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楽天大学・仲山がくちょに聞く、雑談から考えるこれからのリモートでの働き方って? ~新企画・雑談王~

改めて、新企画の「雑談王」、ふざけているわけではありません(笑)。この企画は「雑談」や「ファシリテーション」といったリモート時代に大切なソフトスキルの極意を、いかなる現場もぶん回してきた達人たちに聞いてみちゃおう、という企画です。今回、楽天大学・仲山がくちょの後編になります。 *前編はこちら
雑談の効用から、チームビルドやリモートでの理想的な働き方まで話題が発展しました。
(取材・文/QUMZINE編集部、岩田庄平)

「雑草」はまだ名前がついていないだけ

宮内:リモートの雑談をHackしたり、やり方がもっといろいろあり得るんじゃないかなと思うんですよね。何か工夫していたりしますか?

仲山:なるべく全画面で全員の顔が映るようにして、顔を上げた人が分かるようには気にしているかも。

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宮内:ビューを工夫しているんですね。なるほどなるほど。角さんはなにかありますか?

角:目線を見ることはありますね。作業をしている人は結構あっちこっち見ている傾向があって、そういう人にあえて会話を振ったりしますね。すると、関係ないことを調べていたかどうかがわかる。あとは、雑談全般で工夫していることですけど、その人の詳しい領域の話をあえて聞きにいって自分の知識を広げるような、自分の引き出しを広げるための雑談もやりますね。

仲山:チームビルディングの講座で、僕がいつも使っている4つの成長ステージがあるんですけど、その第1ステージは「コミュニケーションの量」が大事なんです。

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第1ステージ<フォーミング(同調期)>は、初めましての状態。ジグソーパズルでいえば、お互いの凸凹も色や柄も認識できない状態です。だから、雑談を含めてコミュニケーションをとるうちに相互理解が進んで、言いたいことも言いやすくなってくる。それが、コミュニケーション量を増やす目的です。

角:その次の段階は何ですか。

仲山:「このメンバーならここまで言っても大丈夫」と思えるようになったら、みんなが本音を言い始めるわけです。そうすると両立しないアイディアが出てきたりするから、すり合わせが必要になって混沌とし、整った状態ではなくなるのが第2ステージです<ストーミング(混沌期)>

そこから色々と試行錯誤していくうちにパズルのピースがかみ合い始め、成功体験を共有しながら、自分たちのルールができていくのが第3ステージ<ノーミング(調和期)>。そこからチームっぽい感じになります。

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宮内:第1ステージと第3ステージでは、雑談の持つ役割とか形態もずいぶん違いそうですね。

仲山:お互いのパズルのピースがどんなものかを探るのが第1ステージの雑談で、第3ステージは各自の役割分担が明確になるので、あまり雑談しなくなるんですよ。あとはひたすらやり込んでいくだけの状態が第3ステージなので。

角:ちなみに第4ステージまで行くと、どうなるんですか?

仲山:第4ステージは一つの生き物のようなチームになるので、あうんの呼吸で全て動ける感じ<トランスフォーミング(変態期)>です。あうんと言えば、「オンラインは空気を読めない」ってよく言われますけど、これもステージによって意味合いがまったく違います。

第1ステージの「空気を読む」は、偉い人の顔色を見て怒られないようにするようなことで、第3ステージはお互いのちょっとした変化やニュアンスを感じ取って、チューニングを合わせていくために「空気を読む」んです。第3ステージの雑談には、空気が読みやすくなるように、お互いの変化を共有する目的があると言ってもいいかもしれません。

リモートにおける「空気が読めない問題」の多くは、第1ステージだと思います。まだみんなでリモートワークのやり方を手探りしている状況なので。

角:ステージに応じて何をすべきか目的意識を持つ。そしてその中に雑談が必要だったら、雑談を組み込むということなんですね。

仲山:雑談の「雑」とは何か、ということも考えておくとよいかなと。倉貫さんの『ザッソウ』の章トビラには、『雑草はなぜそこに生えているのか』という本の引用文が書かれているんです。草のほうの雑草の本(笑)。例えば、第一章の扉には、雑草の雑という言葉は「主要なものではないけれど、悪いという意味でもない」ということが書いてあります。だから、まだ主要ではない仕事の話が雑談として行われて、「それ面白いね」って昇格して名前がついたら新しいプロジェクトになるわけです。そういうことが増えればいいですよね。

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リモートチームワークこそ、これからの働き方

仲山:あと、前から思っていることがあって、この図を見て欲しいんですけど。

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右側がオフィスワークで左側がリモートワーク。そして、上側が分業、下側が協業です。目指すところは左下のリモート協業、新しい働き方の形です。オフィスワークからリモートワーク(右側から左側)への移行はツールがうまく使えるとできるようになる。でも、分業は指示命令型の仕事の進め方で、協業はチームのメンバー同士で試行錯誤しながら仕事をする形だから、分業から協業(上側から下側)に移行するのって、仕事の進め方のOSが違うので移行が難しいんです。
つまり、従来はオフィス分業(右上)にいた人が多いんですけど、リモートのツールがうまく使えるようになるだけでは、リモート分業(左上)にはいけるけれど、リモート協業(左下)にはいけないんです。

宮内:右上から左下への「斜めのシフトはほぼ無理」って書いているところ。この勘違いは多いですよね。

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仲山:ただ、コロナという特殊な状況をチャンスに変えられたら、シフトできる可能性が高くなるんじゃないかと思っているんです。

どういうことかというと、僕が楽天で20年前に働き始めた時の状況と似てるんです。当時、出店している店舗さん向けに勉強会を始めたところ、「実店舗の商売は長くやっているけど、ネットショップは全く分からないから教えてもらいに来た」と言う店舗さんが多かったんですね。でも、「ネットショップも商売であることに変わりはないので、リアルでやっていることをネットに置き換えられたらうまくいきます」という話をしていました。そこに気がつくと、実店舗で接客上手な人は「自分でもできる気がしてきた!」と納得して帰っていくんです。

一方、ここからが大事なところなんですけど、実店舗でお客さんとのコミュニケーションをさほど取っていない店舗さんに、「ネットではお客さんとのコミュニケーションが大事なんです」と伝えたら、「そんなものなのかな」とやり始める可能性ってあるじゃないですか。

それと同じように、右上(オフィス分業)の人にも「リモートワークというのは、指示命令するだけではなく、みんなで試行錯誤しながら仕事することが大事なんです」と伝えたら、左下(リモート協業)に移行するきっかけができやすいんじゃないかと思っています。

角:リモートワークに適合するために努力して、気がついたら働き方のOSが変わっていたみたいな感じですね。

仲山:そうです。「リモートワークをするには、分業から協業に働き方のOS を入れ替えないといけないんだ」って、勘違いでもそう思ってくれる人が増えたらいいですよね。

角:言い方次第ですよね。

仲山:言い方次第ですね(笑)。ツールの話で終わるのではなく、上から下(分業から協業)に行けるチャンスととらえて、アシストできたらいいなと。

角:すごいキラーフレーズみたいなものがあったら一気に協業に行きそうですね。

仲山:このリモート協業のことは「リモートチームワーク」と呼んでいます。

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リモート分業とリモートチームワークの違いとして大きいのは、「誰が仕事を分けるか」です。リモート分業は誰か(マネージャー)が仕事を分けるけれども、リモートチームワークはみんなで仕事の分担を決める。

角:どうやったらこのリモートチームワークになるんですかね?

仲山:まずはいつも仕事を分ける係だった人(マネージャー)が、それをやめること。そのきっかけになるのは「分け方がわからない仕事」が生まれることなんですけど、それってまさに今、生まれているじゃないですか! リモートにおける仕事のやり方って、どうやってやったらいいのか分かんない。

角:今が変わるチャンスなんですよね。働き方が変わり、分け方がわからない仕事が増えているから。

宮内:そのきっかけになるようなフレーズとかフレームワークはありますか。

仲山:チームビルディングのアクティビティに「全員目隠しをして1つのものを作る」というのがあります。みんな目隠ししているから、他人がどこにいるのかも分からないし、そもそも自分がやっていることが合っているかもわからない状態。そういうときにこそ、自分から声を出して、返ってきた声で状況を判断することが大事なんです。

目隠しのアクティビティは、全員、良かれと思って動いているんですけど、まわりとコミュニケーションを取らずに動くと、ろくな事にならないんだって気付けるのがポイントです。そういう体験をみんなが共有していると、「コロナの状況って目隠しのアクティビティと似てますよね」と言ったら、「たしかに!」となって、能動的に情報共有するようになるんです。

角:だから、声をかけ合う、ステージごとに目的をもった意味のある雑談をする。リモートでコミュニケーション量が減るみたいな問題も、共通体験や共通認識があれば乗り越えられるってことですね。いやー、今日はいい話が聞けました。ありがとうございます!

(前編はこちら)



【プロフィール】

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仲山 進也(なかやま・しんや)
仲山考材株式会社 代表取締役
楽天株式会社 楽天大学学長

慶應義塾大学法学部法律学科卒業。シャープ株式会社を経て、創業期(社員約20 名)の楽天株式会社に入社。2000年に楽天市場出店者の学び合いの場「楽天大学」を設立、人にフォーカスした本質的・普遍的な商売のフレームワークを伝えつつ、出店者コミュニティの醸成を手がける。
2004 年には「ヴィッセル神戸」公式ネットショップを立ち上げ、ファンとの交流を促進するスタイルでグッズ売上げを倍増。
2007年に楽天で唯一のフェロー風正社員(兼業自由・勤怠自由の正社員)となり、2008年には自らの会社である仲山考材株式会社を設立、オンラインコミュニティ型の学習プログラムを提供する。
2016〜2017年にかけて「横浜F・マリノス」とプロ契約、コーチ向け・ジュニアユース向けの育成プログラムを実施。
20年にわたって数万社の中小・ベンチャー企業を見続け支援しながら、消耗戦に陥らない経営、共創マーケティング、指示命令のない自律自走型の組織文化・チームづくり、長続きするコミュニティづくり、人が育ちやすい環境のつくり方、夢中で仕事を遊ぶような働き方を探求している。
「子どもが憧れる、夢中で仕事する大人」を増やすことがミッション。「仕事を遊ぼう」がモットー。

著書
『サッカーとビジネスのプロが明かす育成の本質』
『まんがでわかるECビジネス』
『組織にいながら、自由に働く。』
『あの会社はなぜ「違い」を生み出し続けられるのか』
『あのお店はなぜ消耗戦を抜け出せたのか』
『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則』
『「ビジネス頭」の磨き方』
『楽天市場公式 ネットショップの教科書』


(これまで仲山さんにご登場いただいたQUMZINEの別記事はこちら)




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