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テレワークの極意をレノボ・ジャパンCEOのデビット・ベネットさんに聞きました 1/2

レノボ・ジャパンさん発行の「テレワークスタートガイド」は2/28に公開されて、話題になりました。テレワークに先行した企業だからこそわかる、導入時や実施時の障壁とクリアの仕方などのノウハウがたくさん詰まっていて、非常に有益なガイド本です。
フィラメントでも3/10からテレワークについての緊急アンケートを実施し、それらを元にしたオンライン配信番組「QUMトーーク!」を展開しています。
レノボ・ジャパンのCEOデビット・ベネットさんと広報の鈴木正義さんにお話をうかがいました。
取材・文/QUMZINE編集部、本田 恵理

【プロフィール】

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デビット・ベネット(David Bennett)
Lenovo Japan 代表取締役社長/NECPC 代表取締役執行役員社長
1979年にジャマイカで生まれ、カナダ国籍を持つ。カナダトロント大学大学院卒。早稲田大学にて日本語を習得、学習院女子大学大学院にて日本古典文学を学ぶ。東京でコンサルタントとして社会人キャリアをスタートさせ、直近でAMD社コーポレートバイスプレジデントおよび同社のレノボアカウントチームのゼネラルマネージャーを務め、コンシューマー、コマーシャル、グラフィックス、エンタープライズプラットフォームなど広範な事業を手掛ける。4月から山形大学客員教授に就任。古典文学が好き。


角:まず最初にお伺いしたいのは、メディアで話題となった、レノボジャパンさん発行の「テレワークスタートガイド」についてです。この公開に至った経緯やきっかけについて、ぜひお伺いしたいです。

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公開先URL:
https://www.lenovojp.com/business/solution/download/002/pdf/terework_startguide.pdf


デビット:
きっかけは一人の社員でした。彼は「テレワーク」という、当時まだまだ社会的にも不慣れなものについて、「みんな困っているんじゃないか」という思いを抱いていました。それでまずは自力で、困りごとに役立ちそうな情報やリンクだけを集めた簡易なPDFを作り始めました。それを見せてもらった時に僕は、素晴らしいアイデアだなと感じたんです。それで発案者の社員である元嶋と相談して、きちんとしたガイドを作って無料で配ろうということになりました。

鈴木:元になったPDFは、去年の9月〜10月頃には出来ていました。当時は、今ほどテレワークがメジャーではなかったので、我が社の営業がお客さんにプレゼントする用に使っていたんです。けれどもコロナウィルスの騒動が始まって、状況が一変して。「あのガイドブックを全てウェブに公開しよう」という話になりました。

実は、ガイドの前半は「2〜3ヶ月かけて、じっくりと社内のテレワークに向けた整備を進めましょう」というシナリオなんです。けれど、「明日からすぐにでも対応せねばならない」という状況で読むには、必要な情報が少し欠けていたんです。それで「緊急テレワーク」というチャプターを急遽、最後に足しました。その部分は、安倍総理の宣言があった日から、72時間以内に作ったんです。そのようにして第4章までの状態にして公開したところ、非常に大きな反響をいただきました。

角:すごいですね! でも、この第4章の部分についても、第3章までを書けるノウハウをきちんと持っていないと、書けないものですよね。だからこそ72時間という時間内で、適切に抜粋して書き出すことができたんでしょうね。

デビット:2015年からテレワークを自由にできる制度を設けてきたという、長い歴史があります。制度を使っていた人は2割くらいでしたが、もう今では9割以上の人がテレワークになっています。最初はオリンピックに備えて、徐々に広げようとしていました。それがコロナの時期になって、「なるべくテレワークにしましょう」という流れになり、そして今ではマストになっているわけです。そういった長きに渡る経験があったお陰で、ガイドが書けたことは事実です。

角:テレワークにフィットした社内の文化をどう作っていけばいいのか。あるいは、社員の人たちをどうやって巻き込んでいけばいいのか。トップの意思決定を、どのようにして行うように促していけばいいのか。といった、痒いところ全てに手が届くようなマニュアルになっていて。「自社のものを売ってやろう」みたいな雰囲気が全然ないところも、すごいなと思います。

デビット:そこに関しては、2つのポイントがありました。まず、「ガイドブックである以上、自社製品を売る目的は度外視しよう」ということを、最初にルールとして決めました。宣伝に特化してしまうと、ガイド自体がなかなか広まらない懸念もあるので。こういう時は、やっぱり純粋にサポートがしたいので、変な話ですが、他社製品を買っていただいてもいいわけです。これからテレワークをしなければいけない事態に直面して困っているみなさんに、我々のテレワークのノウハウや情報をお伝えすることを、まずは大事にしたい気持ちがありました。

次に、我々の考える「テレワークを上手に行うための、3つの大切なこと」をきちんとお伝えしたかった。1つ目は、基本となるインフラツールのこと。2つ目が、ポリシー。ルールや制度、システムを、どうやって作っていくのかということ。そして最後3つ目が、一番難しいのですが、カルチャーに関することですよね。そして、実はこの3つが全部揃っていないと、テレワークは失敗してしまう。

角:たしかにどこかでつまづくと、やっぱりテレワークよりリアルの方がいいな、という流れになりますよね。

デビット:フィラメントさんのアンケートを読むと、そういったつまづきに関する回答もいろいろとありましたよね。会議をしている時、家族や犬や猫による邪魔が入ったりとか。そういう問題が頻発すると、やりたくなくなっちゃうんですよね。

>>フィラメントアンケート結果のスライドシェア


我々レノボの製品で「ThinkSmart Hub500」というものがあるんですが、これは遠隔会議やビデオミーティングの問題解消を目的としているんです。どのミーティングでも最初の5分10分は、繋げ方や画面共有の仕方、音の問題などに関するやり取りで無駄になりがちですよね。「だったら直接顔を合わせた方がいい」って、皆さんすぐに言うじゃないですか。問題を解消しないと、ストレスが溜まるだけでなかなか進まない。なので、そこはすごくポイントですね。


角:いろいろ気付きの多いガイドを公開してくださって、本当に日本の他の企業も感謝していると思います。続けて、

デビット:あ、少々お待ちください。

(デビットさんのお子さんが登場)

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角:どうぞ。テレワークでこういうことが起きるのが、僕は大好きですね。少し自分の思いを語ってしまうんですけど、仕事と家庭やプライベートって、これからどんどん混ざり合っていくと思うんですよ。

僕は今、フィラメントという会社を経営しているのですが、その前は大阪市役所の職員で、完全にプライベートと仕事の境界線がありました。しかし今独立して、さらにテレワークの状況になって、双方がどんどん混ざり合っていくような感覚があります。そして、それによって幸せが増えているような気がします。すごく「自分としての生き方」が楽しめている

デビット:今まで「ワークライフバランス」という言い方だったものが、そもそもそれも間違ってるんじゃないか、という指摘がありますね。というのは、ワークとライフは同じものだから、わざわざ分ける必要はないという。

僕も、それを聞いてなるほどと思いました。みなさん今は、半ば強制的にテレワークを「やるしかない」状況になっているので、さっきのような出来事が増えてくると思うんです。例えば、会議中に子どもやペットが入ってきたりとか。けれど、みんな同じ状況下で、どんな会社・ポジション・国にいても同じことが起こり得るので、みんなで慣れたらいいですよね。そうしたら、あまりストレスも溜まらないし。すごくいいきっかけになるんじゃないかという気がしてます。

角:フィラメントのアンケートの中でも、お子さんが入って来られたり、猫や犬が登場してくるような事例は、肯定的に捉えるニュアンスの回答が多かったです。すごくいいことだと思っていて。社員を本当に「一個の家庭を持った一人の尊重すべき人間」として見やすくなりますよね。

デビット:そういう風潮になっていくと思います。そうやってバリアがなくなると、コミュニケーションもすごく取りやすくなると思います。フィラメントさんのアンケートの中で好きなコメントがあって。それは「Zoomのバーチャル背景を変えて、笑いを取る」というものです。そうやって、実際に会社内のコミュニケーションレベルをあげていけることは、すごくいいことだと思っています。

角:デビットさんは過去のインタビューで、「会社の中でも雑談タイムみたいなものを設けている」とおっしゃっていたと思うのですが、実は我々もそれを試みていて。完全なテレワークになると、「必要なことだけを話す」とか、Slackなどのコミュニケーションツールを使って「きっちり働く」みたいな意識が、強くなりますよね。他方で雑談のような時間は減って、疎かになっていく感覚があります。それでは、社員が少し寂しいし、雑談をするといろんな気付きやインスピレーションが生まれますよね。

僕にとってはそういう雑談タイムってすごく大事なので、意図的に取るようにしています。スウェーデンでは「フィーカ」という、毎日1時間のコーヒータイムの概念があるらしいんですが、それを我が社でも取るようにしていて。その時に社員みんなと、近況報告を話したりしています。

デビット:これは結構キートピックスですね。いろいろな気づきの中で特に大きかったのは、「普段の会社生活では、意外と雑談タイムがあった」ということです。会社にいる間にも、仕事してない時間は割とあるんですよね。人の机に行ってお話したり、ランチタイムで話したり、一緒にタバコ吸いに行ったりする時間が意外と多い。それがテレワークの状況になると、ほぼなくなってしまうことに気づきました。

ただでさえテレワークだと、通勤の時間もないし、生活における境目がなくなりがちなので、働く時間が長引く傾向にあるんです。そんな状況で、経済のことやウィルスのことや、ネガティブな話ばっかり聞いちゃうと、ストレスが溜まるんですよね。だからこそ、人間らしいコンタクトがお互いに取れるような時間は、本当に大事です。逆に、マネージャーや会社の方から場を作ってあげないと、同じ場所にいない分、みなさんそういう時間が取りづらいんですよね。我々も、週3くらいで自由参加形式の様々な運動のプログラムを作ったり、一切仕事の話をしなくていいコーヒータイムを設けたりと、いろいろ試しています。そういうことにも積極的に取り組んでいかないと、みんなバーンアウトしてしまう。

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デビット:もう1つ、僕は「各人が自分で仕事の管理をすること」がすごく大事だと思っています。こういうストレスフルな状況下では、ストレスを感じた時はまず休みを取るべき。そこに関してはもはや、会社のマネージャーがマイクロマネジメントをするべきではないですよね。干渉の度が過ぎると、すでにストレスフルな状況に追い打ちをかけてしまうわけです。

だから僕が言いたいことは、「休みたい時は休んで」ということ。働く「時間」は関係ないわけ。「会社として、何のために給料を出しているのか?」ということです。勤務時間の長さと仕事の中身、どちらが大事なのか。僕は後者を大事にしたいので。求める仕事をしてくれれば、どんな時間、タイミングでもいい。あらゆる会社は、もっとそういう考えを持ったほうがいいのかなという気もします。

そもそもマイクロマネジメントをするということは、部下を信頼していないんです。変な話なんだけど、信頼できない部下なら変えればいい。そういう部下の問題は、監視や干渉では解決できないと、僕は思っています。

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角:実は僕、そのお話を聞きたかったんです。以前ライフハッカーの記事で、デビットさんは「ブラックボックスセオリー」についても言及されていたと思うんですけど、その中で「こうやったら信頼関係をうまく作れる」みたいなコツはありますか?

デビット:「ブラックボックスセオリー」はどんなものかというと、例えば僕の例で言うと、CEOとしてやるべきことがいっぱいある。そこでこのセオリーを適用すると、そういった僕の諸々の課題を分担して、この人へ、この人へ、と割り振って任せきれるので、僕は別の問題にフォーカスできる。最初にあった課題は、信頼できる部下に任せているから安心です。っていう、すごく単純な考え方なんですけど。

コツは、率直に「信頼」でしょうね。任せる相手が、それをできるかできないかはあまり深く考えず、とりあえずはやらせる。そして、「問題がある時はもちろんサポートします。だから、必要な時は言ってください。けれど何も言わなければ、うまくいってると捉えます」という姿勢でいること。でないと、なかなかブラックボックスは作れない。任せてみないと、実際に確かめることもできない。すごくシンプルなことですね。

角:コロナの後テレワークが一般化していく中で、各社、通信技術の改善や、オンライン会議に向けた環境の整備、などといった課題も出てくるのではないかと思います。レノボさんはすでにこういった障壁はクリアされていると思うのですが、過去を振り返る中で、それらの乗り越え方に関する知見のようなものがあれば、聞かせてください。

デビット:確実に言えることは、数年前と比べて、すごくツールが増えているんですよね。だからみなさん今日みたいに、ビデオチャットができるようになったり、VPNがなくてもクラウドを使うことでセキュリティの心配を避けられるようになったりしていると思います。
 
だから会社の責任や義務は、対社内・対ユーザーどちらの状況でも、相手とスムーズに繋がれるツールを用意することですね。Microsoft TeamsやZoomなどの中から、どのツールを使うのかしっかり決める。それから、道具。例えば我々は、社内環境であれば、ThinkSmart Hub500を常におすすめしています。でもいまはみなさんテレワークなので、きちんとしたヘッドセット、マイク、カメラ機能付きパソコン、といった道具を揃えることですよね。それから、今僕が持っているのはレノボのThinkPadのバッテリーなのですが、会社の外だと、こういうものも意外と大事です。
あと1つ問題があるとすると、特に日本企業で顕著なのは、ハンコです。

角:ハンコ!

デビット:我々の会社でもたまに、ハンコを押すために出社しなければいけない状況があります。デジタル化など、ハンコをなくす試みを普及するべきですよね。海外ではAdobeさんやいろいろな企業で、サインやペーパーレスの会社が増えているのですが、日本は遅れを取っていますね。ハンコ文化が、テレワークのひとつのバリアになってるんじゃないかと思いますね。

角:ほとんどの自治体や大企業は、今でもハンコ文化ですよね。実際、これだけ先進的な取り組みをされているレノボさんでも一部残っていらっしゃるということは、根深い問題なんでしょうね。

鈴木:1つ補足するとすると、かつては会議のために会社に行く人もすごく多かったんです。我々の会社はたまたま2014年に引越しがあって、そのタイミングで改善できたことが結構大きかったのですが、会議室にオンラインシステムがない会社は、まだまだ多いんですよね。少し前の我々の調査では、50%以上の会議室は未だにオンライン環境が整っていないという結果が出ています。それだと、やはり全員会社に来なきゃいけない。そのあたりも変わってくるとは思うんですけれど、オンライン会議への対応は、大事なポイントだと思いますね。

角:なるほど。設備もやはり大事になってくるということですね。


(2/2につづく)


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