事業性検証に進むプロジェクトが決定!短期集中で未来を創る!未来共創プログラム「Future-build」成果報告会
注目度満点のFuture-buildプログラムとは?
Future-buildのプログラムは、NTT西日本と採択パートナーが未来社会の創造をめざし、「アイデア検討」、「フィールド検証」、「事業化検討」、「成果発表」までを短期集中(約6ヶ月間)で実施。昨年10月に行われたキックオフイベントの様子もQUMZINEで記事化しました。
今回のFuture-build成果報告会は、QUINTBRIDGE会場とオンライン配信のハイブリッド開催で実施されました。現地にはNTT西日本 代表取締役社長 社長執行役員の森林氏をはじめ、関連部の審査員や外部審査員がそろい、緊張感のある、注目度満点のイベントです!
開催にあたり、NTT西日本 執行役員 技術革新部長 白波瀬氏による開会のあいさつとNTT西日本 イノベーション戦略室長 市橋氏によるプログラムの説明が行われました。
事業性検証に進む2つのプロジェクトは?
今回の成果報告会では各プロジェクトの成果報告が行われ、それぞれのプロジェクトについて審査員からの丁寧な講評がありました。
報告後、厳正な審査を経て、
・ネクストステージ(事業性検証のフェーズ)へ移るプロジェクト
・さらなるコンセプトの深堀り・技術再検証が必要なプロジェクト
・検討終了のプロジェクト
が発表されます。
気になる審査結果はこちら!
QUMZINEを運営するフィラメントは本プロジェクトの支援を実施していたので、「ネクストステージ(事業性検証のフェーズ)へ移るプロジェクト」、「さらなるコンセプトの深堀り・技術再検証が必要なプロジェクト」「検討終了のプロジェクト」が発表され、現地で発表を見守っていたフィラメントメンバーも笑顔に。
ここからは各プロジェクトの実証実験や成果報告について紹介していきます!
ネクストステージ(事業性検証のフェーズ)へ進むプロジェクト
・地球環境に配慮した次世代農業支援サービス
「地球環境に配慮した次世代型農業支援サービス」プロジェクトでは、人と自然(地球)とが共存共栄するサステナブルな社会を目指します。
そのためには自然にやさしい環境配慮型の農業である有機農業を広める必要がありますが、
・有機栽培の難しさ
・流通環境の未整備
・労働力不足
が大きな課題となっています。この課題を解決するために提案するのが、有機農業の栽培から出荷販売までを一体化した次世代農業支援サービスです。
1つ目の実証実験では、新規就農予定者を対象に「新規就農予定者が次世代有機農業技術であるBLOF理論を用いて有機栽培が実践できるのか」を検証しました。有機栽培は新人とっては難易度が高いものですが、BLOF理論を実践することで有機栽培に成功しました。
2つ目の実証実験では、収穫した有機作物をやさいバスで集荷し、サイトへの掲載から販売までを実施。野菜はすべて完売しました。
また、新規就農希望者と49歳以下の農家の325名に対して調査を実施し、「有機農業の栽培から出荷販売までをオールインワンとした新しいサービス」について80%が魅力的であると回答しました。
これらの実証実験と調査を踏まえ、今後のビジネスモデルとしては、NTT西日本が生産者へ「次世代農業支援サービス」を提供し、農作物の販売手数料を収入とするモデルが期待できます。また販売については、仲卸モデルから開始し、直販ECモデルまで展開していくことも計画されています。
・ARを活用した「まちの賑わい」の創出
「ARを活用した「まちの賑わい」の創出」プロジェクトでは、「デジタルとリアルの連携で加速するまちづくり」をコンセプトに掲げています。
現在、コロナ禍からの観光業の急回復が見込まれる一方で、コロナ禍以前からの課題であるオーバーツーリズム(一部地域に極端に人が集まる)の具体的な解決策は見つかっていません。今まで価値とされてこなかった所にも観光資源を生み出し、多くの人に来てもらい街を活性化させるためにはどうすればよいのでしょうか?そこで、今回はAR技術を活用した解決策が提示されました。リアルよりも時間やお金などの手間がかからないデジタル技術を用いることで、地域の建物や場所に新たなコンテンツを生み出し、同時にデータを活用して人流データの分析を行います。
実証実験として、建物の壁面などの場所に馴染んだARを表示できるのかを検証しました。検証にあたっては、株式会社ビーブリッジのAR技術でルパン三世などのコンテンツを京阪京橋駅の壁面に投影しました。投影されたコンテンツはアプリをダウンロードしたスマートフォン越しに見ることができます。投影場所の提供にご協力いただいた京阪HD、京阪電気鉄道、京阪エージェンシーの3社[1] は、今後もARコンテンツの活用を検討していきたいとのことです。
実証実験中の実際の風景についてはこちらの記事でもご紹介しています。
また、これらのARの利用データを元に、人流データなどの分析も行われました。ARコンテンツを見るために人が訪れることで普段以上の人流の増加も見られ、自治体や商店街などの人を集めたいエリアへの誘導にも活用できそうです。観光に限らず、ARコンテンツとともに広告の掲載なども期待できます。
さらなるコンセプトの深堀り・技術再検証が必要なプロジェクト
・圧縮センシング技術を活用した安価な故障予知診断システム
「圧縮センシング技術を活用した安価な故障予知診断システム」プロジェクトでは、設備故障に悩む現場への圧縮センシング技術の実装に挑戦。故障予知診断システムの構築、遠隔モニタリングによる環境構築を行い、実際の現場(山口県株式会社ナガト 岩国工場)にて実証実験を行いました。
機械の故障を予知するための遠隔監視は膨大なデータとその分析が必要となり、それが導入コストを高くしています。中小企業の工場などでも安価にシステムが導入できるよう、少ないサンプリングデータからでも高次元のデータを復元できる「圧縮センシング技術」を活用します。実証実験では、実際の工場で、振動センサと回転センサによるデータを取得し、故障予知診断の可能性を検証しました。検証の結果、データの圧縮率1/10を達成し、遠隔監視による機械の故障予知の可能性が見出されました。
・自然関連情報見える化サービス
「自然関連情報見える化サービス」プロジェクトでは、「沿岸生態系への影響評価サービス」を目指した実証実験を行いました。
簡単にお伝えすると、工場等からの排水や海水に溶け出す日焼け止めなどが海へ与える影響を評価しようという取り組みです。
海にどのような影響を与えるのかを実際の海そのもので検証するのではなく、リアルな沿岸生態系を再現した水槽で検証できるようにすることを目指します。これにより製品開発や企業による環境配慮の取組に活用できることが期待されます。
今回の実証実験では、
・実際の海から取得したデータを活用して海の環境を水槽内に再現できるか
・リアルタイムのデータを水槽内に反映できるか
を検証するために、ICTブイを活用して、海のデータをリアルタイムに取得し、水槽に反映させる取り組みを行いました。鹿児島県喜界島に設置したICTブイを活用して、リアルな海のデータ(水温)を大阪京橋のQUINTBRIDGEに設置した水槽に再現しました。
リアルタイムで水温の反映が一部実現可能となりましたが、ブイの設置にあたってのコスト(設置の許認可、メンテナンスなど)や水槽の管理についての課題も確認されました。この課題にかかるコストを回収できるだけの市場が現時点では醸成されていないことが明らかとなり、今後はICTブイの活用から離れ、「環境移送技術」と「NTT西日本のもつアセット」の活用によって沿岸生態系保全に貢献できるビジネスの可能性を探索するという方向性が示されました。
検討終了のプロジェクト
そして、今回は残念ながら検討終了となってしまった2プロジェクトですが、こちらも前述の4件同様に検証に向けた果敢な実証実験が行われました。プロジェクトメンバーのみなさん、本当にお疲れさまでした!
・医療・ヘルスデータ活用による心身のウェルビーイング
「医療・ヘルスデータ活用による心身のウェルビーイング」プロジェクトでは、ウェルビーイングを実感できる社会を実現するため、個人・社会・ヘルスケア事業者のうち個人を対象とした課題解決のための実証実験を実施しました。
「糖尿病予防に向けた行動変容」を目的に掲げた1つ目の実証実験では、スマートバスマット(バスマットに乗るだけで体重測定ができる)の購入者19名を対象にスマートバスマットを使ったヘルスコーチングを実施。データを活用し、個別に最適化されたヘルスコーチングを行うことで被験者の行動変容(健康への意識付け)に繋がりました。これにより、体重減量や献身数値の改善の効果があり、糖尿病予防へ有効なアプローチとなりました。
「フレイル予防に向けた行動変容」を目的に掲げた2つ目の実証実験では、フレイル予防を目的に21名の被験者を対象に2ヶ月間の音楽療法を実施。昔好きだった歌を起点に対象者自ら「歌い」「身体を動かす」ことで行動することの楽しさを引き出しました。これにより、90%以上の被験者がストレス低下を感じる結果が得られました。
2つの実証実験により、データを利活用した個別最適化された支援によって、個人に無理なく行動変容を継続させることに成功。今後は、ヘルスケア事業者や組織(企業や自治体など)を対象に価値共創や価値提供を行っていくことで医療費抑制などの効果が期待されます。
・リアルタイムな遠隔操作によるマルチタスクロボットオペレーションの実現
「リアルタイムな遠隔操作によるマルチタスクロボットオペレーションの実現」プロジェクトでは移動コストゼロ社会を目標に掲げ、「ロボットの遠隔操作に必要な要素を備えた3社による事業共創」が行われました。
現在は建築業界で使われているロボットの遠隔操作技術を、マルチタスクが可能な人型ロボットや複数のロボットで実現できるユースケースの創出を目的に実証実験を実施。
・マルチタスクロボットの遠隔操作によるタスク検証
・他のロボットとの連携可能性の検証
・遠隔操作をより良くするネットワークの検証
・顧客のニーズ調査
の検証に取り組みました。
神戸の遠隔拠点から京橋のQUINTBRIDGEに設置されている人型ロボットの遠隔操作の実施、人型ロボットと犬型ロボットとの連携可能性の検証などを行いました。さらに、検証遠隔操作をより良くするネットワークの検証のためにNTTのIOWN APN(All photonics netwoek)を活用することで遅延を通常の1/6まで低減することができました。またこれらの検証をする中で、巡回やメンテナンス時にロボットを利用したいという声があり、建設現場の他、工場やプラントでの活用の可能性も見出しました。
審査を終えて(NTT西日本 代表取締役社長 森林氏のあいさつ)
成果報告と審査を終えたあと、特別審査員であるNTT西日本 代表取締役社長 社長執行役員 森林氏からのあいさつが行われました。各プロジェクトへのコメントから始まり、あくまでもNTT西日本の目線から審査を行った結果でどのプロジェクトも素晴らしかったという部分をお話されていたのが印象に残りました。
終わりに
森林社長がお話されていたように、どのプロジェクトの発表もわくわくするものばかりでした。次のフェーズに進む2つのプロジェクトの今後も楽しみです!
発表者のみなさま、お疲れさまでした!
QUMZINEを運営するフィラメントの公式ホームページでは、他にもたくさん新規事業の事例やノウハウを紹介しています。ぜひご覧ください!