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お米とマスクと思いを届ける燕市。鈴木市長にお話をうかがいました 1/2

コロナウイルスによって私たちの生活は一変しました。そんな中、いわゆる帰省自粛によってふるさとに帰ることができなかった「若者」のために、行政と民間企業が垣根を越えていち早く取り組み、話題となった自治体があります。新潟県の燕市(つばめし)です。
フィラメントも、ハッカソンやワークショップにて燕市さんのサポートをさせていただいています。
『燕市への帰省を自粛する学生さん応援対策』や『フェニックス11』など独自の取り組みには、どのようなきっかけや経緯があったのでしょうか。
鈴木力市長に、燕市の取り組みの舞台裏について語っていただきました。
取材・文/QUMZINE編集部、岩田庄平

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【プロフィール】
鈴木 力(すずき・つとむ)燕市長
1960年生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部卒業後、同年新潟県庁へ奉職。知事政策局政策監などを歴任後、2010年新潟県庁を退職。同年燕市長選挙に初当選し市長就任。(現在3期目)

「ふるさと」が温かい存在であるために

新潟県燕市は越後平野のほぼ中央、県都新潟市と長岡市の中間に位置し、県下有数の工業地帯です。人と自然と産業が調和したまちづくりが行われています。

緊急事態宣言を受けて、まちでは燕市出身の学生らに特産の米や手作り布マスクなどを無料で送る取り組みを始め、その内容はSNSで2万回以上もリツイートされ大きな話題となりました。

角:『燕市への帰省を自粛する学生さん応援対策』の実施に至った経緯や、きっかけについてお伺いできればと思っているのですが、いかがでしたか。

鈴木市長:緊急事態宣言が出て、4月8日に燕市も感染が拡大している地域との往来を避けるために、学生に帰省しないでくださいというメッセージを出したんですね。その時から心にモヤモヤしたものがあって、ふるさとはいつでも帰れるあったかい存在であったのに、その故郷から帰ってくるなと言われた学生はどんな気持ちだったのだろう、と。

そんな中、燕市の経営者から「米を送りたいんだけど、どう思う?」という話が来たんです。今回はこういう状況なので自粛をお願いしているけど、ふるさとはいつでも君たちの味方で温かい存在だということを伝えることができると思って、その日のうちに申込の受付を始めました。

角:なるほど、すごい!

鈴木市長:こうしたことを燕市がすぐできるのは、もともと「東京つばめいと※」というネットワークを作っていたからなんです。当初は100人くらいの登録者数でしたが、まずは彼らに「東京つばめいと」に入っていない友達にどんどん拡散してくれと情報を送りました。そうすることで、情報が拡散していきます。

(※)東京つばめいと……燕市出身で首都圏在住の若者を対象に、交流会の実施や首都圏で行う燕市のイベントに参画してもらうことにより、燕市とのつながりを維持しながら燕市出身の若者の応援や将来的なUターンを促していくことを目的に設立。

角:僕も行政出身なので、情報を届けるための方法やインフラがないというのが多くの自治体の課題だと思います。地方から東京に出ていった若い世代とつながりを維持していることに温かみ感じます。

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*「東京つばめいと」の応募チラシ

鈴木市長:「東京つばめいと」を始めたきっかけも私の学生の頃の経験ですけど、地方から東京に行っても最初はなかなか友達ができない。だけど、私の頃は燕市が金属洋食器のまちとして教科書に載っていたから、自己紹介をすると、周りからは「スプーンを作っているまちだよね」と知ってくれていることが多かったんです。だから燕市出身という自分のアイデンティティーが持てました。

でも、いまは教科書に燕市が載らなくなって、どうやって自分のアイデンティティーを持ちながら社会人として成長していくのかを考えたとき、東京で一人寂しい思いしている学生がいるかもしれない、と。だから燕市とのつながりを持っておけたらということから始まったんですね。

角:まさにご自身の体験をベースとされているから、身近に寄り添うという視点で施策が展開されているんですね。たとえば「TSUBAME HACK!※」のときにも、若い人達が一緒に燕市のために何か考え、何かをクリエイトする楽しみを持ちながら、愛着も深めていくそんな印象がありました。

(※)2016年からスタートしたアイデアソン・ハッカソンの取組みで、共創による新しい価値の創造や、キャリア形成支援等により、新規プロジェクトの創出を目指している。

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*「TSUBAME HACK!」での一コマ

鈴木市長:(東京つばめいとを使って)ふるさとのことをどうしたらいいのかを考える取り組みは若い職員からのアイデアでした。

角:若い世代の考えを面白いと思われて、市長が「いいね、それやってみよう」と仰るから若い世代が自分の考えを出しやすくなっていると僕らからすると見えるんですけど、何か意識されていることってありますか?

鈴木市長:燕市全体の産業界も含めて、いろんな経済危機があるたびに新しい環境にチャレンジしていこうというDNAがあって、行政も同じように新しい事に取り組むという風土がありますね。

燕市はなぜ「フェニックス」と呼ばれるのか?

角:燕市はレジリエンス(強靭性)の高い自治体のカルチャーが息づいていますね。オイルショックやプラザ合意、リーマンショックなど大きな経済の打撃を受けるタイミングって過去にあって……。
小さな会社がたくさんあるまちだと、経済の打撃をもろに受けてしまいますが、その波を受けるたびに工夫とアイデアで乗り越えてきたと思います。長年受け継がれるレジリエンスの根源を教えていただけますか。

鈴木市長:江戸時代から、作る品物を変えることで、常に時代の変化、生活様式に対応していました。和釘から始まり、洋食器からキッチンツールになり、ゴルフクラブなど変化に対応することで乗り超えてきた自信が、燕市の歴史の中で積み重ねられたDNAになっていると思います。そしてもうひとつはまち全体が一つの工場という考え方で、一つ一つの会社がお互い連携し、切磋琢磨しながら一緒にやっていくという燕市ならではの産業構造が大きいと思います。

角:僕も何度か燕市を訪ね、いろんな人たちと親しく交流させていただくなかで地域全体が1つの会社みたいに思えたんです。横の連携があり、情報のやり取りからアイデアが生まれやすい。僕らはオープンイノベーションという方法論を軸にして会社の運営をしていますが、燕市のなかではそれが普通に行われている感じがしました。

鈴木市長:燕市は米を学生に配るだけでなく、困っている飲食店や、これから影響が出てくる製造業に対して「フェニックス11」という対策を始めています。そんな中、実際に困っているであろう産業界の人達が、いま一番困っている飲食店を支援しようと進んで寄付を募り、一週間で60社から2840万円を集めて、「フェニックス11」に使ってくれと燕市に寄付してくれたんです。

角:えーすごい! 1週間でですか!

鈴木市長:すごい(笑)。企業がまちの飲食店のために支援金を募って、行政にこれを使ってくれ、と。もともとは飲食店に10万円ずつ配ろうというところから始まったらしいんですけど、それでいいのか、他に困っているところはないかという話になって、燕市がもともと考えていた「フェニックス11」に乗っかって、財源補充という形でやっています。

困っている人のニーズにどう寄り添ったのか?

新型コロナウイルスの影響により帰省できない学生への支援が注目されている中、学生たちがいつでも帰って来られる「ふるさと燕」を守っていくため、行政による11の緊急対策「フェニックス11」を4月24日に報道発表しました。

角:私も報道資料を見させていただきましたが、とてもきめ細かい内容になっていて、信用保証料の補給や、地元の企業の方々が本当に欲しているものが見えないと思いつけないのではないかと感じたんです。

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*「フェニックス11」の概要

鈴木市長:商工会議所などを通じて事業所からアンケートを取って、何に困っているのかを把握したうえで「フェニックス11」を作りました。アンケートは毎月行いながら状況の変化に応じて、さらに対策を追加して充実させていこうと思っています。

角:いろんな危機を乗り越えるたびに、行政と民間の結びつきが強くなり、なんでも話し合える関係性があればこそだと思いました。フェイスシールドも自分たちで作られたと聞いて、燕市さんらしいなと思ったんですけど、きっかけや反響も教えてほしいです。

鈴木市長:医療関係者がなかなか防護服が手に入らず困って、フェイスシールドがいろいろ話題になっているときに、試作を始めた会社を見つけてすぐに担当課長が行って「試作の段階でいいから買うから。すぐに作ってくれ」という感じで決まりました。

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*燕市の企業有限会社山﨑抜型(燕市蔵関)が作成したフェイスシールド

角:ものを作ってそれを支援するという、手を動かしている人の強みですよね。

鈴木市長:まさにそうですね。


(後半に続く)



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