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無駄にみえる雑談は未来への可能性。テレワーク時代のオープンイノベーション

5月19日、早稲田大学大学院経営管理研究科の入山章栄教授と文化放送アナウンサーの砂山圭大郎さんがパーソナリティを務めるラジオ番組「浜松町Innovation Culture Cafe」(文化放送)に、フィラメント代表取締役CEOの角勝と東京エリアマネージャー兼.(ドット)コネクターの宮内俊樹が出演しました。
これからの時代を生き抜くヒントが詰まった番組を、ぜひQUMZINEでお楽しみください。特に経営者や管理職、プロジェクトリーダーの方は必見です!

新しいものを生み出す適性を見出した市役所時代

入山:角さんは1972年にお生まれということで、実は私も同い年なんです。

角:そうなんですね。嬉しいです!

入山:こちらこそ光栄です。角さんは2015年のフィラメント立ち上げ前は、大阪市役所のお勤めだったそうですね。

角:はい、公務員を20年やっていました。始まりは区役所の固定資産税係で、一番長かったのが障がい者福祉とか高齢者福祉、介護保険とか福祉の仕事。そこから都市計画局に配属になり、2年間希望を出し続けて最後の3年間はイノベーションの創出支援で、行政発のオープンイノベーションスペースとしてはかなり早い事例となる「OSAKA INNOVATION HUB」の企画・立ち上げ・運営に携わりました。

入山:それは、これから大阪にイノベーションが必要だと考えたからですか?

角:それもありますが、自分の適性は新しい物事を考えることにあると自覚して、自分の価値を世の中に一番たくさん届けられる部署なんじゃないかと思ったんです。

入山:申し訳ないですが、固定資産税係から新しいものを生み出しそうな感じはあまりしないですよね。

角:固定資産税係の時に家をたくさん見たので、自分がどんな家が好きなのかを掘り下げることができて、結果、こだわりの家を建てることができました。ほとんどの人は、自分が本当はどんな家が好きなのかそこまで掘り下げて考えてないんですよ。

入山:ビデオ動画で先ほど見せてもらいましたけど、すごく素敵なお宅ですね。たしかに僕も家を建てた時そうでしたが、モデルルームを2、3件見ておしまいですよね、普通。

角:そうなんです。入山先生は「知の深化」という言葉を使われていますが、僕はいろんな家をいっぱい見た中で、コンクリート打ちっぱなしの家が一番好きだと断言できるようになったんです。自分の中での知の深化がありました。

入山:知の深堀りをするのが大事だという「知の深化」の話を僕はよくしていますが、それを固定資産税係の経験を蓄積して家でやったというのは面白いですね。

なぜフィラメントに大物ビジネスマンが参画し、依頼が殺到するのか?

入山:さて、フィラメントの話を伺いたいと思います。宮内さんは、ヤフーのお仕事をはじめ、いろいろな職務に就かれている中でフィラメントにも参加されていますが、フィラメントの仕事や面白みを感じていることを教えてくれませんか?

宮内:人と人を繋ぐことに徹底していて、価値をつくることを実践しているところですね。これだけの規模でうまくやっているところは、あまり知りません。

砂山:フィラメントのホームページを見ると、メンバーがすごいですよね!

入山:例えば世界的なITメーカー・レノボジャパンの元代表取締役だった留目さんがCAO。CSOは、ヤフーの執行役員からこれも世界的なIT企業であるリンクトインの日本代表になった村上さん。ビジネス界の大物ばかりで、私も本当にびっくりしました。

宮内:それだけ、フィラメントに属すると面白い経験ができるということが感覚として伝わっているからみんな参加するんでしょうね。

入山:なるほど。角さん、フィラメントは大企業のイノベーションのサポートをしていると伺っていますが、具体的に教えていただけますか?

角:今一番楽しんで取り組んでいるのは、2年ほど関わらせていただいているNTTコミュニケーションズさんとのお仕事です。先方のインキュベーションプログラムの事務局の方々と二人三脚で取り組んでいます。新規事業育成のチームがいくつもあって、我々もメンターとしてではありますがチームの一員のような立ち位置で、一緒に考えながら進めています。ローンチ済み、ローンチ目前の製品がありますし、他にも色々な企業と新製品開発などを行っています。

入山:フィラメントがすごいスピードで様々な大企業と組めている理由や、他社との違いを、宮内さんはどのように分析されていますか?

宮内:違いというとそんなに…ただ僕も含めて、頭悪いんですよね。

入山:いやいやいや。それは…上から目線で教えるというより、「いやぁ、我々もあまりよく分かっていないんですけど一緒にやりましょう」みたいな感じですか?

宮内:僕から見るとそうですね。コンサルっぽくなく、本当に親身にやりとりするし、例えば大企業ですごく縦組織で凝り固まったところのほぐし方を、体で見せたりしています。

角:大企業の人たちが新規事業を作るのがうまくいかない時に、事務局の方は大体「ウチの社員はみんな真面目で…」みたいなことをおっしゃったりするんです。

入山:言いますね。

角:真面目はいい意味の言葉のはずが、よくよく聞いてみると、言われたことはちゃんとやるけど、自分で新しいものを見つけて意欲的にやっていくパッションがないということらしいんです。なので、その人たちのパッションの炎が燃え上がるサポートをするのが我々の仕事。でも上から目線で駄目出しされても絶対パッションはあがらないから、一緒に考えていくようなスタイルになります。

入山先生収録

イノベーションへの鍵は「褒めること」

宮内:角さんはすごく褒めるのがうまいですよね。

角:アイディアを出された時に凄く面白がって、どこがいいのかをピンポイントで褒めたりします。

入山:面白いですね。大企業でイノベーションを起こす時のコツは、褒めることであると。

角:みんな、自分が出しているアイディアがそんなに大したものじゃないと思っているんですよ。でも、別な切り口から見るとすごく面白かったりするから、「こっちの業界のあの話と繋げたらきっとめっちゃ面白くなるよ!」というような褒め方をします。

砂山:たしかに、これは無理じゃないか?これも無理じゃないか?とちょっとずつ削っていって、結局つまんないものになっていくことはよくありますよね。でも角さんは、面白い部分を見つけて広げていく作業をやってくださる。

角:そうですね。その出されたアイディアとか、その人自身が持っているオポチュニティの意味を教えてあげるみたいな感じです。

砂山:褒めるのがうまいっていいですね。

入山:人は感情の生き物なので、そこで感情、パッションをいかに焚きつけるかがイノベーションにすごく重要かという研究は、実は経営学的にもいっぱい成果があるんですよ。

テレワークだからこそ、あえて雑談をする

入山:この前、パナソニックゲームチェンジャーカタパルトの深田昌則さんが、テレワークだと雑談がしづらいとか、無駄に会議が増えたり意外と忙しくなりすぎて、物事をゆっくり考える時間がなくなっていると話されていました。角さんはいかがですか?

角:オンタイムでやらなくちゃいけない仕事には自分のリソースを割きやすくなっていますが、それ以外の部分、「未来はこういうことができるかもね」みたいな“実は価値がある雑談”にはエネルギーを割きづらくなっていると感じています。

入山:たしかに「そのうちこういうことやりたいね」って、雑談でしか出てこないですね。

角:雑談は、未来の可能性の塊だと僕は思っています。

入山:そうか。我々はコロナ前は雑談で未来の可能性の塊をやっていたのに、今はテレワークで全然できていない。

角:そうです。そこでうちの会社では公式雑談タイム「Fika(フィーカ)」を設けています。スウェーデン語で、コーヒーブレイクみたいな意味なんですけど、お互いにインスピレーションを与え合ったりとかする場だと僕は解釈していて、1日1時間毎日やっています。

入山:参加者はフィラメントや取引先の方ですか?

角:社内だけで始めたんですけど、毎日1時間やっているとネタもなくなってくるので、社外の方にも声をかけたら、皆さん雑談に飢えているから100パーセント断られないんです(笑)。

砂山:めっちゃ面白い!

入山:未来のことを、オンライン上でも話せるものですか?

角:未来のことでも仕事のことでもなんでも。今困っていることとかをお話される方もいるし、「いやぁ、なんかホッとするわ」みたいな場合もあります。なんなら聞くだけでもいいし、もう疲れていたら寝ていても大丈夫みたいな、そんな時間にしています。

砂山:それぐらい、「無駄のないこと」をやろうとしたらできてしまう、だからあえて無駄な時間をつくるんですね。

本当に結果を出している人が“見える化”される時代に

角:やっぱり余白は大事です。大企業のテレワークの実態とかも聞けたりとかして、すごく面白いですね。テレワークになったからこそ活き活きする人と、存在感が希薄になっている人の二極化が起きている話とか…。

入山:面白いですね!

角:その話を聞いた時にテレワークになると、企業の内情がナチュラルにデジタルトランスフォーメーションしている感じなのかなと思いました。成果だけが見えて、その間のプロセスが見えなくなっているので、頑張っている姿を見てもらいたくて職場に行っていたような人たちの存在が、見えなくなっている。逆に結果は出しているのに頑張ってないように見えるから評価が低かった人の働きぶりが如実に見えたり。

入山:なるほど、ちょっと昔の日本企業でまさに問題になっていた“会社あるある”ですね。テレワークはその辺りを透明化する効果があるかもしれませんね。

角:テレワークの本質は、成果の見える化に近づいていく感じはあります。

宮内:ただ、まだそういう定量の目標の持ち方とか評価の仕方がそんなに整備されていないので、まずは、自分で考えて価値を作っていくことができるようにならないと、上司の信頼を勝ち得ないんじゃないでしょうか。

引きこもり最高!?アフターコロナは、働く場所にとらわれない世界

砂山:僕は今日、脚本家さんとコラムニストさんと話していたんですが、今の状況を「もともと引きこもってる仕事だから全然コロナの影響はないです」って言っていて。

宮内:陰キャラが強い時代!

入山:陰キャラ=家にこもるキャラの人のほうが実は強い時代がきたっていう。その点に関しては、角さんはいかがですか?

角:まさにウチがそうで、大阪に会社がありながら東京にお客さんがたくさんいる会社だと、ライバルは東京の会社なんです。でも、今東京にいてもみんな直接人に会えないので、圧倒的に大阪が有利になってる。だから今の状況は非常に私としては仕事がしやすいし、QOLも上がってます。理想の家に引きこもり、最高です!

入山:家に籠もる方が向いている人、やっぱり外に出ていろんな人と直接会ってコミュニケートすることでパフォーマンスを発揮する人など、性格や能力それぞれに合った働き方をコロナが収まったあとも提供する必要があるのかもしれないですね。

角:そうですね。社内の一角にオープンイノベーションスペースを設ける企業がありますが、あれって、逆にとらわれている風に見えるんです。今、家にいなくちゃいけない状態であるからこそ、僕たちは自分の家で自分のパソコンのカメラと向かい合う。すると、世界のどことでも繋がることができる。こっちのほうがオープンイノベーションが進む気がしています。

入山:大阪市でオープンイノベーションスペースを作ったのに(笑)。

角:場所にとらわれず、自分の家からどこにでも行けるような働き方の選択肢があることは、素晴らしいことだと思います。自宅がオフィスになることの最高さを僕は知ってしまったので、動きたくないなって思いますね。

入山:これからのオフィスの在り方もだいぶ変わってくる可能性を感じます。

宮内:僕はもともとオフィスはいらないと思っていたタイプなんです。業務は全部リモートで成立しているアメリカのとあるベンチャーに、オフィスはなんのためにあるんだ?と聞いたら、「年に1回パーティをやるため」って答えたんですよ。それがめっちゃ好きで。だから僕もそれを言おうと思っていて。

入山:やがてヤフーもオフィスがなくなるかもしれないですね。

宮内:なくなって、でも年に1回社員が集まってパーティをやる。

砂山:パーティのためだけにしては大きいビルですね(笑)。お二人の話を聞いていてよくわかりましたが、無駄のなかにも「必要な無駄」があるんですね。

入山:はい。今回私が感じたのは、このテレワークの時代になったからこそ、「無駄のメリハリ」をつけることが大事になってきているということ。雑談のような未来を話すことは一見無駄でも、必要な無駄だから、テレワーク時代こそあえて時間を作ってでもやる必要があるかもしれないですね。
一方で、ただ長く働いているとか、ただ頑張っているように見せるのは本当に非効率な無駄だから、そういったメリハリをつけられる組織が、これからのテレワーク時代には強いのかもしれません。


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