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ChatGPTでどこまでできる?~姫路市のお悩みを有識者たちでディスカッション~【DISわぁるど パネルディスカッションレポート】

2023年11月8日(水)〜9日(木)、ダイワボウ情報システム株式会社によるICTの総合イベント「DISわぁるど in 姫路」が開催されました。本記事ではイベント2日目に開催された『ChatGPTでどこまでできる?~姫路市のお悩みを有識者たちでディスカッション~』の様子をお届けします。
ChatGPTを文書業務や簡単な質問の回答だけではなく、実際に私たちが直面している課題を解決する力になってもらうにはどうすればよいか?パネルディスカッションでは、姫路市が抱えている課題の解決方法やChatGPT活用について、姫路市 政策局長である井上泰利氏、そしてデジタルハリウッド大学 教授である橋本大也氏、一般社団法人Code for Japan Govtech推進コンサルタントである石塚清香氏が登壇し、モデレーターである株式会社フィラメント 代表取締役CEO 角勝とともにChatGPTでどこまでできるかを探っていきます。(文/QUMZINE編集部・土肥紗綾)


『ChatGPTでどこまでできる?~姫路市のお悩みを有識者たちでディスカッション~』では、姫路市が抱えている課題についてChatGPTを使った解決策を探っていきます。有識者の方々と共にChatGPTの活用アイデアや新しい可能性を発見していきましょう。

まずは登壇者のみなさんのコメントからご紹介します。

井上 泰利 氏(姫路市 政策局長)(以下、井上氏):姫路市 政策局長の井上でございます。 現在、秘書課・広報課・企画・地方創生といった部署を所管しております。行政の中で、ChatGPTにアルバイトのようなことをやっていただけるのか、それとも信頼できる同僚になってもらえるのか、はたまたChatGPT政策局長までなれるのかということをぜひ知りたいと思ってやってきました。本日はよろしくお願いいたします。

橋本 大也 氏(デジタルハリウッド大学 教授・メディアライブラリー館長、多摩大学大学院客員教授)(以下、橋本氏):現在はデジタルハリウッド大学というデジタルクリエイターを育成する大学の教員と多摩大学大学院客員教授をやっております。最近は、ChatGPTの教育プログラムを作る会社をおこしまして、そこのCEOもやっております。

石塚 清香 氏(一般社団法人Code for Japan Govtech推進コンサルタント 総務省地域情報化アドバイザー、Code for YOKOHAMA CSO)(以下、石塚氏):一般社団法人Code for JapanでGovtech推進コンサルタントをしております石塚と申します。
去年の12月末まで横浜市役所の方に30年ほど勤務をしておりました。今年の2月からGovtech推進コンサルタントとして働き始めたところです。
横浜市役所時代から自治体さんのお悩み相談みたいなことをやっていたんですが[1] 、DXの掛け声が大きくなった時にその相談量が増えてきまして、こちらの方に軸足を置いたほうがいいかなと思ったところでCode for Japan
に拾っていただきました。現在は人材育成のお仕事やお悩み相談みたいなお仕事を中心にやっております。本日はよろしくお願いいたします。
表記のご確認をお願いいたします。

角 勝(株式会社フィラメント 代表取締役CEO)(以下、角):本日、モデレーターを拝命しております角勝と申します。現在は、企業の中で新規事業を作っていくことをサポートするフィラメントという会社を経営しております。起業する前は大阪市役所に20年間勤務しておりました。なので、行政の中でどんな仕事があるのかというのをかなり知っている方かなと思います。
それから、LINEヤフー株式会社という会社で、社内向けのChatGPT講座の講師を務めさせていただいたり、CNET JapanというwebメディアでChatGPTをテーマに連載をさせていただいたりしています。こういったところも本日のパネルディスカッションに活かしていきたいなと思っております。本日は皆さんどうぞよろしくお願いします。

パネルディスカッションスタート!結局のところChatGPTって何ができるの?

文章で質問をするとChatGPTが文章で答えてくれる…というのはなんとなくわかるけど、具体的にはどんなことができるのでしょうか?仕事で役立つ使い方が具体的に想像しにくいという方が多くいらっしゃるかもしれません。 

会場ではまず橋本氏によるChatGPTの使い方実演がスタート。ただ文章を生成するだけではないさまざまな使い方が紹介されました。

統計地理情報システムなどのオープンデータ、姫路市の統計や地理情報などのファイルをChatGPTに読み込ませると、分析してグラフ化をしてくれます。「各地域の人口を階級化して可視化してください」「人口の多い地域の特性ランキングを表示してください」など、そんなことまでお願いできるの!?と思うような作業ができるChatGPTに無限の可能性を感じます。

他にも、企画の発想のデザインの例として「姫路式のマスコットキャラクター」をデザインして、企画書を書き、イラスト化してもらうという作業も実演されました。

橋本 氏:今までキャラクターを作る場合はデザイナーに発注するなどの作業が必要だったと思うんですが、こうやって簡単にキャラクターが作れるならば、1日だけの小規模イベントのためにもキャラクターが簡単に製作できるようになります。

角:普通だったら、企画書を作って、入札の仕様書も作って、入札するから応募してくださいねというのを広報してやっと成立する感じですけど、 これなら1日でできちゃいますね!?

キャラクターの企画・生成のほかにも、訪日観光客数の推移の可視化(グラフ化)やその表示言語の翻訳まで、非常にわかりやすい資料が作成される過程も紹介されました。「こういう資料が欲しい」というイメージがあれば、何度か命令を出すことで資料に加えて動画までも作成できてしまうという実例に驚く聴講者のみなさん。井上 泰利 氏(姫路市 政策局長)も驚いている様子でした。

井上 氏:ChatGPTはものすごく役に立つんだなという思いと、一方で、「今まで外部の団体や会社さんに数百万円単位の予算で委託していたもの」と「今ここで橋本先生が10分ほどで作ったもの」に今までと同じような予算をつけてお支払いしていいのかという疑問も同時に出てきました。

角:そりゃそうですよね。しかし、こうして実際に見てみると、いろんなことができるし、かなり柔軟な対応をしてくれるんだろうなということがわかりましたね。これは面白いですね。

井上 氏:今、 マップ上に施設の配置や集客数といった数字を表示していただきました。実際我々も会議をしていて議論が進むと、「こんな情報が必要だな」「じゃあ2週間後まで◎◎を調べてもう1回会議しましょう」となります。そして、次回の会議に情報を持ち寄って議論を続けるというものです。そうやって2週間かけて準備していたものが、会議中に10分ぐらいで作成できて次の議論に進んでいけたら時短になりますし、非常に効率的ですよね。

自治体でのChatGPT活用事例紹介

続いて、石塚 清香 氏(一般社団法人Code for Japan Govtech推進コンサルタント 総務省地域情報化アドバイザー、Code for YOKOHAMA CSO)から自治体での活用事例が紹介されました。

石塚氏が地方公務員で構成されるオンラインコミュニティでアンケート調査をおこない、「実際に生成AIをどのようなこと使っているか」について尋ねると、

  • 報告書などの文書作成での使用

  • 映像を含めたデザイン面での使用

といった回答があったそうです。

石塚氏 :多分、事例として多くなっていると感じるのはFAQシステム(※Frequently Asked Questions「よくある質問とそれに対応する回答」の略)を使用したチャットボットですね。自治体には本当に多種多様な問い合わせが来るので、そういった部分で使用しているというお話をよく聞きます。
 
ちなみに先進事例と言われる有名どころで言うと横須賀市さんですね。割と早い段階で、ChatGPTを使っていくということを仰って、全国からその導入についてものすごく問い合わせが来たという話を聞いております。横須賀市さんはAIを活用した全国の自治体のデジタル化事例が集まるポータルサイト「自治体AI活用マガジン」も開設・運営されています。たとえば、情報を受け取る人の属性に応じてわかりやすい形に変換して伝えるといった取り組み事例などが紹介されています。もちろんファクトチェックは必要になるとは思うんですけど、いい活用方法ですよね。
 
行政での利用はセキュリティ的な制約や個人情報といったハードルがたくさんあるので、それを乗り越えつつっていう形にはなると思うんですが、今後もChatGPTが使われるようになっていくことは間違いないんだろうなと思います。

ここからが本題!姫路市が直面している課題についてChatGPTでの解決策を考えてみる

ここまでChatGPTの利用の実演から、自治体での事例まで盛りだくさんでしたが、今回の本題はここから!姫路市が直面している課題と解決策についてパネルディスカッションをおこなっていきます。

まず井上氏から紹介されたお悩みがこちら。

  • 自治体で会議を行うときに音声データの録音と議事録作成を実施しているが、作成と確認作業が大変

  • 毎月発行している28〜32ページの広報誌の作成のために、いろんな部署から情報を集めて編集した上でまた各部署に確認をしてもらうという作業が大変

  • 予算や決算に関連する会議で議員の方に説明を行うときに、資料に掲載されている文字や数字を読み上げに2時間くらい必要で大変

元大阪市職員であるモデレーターの角も「どれも納得です。しかもこれは姫路市さんだけの課題じゃないですもんね!」と頷いていました。このお悩みへの回答について、まずは石塚氏からアイデアを伺いました。
 

石塚氏 :議事録作成でのAI書き起こしの活用は割と色々な自治体で行われています。従来はICレコーダーで録音したものを人間が聞いて書き起こしていたんですが、録音した時間の倍以上かかる大変な作業なんですよね。今は録音した音声データをアップロードすることで、それをテキストデータに変換してくれます。文字起こしの精度についてもどんどん高くなってきているので、議事録の作成の時間を大幅に削減できているという事例があります。文字起こしとその確認までできたら、ChatGPTに「これを◯◯文字で要約してください」と指示することもできます。それこそ、ミーティング中に音声データをテキストにしておいて、会議が終わった瞬間に「こういうことでよろしいですか。次回までのタスクはこちらです」というところまでは将来的にはできるんじゃないかと思います。
 
あと、広報の文章については、文章をChatGPTに作ってもらうというのを試しにやってみました。職員募集といった文章を「あなたは採用担当者です。以下の制約条件に基づいて募集文を作成してください」といった感じで文章と魅力的な見出しを作ってもらうと、文章を生成してくれるので、その文章に対して「もうちょっとこういう風に書いてほしいんだよね」という指示を出すことで、ある程度の文章が作成できるのではないかと思います。
 
会議資料の読み上げについても、資料をChatGPTにアップロードして、ある程度要約をしながらそれを読み上げてもらうという使い方ができれば生産性が上がるのではないかと思いました。

井上 氏:議事録のための文字起こしと要約作成までに相当な時間が必要になって、さらにそのチェックにも相当な時間が必要なんですね。それを複数人がチェックしようと思うと、会議から1ヶ月ぐらい経ってから自分に確認依頼が回ってきたりするんです。だから、文字起こしを確認して、どういう流れでどういう発言をしていたかを確認して、また要約のほうをチェックして……となるので仰っていただいたような方法で時短ができたら助かりますね。
 
例をお見せいただいた職員採用の文章についても、1つの文章をあらゆる人に見てもらうだけじゃなくて、複数の文章を作るといったことも可能になるなと思いました。訴求ポイントは人によって違うと思うので、その人が魅力に感じる文章といったものを「◎◎の人向けの文章」として書いてもらうとか。

続いて、橋本氏にもアイデアを伺いました。

橋本 氏:相手に合わせた文章を数種類作ろうとすると、 その分だけ労力が増えていきます。一方で、一生懸命考えて細心の注意を払うと、誰が読んでも心の動かないものが出来上がるという……。最近発見した使い方なんですけどChatGPTは言語をチェックするのが結構得意なので、「この文章の炎上する要素をピックアップしてその理由を述べてください」っていうとそういった観点から文章チェックをしてくれるんです。

石塚氏 :先程の職員採用のところで言うと、「あなたにはこういう職業が向いています」みたいなレコメンドできたらモチベーションも上がるでしょうし、採用ではなく職員異動でも使えそうですよね。

井上 氏:異動にあたって職員からの希望や意見を確認するんですが、人事課の人事担当の職員がそれを全て確認しないといけない。全部確認した上で記憶できればいいんですけど難しいですし、しかも短期間で4月1日に向けた人事異動を決定するというのは大変です。そういった作業をChatGPTが手伝ってくれるとみんなハッピーになるかなと思いますね。

では、姫路市の職員のみなさんに自己申告制で自分のキャリアに関する文章(こういうキャリアを歩みたい・こういう仕事がしたいなど)を書いてもらい、それをChatGPTに読み込ませて適材適所を考えることは可能なのでしょうか?

橋本氏曰く、ChatGPTが一度に読み込める文字数に限界があったものの、その上限も増えてきているので可能になるのではないかとのことでした。井上氏曰く、最初にこの人のこういう事情に配慮をするとよい(ご家族の介護がある・ご自身の体調面に不安があるなど)といったたたき台をChatGPTが作成してくれるだけでも非常に助かるかもしれないとのことなので、全てをChatGPTに任せるのではなく最初の準備を手伝ってもらうといった使い方は良さそうですね。

データに基づいた政策とその効果検証の方法は?

続いてのお悩みは、データ活用について。データに基づいて政策を作っていこうとしたときに、効果の検証が必要になりますが、その確認が難しいとのこと。

具体例として挙げられたのが、冬のイルミネーションイベントを実施した際の効果検証についてです。冬の夜の時間帯に開催されるイベントがなく宿泊が少なかったので、

  • 宿泊客の増加とそれに伴う消費の増加

  • 人口減少対策として若者の出会いを増やす

を目的に、11月から100日間、22万個のLEDを使ったイルミネーションイベントを実施したので、その効果検証の方法を検討したいとのことでした。

次回に向けてどうすればもっと良くなるかを検討したいところですが、開始時点での数字の予測が難しいので、たしかにPDCAをまわすのは大変そうですね。この悩ましい問題をChatGPTが解決してくれるのでしょうか?

橋本 氏:携帯電話の電波を使って人流のデータをリアルタイムで把握することができます。なので、予算の一部を使ってそのリアルタイムの人流データを購入するという方法がありますね。

 角:もう少し細かく「この大通りを歩いた人がそのあとどのような時間を過ごしたか」というところまで把握しようとすると、さらに細かいデータが必要になると思うんですけど、自治体で活用したいのであればデータ提供者側との交渉というか相談次第かもしれませんね。たとえばdocomoでできるのであれば、おそらくKDDIやSoftBankでもできると思うんですよね。

パネルディスカッション冒頭で橋本氏に実演していただいたChatGPTの活用実演では、統計地理情報システムなどのオープンデータと姫路市の地理情報などのファイルをChatGPTに読み込ませて分析していました。

「どうやって政策の効果検証をすればよいか?」という課題を「どういうデータがあれば(ChatGPTを用いて)分析ができるか?」と考えることで今までになかった解決策を考えるヒントになりそうですね。

おわりに(皆さんからのコメント)

ChatGPTの活用事例から、実際のお悩み解決アイデアまで盛りだくさんのパネルディスカッション。非常に充実した内容であっという間に時間が過ぎていきました。最後に登壇者の皆さんからコメントをいただきました。

石塚氏 :私も行政から離れた身ではあるんですけれども、まだまだやれることがたくさんありますし、そのためにちゃんとしたデータをどうやって作っていくかといった入り口の部分が重要だなと改めて感じました。先程のモバイル空間統計もそうですが、どうやってエビデンスをとっていくかが課題になっていると思っているので、その部分を解決できる方法を考えています。その時にChatGPTの活用ができれば、すごく便利で良い時代が来るのかなと思いました。本日はありがとうございました。

橋本 氏:イベントやプロジェクトの効果などは地道に正しいデータをとって分析をすることが重要です。データ分析には、これまでデータサイエンティストといった専門性を持った人材が必要でした。しかしChatGPTを活用することによって、職員の方々が、自分たちでそうした分析ができるようになっていくのではないでしょうか。

井上 氏:今日、いろいろお話をさせていただいて、ちゃんとChatGPTを使えば行政内の相当な数の部署で大改革が起きるんだろうなと感じました。そういった新しい取り組みをちゃんとやっていかないと機会損失となり、生産性が低い自治体になってしまう可能性があるとも感じました。同時に活用することで生産性が高くなるという希望も感じた次第です。本日はどうもありがとうございました。

角:私も行政に20年間携わってきましたが、行政の言葉で言う「文書主義」なる言葉があります。ドキュメントとして色々な情報が長年蓄積されてきているということですね。 それをChatGPTに学ばせることで未来を作る手助けをさせるというのが良い活用方法ではないかと感じました。
行政が外注している仕事のかなりの部分がChatGPTを使うことで内製できるのではないでしょうか。ChatGPTを使うことで、行政の仕事をもっと創造的にしていくことが可能になるのではないか?そのヒントが本日のパネルディスカッションに散りばめられていたように思います。では、以上をもちまして本日のパネルディスカッションを終了とさせていただきます。皆さん、ご清聴ありがとうございました。


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