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NTTコム庄司社長と主催メンバーが語る! 650名が参加する新規事業プログラム「DigiCom(デジコン)」の魅力とは

NTTグループの中でも中核をなすビッグカンパニー、NTTコミュニケーションズ株式会社がグループ会社横断で開催している新規事業プログラム、「デジコン」。今年開催されたデジコンでは、参加者650名超、約100チームが参加。これだけの参加者を集め、盛り上がるのはなぜでしょうか? 理由を探るべく、庄司哲也社長、デジコン主催チームの皆さんを交えた座談会を行いました。前編では、NTTや庄司社長ご自身のルーツから、アイデアソン成功の理由を探ります。

*本記事は、2018年12月に㈱フィラメントのコーポレートメディアで公開された記事の再掲です。

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新規事業に前向きなNTTコミュニケーションズの土壌

角:デジコンの際は本当にありがとうございました。

庄司:とんでもないです。角さんには決勝戦の審査員として盛り上げていただいて、ありがとうございました。

角:めちゃくちゃ面白かったですよ。

庄司:我々も学ぶところが多かったです。

角:デジコンの時にも思ったんですが、なんか庄司さんの言葉って、とてもキャッチーなんですよね。NTTコミュニケーションズのスローガンを拝見しても、「Transform.Transcend.」とか「前へ、先へ、外へ」とか。ああいうワーディングって想像なんですけど、庄司さんが結構考えられてるんじゃないかなと思ったんです。

庄司:この間、記者との情報交換会がありまして。これからNTTコミュニケーションズは、特にグローバル事業で事業再編をしなくちゃいけない。ハイパージャイアントといわれるような企業に対抗して、国際競争力をどう確保していくかっていう話をフランクにしたんです。そのときに記者の方から、「でも、なぜ今やるんですか?」といった質問が出たんですけど、思わず「晴れた日にこそ屋根を直すべきでしょう」って話しましたね。

角:うまい! それ、用意してはったわけではないんですよね?

庄司:まあ、アドリブですね。

角:アドリブでそれがスッと出るっていうのはすごいです。

庄司:アドリブが多くて、よく怒られちゃうんです、司会の方とかにも(笑)。

角:たとえ話がすごくお上手で、庄司さんが普段やられている経営の一端をちょっと垣間見るような気がします。いろいろお話を聞いてみたいなって思ったのは、やっぱりデジコンがきっかけで、社内にものすごく前向きな風土が浸透しているなと感じたからです。日本の大企業で、こんなに新規事業に対して前向きな会社ってあんまり見たことがなくて。他の会社は、経営層や若い社員はともかく、中間管理職がついてこないケースが多いです。

庄司:一定規模の組織になって、収益性や利益を常に考えなくちゃいけない立場の人がプランを考えると、得てしてコンサバになりますよね。よく、歯車になるのは嫌だって表現がありますけれども、せっかく心地よく回っている歯車のギアをあえて変えていくのは嫌だなって思うのが普通だと思います。

でも我々の業界はたまたまかも知れませんが、技術が日々更新され、ディスラプティブなサービスが出てくるんです。そういう刺激の多い環境なので、ギアを変えないとスピードにもついていけない。原動力をガソリンじゃなくて電気に変えたほうがいいんじゃないのかとか、トライしてみないと何がこの市場でフィットするのか分からないっていうのが、常に起こっている業界なんです。

角:もともと、それがNTTコミュニケーションズのDNAになっているんですね。

庄司:NTTはもともと逓信省(ていしんしょう)というお役所だった。逓信省が電気通信省になって、電電公社になって、NTTで民営化されて、さらに国際競争を意識して、我々のような事業会社が幾つかできた。そういう変遷を経ているので、自分たち自身がトランスフォームの歴史を作ってきたんです。外部環境やコア技術が変わっていくことによって、我々がやらなくちゃいけないことも変わっていく。ある意味マグロと同じで、泳いでないと死んじゃうところもあってきついんですけど(笑)。

変革のタイミングで電電公社に入社

角:そういったトランスフォームやイノベーションに対する考え方は、どういうところから蓄積され培ってこられたんでしょうか?

庄司:私の経験でいうと、入社したときの原体験が大きいんです。入社した昭和52年って、電電公社そのものだったんですけど、幹部面接のときに「あなたはなんでここに入りたいんだ?」って聞かれました。「技術革新の最先端のことをやれそうな気がするので」と答えたんですけど、「そうなんだ、その技術が必ずしも今の法制度の枠組みじゃ、生かし切れてないところもあるんだよ」と言われて。面接に来た学生にそんなことを説く人がいるんですよ。「それを変えようと思ってるんだ、我々は」と。

その時は、どういうことなのかよく分からなかったんですけど、それは民営化を目指しているということだったんですね。当時の電電公社の予算は国会に提出して、承認されないと投資もできないなど、とても厳しい統制があった。もっと自由にやれたらいろいろなことができるということを盛んに先輩が説くんですよ。だから、もし変化することが嫌ならうちに来なくていい、変わってくことに対して臆病な人は来なくていい、と言われたのがすごく印象的でした。

角:すごいなあ。ものすごい変革のタイミングだったんですね

庄司:面白いなあ、と思いました。そういう人が中堅のリーダーの中にいるし、幹部に面接されても同じこと言われるんです。最後は総務理事面接っていうのがあって、今でいう副社長級の人たちに面接されたんですけど、「君は変わってるね」と。「いや、この会社も変わってると思います」「いや、我々はまだ会社じゃないんだ」とか(笑)。

角:めちゃめちゃ面白いです。

庄司:それで入社したら、たまたま民営化のプロジェクトに入れられて、省庁に説明にいくわけです。我々はこうやって世界を視野に入れてやっていく、この技術で日本の経済や社会を支えられるようになりますといった説明をしました。民営化されるとバラ色で、電電公社のままでいると駄目になっちゃうっていうことを一所懸命説きました。エネルギーは使うんですけれど、変わっていくっていうことがこんなに刺激的で面白いんだというのは植え付けられましたよね。

角:原体験がそれだと、変化することに免疫ができているんですね。

庄司:民営化されたときに社長になったのが真藤恒(しんとう・ひさし)さんという方で経営者として抜群に優秀な方でした。石川島播磨重工業株式会社(現:株式会社IHI)のトップを経験されていて、いかに省エネで、荷物が積めるかっていう現在のタンカーの原型を作った人なんです。そういう合理的な人から見ると、君たちの言ってることが分からん、と。なんで「加入者」って言うんだと。「加入者」って君たちにとっては収益の源泉なんだから、「お客さまだろう?」と。

角:なるほど。

庄司:加入させてやってる、電話を引いてやってるみたいな思いがあるからいつまでたっても変わらないんだと言うんですよね。これ、いまでいう「デザイン思考」ですね。市場やお客さんが求めてるサービスをどうやって技術的に提供してくかっていうこと。

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角:じゃあやっぱり、NTTコミュニケーションズにはそういうDNAが刻み込まれているし、それはデジコンにも通じているんですね。

庄司:私は通じてると思っています。中堅マネージャーはコア事業のミッションをちゃんと遂行するんだけど、新しいものにもチャレンジしなくちゃいけないし、それができる人を育てなくちゃいけないっていう意識が必要。いまの延長線にはない事業にチャレンジしていいんだよっていうのを、私はどうしても社内に言いたかったんですよね。

角:そういう思いを強く感じます。

庄司:マネジメントクラスにとってイノベーションの必要性というのは理解できる。だけど、その下にいる若い人たちにとっては、経営層ってある意味雲の上の存在です。世の中を変えたいという思いとアイデアはあるけれども、会社の既存の枠組みの中にいると、なかなかできないって思いがちです。それは彼らが悪いんじゃなくて、それをやってもいいんだっていうきっかけがやっぱり必要なんです。彼らだけの力じゃきっかけは作れない。だからデジコンのような取組みを行うと、やっていいんだ、やれるんだって思ってもらえるんじゃないかなという気がしていたんです。

角:それはやっぱり、庄司さんにそういう変革に対しての前向きなマインドがあればこそ、ですよね。プロジェクトメンバーがデジコンのロゴを庄司さんに説明にいかれたときのエピソードを聞いたんです。それをぱっとご覧になって、すっと机に戻られて、社長自らぐいっと「DigiCom」の“m”に人がスクラムしているようなイラスト(以下のロゴを参照)をつけ足されたと。そういうのも、常に会社のあるべき姿を考えているからできる行動だったり発想だったりすると思うんです。

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庄司:化学反応、ケミストリーはいつも意識しているんだと思います。これとこれは別の要素なんだけど、かけ合わすとシナジーが出たりイノベーションになる。そういう組み合わせやきっかけを作るっていうのは経営者、リーダーとしてとても大事なことです。

角:そういう場をデジコンで実際につくられて、しかも社員みんなが参加したい場になっているように思います。

庄司:何回連続で決勝戦まで残りましたとか、ここで金賞取ると3連覇ですとか、そういう感想を社員に言われるとうれしいですね。みんな目指すものがあって来てもらえています。

社内巻き込み・タレント発掘で出る杭を上げる

角:その場をまさに切り盛りされている、「デジコンの母」のような斉藤さんの動きがまた素晴らしいと思います。

庄司:そう。やっていることは、単なる司会・進行役だけじゃないですからね。

角:ビジネスイノベーションの部門でやられているサポートに参加させていただいて、各チームにもお話を聞いたんですけど、斉藤さんがいたから参加しましたみたいな人もいるんですよ。

庄司:素晴らしいね。

角:だから、斉藤さんがどうやってあの場をつくられているのかということも聞いておきたいです。募集開始してから、参加しやすくするためにデザイン思考とか、いろんな講座、セミナーをやられてると思うんですけど。

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斉藤:参加する人が技術職だけではなく、営業職やサービスの運用をやっている社員もいるので、テーマに直結したサポートをハンズオンで提供するというのが、セミナーをやり始めた最初だったんです。そこにデザイン思考や、今回ですと映像制作のハンズオンも追加されてきました。

角:社内から、一芸を持った社員を発掘して先生になってもらうというやり方なんですね。

庄司:まさに社内巻き込み型、社内のタレント発掘だね。

角:これ、すごいですよね。社内の人材がこうやって発掘されていく場にもなっているってことですよね。

庄司:出る杭をもっと上げていくという役割ですよね。

角:あとデジコンは新規事業の提案コンテストなんだけど、プロトタイピングを必ず伴っているのもすごいです。

庄司:最初は形にならなくてもアイデアだけの応募でもいいよって言ってたんですけど、やっぱり形にならないと伝わらないので。ビジネスにつながりやすいようにプロトタイプまでできたらいいよねってことで、これもどんどん発展してきたんです。

斉藤:第1回のデジコンはアイデアソンとロボットの部って形で分けていました。でも、出場する社員の満足度は、やっぱり自分で手を動かして作ってみた方がはるかに大きかったですし、そういう機会を欲してる人も多かったんです。

角:参加者が自ら楽しんでらっしゃる感じがすごくします。アイデアソンというよりもハッカソンに近い。NTTコミュニケーションズってエンジニアリングの会社、モノづくりの会社なんだなって印象をすごく受けました。

庄司:最終的にモノになるのか、コトになるのか、あるいはサービスになるのかはチーム次第ですが、既存の組織や発想では作りにくいものが、このコンテストでできたらいいなと思っています。ロボットにしてもIoTにしても、この技術をどう使うかをもっと自由に発想して組み合わせて欲しいし、発見をして欲しいと思っています。

角:ちなみに今回の参加者数はどれくらいだったんですか?

斉藤:もともとは111チームのエントリーがありまして、その中から統廃合や残念ながら途中リタイアにより、最終的に96チーム、約650人が参加しました。

角:うおおお、96チーム……。社内イベントとしては、ちょっと尋常でない数ですよね。

庄司:職場をまたがってチームワークができるのもとてもすてきだなと思っています。足りないリソースやスキルがあったら、これが分かる人は社内のあそこにいる、じゃあチームに入ってもらおうといった巻き込みが行われます。

角:普通の会社ではそこまでできないですよ。参加がしやすいように、社長として工夫していることはあったりするんでしょうか。

庄司:仕掛けてるわけじゃないんですけど、私のモットーに「知好楽」という『論語』の言葉があります。知好楽の知は知るで、好は好き、楽は楽しい。仕事や仲間を知って、好きになれることはとても大事だし、仕事であっても楽しんでやれるようになるといいねってって話しています。「知好楽で仕事をやろうよ」って。

角:それが伝わってるんだろうなって思います。


(後編に続く)


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