テレビマンから飲食店開業へ!HIGH FIVE SALAD代表・水野さん、CHRO羽渕さんが飲食店運営にかける想いとは
フィラメント公式の雑談タイム「フィーカ」に、パワーサラダ専門店『HIGH FIVE SALAD』を運営する代表の水野裕嗣さん、そしてCHROで前フィラメントHR変革リーダーの羽渕彰博さんがゲストに来てくださいました。このサラダ店はもともとテレビディレクターを20年続けていた水野さんが4年ほど前に立ち上げました。どういった経緯でテレビマンから転身したのか、そして将来的にどういうお店にしていきたいのか等についてお聞きしたところ、実に興味深いお話をしてくださいました。(文/QUMZINE編集部、永井公成)
テレビディレクターから飲食店経営へ
水野:株式会社ハイファイブ代表の水野と申します。よろしくお願いします。弊社はサラダ専門店「ハイファイブサラダ」を都内で4店舗ほど運営しています。
私はもともとは名古屋のテレビ業界で働いていまして、中日ドラゴンズの番記者や、オリンピックの取材で吉田沙保里選手などを担当していました。その後、東京に来てからは、日本テレビの「ZIP!」の特集コーナー「はてなび」を立ち上げから8年間やっていました。テレビディレクターの仕事を20年ほどやっていたことになります。しかし、高校生の時からずっと飲食業をやりたいと思っていました。そこで、残りの仕事人生があと20年くらいだと考えた時に、自分のやりたいことを追いかけていきたいと思い、ハイファイブサラダを4年ほど前に立ち上げました。徐々に支持されるようなサラダを提供できるようになってきたので、これをどんどん広めていって、より多くの人に健康的な生活を提供できるような体制にしていきたいと思います。ヨガ、マインドフルネスなど人々の生活の質を上げることが幸せに繋がるのではないかと思い、まずはそのきっかけとしてサラダから取り組み、将来的には総合的なウェルネスの領域に踏み込める会社にしていきたいと思っています。
平井:水野さんがテレビマンをされていた経験が、ハイファイブサラダで活きていることは何ですか?
水野:まだ見つかっていませんが、おそらくこれから活きてくるのではないかと予想しています。番組制作ではまずテーマ決めて、人を集めてどんな編集をしていくのかを考えますが、自分の番組を作るというところを飲食店に置き換えました。自分ではサラダのメニューを開発できないので、誰に頼めばいいのか考えると、数多あるジャンルの中から人を選んでその人にアプローチし、協力を求めていくことが必要となります。そうしたチーム作りはテレビの時代にやっていたことを応用できたと思います。あとは仕事をやり切るということですね。生中継の仕事を数千回こなして、「どんなことがあってもやりきる」という執着は生きていると思います。また、たまたま今自分が社長をしていますが、「社長」という役割は自分でなくていいと思っています。むしろハイファイブサラダというものをなんとかして広めていくとなった時に、いいものを「伝えること」の経験の方があるので、広報マンになった方が会社としてもパフォーマンスを出せると思います。
CHRO羽渕さんのジョインで会社が変わった
平井:CHROの羽渕さんがジョインした経緯について教えてください。
水野:これまでTVのディレクターの仕事では、自分の担当回の放送がある2週間後に向けて、最小人数6人くらいで一気に休みなく作り上げるような働き方だったので、思いや理念を共有して組織マネジメントしていくことは得意ではありませんでした。そこでそのお手伝いをしてほしいと思い羽渕さんにこちらからお声がけしました。羽渕さんのおかげで、ガラッと会社は変わりました。まず自分の考え方も変わりましたし、社内のコミュニケーションの質も上がり、今はホクホクするような関係で、ワクワクするような仕事を目指しています。
平井:なるほど、水野さんの方から声をかけたのですね。ちなみに水野さんが羽渕さんを知ったきっかけは何ですか?
水野:弊社のCOOが羽渕さんの発信している記事を読みました。想いとか理念はあるけどそれを組織にしていくのが苦手な人のために、それをサポートしたいということを発信していて、うちにぴったりだと思ってコンタクトを取らさせていただきました。
平井:なるほど。羽渕さんはハイファイブサラダでCHRO以外の仕事もされると聞いたのですが、具体的にはどういったことをされているんですか?
羽渕:ビジョン、ミッション、バリューの整理をして、それに基づいた中期計画を合宿という形で社員に伝えて、4半期に落とし込んだ時の目標の設計をしたり、経営会議のファシリテーションをしています。入社時は社内の皆がどこに向かってるかわからない状況だったので、最終的なゴールの設定など社内の認知のすり合わせをひたすらやっています。
平井:それでは、番組作りに例えると羽渕さんにはどういう役割を果たして欲しいですか。
水野:お金のことも見ながら、向かう方向を定めるプロデューサーになっていってほしいなと思っています。役職上はCHROだけど番組全体を束ねる総合プロデューサーをやってもらう期待もあります。本当はそこに甘えちゃいけないとは思いますけど。でも会社の足りてないところを羽渕さんが積極的に自分からボールを取って行こうという形で進めていただいています。最初は組織づくりのコンサルという認識でいましたが、それだけだと会社は変わっていかないということを羽渕さんが実感されて、CHROという枠にとどまらない経営の面にまで入ってくださっているのはすごくありがたいです。
羽渕:自分が入社当初はハイファイブの財務状況や資金調達のことなど全然知らなかったのですが、水野さんはすぐにそれを開示してくださる腹づもりはすごいと思います。水野さんは角さんに似ていて、人を集める力がすごいと思います。素直さや弱さを出して、人が協力したくなるような人なのだと思いました。
角:水野さんの話ぶりをお聞きしていると、自分のことをよく見せようと全然思ってらっしゃらないのだろうなと見てて思いましたね。水野さんを助けたくなるというのはすごくわかります。
水野:自分がしっかりしなきゃいけないと思うのですが、しっかりしてないからこそ助けてくれるのかなと思っています。できないことはたくさんあるので、周りにはできる人がたくさんいるんですよね。その道でやってらっしゃる方とか。サラダ専門店を成功させていくためにはマーケティングの強い人だったりとか、CFOみたいな方といったプロフェッショナル人材が必要で、少しずつ整ってきている状況なんですけど、優秀な人を集めるのが経営者の仕事だと感じています。
角:すごくよくわかります。
ブラックな飲食業界を変えたい
平井:飲食業界でいうと、コロナの影響もありつつ、定着率などの労務の問題は以前からあると思います。御社が課題に持たれていることはありますか?
水野:飲食業は4年前に始めたばかりなので、これまで業界がどういう風になってるのかはよくわかっていませんでした。創業メンバーで専務を務めるの安藤は高校生のアルバイトの時から20年くらい飲食業界を続けていて、お客さんと接することに喜びを感じ、すごくこの業界のことが好きなのですが、長時間労働など、いわゆるブラックな職場に悩まされ続けていました。サービス業が好きだけど辞めざるを得ない人をずっと見てきたんです。そこで、サラダ専門店という業態で、飲食店で働くことが好きな人が気持ちよく、無理せずに働ける仕組みを作っていきたいという執念はすごくあります。シェフや店長に頼らず、高校生のアルバイト店員でもすぐに取り組めるようなお店作りをしていきたいという思いはあります。今の所、4店舗の単体ではきちんと回っている方だと思います。ただ、これから日本やアジアに広めていくとなると、本部経費がかかってくるので、それをどれだけ歯を食いしばって将来に対する必要な投資と皆で認識して未来を作っていくことができるかというところが鍵になるかと思っています。目の前のキャッシュを考えると心が折れるような時もあるんですけど、未来だけは信じています。
平井:羽渕さんが飲食業界全体の問題解決に向けて考えていることはありますか?
羽渕:構造上の問題があると思います。飲食店の店で売り上げをあげるには、回転率を上げる必要があります。そのためにはサラダをたくさん売るしか無くなるので忙しくなるし、土日営業、24時間営業という話になりがちです。そこを変えてかないと、いつまでたっても幸せにはなりません。コスメなどでは流れが起きていますが、店舗はなるべく体験する場として使い、ECで届けたり、近くまで届けたり、店舗じゃなくてもサラダが届くような仕組みにする。そして店舗はお客さんが喜んでもらう体験に専念できる状態を作っていくことによって、店舗だけでサラダを売らなくていい状態にします。そうすると負荷が下がっていくし、そこまで長く残業する必要も無くなると考えています。ビジネスモデルから変えていくという挑戦にチャレンジしています。
平井:コロナ禍になったことによる影響はありますか?
水野:コロナ禍になってやめたことと始めたことがあります。やめたのはナチュラルローソンなどコンビニへの卸です。コンビニでの販売はより多くの人に弊社のサラダを知ってもらうにはメリットがありましたが、選択と集中を考えて中止しました。新たに始めたのはスポット販売です。まだまだ数は少ないですが、駅の近くにあるタピオカ屋さんなど、店の周りにサラダを事前注文するとピックアップできる場所を作りました。アプリ経由で注文すると昼や夕方にそこに届きます。また、ECサイトを立ち上げてパワーサラダのミールキットを作って日本全国に配送することができるようになりました。まだ数は少ないものの、ニーズがあることはわかったので、店舗でハイファイブサラダを体験した人が地元の親族に送って広めてくれるような仕組みにしました。
また、宮崎県から生産者支援のために地元産の食材を強くアピールしたいというご連絡をいただいて、"3月はハイファイブサラダを宮崎県がジャックする"というイベントをやらせていただいています。具体的な施策としては、1ヶ月間全てのパワーサラダとECのミールキットで宮崎県産のじどっこ地鶏、ズッキーニ、完熟金柑を使います。
夢追い人を応援する会社にしたい
平井:ユニークな取り組みですね。
では最後に、今後のハイファイブサラダの展望などありましたら教えてください。
水野:人の迷惑をかけない範囲なら自分の夢を追い求めていいかと思って高校時代からやりたかった飲食を1店舗作ったのですが、作る途中で出資していただいている方を始め色々な人を巻き込んでいるんです。だからなんとか成功して、ビジネスとして皆さんにリターンしていかないといけないし、そのためには社会に広く必要とされるお店になっていかないと成し遂げられないなと最近強く思っています。短期的には利益を追い求めることも必要なんですが、長期的にどうやったら社会のために店舗を利用してもらえるのか考えていけば10年後20年後、そして100年後も残っているような飲食店ができるんじゃないかと思っています。
また、ハイファイブサラダは企業理念として、「夢追人を応援する」ということを掲げています。
サラダをキッカケに少しでも健康な食生活を始めた人が、ウェルネスの良さを知って、徐々になりたい自分を作れるようになるようになると、新しいことに挑戦して、自己肯定感が上がるのではないかなと思うんです。日本人の自己肯定感は世界の先進国の中でも最も低かったりしますので、これから若い人で自分を好きと思える人をたくさん作ることが必要だと思います。そして、自分を好きになるためには、自分の好きなことをやっていくことが大切だと思っています。今はまだサラダの提供しかしていませんが、好きなことや目標、夢にチャレンジしていく人をたくさん作っていけるような活動をしていきたいです。将来的にはそのためのイベントやワークショップなどを開催し、ハイファイブサラダは「夢追人を応援する」会社なのだということを社内外に広めていきたいと思います。そのために皆さんご協力していただければと思っています。ありがとうございました。
一同:ありがとうございました。
【プロフィール】
水野裕嗣
株式会社ハイファイブ代表取締役
愛知県名古屋市出身。南山大学卒業後 番組制作会社に10年勤務。その後、イチロー選手に憧れて2006年渡米。日本テレビニューヨーク支局(NTVIC)を拠点にMLBの取材を行う。帰国後は、日本テレビ 情報番組「ZIP!」の立ち上げに参加し、小山薫堂賞など数多くの賞を受賞。アスリートらの取材活動を通じて食や健康への関心が高まり、2016年サラダ専門店「HIGH FIVE SALAD」を立ち上げる。夢はサラダの無償化。
羽渕彰博
株式会社ハイファイブCHRO
個人投資家としてハイファイブに出資。2020年9月よりハイファイブに参加し、ビジョン・ミッション・バリューの再定義と貢献した。対話を通じて適応課題を解決し、意思決定や実行が円滑に進む環境づくりを実践している。
組織開発のコンサルティングを専門とするreborn株式会社の創業社長、自分の個性を誇れる自尊心を育むための子どもたちの暮らしの場をつくる特定非営利活動法人 ごかんたいそうの理事を兼任。