本好きな友達の家に来たみたい。自分にぴったりの1冊が見つかる『BOOK HOTEL神保町』宿泊体験レポート
神保町の書店街にたたずむブックホテル
いわた書店の「1万円選書」を体験し、紹介した記事から約1年。公開以降、じわじわと読まれ続ける記事となりました。
そこで今回は、新たな「本との出会い」を体験しましたのでご紹介します。
今回ご紹介するのは本をたくさん所蔵しており、本を読みながら眠れる「ブックホテル」。ここ数年で様々なブックホテルが登場してきましたが、今回は本の街・神保町にあり、2022年10月26日にグランドオープンしたばかりの「BOOK HOTEL神保町」です。実際に宿泊してきましたので、レポートしますよ。
(ちなみに、取材のため宿泊した日の1週間ほど前にはNHKの『あさイチ』で紹介されたそうです。ネタ探しの目線はQUMZINEもNHKレベルといっていいんじゃないでしょうか。)
神保町といえば様々な書店が集まるイメージですが、神保町すべてがそういうわけではありません。でも、今回宿泊した「BOOK HOTEL 神保町」はまさに書店街のメインストリートである靖国通りに面しています。書店巡りを楽しんだ後にチェックインするのもいいかもしれませんね。
都営三田線、新宿線、東京メトロ半蔵門線神保町駅の「A1」から歩いてすぐ。
駅近くなので特に迷うことなくたどり着けました。
入口に入るとさっそくたくさんの本が出迎えてくれます。
ジャンルは小説やエッセイ、漫画など多様でした。
ここのホテルの特徴は、ただ単に本を集めて並べているだけではく、その本の多くに本のあらすじやおすすめポイントが書かれたカードがついていること。文章はAmazonの書評のコピペなどではなく、すべてスタッフの方が実際に読んでカードを書いているようです。どのカードも思わず読んでみたくなってしまうような内容で、まさにこのホテルの特徴であり財産ともいえるものでしょう。
このホテルには、オリジナリティあふれる本にまつわるサービスがいくつかあります。まずは無料で受けられる「ブックマッチングサービス」。宿泊の2日前までにオンラインでアンケートに答えておくと、その内容を基に選書してくれます。年齢や性別のほか、本を選ぶ基準、本に求めること、興味のあること、お悩み、マイブーム、苦手な本のジャンルなど結構細かく質問が設定されており、思わず書く側もよりぴったりの本を選んでもらえるようしっかり書きたくなります。
チェックイン時にはこのサービスで選書された本が2冊渡されました。
私の場合は齋藤孝さんの『偏愛マップ―ビックリするくらい人間関係がうまくいく本』と、千早茜さん・新井見枝香さんの『胃が合うふたり』。
手書きのメッセージカードも添えられており、この本を選んだ簡単な理由が書かれています。「自分のことを考えて選書してくれたんだ感」が出てうれしい気持ちになりますね。
『偏愛マップ―ビックリするくらい人間関係がうまくいく本』は、自分が偏愛するものに関するマップを作り、それを基にコミュニケーションする手法について述べられています。アンケートには「新しい趣味を見つけたい」と書いたのですが、メッセージカードでこのコミュニケーション術を基に新しい趣味を見つけることを提案しています。
そして、『胃が合うふたり』は女性二人による食にまつわるコラム。一番最後の章として「神保町上京編」があり、食に関連する本ばかりを集めた部屋(後述します)を予約したのでこのセレクトになったのかな?と想像しました。
また、ユニークなサービスとして「ブックペアリングサービス」もあります。こちらは500円と有料なのですが、「GREEN」「WHITE」などのイメージカラーを選ぶと、それにあった本とコーヒーを選んでくれます。ここで選んだ本は古本ですが持ち帰ることが可能。
こちらもやってみました。色は「BLACK」を選択。「ダーク」「ミステリー」「SF」な本が入っているそうです。楽しみですね。
BLACKだけにエスプレッソブレンドやダークチョコが出てきました。本は袋に入って中身が見えない仕様となっており、開封するまでは何かわかりません。部屋に行ってから開けてみましょう。
部屋の中にもあちこちに本が
さて、入室です。
取材時には「<スタッフセレクト本ルーム>選書テーマ「食」」という部屋が設定されており、食をテーマにした本ばかりが置かれている部屋を予約してみました。
本ごとに丁寧な手書きの紹介カードもついていますね。
食を切り口にしても、お取り寄せ、食に関連した小説、機内食、エッセイなど、実にバラエティ豊かに選書されています。
「食」がテーマなので、食べるだけでなく、食べられる側の小説も。その発想はなかった。
そして奥へ目をやると、部屋が広々としていることに気付きます。部屋の種類としてはダブルルームなのですが、ゆったりめの部屋で、くつろぐにはとてもいい感じです。ちなみにこのホテルは、全部屋23平米以上の広さと、そして各フロア3室のみというプライベート性の高さが売りとのこと。よくあるビジネスホテルのように部屋が狭いと、圧迫感を感じて居心地が悪く感じますが、ここなら快適です。実際に行ってみて、寝るだけならともかく落ち着いて読書するには適度な広さも重要だと感じました。
本は部屋の中のいろいろなところに置かれていて、表紙と紹介カードが自然と視界に入ります。何気なく見たところに紹介カードがあると、その内容が気になってつい手に取りたくなります。まさに「本の誘惑」ですね。
この感じ、何かに似てるなと思ったのですが、例えるなら読書好きの友人の家に遊びに来た時に似ています。面白そうな本が友人宅の本棚に並んでいて、「この本、どんな本?面白い?」と聞くと「この本は~~な本でおすすめだよ」と教えてくれるようなイメージです。
いろいろなジャンルの本がたくさん並んでいるので、気になった本をたくさん”つまみ読み”するのもまたよし。どうせ1泊2日で全部は読み切れませんからね。
そしてうれしいことに、ベッドはシモンズベッドなので寝心地抜群です。
寝転がって本を読むのも心地良いですね。
部屋のソファとサイドテーブルはコーヒーを置いて読書するのにぴったり。ベッドでもソファでも、好きな体勢で本を楽しみましょう。
ちなみに、先ほどの「ブックペアリングサービス」の本は『西の魔女が死んだ』などでおなじみ梨木香歩さんの『沼地のある森を抜けて』でした。「物語の行く末はぬか床が握っている・・・!?」と紹介カードがついてあり、どんな内容なのかとても気になりますね。
また、ドライヤー、ヘアアイロン、スチーマーナノケア、体重計、電気ケトル、Wi-Fiといった設備が共通で備え付けられ、部屋によってはソファやマッサージチェア、大きなデスクがあるところもあるそうです。Wi-Fiの速度はZoom会議をしても問題ないくらいでした。ホテルとしても十分な設備が備わっているところも押さえておきたいポイントですね。
階ごとに様々なジャンルの本棚が
廊下にも本棚があります。
1階から12階までテーマが決まっており、そのテーマに合わせた本が置かれていますよ。本好きなら下から上まで一通り上がってみることをお勧めします。
例えば10階「優しい気持ちになりたくて」では、心があったかくなりそうな本が並んでいました。
8階「本で旅行気分」には『いちごだんめん図鑑』という本も。どんな本なんだろう、と思って手に取ってみると、本当に品種ごとのいちごの断面写真と解説が並んでいました。こんな本もあるんですね…。本を読みつくしているスタッフだからこそ、本当に面白い本ばかりを並べることができるんだろうなと、この時思いました。
そして、11階「ビジネス書どどぉ~ん!」には、QUMZINEを運営している株式会社フィラメントのCSO、村上臣さんの著書『転職2.0』を発見。まだ紹介カードはついていませんでしたので、ぜひ早くつけてあげてください!
ちなみに、廊下やロビーに並んでいる本は、3冊までなら自室に持ち帰って読むことも可能。チェックアウト時に元の場所に返却しましょう。
読みたい本がどうしても思いつかない!という人には、1階エレベーター前には「366 Books」というコーナーもあります。これは日付ごとに本が1冊決まっていて、自分の誕生日をもとに本を選ぶことができるというもの。
いったいどんな選ばれ方をしているんだろう、と思い後日お聞きしました。
「作者の誕生日やその本の内容に関わる日付である場合もありますが、その日の記念日(例:10月1日は国際音楽の日!7月14日はフランス革命記念日!など)と本のタイトルや内容をリンクさせているものが多いです。
誕生日本をきっかけに、ご自身の誕生日にはどんな記念日が設定されているのか、過去の出来事などを知るきっかけになれば…と思っています!」とのことです。
なるほど、その日付がどう作品や作者とリンクしているのか、想像しつつ本棚を探ってみるのも面白そうですね。
自分にぴったりの本を見つけられるホテル
私が取材に訪れたときにはこのようなサービスを展開していましたが、新しいサービスをどんどん開発中のようです。最近は、本の街・神保町をスタッフと歩く『ツアー付きプラン』が登場したそう。様々な切り口で新しいサービスを開発する姿勢がすごいですね。
ちなみに、ロビーで記事用の写真を撮影していると女性の方ばかり見かけたので、フロントの方に男女比を尋ねてみたところ、読書目当てで宿泊する人は女性が多く、出張などビジネス目的で宿泊する人は男性が多いため、合わせるとだいたい男女一緒くらいの比率になるとのことです。確かに神保町は地下鉄の路線も複数あるため、出張時に泊まるのもアリかもしれませんね。
私個人としては、交通の便が良く、ゆったりとくつろげるのが気に入ったので、自分がまだ知らない面白い本を見つけるために、個人的にもまた訪れたいと思いました。
読みたい本がある人はもちろん、読みたい本がないという人でも、自分ぴったりの本と出合う仕組みをいくつも用意しているため、本の世界に好きなだけダイブしてリフレッシュすることができます。読書の秋はもちろんですが、寒くてあまり外に出歩きたくないこれからの季節に、このホテルにこもって読書するのもいいかもしれませんね。
あ、そうそう。
BOOK HOTEL神保町もnoteを開設されています。しかもQUMZINEと同じくnote proのようですよ!最新情報やサービスの詳細な情報などかなり詳しく掲載されているので、もっとよく知りたい方はぜひこちらを参照ください。
◆参考リンク
QUMZINEを運営するフィラメントの公式ホームページでは、他にもたくさん新規事業の事例やノウハウを紹介しています。ぜひご覧ください!