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NTT西日本の新共創空間「QUINTBRIDGE(クイントブリッジ)」が目指す“カオスからのチャレンジ”|オープニングパネルディスカッションレポート

西日本電信電話株式会社(以下、NTT西日本)がオープンイノベーションの推進と市場全体の活性化に貢献するために、大阪京橋を発信地とする共創空間「QUINTBRIDGE(クイントブリッジ)」を開設!
2022年3月24日(木)に開催されたオープニングイベント、「QUINTBRIDGEにおける社会実装型のオープンイノベーション」のパネルディスカッションレポートをお届けします。
NTT西日本執行役員技術革新部長 白波瀬章氏によるQUINTBRIDGEについての説明後、NTT西日本イノベーション戦略室長 市橋直樹氏、株式会社ペイフォワード代表取締役 谷井等氏、株式会社taliki代表取締役CEO/talikiファンド代表パートナー 中村多伽氏による豪華セッションが行われました。
ファシリテーターをフィラメントCEO角が務めさせていただき、QUINTBRIDGEのこれからについて様々な意見が交わされました。(文章/QUMZINE編集部、土肥紗綾)

角勝(以下、角):本イベントでは、事前にパネリストの皆さんに質問をしまして、それに対してのキーワードを既にいただいております。このあと質問に対するご回答を順に披露していただきます。こちらキーワードしかいただいていませんので、そこからさらに深掘りして皆さんに聞いていくという方式で進行していきます。
ということで、早速1問目に入りたいと思います。

「このタイミングにリアルな共創施設をなぜ作ったのか?」

角:この質問にお答えいただいたのが、市橋さんですね。

市橋直樹(以下、市橋):NTT西日本イノベーション戦略室長の市橋です。このイノベーション戦略室は、NTT西日本のオープンイノベーションを推進していく羅針盤的な機能を持っている組織になります。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

角:ありがとうございます。では、「このタイミングにリアルな共創施設をなぜ作ったのか?」についてのご回答がこちら!

「偶然の出会いとモチベーション」

角:もうちょっと詳しくお聞かせいただいてよろしいでしょうか?

市橋:はい。本日の会場でもあるQUINTBRIDGEは3階建て、総フロア面積は4,000平方メートルあります。「リモートワークの時代において社員がそんなに出社しなくなるんじゃないか」、「ニューノーマルの時代に本当にこんなのつくって大丈夫なのか」、「投資回収はできるのか」という声もよくお聞きするんですが、むしろこういう時代になってきたからこそ見直さないといけないのがリアルではないかと、あえての必要性を感じております。

偶然の出会いから生まれるものってあるんじゃないかなというのが一つ目の理由です。今いるQUINTBRIDGE会場を見ていただくと、柱が少なく、少し段差をつけた部屋があって、何となく人がいることが分かって会話も少し聞こえる。これは偶然の出会いというのを意図的につくり出す設計の工夫の一つです。

それから、もう一点がモチベーションマネジメントです。共創やイノベーションを進めていくといろんな障害にあたります。「あいつ頑張ってるな」、「あそこのチーム、何かやっていそうだな」と思えることでくじけそうなときにもやっていける。そのための場としてリアルが必要だと信じてこの場をつくりました。

角:確かに。オンラインで見られている方、分からないと思うんですけど、気配がめちゃくちゃ感じられる場所になっているんですよね。気配、そして相手がここにいるという実感が持てる場所が偶然の出会いの強度を高め、そして、人とのつながりがモチベーションに変わっていくということなんでしょうか。

市橋:はい。そうですね。

角:なるほど。これは、実際来てみないと雰囲気が分からないですね。

市橋:オンラインの皆さんに感じていただくのはなかなか難しいかもしれないですが、百聞は一見に如かずで、ここに来ていただきたいなと思っています。

角:ありがとうございます。では、次の質問にいってみましょう。次の質問、お願いします。

「QUINTBRIDGEへ何を望む?」

角:これはゲストサイドのパネリストお二人についてのご質問です。お二人の回答、二つとも開けてみていただきたいと思います。ドン!

谷井「セレンディピティ」

中村「社会課題解決」

角:お二人ともちょっと掘り下げがいがある感じですけど、中村さんからいきましょう。
中村さん、自己紹介をした後で、「社会課題解決」という回答についてもう少し詳しく教えてください。

中村:はい。株式会社talikiの中村と申します。talikiでは社会課題解決を目的として立ち上げられた事業の支援や投資、そしてそれを大手さんとおつなぎしてのオープンイノベーションということを通して、社会課題解決が当たり前になるような社会をつくるということをやっています。

私が回答した「社会課題解決」ってちょっとずつ表層的な言葉になってきてしまったなという感覚があるんです。そんな中で、これだけいろんな方が思いを寄せてつくられたQUINTBRIDGEが、本質的な「社会課題解決」につながるのをすごく期待したいんです。もう皆さん標榜しているのは存じ上げているんですけど、それでもあえて書いたのは、やっぱりこれだけ大きなリソースで、これだけいろんな方の思いが詰まっているんだったら、本質的な社会課題解決にちゃんと向き合って追求していきたいし、それを一緒にやっていけたらいいなと思っています。

角:なるほど。市橋さん、この社会課題解決への期待についてどうですか?

市橋:NTT前身の電電公社時代から社会課題解決を生業にしてきたと私は思っています。電話線を引く、インターネットを普及させていくといったこともある意味、社会課題解決といえると思いますし、ビジネスを通じて社会を良くしていくとうことを社員一人ひとりがDNAとして持っています。

社会課題解決というマインドを持って入社してきている社員がもともと多いので、皆さんの期待に応えていけると思っていますし、応えていかなければいけないと思っております。

角:素晴らしい。確かにNTT西日本の社員の方って、めっちゃ「いい人」が多いんですよね。だから僕も期待したいなという気持ちになってきました。中村さん、ありがとうございました。
では続いて、谷井さんですね。自己紹介をしていただいた後、「セレンディピティ」の意味について深く教えていただきたいと思います。

谷井:株式会社ペイフォワード代表取締役の谷井と申します。元NTTの「いい人」です。(笑)

「ペイフォワード」という会社は、持ち株会社みたいな感じなんですけれども、その下に8社ほど、今事業会社をぶら下げています。一方で、スタートアップに対して投資等もやっております。今、大体30社ぐらい投資をさせていただいて、7社ぐらい上場していただいています。これからも引き続き、関西中心でスタートアップを成長させていき全国区に知らしめていく。で、世の中に貢献していくということを主にやっている会社でございます。

「セレンディピティ」。最近、ちょっと響きがいいので、気に入っている言葉なんですけど、「偶発的出会い」みたいな感じですよね。物理的にも心理的にも、やっぱり偶発性みたいなものがすごく重要な時代だと感じています。特にコロナになってこの2年間ぐらい、この偶発性みたいなものがものすごく減っていると実感するんですね。

実は、我々の会社で、全社挙げて「もうオフィスをやめようか」と考えて1年ぐらい検討してきたんですけど、最終的にオンラインで目的だけで終わらせているコミュニケーションだと、新しいものが生まれないと言う社員が多くてオフィスを残しました。

僕自身も、スタートアップのみんなを見ていて発想のきっかけみたいなものがオンラインでは見つけにくい部分があるなと思います。このQUINTBRIDGEという場所に人が集って、リアルにコミュニケーションをとって、何もない雑談の中から新しいものを生んでいただくということを、僕はすごく期待しますね。

角:「目的があるコミュニケーションだけになってしまった」というのがオンラインの状態なんですね。そして、目的が既にあるコミュニケーションからは新たな目的が生まれてこないと。無目的的なコミュニケーション、雑談の中からこそ新しい目的が生まれるんだということかなと思いながらお聞きしました。

では、最後の質問にまいりたいと思います。次の質問、お願いします。

「QUINTBRIDGEでどのようなコトが起きる?」

角:QUINTBRIDGEで実際にどのようなことが起こると思いますかという質問ですね。

中村「解像度の高い連携」

谷井「共創型事業開発」

市橋「カオスからのチャレンジ」

角:谷井さんの回答は、実際に事業開発をされている会社の社長だからこそ出てくる言葉だなと思ったんですけど、さらに深く教えていただきたいと思います。

谷井:オープンイノベーションを考える大手の方々にぜひとも理解していただきたいのは、スタートアップには余裕がないということなんです。自分たちがやろうとしている事業以外のことをやる余裕なんてどこにもない。資金的にも、人材的にも、時間的にも。

角:それはそうだ。

谷井:僕が「共創型事業開発」と書いたのは、そのスタートアップの状況を理解した上でそのスタートアップの事業を伸ばすなどの形でオープンイノベーションを描けるかどうかなんだろうなと思っているからです。スタートアップが勢いを失ってしまうのはどちらにとっても幸せではないので、「共に創ってくださいね」というもので。

角:中村さんもうんうんとおっしゃっていましたけど、コメントいただけますか?

中村:はい。私の回答「解像度の高い連携」にもつながるんですけど。今、谷井さんがおっしゃったみたいに、ベンチャー側はいろいろなものが足りない中で、一つだけめちゃめちゃ輝くものを持っていて、それが何かしらの形でビジネスになるということしかできないんです。なので、そういった解像度が高く保たれた状態で大企業側がベンチャーを見ることが効果的な連携にはすごく大事だと思っています。

それを実際、セレンディピティの中でどうやってやるかというのをずっと考えていたんですけど。商談や情報交換のような目的ありきのコミュニケーションではなく、例えばここで作業しているときに、「最近どう?」「そういえばあの件どうなった?」というコミュニケーションがあって、その中で解像度を高めていってもらったりとか。終わったら飲みにいくとか。そうすると、仲間とか友達とか居場所からのスタートになるので、お互いがやりたいことに対する解像度も高くなるんじゃないかなと思って。

角:オープンなコミュニケーションの中で自然にお互いを知っていき、そしてその中で相手の望むところが何となく把握されていく中で、ちょっと仲間になっていくみたいな雰囲気ですか。

中村:そうですね。「自分たちと一緒にやりたいのかどうか」ってすごく重要じゃないですか。

角:相手がポジティブにこっちのことを知りたいということが感じ取れると、こっちも胸襟を開いて仲良くなっていきやすいですよね。

谷井:僕、この場所に1つ提案があるんです。この前、QUINTBRIDGEができるから下見で京橋の街で21時までの間で飲みにいったんです。で、飲んでいたら、スーツの似合う街じゃないなと思ったんですよ。

角:そうなんですよ。スーツが似合わないんですよね。

谷井:パーカーぐらいがちょうどええな、みたいな。

角:そうです。そうです。

谷井:
QUINTBRIDGEのドレスコードをパーカーとかにしませんか?

中村:してほしい。

角:いいですね。

市橋:私は今ジャケットを着てきておりますが、既に普段からパーカーや私服で来ています。役員も、谷井さんがおっしゃった「ドレスコードはパーカー」でいいと言ってくれると思います。怒られることがあれば、役員に責任を取ってもらいながらやっていきたいと思います(笑)

角:ありがとうございます。ドレスコードはパーカー、いいですね。
ということで最後、「カオスからのチャレンジ」とお答えいただいた市橋さんにお話いただきたいと思います。

市橋:はい。都心であり下町であって、学校やオフィスなどいろんなものが混ざり合っている京橋の良さを生かしていきたいなと思います。

それからもう一つ。新規事業や共創をしていくときに、大企業同士だけではなく、企業・ベンチャー・大学・自治体といった多くのプレーヤーで取り組んでいきたいと思います。それぞれ想いがあったり、利害関係があったりしてカオスになると思うんですが、それを超えたところに次の世界があって、そこに向かってチャレンジしていきたいなというところで、これを書きました。

角:京橋という場所は、関西の結節点でもある多様性豊かな街ですもんね。多様性があるということは、逆にコミュニケーションがタフになっちゃうということでもありますよね。非常にせめぎ合いがあったりするだろう。でもそんな真剣なお付き合いの中から新たなものが生まれていく、そういう期待が満ち満ちている街の中心がこのQUINTBRIDGEになっていく。そんな期待を非常に強く感じたセッションでした。

改めまして、このパネリストの皆さんに大きな拍手をもって、このパネルディスカッション締めていきたいと思います。皆さん、どうもありがとうございました!


【プロフィール】

市橋 直樹
西日本電信電話株式会社 イノベーション戦略室長


1996年NTT入社。2000年、NTT西日本の新事業として設立されたNTTスマートコネクト社立ち上げに参画し、ネットビジネス隆興期のクラウドビジネスを経験。2007年にNTT西日本に復帰して、フレッツ光の提供開始に携わったほか、他企業との協業でビッグデータを活用してオンラインとオフラインの融合を目指すスマートシティの大型プロジェクト等をマネージャーして推進。2016年からはNTT持株会社にてNTTグループのグローバル事業再編に携わり、海外におけるOne NTTのブランディング・マーケティング活動をゼロベースから推進したのち、2021年より現職。ドラッカースクール(米国クレアモント経営大学院)にてMBA取得。

谷井 等
株式会社ペイフォワード 代表取締役


1972年大阪府生まれ。神戸大学経営学部卒業後、日本電信電話株式会社に入社。その後は複数法人を設立し、2度のバイアウト、1度のIPOを経験。エンジェル投資では7社のIPO実績。これまでに受けた恩を次の世代に送りたいという想いから、株式会社ペイフォワードを設立。「社会をもっとよくしよう」「自分たちにもできる」という強い想いを持った起業家を支援している。現在は自らの会社も含め、8社の取締役を務める。

中村 多伽
株式会社taliki 代表取締役CEO/talikiファンド 代表パートナー


1995年生まれ、京都大学卒。大学在学中に国際協力団体の代表としてカンボジアに2校の学校建設を行う。その後、ニューヨークのビジネススクールへ留学。現地報道局に勤務し、アシスタントプロデューサーとして2016年大統領選や国連総会の取材に携わる。様々な経験を通して「社会課題を解決するプレイヤーの支援」の必要性を感じ、帰国後の大学4年時に株式会社talikiを設立。関西を中心に社会起業家のインキュベーション(https://talikikrp.work/)や上場企業の事業開発・オープンイノベーション推進を行いながら、2020年には社会課題解決ファンドを設立し投資活動にも従事。

角 勝(すみ・まさる)
フィラメント CEO


新規事業開発支援のスペシャリストとして、上場企業を主要顧客に、前職の大阪市職員時代から培った様々な産業を横断する知見と人脈を武器に、事業アイデア創出から事業化までを一気通貫でサポートしている。オンラインとオフラインを問わず、共創型ワークショップや共創スペースの設計・運用にも実績を有する。経産省の人材育成事業「始動」のメンターも務めるなど、関わった人の「行動の起点をつくる」ことを意識して活動している。CNET JAPANにて「新規事業開発の達人たち」「コロナ禍で生き残るためのテレコラボ戦略」連載中。1972年生まれ。関西学院大学文学部卒。


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