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「Beyond the Biz ~ビジネスを越境せよ~ #2」ビジネス×アート イベントレポート

どうも、フィラメントの宮内です。

8/6、九段下の「kudan house」にてイベント「Beyond the Biz ~ビジネスを越境せよ~ #2 」が開催されました。

今回で2回目となるこのイベントは、「オトナの知の嗜み」シリーズです。いまリベラルアーツの大切さが語られています。MBA的な知識ではなく、「メタ認知」に通じるスキルを磨くことがビジネスにおいても必要になってきています。そうしたビジネスマンのための少人数制勉強会です。

初回「ビジネス×哲学」に続く今回のテーマは、「ビジネス×アート」。登壇いただいたのは、アーティストのKiNGさんと、フィラメントCSOの村上臣(LinkedIn 日本代表)。いつかKiNGさんをイベントにお呼びしたかったんです!

そして場所は「kudan house」。築90年を越す歴史的建築・旧山口萬吉邸を拠点にした会員制ビジネスサロンで、文化的な心地よい空間です。美意識にあふれたこの場所で。いつかイベントをやりたかったんです。なのでもう満を辞しての開催といっても過言ではありませんっ、ジーン。

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KiNG (キング)
アーティスト/デザイナー/プロデューサー/自由研究家
多摩美術大学前期博士課程(美術研究科・彫刻)修了。
在学中より、国内外の企業、媒体、作品、ミュージシャン、俳優等に向け、デザイン、アート、コスチューム等を提供。自身のカスタムブランド”KiNG”は、国内外で取り扱い中。中国・天津、台湾・高雄 に店舗を構える。又、映画プロデューサーや、企業の経営戦略アドバイザーも務める。
その他、講演会への出演、オンライントークショー”Kundalini TV”主宰するなど幅広く活躍。

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村上 臣(むらかみ・しん)
フィラメントCSO(LinkedIn 日本代表)
青山学院大学理工学部物理学科卒業。大学在学中に仲間とともに有限会社「電脳隊」を設立。2000年8月、株式会社ピー・アイ・エムとヤフー株式会社の合併に伴いヤフー株式会社入社。
2011年に一度退職した後、再び2012年4月からヤフーの執行役員兼CMOとして、モバイル事業の企画戦略を担当。2017年11月に6億1000万人が利用するビジネス特化型ネットワークのリンクトイン(LinkedIn)の日本代表に就任。複数のスタートアップの戦略・技術顧問も務める。


■KiNGさんの作品解説から時代を読むヒントを探す

イベントはこれまでKiNGさんが手がけてきたアート作品を解説しながら、トークをするという内容。これが非常に刺激的でした。イメージを前にしながら、作者本人に解説をいただき、かつそこからアートとテクノロジーがクロスした村上とのトークが、自然発生的にまさにスパークします。イマジネーションと示唆に富んだ内容になりました。

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KiNG:これはスワロフスキージャパンさんからの依頼で作った作品ですね。東京コレクションのショーで使うバイクなので、ライダーさんは座らずに立ったままランウェイに行くんですね。じゃあもうサドルはドクロしちゃえばいいじゃんみたいな感じで作りました。

ファッションデザイナー出身で最初にやった衣装がユーミンさんだったんですけど、幕張メッセで30,000人ぐらい入るステージだとほぼ衣装が見えないんですよ。だから小さいことよりもまず本質が伝わること、それから本人がテンション上がることを意識していますね。

村上:本人がテンション上がるってすごく大事ですよね。ファッションってほとんど自己満足じゃないですか。

KiNG:だから私はデザインやアートを通して、運気というか、「気」を売ってるんだと思ってます。その人に着火する何かを。思考し続けることと、その人にエネルギーを与えること、それは私が作品をつくるうえで普遍的なものだと思う。

村上:アートってのは「触媒」だと思うんですよね。メディア自体もメディウム(ラテン語のmediumは「媒介するもの」を意味する)から語源が来ていますけど、世の中に対して何かを変換する装置として、その時代時代のアーティストたちは存在してるってのが僕の理解です。

KiNG:日本は神社仏閣とか、お祭りとかいろんなところにアートやデザインがあるから、やっぱり金運を上げる「触媒」になるのが日本人のDNA的には合うのかなって思います。現代アートだからこそ、逆に西洋とは違った日本人の強みを追求したいですね。

村上:そうですよね。やおよろずの神とか、これだけ先進国の中でシャーマニズムをベースにした宗教観を持っている国って日本だけだと思うんですよね。他はだいたい一神教で、神や救世主のようなある種のbotがいて、それに従って生きるのが良いとされている。キリスト教がその代表ですけど、日本はそうじゃない。

KiNG:その視点をきっちり持ちながら、いい意味で西洋的には理解されないことも日本人として挑戦しているところはありますね。

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KiNG:このシャネルツイードを作った時期は、電車に乗ったらみんな.ルイ・ヴィトンとかプラダとか持っていた頃ですね。

村上:ありましたね。女子高生がルイ・ヴィトン持っているって、世界で話題になるくらいでしたからね。

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KiNG:Chim↑Pomのエリイちゃんが地雷でヴィトンのバックを爆破する(「サンキューセレブプロジェクト『アイムボカン』」のこと)とかやってたじゃないですか。ああいう感じですね。既にあるものにさらに違うものを付け加えていく。

この「Night Camo Jacket」もそういうやり方で。アメリカ軍の大量生産のミリタリー服に、メキシコとかパキスタン、アフガニスタン、要するに政治的にアメリカと問題を抱えている国の民族が作ったものをあえて組み合わせることで、平和を表現してるというか。逆に日本人のパスポートじゃないと手に入らないものでもあるし。

あとは民族の人が自分の家族のために作った生地をあえて付けてるんです。お土産物じゃなくて、希少なものを。民族の人たちって幸せは必ず妬まれるから、邪神よけとして鏡がついてたりする。あと文字を持たない国の人の素材も集めていて、彼らにとってはこれが情報、意味があるっていうものとか。

そういう新しいつながりを生むってのは日本らしさ。見た目を変えるっていうよりは、強くする、裏支えするんです。

村上:その寛容さって日本の特徴ですよね。「盆・暮れ・正月・クリスマス」っていう。全てを受け入れる。そして大体世界から嫌われてないっていうところは日本の良さだと思う。

KiNG:たまたまありがたいことにあんまり日本人受けはしないので(笑)。それは戦略として切るというか、世界的にも変わった人にしかウケないってことなんでしょうね。だからいかに針穴に通すような「出会い」をするかってことです。マーケティングなんかないんですよ、私の場合は。

村上:それは今の時代に合ってますね。スマートフォン時代になって、「グローバルニッチ」っていう戦略が出てきたんですよね。1か国では1%の人にしか受けないんだけど、100か国でやればめちゃくちゃ儲かる、と。どの国でも熱烈なファンがいて、クリックするだけで全世界に発信できる。昔はできなかったことがテクノロジーとプラットフォームでできるようになった。

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■いよいよ話題は核心に!アートとテクノロジーの融合とは?

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そして、話題はいよいよ「アートとテクノロジー」の関係になってきます。モデレーターのハブチンが、冒頭でマルセル・デュシャンの「泉」を現代アートのルーツとして引用したことがいい触媒になって、ディスカッションが白熱しました。

村上:ここからの10年っていうのは、テクノロジーに対して「倫理的な折り合い」をつける時代だと思うんです。代表的な例は自動運転で、横断歩道に子供が渡っていて、自動運転のクルマが、避けると運転者が死ぬ、まっすぐ行くと子供を死ぬ、どっちを選びますかと言うと、これは答えがないじゃないですか。でもこれをプログラミングしなきゃいけない、プログラマーにその責任を負わせるのかって話です。

だからアートとテクノロジーが融合していくってのは、ethic(倫理的)な部分ですよね。社会のギリギリを攻めて議論を巻き起こして人の心を揺り動かす、答えがなく思考が続いていくっていうのがアートの定義だと思うんですけど、それが社会実装っていうテクノロジー側と関わりあっていくのは必然的だなと思っていて。こういう課題をわれわれの大多数がどう納得しうるのかってところが、アート×テクノロジーのメインテーマになってくるんじゃないかなと思います。

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KiNG:時代の流れがすごく早くて、昨日の常識が明日も通用するか分からないのが現代なので、とにかく思考し続ける姿勢自体がアートなんですよね。マルセル・デュシャンよりも、実はインターネットの方がインパクトが大きいかもしれないくらいで。

村上:デュシャンは、モノではなく、概念自体がアートだっていうパラダイムシフトを起こしたのが一番大きい功績だと思いますよね。

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KiNG:インターネットができた今、その次元が変わってしまったわけです。例えば、インターネット以前のデザインもファッションもアートも、アーカイブがないんですよね。だからそれ以前のものをこれからインターネットの世界にアーカイブしていくのか、それとももうオワコンとしてしまうのかってのは、この5年くらいの急務だと思います。

村上:Googleは一応アーカイブしてますよね。会社のミッション・ビジョンが「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」だから。
※Google Arts & Culture https://artsandculture.google.com/?hl=ja

KiNG:でもビジュアルデータだけなんですよね。コンテキストは削ってる。それをどうするか。逆にいうとそこがチャンスだったりする。

村上:それって非常にアメリカ企業的ですよね。ローコンテキストで、言葉の力の方を信じる。ハイコンテキストで、言葉にならない行間を読むっていうのが東洋文化の特徴じゃないですか。

KiNG:ゼロイチで捉えられないものを分かるのがアジア人だから、それをインターネットとかテクノロジーとかにそろそろインストールするってはどうですかね?

村上:どうすればそれができるのかってことですよね。そもそも言葉にならないこと、たとえば文化とか歴史とかアートをわれわれはどういう風に捉えているんだろうって問いが必要で。それはアメリカ生まれのインターネットではうまく捉えられていない。今後の課題ですね。

KiNG:そういう意味ではインターネットはスターの民主化、いわば神の民主化だと思うんです。

村上:だから、これからは東洋が強いなと思う。例えば擬人化したキャラ、ゆるキャラって、アジア人はみんな理解するんですけど、欧米人はまったく理解できない。なんで警察のキャラクターがいるんだって真顔で聞かれますから、ピーポくんのことですけど(笑)。今だとバーチャルYouTuberのようなもので。ああいう複数人格を1人が持っているみたいな文化は、一神教の人からするとめちゃくちゃ気持ちが悪いらしい。なんでも擬人化してスッと受け入れるのは我々の能力なんですよ、妖怪能力っていうか。この文化の違いって面白くて、そう考えると東洋文化の方がネット向きなんですね。

KiNG:ほんとにそう思いますね。

■KiNGさんの作品解説を聞きつつ交流する懇親会

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後半は懇親会、村上の発声でスタートです。

本イベントは「全員と話しましょう」というのを理想としてますが、今回は本当に特別に、地下のフロアにてKiNGさんの作品を展示させていただきました。その作品の解説をご本人にしていただきながら、交流し学びあおうという贅沢きわまる趣向です。

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どうです? ステキでしょう?

KiNGさんの言葉には、時代を見つめる眼差しと批評性があります。だからこそ、ビジネスを作る人にも深い気づきを与えるのだと思います。

またこうしたアーティストとの交流の距離感の近さも、私が数年通っているアルス・エレクトロニカ(リンツで行われる世界最大のメディアアート・フェスティバル)にインスパイアされた演出といいましょうか。さらにはアルス・エレクトロニカに行くきっかけをくれたのが、当時ヤフーに在籍し上司でもあった村上臣だったりするものですから、人と人の縁、点と点をていねいにつないでいく大切さを痛感せずにはいられません。

そしてkudan houseさんとの出会いとホスピタリティーの高さがなければ、この熱量の高いイベントも実現しなかったでしょう。個人的にも「オープンイノベーションにおける人のつながりとはアートであるべきだ」という気づきを得ました。

※こちらの動画(0分44秒)でも、ぜひ雰囲気を感じ取ってください。

というわけで、1時間たっぷり時間をかけて、作品を鑑賞しながらイベントは大団円で幕を閉じました。

このイベントに関わっていただいたすべての皆さま、本当にありがとうございました。

次回は10/17、テーマは「Business × 生活(結婚・家族)」といたしました。近日にご案内予定です。VUCAの時代を読み解くための「方向感覚」をともに養っていきましょう。ご参加をお待ちしております!
https://peatix.com/event/1310011

写真提供:NI-WA


(「Beyond the Biz ~ビジネスを越境せよ~ #3 」ビジネス×生活(結婚・家族) イベントレポートはこちら)



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