER代表 / 進化思考家 / デザインストラテジスト / 慶應義塾大学特別招聘准教授

デザインの社会実装で美しい未来をつくること、自然から創造性の仕組みを学ぶ「進化思考」を提唱し変革者を育てることを理念に活動を続けるデザイナー。
プロダクト、グラフィック、建築などの領域を越え、様々なプロジェクトで総合的な戦略策定を行う。これまでに100以上の国際賞を受賞し、多くの国際デザイン賞の審査委員を歴任。
主なプロジェクトは、東京防災、PANDAID、2025大阪・関西万博日本館基本構想など。
著書に『進化思考』(海士の風、2021年)、『デザインと革新』(パイ インターナショナル、2016年)。


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