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新刊『進化思考』が話題の太刀川英輔さんと、妄想トークしました 1/3

こんにちは、フィラメントの宮内でございます。最初に断っておきますと、僕は太刀川英輔さんとリアルでお会いしたことがまだありません。なんならインタビューをするというのに新刊の『進化思考』を読んでませんでした。でもですよ、「リアルでお会いしていない人との出会い」「読まれていない書籍」って価値がないんですかね。そんなことはないと僕は思いますし、コロナ禍を経た人間の態度とはリアルとバーチャルでの価値基準にバイアスを付けない方がよいのではないでしょうか。価値は相対的なものなので、人によって価値は無限大にもなりうると思うわけです。太刀川さんとその著書『進化思考』は、僕にとってそういうもの。という壮大な前置きとともに、この対談は始まるわけです。

宮内:『進化思考』はタイトルだけで傑作とわかる人にはわかると思っているんですけど、実はまだ読んでないんです(笑)。そもそもなんで本をつくろうということになったんですか?

太刀川:発端を言うならば、僕はずっと「創造性とはどういう現象なのか」を研究して、はや15年。僕の修士論文もそういう内容なんです。

宮内:なるほど。その頃まで遡るんですね。

太刀川:創造やデザインという現象と、言語という現象がどう似ているのかという論文を書きまして。その後に僕はデザイナーになるんですけど。なんでこんな研究をするかというのも、ひとえに「自分の創造性を高めたい」という理由からでした。でもある時気づいたのは、デザイナーとして社会はどうしたら良くなるのかを探求してきましたが、創造的な人の数よりも、創造的にしなきゃいけない社会課題の数の方が、比較をすると圧倒的に多いわけです。

宮内:多いですよね。

太刀川:そうなると全部自分でやるなんて、もうそんなおこがましいことは無理ですよね。しかも創造的な人は必ずしも課題に興味ないわけです。だから興味がだんだん「自分が創造的になる」という考えから「未来に役立つ創造的な人をどうやって増やすか」という考えに、それこそ10年ぐらい前に移っていったんです。

その頃は言語とデザインの類似性を探究する「デザインの文法」というワークショップを、東大のi.schoolとかSONYとかHondaとかいろいろなところでやっていたんですけど、だんだん僕の中で言語性というだけでは話が解決しないところが出てきて。つまりアイデアがいっぱい出るということは担保できても、それをどうやって本質的観点で選びとっていくのかということには行きつかない。そこからだんだん自然科学的な探求が絡み合って、これって生物の進化のメタファーの方が、さらに上手にデザインできるんじゃないのかと思うようになってきたんです。

宮内:それが何年前ぐらいですか?

太刀川:それが6、7年ぐらい前ですかね。その時にちょうど「ギンザ・グラフィック・ギャラリー」で展示をすることになったんですね。それが「かたちと理由」という展示会です。

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宮内:この絵ね。見ていてわくわくします。系統樹ってやつですよね。

太刀川:いろいろな進化図を立体で作りました。例えば乗り物の進化図もこの時に描きましたが、自然物だけでなく、人工物も混ぜて進化の系統樹を描いていくんです。

宮内:めっちゃ面白いね、これ。

太刀川:結構いい展示だったんです。これは自然界のテクスチャーである蝶の羽と、それに近い色や質感の紙を集めて比較するという展示。

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何が面白いかというとですね、例えばこれとかティファニーに見えません?

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宮内:見えるね。見えるね。

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太刀川:Nikeっぽい色なんかもある。要するにブランドカラーのロジックと自然が似ている。そうやって人工物と自然物を対比させることで、いかに創造という現象と進化という現象が似ているのかというのを探求してみたんです。

宮内:早いですよね。ビジネスパーソンはアートが大事といった文脈が流行り出すよりも、2年くらい前にこういう展示をやるのはすごいなと思います。

太刀川:この時の探求が僕の中でずっと残っていました。その頃、慶應の特任の准教授に就任し、イノベーションを教えることになって。イノベーションを考える時に、ひょっとしたらこの自然と人工物とか、進化と創造を対比させるという考え方とかが使えるかもしれないと思うようになりました。そこから進化論や生物学に僕はのめりこんでいって、いまや在野の研究者みたいになっています(笑)。

宮内:もともと好きだったわけですよね。

太刀川:自然から学んでデザインをつくるということをずっとやってきたところもあって、僕の中では全部繋がっていますね。

宮内:じゃあそれがある程度分量がまとまって体系化したので、広く伝えていくということで書籍にしたんですね。

太刀川:そうなんですけど、そこに至るのにも紆余曲折あって。

宮内:ちょっと特殊な出版形態ですよね。

太刀川:そうなんです。僕の目的はずっと「創造的な人を増やす」ことだったので、まずは進化思考を授業やワークショップにしました。そこで「コクリ!キャンプ」というプロジェクトに関わりまして。

宮内:はい、知っています。ヤフーCSOの安宅和人さんがよく参加してるから行きたいなと思っていて。

太刀川:コクリは三田愛さんが始めたんですけども、僕もディレクターとしてずっと関わっていたんです。そのプログラムとして、教えていた1つが進化思考だったんです。

宮内:あれは妄想力の高い、ワークショップというかミートアップですよね。

太刀川:コクリは日本を変えられるかもしれない素晴らしいイノベーターの人が300人くらい、みんな肩書をはずして仲良くなっていくコンセプトで。そこに安宅さんもいらっしゃって、「風の谷」というワードに出会ってしまうわけなんですけど、いろいろな人がいろいろなことを始めちゃっているんですよね、あの場から。

宮内:根っこが繋がっている感はすごいありますよね。

太刀川:コクリのコミュニティの中で、英治出版の社長の原田英治さんと、海士町を活性化している阿部裕志さん。この2人が「アマゾンジャパン=海士存(あまぞん)Japan」とか言って、出版社を立ち上げることになり。ご縁があって僕も海士町でコクリのワークショップをやったんです。

宮内:そうか。そういう繋がりもあったんですね。

太刀川:海士町の出版社立ち上げが盛り上がっているうちに、彼らも進化思考はめちゃくちゃいいので、最初の本は「進化思考」だということになりまして。実は進化思考自体は、いくつか出版社からお話をいただいていたりして。そんな時に仲間たちと出会って、まだ存在してない出版社が人口2,000人の離島にできると、それがなんか……。

宮内:進化論的にもいいですね(笑)。

太刀川:そう、しっくりきたんですよね。超うまくいかなそうって思いながらしっくりきちゃったみたいな(笑)。絶対に大手出版社から出した方が営業力は強いとか思いながらも、いややっぱり世界は辺境から変わるでしょみたいな(笑)。変えたい!みたいなことで。

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宮内:太刀川さんは「巻き込まれ力」もすごい強いなと思っています。「これおもろいね」と言っているうちに人と仲良くなって、何かを生み出すみたいな。イノベーターの必須要件ですよね。

太刀川:そこから3年かかりましたね(笑)。僕の遅筆が影響したというか。

宮内:ワークショップでやっていたものが、さらに言語化されてエッセンスが凝縮されたところがあるんじゃないですか?

太刀川:おっしゃる通りで。ワークショップだとわりとふんわりした言葉、例えば「解剖って大事だよ」って言えるんだけど、この本がなまじ「系統的に探究する、生態系的に探究する」っていう話をしているから、解剖について書こうとするとなんで解剖というアプローチを始めたのかって―――。

宮内:その前提から書かないといけなくなる(笑)。

太刀川:「最初にピラミッドつくった人って、最初に解剖を始めた人と一緒だったの?へぇ~」みたいなことまで遡る。

宮内:そうなの? それは知らないわ。

太刀川:知らないでしょう。そうなんですよ。

宮内:マジで「進化思考」読まなきゃ(笑)。

太刀川:そういう探求をしていってしまうと、終わらないんです。終わらないんだけど、終わらせなきゃいけないみたいなことになる。でも結果として、人類史の知恵をたくさん探求することになったのはすごく良かったです。「この本を書くという探求」そのものが本当にライフワークになっていて、それが終わってしまって、本になったことがちょっと信じられない。

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宮内:残念な気持ちですね。

太刀川:サグラダ・ファミリアのように、いつできるんだみたいな進行だったのが、これ以上増やすと1,000ページになっちゃうからさすがに駄目だろみたいな感じで。500ページだし、まあいいかということで出来上がりました。

宮内:何度も言うんですが、まだ読んでいないんで。期待値ばかりが爆上がりです(笑)。

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【プロフィール】

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太刀川英輔(たちかわ・えいすけ)
NOSIGNER代表 / 進化思考家 / デザインストラテジスト / 慶應義塾大学特別招聘准教授

デザインの社会実装で美しい未来をつくること、自然から創造性の仕組みを学ぶ「進化思考」を提唱し変革者を育てることを理念に活動を続けるデザイナー。
プロダクト、グラフィック、建築などの領域を越え、様々なプロジェクトで総合的な戦略策定を行う。これまでに100以上の国際賞を受賞し、多くの国際デザイン賞の審査委員を歴任。
主なプロジェクトは、東京防災、PANDAID、2025大阪・関西万博日本館基本構想など。
著書に『進化思考』(海士の風、2021年)、『デザインと革新』(パイ インターナショナル、2016年)。


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