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Beyond the Biz ~ビジネスを越境せよ~ #4 ビジネス×旅 イベントレポート

「旅」からビジネスを越境する

フィラメントの宮内です。

1月24日、荻窪の「旅の本屋 のまど」にてイベント「Beyond the Biz ~ビジネスを越境せよ~ #4 」が開催されました。

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今回で4回目となるこのイベントは、「オトナの知の嗜み」シリーズです。リベラルアーツの大切さを語り合うイベントとして、これまで哲学、アート、「生活(結婚・家族)」をテーマに実施してきました。

今回のテーマは「旅 ~ぼくらが旅に出る理由~」です。別にサブタイトルから先に考えたわけではありません(笑)。

旅のあり方が随分変わってきたと思いませんか? これまではメディアや雑誌で取り上げられる観光スポットをめぐるような旅が主流でしたが、いまはInstagramを中心としたSNSにより、スポットや検索の仕方も変わってきました。そんな「旅」にまつわる人の行動変容のあり方を探求していくという趣旨です。

多彩なプロ3人による旅のみやげ話

まずはモデレーターのハブチンより、BTBはKNOW-HOW型ではなく、KNOW-WHY型のイベントだということがていねいに説明されます。このあたり、昨年末のまとめ記事で書いた内容がうまく反映されていた気がします。

・まとめ記事「果たして技術や手法を追いかけることだけがビジネスなのか」(近日公開)

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牧野 友衛 氏(トリップアドバイザー株式会社代表取締役)
AOL、Google、Twitterで製品開発や業務提携を担当し、Twitterでは成長戦略の責任者として国内での普及に尽力。2016年より現職。総務省「異能(Inno)vationプログラム」や農水省、東京都などの専門委員として、 イノベーション・戦略・ マーケティングの観点からアドバイスを行う。

チェックインに続いて、さっそくトークがスタート。今回の登壇者はそれぞれ特徴があるのがポイントです。トリップアドバイザー代表取締役の牧野友衛さん、ノマド生活をしながらフォトグラファーとして活躍するのっちこと古性のちさん、葉山町のinstagramの中の人・碇野陽基さんの3人。

まずはそれぞれ自己紹介と旅のみやげ話を披露いただきました。

トリップアドバイザーの牧野さんは、アートと建築を見る旅が定番で、昨年の冠水被害まっただ中のベネチアビエンナーレに行った弾丸ツアーのお話を。

のっちさんは、美容師からウェブの制作会社に転職し、そこを辞めて行った初の海外旅行が世界一周だったとか。かなり無謀で辛い思い出もかなり多いものの、本当に行ってよかったそう。旅ってそういうものですよね。

碇野さんは新卒から葉山町役場の公務員に。そして昨年結婚して初の海外旅行がハネムーンで、アイスランドへ。島全体がジオパークでどこを撮っても絵になる、かつ一度も現金を使わなかったことに驚いたとのこと。

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旅はいかに変化してきたか?

続いては「旅の変化」について、それぞれの立場から語られました。まずは行き先や観光スポットの探し方、検索の仕方の変化について。

牧野:ガイドブックではなくインターネットに変わったというだけでも情報量は無限ですし、SNSによって本来観光スポットではないところが観光スポットになった。町中に猫がいるとか、ここの風景がいいみたいなことが増えた。でもSNSと同時に重要なのがGoogle マップやオンライン地図の進化だと思う。観光スポットではない場所に行く手段を簡単に調べることができるようになったわけで、さらにスマホで利用できるようになったことで爆発的使われるようになった。それがここ10年間でインターネットが旅に与えた一番の変化。

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写真右:碇野 陽基 (葉山町 政策財政部 政策課 主任)
平成24年に葉山町役場へ入庁し都市計画課で都市計画や屋外広告物の管理を、平成26年から教育委員会生涯学習課でスポーツ振興を、平成30年から政策課で広報紙発行やドローンも活用したインスタグラムの発信を担当。職員による自主研究グループを立ち上げて町の魅力発信ポスターを制作するなど、町の魅力発信に携わる。

碇野:葉山でも、Instagramの写真で見てここを回ろうっていう若い女性が増えましたね。誰も気に留めなかったような場所、そういう場所に気軽に行けるようになった。葉山町のアカウントでも「葉山に住んだら日常的に見れる景色」を紹介しています。

ハブチン:のっちさんがどういう風に旅行先を調べているのか、めちゃ気になるんですけど。

のっち:ちょっと前まではインスタでハッシュタグを入れて調べてましたね。でも今は個の時代と言われているだけあって、自分の好きな人、自分の趣味と似ている人を見つけやすくなった。なのでその人が行ってる旅ルートをなぞったりすることが多いです。

あと最近は「〇〇と行く旅行ツアー」っていうのをよく見かけますよね。場所に行く価値というよりは、その人と同じ目線で旅を回れることに価値が出てきている。どこへ行くよりも、誰と行くということ。

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ネットに載っている情報はもう古い?

情報があふれているなか、どう探すかについての話は続きます。さらに、Instagramで旅情報を探す際の課題の一例をのっちさんが教えてくれました。

のっち:正直Instagramはユーザが多くなりすぎたので、ハッシュタグで探してみたら別の写真が混じっていたり、違うところにピンが刺さっていたりするので、いまはあまりInstagramの情報を信じていないですね。むしろ現地の人にこういう写真を撮りたいんだけどって聞くのが早いって気がつきました。そういうとこはネットには載っていない。英語がしゃべれないので全部Google翻訳でやってるんですが。私は今年30歳なんですけど、私の下の世代ってもはやネットに載ってることには飽きてきているような気がします。

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古性 のち 
1989年生まれ。2016年に会社を退職し、フリーランスへ。「日々に小さなときめきを」をコンセプトに世界中を旅しながら、日々の美しさを切り取るフォトグラファー・物書き。これまで訪れた国は30カ国以上。1年の半分を海外、半分を日本で過ごすノマド生活をしています。写真の他、コラムやエッセイ、コミュニティ運営など多方面で活動中。

牧野:日本は観光の情報がしっかり整備されているんです。それはもともと電話帳の文化から来てるんですよ。インターネット上の施設の場所情報は電話帳のデータベースを利用することで整備されてきた。トリップアドバイザーも施設で検索するのが基本で、体験でも検索できるようになったのはここ数年。

さらなる旅の変化は「住む」「暮らす」こととの融合

続いては、旅の進化の延長で、仕事と旅が融合したり、多拠点生活や移住にも繋がってきているという話。

のっち:実は最初に美容師になろうと思ったのは世界中どこでも、ハサミ1本あればできるっていう理由だったんですよね。

ハブチン:ある意味、一貫してる(笑)。葉山は移住が増えたりはしてるんですよね?

碇野:葉山は20代で一回外に出るんです。割と田舎なので、東京で働きたいっていうケースで。その反面30〜40代の子育て世代が、東京での暮らしに疲れて移住してくる、もしくは1時間で東京に行けるので海も山のあるところに住みながら東京に通う。葉山の人口の社会増減はプラスですね。

旅を抽象化することで見えてくるもの

「ここから『旅』を抽象化していきましょう」、というハブチンの仕切りから、BTBのテーマでもあるメタ認知な話題になりました。

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上記の表のまとめ方、素晴らしくわかりやすいと思いません? おおまかに言うと、非日常を体験するかつての旅のあり方から、現在は暮らしも仕事も旅も全部つながっているような変化をしてきたということですね。

じゃあ5Gやスコアリング、D2C、シェアリングエコノミー、モビリティなど、社会動向が劇的に変化しているいま、未来の旅はどうなっていくのだろうという「問い」です。

例えばこれからの旅は、日常の方に旅的なものが入るのではないか、という一例をハブチンがあげました。普段行かないお店に行ったり普段知らない場所に行ったり、普段生活している行動半径も「旅化」していくのではないか、と。

もちろん、ここに「答え」はありません。

牧野:僕はインバウンドによる影響が大きくなってくると思う。かつては日本人が海外旅行することで日本の文化や価値を相対化ができるかもという議論がありましたが、今も海外旅行の人口は2000万人しかいなくて、パスポート保有率も25%くらいで世界的に見れば結構低い。でもインバウンドで外国人が日本に来ることによって日本にいながらにして他国の文化や慣習に触れることで、日本人の価値観も変わってくる可能性があると思うんです。

例えば一泊二日の旅行が一般的な日本人の旅行観からすると、外国人が3週間日本に滞在してるということがうまく理解できないわけです。また温泉旅館の人にとっては1泊2食付きの滞在が当たり前ですが、それは日本特有の文化なわけで必ずしも外国人にとっては当たり前ではありません。他にも外国人が商店街でこんな店に行って楽しかったみたいなことに気づかされたりとか。トリップアドバイザーの例だと、ここ数年で伏見稲荷が外国人の間ですごい人気になりましたが、もともと京都での一般的な観光スポットではなく、修学旅行での立ち寄り先になったのは外国人に人気になってからです。

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ハブチン:「ブラタモリ」なんかもそうですよね。街の新しい見方を提示しているから人気があるのかも。

牧野:従来の旅の考え方だと「観光施設」という箱モノを作ったりお金をかけなければ観光客は呼べないと思いがちなんですが、外国人は商店街での買い食いを楽しんだり、レストランで食券を買うことを楽しんでいる。これらは日本でしかできない経験なわけで、かつお金がかからない。

のっち:私は未来は、移動する人としない人の差がさらに開いていくと思いますね。昔は海外旅行は十数万かかるイメージでしたが、いまはめちゃめちゃ安くなった。移動コストがどんどん下がっている。あともうひとつは、サステナブルやエコの旅が流行ってきている気がする。砂漠に緑を植えたりプラスチックを回収する旅とかが出てきている。やっぱり旅行先になにかお返しをしてくるような旅は、新しい満足感が生み出していくんじゃないかな。

ハブチン:消費から貢献、体験になるということですね。碇野さんは?

碇野:現在の話なんですけど、地元の公共交通を担っている京浜急行さんが出してくれているトラベルチケット「葉山女子旅切符」が人気で。その分、課題になっているのはオーバーツーリズムですね。人が多く来過ぎてバスがいっぱいだったりゴミのポイ捨てがあったり。でもマナーの部分だけで言えば、時代の変化を追えばわかる通り年々良くなっているので、そこは解消されていくとと思っています。

「ここに来ている人たちも旅人」の締めに感動!

さまざまな旅のあり方、旅の変化を抽象化するアプローチは、話もまったく尽きぬまま、ラストへ。登壇した3名から、それぞれ締めの言葉をいただきました。

碇野:旅行の後に写真を見返すと風景の写真には目が止まらなくて、必ず人が写ってる写真に目が止まるんです。だから僕は人を写真に入れるようにしているんですけど、それで旅をして楽しかった喜びをもう一度思い返すことができます。やっぱり旅と写真の結びつきは強くて、Instagramをやってるから言うわけじゃないんですけど、写真っていいなって思います。

牧野:新潟の十日町で大地の芸術祭に行ったときに、途中で雨が降ってきて、歩いていたら車が近寄ってきて、女の人が傘をくれたんですよ。多くの観光客が来たときに現地の人は必ずしも良い反応をするわけじゃないし、増えたからといって彼らの収入が上がるわけでもないかもしれない。でも旅行って人と会うことだし、その土地の人に受け入れられてるかどうかが重要な気がする。同じように旅行者を暖かく受け入れるということが大事。

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のっち:旅の定義で好きな言葉があるんですけど、「旅とは自宅を離れて違う場所に行くこと」っていうやつ。ってことはここに来ている人たちも旅人なんだと私は思っています。なので、五感をフルに使ってみんなで交流をして、その後につながっていけるような機会にできたらいいんだと思います。

交流会は、味噌汁をのみながら歓談

ということで、後半は例によって懇親会。今回は旅がテーマということで、旅する味噌汁屋「みそしるぼうや」から出前の味噌汁を二種類ご用意していただきました。

みんなで味噌汁をのみながら、尽きせぬ旅の個別トークで交流するのは最高にホットな時間。心の底からあったまりました!

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ちなみに会場を貸していただいた「旅の本屋のまど」さんにも店長みずからTwitter実況いただいてたみたいです。ありがとうございます!

https://togetter.com/li/1469584

イベント後にハブチンが、こんなことを言ってました。

日常の中に旅を発見するのは、様々な視点や問いを持って日常を過ごせるのかどうか、日常をどれだけ面白がれるか。まさにフィラメントが言うところの“面白がり力”につながってますね

みなさま、Beyond the Bizという旅路でまたお会いしましょう(いろいろあって、まだ次回の予定は決まっていませんが)。


(「Beyond the Biz ~ビジネスを越境せよ~ #3 」ビジネス×生活(結婚・家族) イベントレポートはこちら)


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