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大企業・富士通を突き動かす「変革のデザイン」 ~タムカイさん・小針さんが語る全社DXプロジェクト「フジトラ」の裏側~(前編)

2019年2月にフィラメントのインタビュー企画で、タムラカイ(タムカイ)さんに「デザイン思考の誤解」を語っていただいてから、早一年半。
富士通はデジタル時代の競争力強化を目指して、製品やサービスに加えて、ビジネスモデルや業務プロセスなど、組織、企業文化・風土を変革する全社DXプロジェクト「フジトラ」の本格始動を発表されました。
このプロジェクトの中心に躍り出たのが、まさにタムカイさん・小針美紀さんらDX Designerの方々です。今回のインタビューではデザイナーがCEO直下で組織全体を変革する一大プロジェクトの全貌に迫るとともに、これからの展望についてフィラメントCXO佐藤啓一郎とCCO宮内俊樹がお聞きしました。(取材・文/QUMZINE編集部 岩田庄平)

フジトラ誕生秘話

宮内:前のインタビュー※から早一年半ですが、今回はその後のアップデートをぜひお聞きしたいと思います。まずは「フジトラ」の概要みたいなところからお話いただけますか?

※前のインタビューはこちら

タムカイ:「Fujitsu Transformation(フジトラ)※」というプロジェクトは、2020年の7月から正式に動き始めました。体制図も、富士通CEOの時田さんがCDXOを兼務し、SAPジャパンから来た福田さんをCDXO補佐としてプロジェクトを推進しています。今までは事務局と呼ばれていた小さなグループが、CEO直下のクロスファンクショナルチームとして、ネーミングを「フジトラオフィス」に変更し、そこに小針さんと僕がジョインしました。

Fujitsu Transformation(フジトラ):デジタル時代の競争力強化を目的として、製品やサービス、ビジネスモデルに加えて、業務プロセスや組織、企業文化・風土を変革する全社DXプロジェクト

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佐藤:攻めてますよね。体制図をみていて、「DX Designer」って言葉もやばいなと思って。

タムカイ:「DX Designer」という概念および名前を作ったのは実は我々なんですよ。まだ、プロジェクトが本格的に動く前、事務局としてフジトラオフィスのネーミングを考えていたとき、DX Designerという肩書きを出したのがきっかけですが、福田さんから「我々もこの言葉のようにDX Designerにならないといけないね」という言葉をいただいて、そのまま採用しました(笑)。

宮内:自分たちがDXを推進していくつもりで提案されたんですか?

タムカイ:我々ももちろんやるつもりだったんですけど、「デザインという言葉を開放する」というマインドを持ってもいいんじゃないかと思って考えたんですよね。このDX Designerの概念は、従来の何かをクラフトをするようなデザイナーのイメージではなく、変革をデザインするデザイナーというイメージで、我々が今からやらなければいけないことを定義した感じですね。

宮内:なんか「デザイン経営」みたいな感覚での定義づけですね。そして、そういう提案を続けているうちに、変革のど真ん中の存在となった、と(笑)。どういうきっかけで、ここまで進んできたんですか?

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小針:もともと私がSAPジャパンの経営者として、福田さん(福田譲さん)の存在を知っていたんですよ。そんな彼が今年の1月に日本のどこかの事業会社に移るというニュースを見て、どこだろうなと思っていたら、富士通だったんですね。だから、Twitterで「福田さんが富士通に来るなら話したい!」とつぶやいたら、「4/1に入社したら、ぜひ連絡ください」とコメントを下さって(笑)。そして、福田さんが正式に富士通にジョインした瞬間に速攻でメールをしました。

タムカイ:僕はそのとき、福田さんのことをそこまで知らなかったのですが、小針さんがすごく興奮して話してくれたから、「この人はすごい人に違いない」と思って(笑)。

宮内:もともと、小針さんとタムカイさんは仕事でご一緒されていたんですか?

タムカイ:そうです。僕が人材育成プログラムに携わっていたときに小針さんが人事側の担当者でした。

小針:そうですね。もともと私はSEで富士通のグループ会社に入社して、タムカイさんと出会ったときは人事でしたが、去年から富士通デザインのデザイナーとして出向しました。

タムカイ:「デザイン部においでよ!!」と言いまくってました(笑)。一緒に仕事はしていたんですけど、正式にデザイナーとして仕事をしたくて。上司にも「僕には小針さんが絶対必要だ」と言い続けていました(笑)。

宮内:そして、福田さんとお会いするタイミングでは2人の環境的な準備も整っていたと。

タムカイ:本当は福田さんと4月ごろに会う予定でしたが、コロナの影響で予定も伸びてしまって、結果6月3日にようやく対面で会えました。

宮内:福田さんとお会いしてどうでした?

タムカイ:最初に福田さんにお伺いしたことは、「どういう思いでこの会社に来られたのですか?」ですね(笑)。本気で何かを富士通でやろうとして来てくださったのか、違う目的があるのかは実際に会ってみないと分からないじゃないですか。でも結果としては、福田さんは前者でした。
福田さんはひと言目に、「この会社に来て2ヶ月が経つけど、一度もデザイン思考を感じたことがない。君たちはデザイン思考ができるのか? できないなら、前職から呼んで来るけど、どう?」と言われたので、「いけますよ!」と言ったんですね。最初は正直、彼の求めるレベルと僕らのレベルが合っているのかどうかも分からないので、ビッグマウスも多少含んでいましたが、我々としても、デザインに対する自信と今までの実績もあると思っていたので、そこをお話しました。

宮内:それはすごいターニングポイントですね。

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小針:そうなんです。「いけます」と言ってからのスピードもすごくて。福田さんから「未来の妄想を小説にしてみたんだけど、読んで感想聞かせて」と言われ、1万字以上の小説を5分間くらいで何も言葉を発せずに読むみたいなこともしました(笑)。そこから、福田さんの妄想を伝えやすくするためにアイデア出しをして、イメージムービーをその場で撮りましたね。

タムカイ:そうそう、福田さんはフジトラのキックオフでご自身の思いをムービーで伝えたいと考えていて、その思いが妄想のストーリーだったので、「福田さんがウトウトして、そこから妄想の世界を見せたらどうですかね」とアイデアを出して、「じゃあ、ここでウトウトしてください!」みたいな感じで撮りました。この映像を使うかどうかは分からなかったのですが、僕たちはやる気なんだということは伝えることができたと思っています。
その後すごいスピードで物事が進んで、6月23日にはDXOと呼ばれる各部の代表の方と社長が集まるイベントを開催しましたが、コロナ禍だったのでオンラインだったんですよね。
オンラインイベントって6月の時点では、まだスタイルも確立していなかったじゃないですか。けど、僕たちはオンラインイベントを内部でも外部でもやりまくっていたので、私物のカメラとかを使いながらやりましたね(笑)。

小針:本当に稼働日がほとんどない中での本番でした(笑)。

佐藤:その時点でのやれることを全部やるみたいな感じですね。

タムカイ:我々2人としても「このタイミングで会社が変わらないならもうダメだ」くらいの覚悟で臨んでいたので、出し惜しみはせずにやれることは全部やるってことを心がけました。
そして、実際にプロジェクトとしてキックオフをするタイミングになったときも、オンラインでチームビルディングをしないといけないので、「そういうことができるのは我々だ」という心意気でいろんなことをしましたね。
このように連続で4か月間ずっとやってきていると、資料を綺麗にするとかクラフトの意味でのデザイナーではなくて、変革をデザインするデザイナーとして周囲からの信頼をもらえるようにもなったし、僕たちも会社にしっかり成果を還元できるという、いい関係になりました。もう、3年分くらいの仕事をしている感じですね(笑)。

佐藤:今までの活動はすべてこのためにあったみたいな感じですね(笑)

タムカイ:まさにそんな感じですね。例えば、キックオフでグラフィックレコーディングを入れるとか、オンラインの司会をするとか、今までやってきたことを全力で注ぎこみました。これまで、結構ハードな社外のイベントもやってきたので、大変でしたが叩き込んできた甲斐があったなと思います。

「どうせいつものでしょ」と言わせないための取り組み

宮内:1年半前のタムカイさんの発言で、「外の知識をしっかり得た上で会社を動かすこともできうるし、僕が会社をやっぱり辞めない理由はそこですよね。そこにまだまだ楽しいことがあって、未来があるはず」と言っていたことが実現している感じですね。

タムカイ:本当に運が良かった。おそらく福田さんがいなければ、僕たちだけで富士通に対して大きなインパクトは絶対に与えられなかったですし、さらにこのコロナ禍で完全に激動の時代に入ってしまったのが重なりました。
今までだと元に戻ろうとする力が強くて、改革できないことも多いですが、前提が崩れて全てオンラインでやらなければいけなくなったので、そういった外部要因もある意味プラスに働いたと思っています。

宮内:よく見る記事で、世の中が一気にDXに向かざるを得なくなりましたが、周りがついて来れず、できるやつが光っているみたいな状況ですね(笑)。

タムカイ:僕らは今の状況を「幕末」って呼んでいます。やばい、暗殺されるかもしれない(笑)。

宮内:目立つと刺されるから、なるべく目立たないようにしようという方法論も状況によってはありますよね(笑)。

タムカイ:でも、今までも目立っていたので、これからもやりたいこと、必要だと思うことをやるだけですね。

佐藤:今までは端っこにいたからやりたいことが自由にできたっていうのもあったじゃないですか。でも実はそれで筋力が鍛えられたって感じですよね。

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タムカイ:それは確かにありますね。あとは、端っこという概念がなくなったと思っています。

佐藤:なるほど、コロナで一旦フラットになったうえで、ど真ん中への吸引力がかかったみたいな。

タムカイ:多分、ほとんどの人が「また会社を変えようとするいつものプロジェクトが始まったな」くらいだったと思うんですよ。「きっと、元に戻るから、手を上げたら泥船に乗ってしまう」みたいな。だけど、僕ら二人は「どうせいつものでしょ」とはもう言わせないという思いだったので、最初から全力投球でやりました。正直、プロジェクトにジョインしたばかりのときは、今まではデザイナーがいなかったので、既存の人とはやり方がちょっと合わないかもしれないという話になったこともあります。

宮内:そこでやっぱり福田さんの存在が大きかったんじゃないですか?

タムカイ:それはとてつもなく大きい。福田さんのリーダーシップは本当にすごくて。僕らの考え方がいいとか、既存の考え方がいいとかそういうことは言わず、両者の意見をフラットに聞いて、会社がいい方向に行くように考えてくれるんですよ。
あと、権限委譲をするタイミングも、すごくうまい。いいなと思った人にしっかり権限委譲することって、今までの富士通ではなかなか難しかったのですが、福田さんは外から来たということもあって、いい意味で富士通のこれまでの常識を覆すことができるし、そのタイミングが絶妙なのでみんなも納得できるんです。

佐藤:私も前職でいろいろな改革をして、デザイナーが他のことをやっても許されるような雰囲気にはなることはありましたが、経営サイドからデザイン思考やデザイナーにスポットが当たることはなかったんですね。

タムカイ:それでいうと、この数か月は、当初割り当てられたこと以外のこともめちゃくちゃやりました。例えば、社内でYammerというマイクロソフトさんのサービスを使っていますが、普段SNSをちゃんと使っている会社員ってそんなにいなくて。しかし、僕らはSNSを活用していろいろなことをやってきたので、そのノウハウを注ぎ込みました。他にも本当にいろいろなことをしましたね。

小針:やりすぎて何をやったか分からなくなってきましたね(笑)。

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宮内:めちゃ働いてますね(笑)。まだ始まったばかりだとは思いますけど、そういった経験をして、やりがいの面でも、組織の面でも気づきがあったら教えて欲しいです。

小針:改めて思ったことは、「上の人がやっている変革じゃない」変革をどれだけできるかが大事だということです。誰かのためのDXじゃないし、誰かのための変革でもない。私たちのためのDX だし、私たちの変革だから、それをデザインしていくことが私たちのすべき「変革のデザイン」だと思っています。だから、ものすごく小さなことも大きなこともすべてやっていくってことがすごく重要。そして、私たちだけじゃなくて、みんなができるようになることを目指してます。

2/2につづく


【プロフィール】

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タムラカイ

人と組織に寄り添い、変革の仕掛けと仕組みをデザインするTransformation Designer。「世界の創造性のレベルを1つあげる」がマイパーパス。会社員として働くかたわら、個人プロジェクトとして創造性を高めるラクガキ講座「ハッピーラクガキライフ」の開催、グラフィックを用いた場作りと新しい組織の実践チーム「グラフィックカタリスト・ビオトープ」の立ち上げ、教育系NPO法人SOMAの副代表理事など様々な活動に携わる。現在はこれらの経験を活かし、本業である富士通の全社DX推進をデザインという立場から支援している。
最近の趣味はサ道(サウナ)とフィットネスと料理、水玉の人と呼ばれたり。著書に「ラクガキノート術(エイ出版)」。

photo:稲葉真

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小針美紀(こばり・みき)

経営と現場の「わかりあえなさ」を解消し、次なる物語を共にデザインするTransformation Designer。
大学で臨床心理学を学んだのち、富士通グループにシステムエンジニアとして入社。その後、同社の人事人材開発職へ転向。「部署や役職といった、立場の違いによる”正しさ”をぶつけ合うのではなく、楽しみつつ共に組織の土壌を創っていきたい」と思っていた際、「人事×デザイン」という実践方法に出会う。以降、人や組織に関わる対話の場のデザインと実践を重ね、2019年より、富士通のデザイン部門に出向。
個人のパーパス「日本企業を、しなやかに強くする」を胸に、富士通の全社DXプロジェクトという道なき道を、クリエイティビティとユーモアをもって歩んでいる。

photo:稲葉真

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