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×ユカイ工学でビジネスにもユカイを vol.2 | NTTドコモや三菱地所パークスが、ユカイ工学と仕掛けるウェルビーイングな新規事業とは? ミニレポート

ユカイ工学とともに、NTTドコモはオフィスやマンションなどで利用されることを想定した無人コンビニ「TukTuk」を、そして三菱地所パークスは身体障害者向けの駐車スペースを管理するシステムを開発しています。2020年12月9日に両社の事業開発担当者をゲストスピーカーに迎え、ユカイ工学とフィラメント共催によるオンラインイベント『×ユカイ工学でビジネスにもユカイを vol.2』が開催されました。イベントでは、NTTドコモと三菱地所パークスの2社がユカイ工学を共創の相手に選んだ経緯や、これからの展望を大いに語りました。(文/QUMZINE編集部、永井公成)

今回のイベントはユカイ工学CEO青木俊介さん、NTTドコモ 高道慧さん(法人ビジネス本部 5G・IoTビジネス部)、三菱地所パークス株式会社 荻田健之さん(コンサルティング本部 研究開発部長)がスピーカーとして登壇し、ファシリテーターは株式会社フィラメントのCEO角勝が務めました。

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まずはユカイ工学CEOの青木さんがユカイ工学の企業説明を行いました。ユカイ工学は「2025年には一家に一台ロボットのいる世界」の実現を目指すロボティクスベンチャーで、様々なロボティクス製品の企画・開発・販売までを手がけています。BtoCビジネスだけでなく、最先端のテクノロジーとデザインノウハウを組み合わせて、企業向けにサービスの共創という形でのBtoBビジネスも行なっています。強みとしては専用マイクも開発した音声認識技術や、初期の頃から開発に取り組んでいるBLEなどが挙げられます。デザイン面での評価も高く、これまでグッドデザイン賞やreddot design awardなども受賞しています。

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最近の取り組みとしては、複数社で開発している「受発注システムを自動化して注文忘れを防ぐシステム」において、ユカイ工学がIoTセンサーの開発を担当しました。
法人向けシステム開発ではコンセプト設計、プロトタイプ開発、量産・事業化まで一気通貫でサポートが可能です。

続いて近日中に発売されるBOCCO emo(ボッコエモ)について紹介しました。
ユカイ工学では、2015年よりBOCCO(ボッコ)というコミュニケーションロボットを発売しています。現在はBOCCOよりさらにパワーアップしたBOCCO emoがクラウドファンディング中で、来年1月に出荷予定です。

BOCCOと比べると、スマートスピーカーのような音声認識機能が新たに搭載され、動きがより可愛らしくなりました。すでに1,000万円以上の支援金額が集まっており、12月17日に出資が締め切りとなります。クラウドファンディングを支援すると、定価より1万円ほどお得に購入でき、いち早く届くというメリットもあります。

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次にNTTドコモの高道さんより、ユカイ工学との共創事例についてご紹介いただきました。NTTドコモは2016年よりスマートパーキングの事業を行なっており、そこで使用するIoTデバイスである「スマートパーキングセンサー」を2社が共同で開発しました。開発にあたっては、NTTドコモとユカイ工学でセンサーの方式、工事が不要でオーナーが自分で簡単に設置できるか、電池の持ちの良いのはどれかなど様々なことを検討し、試行錯誤しました。

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また、2019年からはユカイ工学とともに「TukTuk」というサービス開発を行なっています。これは、オフィスやマンションの空きスペースにスマートショーケースを設置して無人コンビニを運営するもので、冷蔵庫の鍵、温度や、故障検知をIoTで遠隔操作します。人手不足の解消や働き方改革の面で社会貢献ができます。

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ユーザーは、コンビニより近くで商品を購入できる他、商品に「いいね」ボタンを押すことで最適な品揃えが可能になり、決済も顧客のスマホカメラで商品バーコードを読み込んで行えます。値引きする際もシールを貼ることなく、スマホ上で価格がわかります。「TukTuk」においてユカイ工学とは、冷蔵庫で用いるIoTデバイスを共同で開発しており、電磁石を利用したスマートロックや温度センサーなどを一緒に開発しています。

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高道さんは「自社の新規事業開発チームでハードウェアの開発まですべてできるわけではないので、ハードウェアの開発の知見のある会社と一緒にサービスを立て上げていくことが重要」と述べました。

続いて、三菱地所パークスの荻田さんより、同じくユカイ工学との共創事例についてご紹介いただきました。三菱地所パークスは駐車場のコンサルティングや管理・運営などを行う企業で、中でも研究開発部では、近年のモビリティの革命による自動車産業・社会環境の激変に対応するために、まちづくりと駐車場に新たな価値を創造することをミッションとして掲げています。

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現在の駐車場の課題の一つとして、スーパーマーケットや大規模テナントビルの地下駐車場で、身体障害者用の駐車スペースを対象でない人が利用し、本来の対象者である車椅子を使っている人が利用できないということが挙げられます。ドライバーは地上にある平面の駐車場とは違って周りの視線がなく、空いているのでそこに停めてしまうようです。また、本来、身体障害者用の駐車スペースは車椅子を使っている人を対象としていますが、その定義を拡大解釈して高齢者などが利用してしまうこともあります。その対策として、車椅子利用者のみが停められることを示すシステムを試作することになり、まず頭に浮かんだのがユカイ工学の青木社長でした。

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NTTドコモのスマートパーキングのシステムをユカイ工学が作っていることはすでに知っていたので、ユカイ工学に駐車スペースの管理についての知見があると推測し、お声がけすることになりました。またユカイ工学の高いデザインセンスも決め手のひとつになったそうです。このシステムでは見た目も非常に重要で、見間違えられることがなく、またデザイン的に尖っていないことが求められます。開発を進める中で、ユカイ工学側からの提案でデザインを仕様変更しました。今は実際に駐車場にデバイスを置いて長期試験を実施中です。

青木さんは開発を振り返り、「荻田さんはセンサーの方式や通信方式など技術的な知識がある方で、ビジネスサイドの方というよりはエンジニアの方とお話ししているように感じました。さらにこれからの駐車場はどう進化していくべきかなど大きな話から入られたので大きな刺激を受けました。」と述べました。

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フィラメント角は三菱地所パークスのビジョンについて尋ねました。
荻田さんは「インフラが身体障害者向けに作られていながらも、それが十分に利用できるような環境が実現できていないことに注目することで、社会システムが全体的に良くなるのだろうと思っています。来年オリンピック・パラリンピックが開催され、海外からもたくさんの身体障害者の方が来た際に、日本の駐車場の使い勝手が悪いと思われないようにすることも重要でしょう。ユニバーサルデザインは最初に置いてしまうと楽で、後からやろうとすると大変です。そういう意味ではこの取り組みは先駆けとなり良いのではないかと思っています。」と述べました。

これに対し、青木さんは、「今後、高齢者が増えてくると、身体障害者とそれ以外の切り分けがグラデーションになってくると思います。そうなると、社会は優しい工夫が求められてくると思うし、ユカイ工学もそれをテクノロジーで支援したいと思っていますので、すごく共感しました。」と述べました。

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最後に、角がユカイ工学との共創について、今後の展望について尋ねました。

NTTドコモの高道さんは、「無人コンビニについては店舗や流通を増やしたいと思っています。そのためにまずは試作機から量産に移してしていきたいと考えており、そこでご一緒いただければありがたいです。またドコモの内部でもリアルな場所のデータをどうやって集めるかは大きなテーマになっていて、モバイル空間統計やdポイント、d払いといったデータを組み合わせた最適な商品設計ができないかと検討しています。単に小売の無人のお店をやるというよりは新しく最適な流通のフォーマットを作っていきたいと思っています。」と述べました。

また、三菱地所パークスの荻田さんは、「有人管理の駐車場が200箇所ほどありますが、最近はオペレータの採用が難しいという課題があります。人手を減らさざるを得ないような状況がある中で、チャットボットのようなものがあればオペレータの労務負荷を相当軽減できるのではないかという仮説を持っています。時には人間が対応するとトラブルが発生することもありますが、ロボット相手では対人トラブルは発生しません。簡単な受け答えさえできればあとは人間に代わることもできます。管理の手間を下げるということを一緒に考えていきたいです。」と述べました。これに対して、青木さんは「荻田さんはこのようなことを3年ほど前からおっしゃられていたので、いつか近いうちに実現したいですね」と付け加えました。

■今回のイベントの全編(アーカイブ動画)は以下からご覧いただけます。


■全3回シリーズ、次回のお知らせ!

ユカイ工学とフィラメントの共催オンラインイベントは全3回のシリーズを予定しています。次回は、12月18日(水)16:00から「寝室に新しい意味を持たせた『popIn Aladdin』ヒットの秘密と、これからの新商品開発とは?」と題し、ゲストにユカイ工学株式会社 CEO 青木俊介さんとpopIn株式会社 代表取締役 程 涛(ティ・トゥ)さんを迎えて開催予定です。参加は無料ですが、事前にPeatixでの申し込みが必要です。ぜひお申込ください。


【プロフィール】

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高道 慧 氏
株式会社NTTドコモ 法人ビジネス本部 5G・IoTビジネス部
2008年 NTTドコモ入社。
研究開発や経営企画などの部門を経て、2016年より新規事業の企画・開発を担当。
これまでスマートパーキング、プログラミング教育のサービス立ち上げに参画。
現在は無人コンビニサービスのPJリーダーとして、ユーザーに「快体験」を感じてもらえるサービス創出に取り組んでいる。

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荻田 健之 氏
三菱地所パークス株式会社 コンサルティング本部 研究開発部長
住友商事にて25年にわたり鉄鋼、建材向け重機械の輸入・国内営業や海外からの技術提携・導入斡旋等の幅広い業務に携わる。さらに電子決済、キャッシュレスパーキング、ITS(高度道路交通システム)ビジネスに従事。その後大手カード会社を経て2015年に駐車場綜合研究所に入社。現在、三菱地所パークス研究開発部長を務める。

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青木 俊介 氏
ユカイ工学株式会社 CEO
東京大学在学中に、チームラボを設立、CTOに就任。その後、ピクシブのCTOを務めたのち、ロボティクスベンチャー「ユカイ工学」を設立。「ロボティクスで世界をユカイに」というビジョンのもと家庭向けロボット製品を数多く手がける。2014年、家族をつなぐコミュニケーションロボット「BOCCO」を発表。2017年、しっぽのついたクッション型セラピーロボット「Qoobo」を発表。2015 年よりグッドデザイン賞審査委員。

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角勝
株式会社フィラメント CEO
2015年より新規事業開発支援のスペシャリストとして、主に大企業において事業開発の適任者の発掘、事業アイデア創発から事業化までを一気通貫でサポートしている。前職(公務員)時代から培った、さまざまな産業を横断する幅広い知見と人脈を武器に、必要な情報の注入やキーマンの紹介などを適切なタイミングで実行し、事業案のバリューと担当者のモチベーションを高め、事業成功率を向上させる独自の手法を確立。オープンイノベーションを目的化せず、事業開発を進めるための手法として実践、追求している。

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