NTT Comの社内ビジコン「DigiCom」を運営事務局が振り返る〜大企業で経営陣と参加者が一体になってビジコンを継続する秘訣とは?
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NTT Comの社内ビジコン「DigiCom」を運営事務局が振り返る〜大企業で経営陣と参加者が一体になってビジコンを継続する秘訣とは?

フィラメントが2018年から伴走支援しているNTTコミュニケーションズのビジネスプランコンテスト「DigiCom」。毎回多様なチームがエントリーして、ピッチ発表会では熱の入ったプレゼンが披露されます。2020年は、テレワークが主流となったことで全編オンラインでの開催となりました。今回はDigiComとその後の新規事業創出支援を行うプログラム「BI Challenge」の運営を行っているNTTコミュニケーションズの渡辺昌寛氏、斉藤久美子氏にこれまでのDigiComを振り返っていただき、心がけていることをフィラメントCEOの角勝がお聞きしました。(文/QUMZINE編集部、永井公成)

DigiCom 6回の軌跡

角:DigiComはNTTコミュニケーションズさんが日本の企業の中でも誇るべきインキュベーションプログラムの入り口になっているかと思うんですけども、まずはDigiComのこれまでの軌跡を教えてくださいますか。

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斉藤:DigiComはこれまでに6回開催しています。私は2016年の4月に、DigiComをやろうとしていた経営企画部の「デジタル・カイゼン・デザイン室」に異動してきました。ちょうどコミュニケーションロボットが流行っていた時代でして、NTTでもSota(ソータ)君を使ったコミュニケーションロボットの活用をしていこうという動きがありました。NTTコミュニケーションズのメンバーは、プロマネ的なことをやっている方が多く、自分たちで手を動かして何か開発したことがないケースも結構多かったので、新しい技術に自分たちで触れてみようということで第1回を始めたんです。4月にコンテストをやるという話になり、7月に実施していますが、急ピッチで進めたため、勢いでできてしまったというところがあります。2016年度は第1回目が好評だったので、1年に2回開催しました。

しかし、2回目、3回目が試行錯誤でした。参加者の熱気は今と同じようにあったのですが、事務局のほうが力不足で、参加者の方にご迷惑をかけてしまうことも多々ありました。第2回は、どうせ触れてみるなら新しいこと、かつ、会社が新しくやろうとするサービスをやってみようということで、第2回のIoT活用コンテストはNTTコミュニケーションズでちょうど立ち上げようとしていた「Things Cloud(シングスクラウド)」というIoTのプラットフォームクラウドサービスをテーマにしてやってみようということになりました。

第3回は、NTT ComのAIである「COTOHA(コトハ)」をテーマにしました。社内ではまだCOTOHAのことをあまり知られていなかった時代にCOTOHAを使ってみようということになりました。この頃は開発環境を提供していたのですが、それぞれサービスを本格的に出す前のものを使ってやろうとしていたので、その構築や提供が遅れたりで、出場者をうずうずさせてしまいましたね。

また、当時は発表当日にデモを課していたんですけど、ポータブルWi-Fiルータで通信をやろうとしていたので、回線が遅くなってデモが見せられなかったチームもありました。

その学びをもとに、第3回は会場も広くして、専用のネットワークも引いて臨んだのですが、今度は会場の投影設備が古かったので投影資料やマイクが不調で、進行が30分ぐらい遅れてしまったと思います。せっかくみなさんが準備した発表がうまくできなかったりするチームがあって、すごく猛省しました。

フィラメントの角さんに参加していただいた2018年の第4回のコンテストの時から「DigiCom」という名前に変わり、ようやく運営がこなれてきたという感じですね。

DigiCom自体もテーマを毎年変えていますし、毎回参加してくれている人も、新しい方もはいってくるので、いつもいつも新しいコンテストをつくっていくという感覚でやってきて今日に至っています。

角:この第6回までの歴史をすべてちゃんと通しで聞いたの初めてですね。

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斉藤:そうかもしれないです。本当に第1回がすごく良かったんですよね。なによりも良かったのは、何か分からないコンテストなのにこれだけの人が集まってすごく盛り上がってくれたことです。本番にも、庄司社長(当時)が来てコメントを言ってくださったりとか、表彰式では全40チームひとつひとつのチームを表彰していただきました。
最初にいいかたちでスタートできたから、今まできているのかなというのはありますね。

角:僕が2018年の時に来た時に、庄司さんがめちゃくちゃニコニコしながら聞いていたじゃないですか。あれが良いと思いましたね。トップがコミットしている。ちゃんと聞かれているのもそうなんですけど、普通で考えたらこんな長時間あるイベントにトップがずっといるってすごく珍しいと思うんです。でも、それがあるからこそ、社員が新しいことにチャレンジするのを応援したい、勇気づけたいというトップの思いがすごく伝わってきて、温かみがすごくあったんですよね。

組織再編とDigiComのリニューアル

角:次に渡辺さん、DigiComや社内新規事業創出プログラムBI Challengeの設計をするにあたり、どういうところを工夫したのかをお聞かせ願えますか。

渡辺:はい。今までは経営企画部でDigiComを運営していました。DigiComは「全社横串でイノベーションの文化をつくる」という意味で、すごく機能していると感じていましたが、今年から組織が経営企画部からイノベーションセンターに変わりました。そちらはミッションが「イノベーションを起こす」となりましたので、これまであったDigiComをどうするのかを検討しました。

いろいろと議論した結果、社内新規事業創出BI Challengeにくっつけるようなかたちでやるのが我々の組織のミッションとしても一番望ましいのではないかということになり、BI Challengeの入り口のひとつとして、すでに社内文化として機能しているDigiComを取り込む形となりました。

一番懸念したところは、方向性を急にシリアスな方向に振ってしまうことによって、今まで斉藤さんたちが築かれてきたDigiComのお祭り的な良さが損なわれないかというところです。今回は新規ビジネスを真面目にやりたい人たちだけをターゲットにしていましたので、当初は20チーム来ればいいんじゃないかと想定していました。実際は、蓋を開けてみれば70チーム以上のチームが参加し、嬉しい誤算でした。

また、これまでのBI Challengeの悩みとして、出場者の原体験における課題を解決することを目的としていることから、結果が小さくまとまってしまい、NTT Comが求めている数十億円、数百億円の事業規模になりづらいという反省がありました。そこで、今年度から「世界観」というキーワードで、事業規模をどうやったら大きくできるのか模索していこうと決めました。角さんが教育プログラムをうまく考えていただき、世界観の講演もしていただいたことで、事業アイデアではNTT Comの強みを活かしたスケールの大きなものが出てきました。最終的には幹部からも「レベルアップしている」とのお言葉をいただけました。ありがとうございました。

あとは、斉藤さんや、フィラメントのみなさんが実際にやってくれたところで、僕がやったのは本当に最初の取っ掛かりのところぐらいなんです。

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教育プログラムにおけるフィラメントの貢献

角:ありがとうございます。教育プログラムはフィラメントも協力をさせていただいたんですけど、実際どうだったのでしょうか。

渡辺:すごく良くなったと思います。DigiComの一次予選を通った人たちも、事業を見るとNTT Comならではの大きなビジョンで、出てきたビジネスアイデアの質の高さに驚いたのが正直なところでした。ありがたい驚きでした。

一方で、反省点もありまして。やっぱり原体験を解決するために参加していた人たちに対して、いきなり事業規模を考えるのは大変なところもあったかなと思いました。そこらへんは匙加減ですね。

角:今回の教育プログラムは、フィラメントで提供しているストーリーカードメソッドというワークショップの進め方に沿って実行させていただきました。「自社の強み」と、「社会課題」、「ビジネスや社会のトレンド、社会動向」の3つの交点にビジネスをつくっていくべきということと、実際にそれをつくってみるというワークショップを通じて、その考え方を自分の身に馴染ませてもらいました。そのうえで、ビジネスをつくっていく・考えてもらうという人材づくりのフェーズも兼ねていたわけですけど、Demodayでの発表を見ていると、ちゃんと伝わっていたんだなという安心感もありました。

DigiComフルオンライン化への挑戦

角:一方で、今年は急にオンラインになったという課題もありました。特に誰も出社しない状態がずっと続いていて、しかも新入社員の方にいたっては入社したけど出社せず、みたいな状態が継続している中でのプログラム参加もあったと思います。そのあたりの難しさなどについてお聞かせ願えますか。

渡辺:そうですね。オンラインでうまくいったのは、遠い場所の方々ですね。地方の方々の学習プログラムの参加率が高くなったり、時間が有効に使えるようになりました。

ただ、やっぱり集まってアイディエーションすることで創造的なことができるというのが通常だと思うんですけど、それができなくてなかなか苦労したチームもあるみたいだとお聞きして、たしかに大変だなと思いました。最後のDemodayでのピッチ大会は素晴らしかったですが、そこにいたるまで紆余曲折でいろいろと大変だったんじゃないかなと思います。

また、ワークショップに関してはフィラメントさんのご協力も心強かったと思います。完全にオンラインでワークショップを開催するのは多分初めてなんじゃないかと思いますが、うまく時間を区切り、かつ学びが多いかたちでやっていただいたというのはすごく大きかったんじゃないかと思います。

角:なるほど。

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新規事業開発制度への幹部の巻き込み方

角:DigiComのDemodayでは社長、副社長、相談役、グループ会社の幹部の方々もたくさん来られていたと思うんですけど、そういう方々の巻き込みもなかなか他の会社が真似できていないところだと思うんです。それってどう実現しているのでしょうか。コツなどあったら教えてください。

渡辺:そもそも社内のチャレンジ精神が一人一人高いというのもありますし、やはりあとは斉藤さんを中心としたDigiComへの愛と、角さんたちのヘルプがそこまでつくりあげたのだと思います。単に事務局を「やっている」という事務的なものではなくて、みなさんと一緒につくりあげて、それを盛り上げようという気持ちが社員の人たちとか幹部の方々にうまく通じているんじゃないかと思います。「毎年楽しみにしていたよ」という三役幹部の方々の声が聞けるのは、まさに好循環だと思います。

斉藤:まずは幹部の方にDigiComのファンになってもらうことが大事だと思います。取り組みを紹介するだけだと「ふーん、そういう取り組みやっているのね」で終わってしまいますが、実際やっているのは“人”、“社員”なので、頑張っている実際の出場者にフォーカスをあてて紹介をすることを気をつけています。

例えば、コンテストの発表までの間にも、チーム名で呼んだり、チームの紹介をいれてみたりして出場者にフォーカスを当てています。組織を超えて人が集まっていて、その人が何かやっている・頑張っているところを示していく地道な積み重ねかなと思います。

事務局による参加者のサポート

角:なるほど。Slackで見ていても、斉藤さんの各チームへのコンタクトの仕方が神がかっている感じがするんです。各チームへの接し方、心がけていらっしゃることをお聞きできたらと思います。

斉藤:参加チームはそれぞれ目的も異なっていて、全部が全部同じではないですし、各チームのスタンスやペースも違うと思うので、基本的には相手のスタンスとかペースを読むというか、想像して連絡をとるようにしています。

例えば「このチームは昼間よりも夜のほうが見てくれる」とか、Slackであれば「@channel」とやると、一般的にチャンネルすべての人に通知するところもあるんですけど、それって見る人と見ない人がいるので、各チームのチャンネルだと、なるべく届けたい人をメンションにいれて「あなたに送っているメッセージです」というようにしています。

あとは、ちょっとずつ各チームによって状況が違うため、一律の情報を流してしまうと捉えにくくなるので、その状況に応じた書き方をするようにしています。

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角:相手の状況とか、持っている情報のレベルによって伝える情報も違うので、そこに丁寧にご対応されているということですよね。正直、聞いても実際やるとなったらなかなかできないなと思います。やっぱり愛があるんでしょうね。

斉藤:コミュニケーションは、受け取る側のほうが負担が大きいんですよね。発信する側のほうが楽なんですけど、そこは受け止めてもらうために発信する側が努力するべきことがあって。今までの経験に則って進めていく感じです。ちょっとの工夫でだいぶ効率が変わってくると思っています。

効率は悪いかもしれませんが、一斉送信ではなく個々に対応するようにすることで、最終的に開封率とか読んでもらった回答率は、DigiComだとかなり高くなっています。ほしい情報を確実に拾うために工夫していることと言えます。

角:今回のDigiComは完全オンライン化しましたけど、それでもうまくいったのは伝えるための努力とか、そのためのバックグラウンドにある知見みたいなものが大きく作用していたのかなと思います。

本日はどうもありがとうございました。また引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

一同:よろしくお願いいたします。ありがとうございました。


▼フィラメント角が2020年のDigiComを振り返った内容は以下の記事からお読みいただけます。
新規事業開発支援、DigiComリニューアルにあたってフィラメントが担当したこと、「フィラメント流」新規事業開発メンタリングの中身につきましても触れられていますので、ぜひお読みください。
▼CNETに取材いただいた「DigiCom2020」開催レポートは以下の記事からお読みいただけます。



【プロフィール】

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渡辺 昌寛
NTTコミュニケーションズ株式会社
イノベーションセンター プロデュース部門 担当課長

社内新規事業創出支援プログラム BI Challenge/社内新規事業創出コンテスト DigiComの責任者。
2000年 NTTコムウェアに入社後、研究開発組織にて新規技術開発に励むが、2010年 MITメディアラボでのユーザインターフェイスに関する共同研究を機に、ユーザ中心設計の新規サービス開発に取り組む。2019年7月 NTTコミュニケーションズ 現職に異動。自らも新規事業創出を目指し、日々研鑽中。

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斉藤 久美子
NTTコミュニケーションズ株式会社
イノベーションセンター プロデュース部門 所属

2016年4月より社内コンテストDigiCom(デジコン)の事務局を担当。
第1回のコンテスト立ち上げから企画運営に携わる。
2020年は新規事業創出支援プログラム(BIチャレンジ)と連携し、新規事業創出コンテストとしてDigiComをリニューアル。
72チーム/338名がエントリーし、3日間に渡る予選会と、勝ち上がったチームの取組みを紹介する社内イベント、Demodayをオンラインで開催した。
DigiComと並行して2018年12月より、オープンイノベーションプログラム「ExTorch」事務局も担当。
第1期の事業化検討と第2期のスタート準備を進めている。

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角 勝
株式会社フィラメント CEO

2015年より新規事業開発支援のスペシャリストとして、主に大企業において事業開発の適任者の発掘、事業アイデア創発から事業化までを一気通貫でサポートしている。前職(公務員)時代から培った、さまざまな産業を横断する幅広い知見と人脈を武器に、必要な情報の注入やキーマンの紹介などを適切なタイミングで実行し、事業案のバリューと担当者のモチベーションを高め、事業成功率を向上させる独自の手法を確立。オープンイノベーションを目的化せず、事業開発を進めるための手法として実践、追求している。


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