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目標は「100の新産業」をつくること! 元レノボ・ジャパン社長 SUNDRED CEO 留目真伸氏と緊急座談会

近年、数多くの大企業がイノベーションに取り組んでいます。
社会や技術の急激かつ不可逆的な変化により、既存のビジネスモデルの寿命が尽きつつあることが背景にあり、日本では特に、大企業がスタートアップと連携してイノベーションに取り組む動きが顕著です。「オープンイノベーション」と称されるそれらの活動は、しかし、これまでのところ有効な成果を挙げているようには見えないのが実情です。 
このような現状に対し、一石を投じようとするプロジェクトが新たに発足しました。レノボ・ジャパンの代表取締役を含めて国内外の企業で要職を務めた留目真伸氏が立ち上げた「SUNDRED」です。
後編では、フィラメントのCOOである渡邊と、東京ミッドタウン日比谷『BASE Q』で大企業のイノベーションを支援する光村圭一郎氏(三井不動産)も加わり、トークを繰り広げます。(文:伊藤紗恵)

前編はこちら↓


【プロフィール】

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留目真伸(とどめ・まさのぶ)
レノボ・ジャパン 元代表取締役社長。HIZZLEにて「経営者の育成」「未来型企業へのトランスフォーメーション支援」に取り組む。資生堂CSOを経て2019年7月よりSUNDREDの代表に就任し、「新産業共創スタジオ」を始動。

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光村圭一郎(こうむら・けいいちろう)
三井不動産「BASE Q」運営責任者。2015年よりオープンイノベーションに関わり、スタートアップとの協業案件を多数担当。

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角勝(すみ・まさる)
フィラメントCEO。新規事業立ち上げ支援を幅広く手がける。元大阪市役所職員という異色の経歴の持ち主。

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渡邊貴史(わたなべ・たかし)
コンサルファームやPE等での知見を活かし、2019年6月フィラメントCOO、7月SUNDREDパートナー。2019年5月中小企業庁SME研究会委員。


目標は「100の新産業」をつくる

角:とても興味深いお話だったんですが、ここで初歩的なことをお聞きします(笑)。そもそもSUNDREDの語源ってなんですか?

留目:よくぞ聞いてくれました(笑)。

僕は今、HIZZLEという会社を経営していますが、これは「日、出ル(ひ、いずる)」からとっているんです。SUNDREDも、「100(Hundred)の産業(太陽 Sun)を生み出す」という思いから名付けました。

光村:100の新産業って野心的ですねえ(笑)

僕も先ほどから興味深くお話を伺っていたんですけど、留目さんの構想には、新しいオープンイノベーションの可能性を感じるんですよね。

どういうことかというと、これまでのオープンイノベーションってある意味、単体企業の成長戦略や生存戦略に基づく方法論という色合いが濃かったと思うんですよ。

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(左から渡邊、光村さん、角、留目さん)

角:だから、どうしても個別企業同士の組み合わせになってしまいがちですよね。

光村:そうなんです。
もちろん、それはそれで個別企業の課題としてやるべきことで、必要なこと。そしてBASE Qやフィラメントもそれをビジネスとして手がけているわけです。ただ、一つの課題として、どうしても規模感が縮こまってしまうジレンマもあったように思うんですよ。

角:そういう側面はあるね。

光村:今回、SUNDREDという器が新たに生まれることで「産業をつくる」というレベルが構想できるようになるのは、日本にとっても大きな一歩だと思うんですね。これはいいなあと。

留目:ありがとうございます(笑)

角:僕が面白いと感じるのは、SUNDREDが個人のアイディアのようなものまで対象にしようとしていることなんですよ。

大企業がオープンイノベーションでスタートアップと組むときって、アーリー期以降が中心になるじゃないですか。つまり、アイディア段階を越えて、ある程度は事業として固まってからお付き合いを始めるという。逆に言えば、アイディア段階のものを大企業のようなレイヤーで関わったり支えたりする仕組みは、ほとんどなかった。

留目:そこは僕も課題だと思っていて。

大企業で新規事業に取り組もうとすると、「社内にはアイディアがない」「サラリーマンからはいいアイディアは生まれてこない」という言い方をする人が多いじゃないですか。

光村:多いし、僕も言っています(笑)

留目:でも僕は、人間は本来、もっといいアイディアを持っていると思っている。ただ、残念ながらそれが表に出てきたり、形にするためにみんなで具体的に動いたり、という仕組みが欠けているんじゃないかと。

光村:わからなくはないですね。「夜の飲み会だけ雄弁」みたいな人もいますし(笑)。アイディアがないとか危機意識がないというよりは、それをちゃんと発言する場とか、活かしてもらうための仕組みがないという問題なんですかね。

渡邊:せっかく機会を設計しても、「あんまり突飛な案を出してもどうせ採択されないだろう」とか「浮くのは嫌だな」なんて考えて、安全パイなアイディアで応募してしまうとか。

留目:なんかもったいないと思うんですよ。だから、そういう人たちをつなげ、具体化するための器になることも、SUNDREDは担っていきたいんですよね。

角:いいですね。

留目:人材の流動性が高い国だと、そのようなアイディアを持つ人はすぐに起業して挑戦しますし、そこにどんどんお金と人が集まってくる。でも残念ながら日本は今のところ、そういう構造ではないですから。SUNDREDがその一丁目一番地になれればと!

「インタープレナー」という新しい生き方

渡邊:僕は今回、フィラメントのCOOであるのと同時に、SUNDREDにもパートナーとして参画します。僕は留目さんの構想はもちろん支持していますが、「インタープレナー」という考え方にもとても共感しているんです。

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角:インタープレナー?イントレプレナーではなく?

渡邊:インタープレナーです。詳しい説明は留目さんから(笑)。

留目:これまでの人材って、大企業サラリーマンなら大企業サラリーマン、起業家なら起業家というふうに、自分の軸となるキャラクターが決まっていて、そこでしっかり役割を果たしていくというイメージがあるじゃないですか。

光村:ありますね。僕も「大企業内のイントレプレナー」というイメージで動いています。

留目:ただ、僕ももともとは大企業畑の人間だけれど、スタートアップに投資したり経営に参画したりすることもあるし、自分で起業もするし。自分が何役も演じていて、その境界線がとても曖昧になっていると感じるんですよ。このように、複数のキャラクターを自由自在に動ける人を、僕はインタープレナーと呼んでいるんです。

光村:なるほど。

留目:光村さんも、たしかに今は三井不動産に所属しているし、三井不動産のイントレプレナーではあるけれど、いろんな顔をもって動いてますよね。

光村:「今は」という言い方に引っかかりを覚えますが(笑)、たしかにそういう面はありますね。

留目:だから光村さんも、イントレプレナーというキャラを内包したインタープレナーなんです。

渡邊:このインタープレナーという考え方が、僕はとても面白いなと思っていて。
というのも、新しい産業をつくるとき、インタープレナー的な人ってとても重要だと思うんです。

角:お、ここで前編の「目利き」の話につながる予感!

渡邊:そうそう(笑)。
新産業創出には多様なステークホルダーが参加するわけですが、例えばAさんがあるプロジェクトでは大企業のリソースを活用するイントレプレナーとして参加する一方、別のプロジェクトでは個人投資家だったりプレイヤーだったりの立場で関わることもあり得る。個人の果たす役割が、とても多面的なんですね。

留目:角さんがおっしゃっていた目利きの話もそうで、100もの新産業をつくろうとすると、本当に幅広い知見や経験を集める必要がありますよね。もちろん、多くの人が参画することでその多様性を確保することはできるけれど、一人ひとりが多面的であればなおさら強いなと。結果、SUNDREDでサポートできる領域も、どんどん広がっていけるなと。

角:複数のステークホルダーをまとめ、そのリソースを最大限活用しようとすると、どうしても調整は必要じゃないですか。そのときも、インタープレナー的な視点を持っている人のほうが成果を発揮しやすいですよね。

留目:そうですね。トリガー事業の成長支援に参画したステークホルダーが、持ち寄ったリソースをプラットフォーム事業として事業化する際は、出資を行ったり、プラットフォーム事業から生まれた利益をどのように共有、還元するかという調整が発生します。そんなときに、インタープレナースキルは必ず役に立つでしょうね。

角:なるほど。ポジションに左右されず、自由に新しいことをやっていくマインドの持ち主としてのインタープレナーですか。いいなあ。多面的であるとか流動的であるとか、ここはやはり今後の社会のキーワードになりますね。絶対。

留目:SUNDREDやインタープレナーの着想には、光村さんから伺った話が影響している部分もあるんですよ。

光村:ん!?マジっすか?

留目:光村さんが前に、「既存の価値が大量に集積し、交流する都市は、イノベーションを生み出すための装置」「にもかかわらず、東京からはイノベーションが生まれていないのが最大の課題」という話をしていたじゃないですか。

光村:ああ、ありましたね。珍しく不動産屋というかデベロッパーぽいことを言っているという(笑)

留目:僕から見ても、今の都市は「枠組み」が強すぎて硬直化しているように思います。その典型例が「企業」です。個別の企業という枠にこだわりすぎてしまうから、せっかくイノベーションが生まれるための既存知が集積していても、交流しないし、新たな価値も生まれない。だから、「新産業をつくる」という目的を掲げることで、それを壊したいと思ったんですよ。

光村:そういうことですか。納得!でも、だとすると僕にとってSUNDREDは他人事ではなくなりますね(笑)

渡邊:角さんも光村さんもぜひパートナーに!

留目:お二人にもぜひ参加していただきたいですね(笑)

角:僕はええけど。

光村:僕は会社との調整がつけば(ゴニョゴニョ)

一同:

留目:SUNDREDでは、多様なインタープレナーに関与してもらうために「ポイント」という制度も導入したいと考えています。例えばあるプロジェクトで、案件を発見した人に●ポイント、エコシステム構想書に貢献した人には●ポイント、重要なステークホルダーを獲得した人には●ポイントという形で、各人の貢献度が見えやすい形をつくります。最終的には、プロジェクトを通じてSUNDREDが獲得した利益を、ポイントに応じて関わってくれた人たちに還元するつもりです。

渡邊:真面目な話、「新産業を共創する」という仕事には、さまざまな視点が必要なんです。エコシステム構想書をつくるにもいろいろな産業の知識が必要だし、ステークホルダーを集めるための幅広いネットワークも大切。プラットフォーム事業をビジネスとして成立させる段階では、事業開発の経験やスキルも求められます。

角:将来的には、学生が「インタープレナーを目指す」なんて考えてくれたらいいですよね。銀行に勤める、メーカーに就職するというのではなく、どんな業界、どんな職種に籍を置いたとしてインタープレナーとして活躍することが大事だというふうに、新しい常識になれば。

留目:それでは、どうやら光村さん以外はインタープレナーとしてSUNDREDに参加していただく流れになったので(笑)、結束の乾杯としましょうか!

光村:乾杯は参加しますし、インタープレナーは僕も目指します!(笑)

留目:では、乾杯!

一同:乾杯!

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