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カエルの合唱から経営ガバナンス管理まで!話し合いについて研究するハイラブル代表・水本武志さんの頭の中とは

フィラメントの公式雑談タイム「フィーカ」では、社内だけでなくメンバーとつながりのある社外の方も時々ゲストにお招きして雑談を楽しみます。今回は、株式会社リバネスの CTO・井上浄さんからのご紹介で、ハイラブル株式会社代表取締役の水本武志さん(井上浄さんお墨付きの「めっちゃ面白い人」)をゲストにお招きしました。ハイラブルは会議をリアルタイムで自動分析するクラウドサービス「Hylable Discussion」を開発しているテックベンチャー。もともと水本さんが博士課程在籍時に研究テーマの一つとしてニホンアマガエルの合唱メカニズムを調べていて、その頃の学びを活かして開発に繋げているとのことです。「カエルの合唱の研究からどうサービス開発に繋げたんだろう」「そもそもなんでカエルの合唱の研究をしようと思ったんだろう」といった尽きない疑問から今回のフィーカは始まりました。(取材・文/QUMZINE編集部、永井公成)

ロボット、カエル、そして人間のコミュニケーションへ

水本:私は大阪出身で、大阪府立高専に入りました。そこでプログラミングが楽しくなり、ロボコンを始めました。ロボコンというと、メカの設計がメインなのですが、僕はマイコンにプログラムを書いて、赤外線でリモコンを使えるようにするという、動かない時だけ怒られるインフラみたいなことをやっていました。そのあと京都大学の工学部に編入し、ロボットにマイクをつけて、人が喋れるようにしようとする研究室に入りました。そこでロボットと人とのコミュニケーションをやりたいと考えていたら、先生に突然呼び出されて「ロボットを踊らせてください」と言われて、「…はぁ、はい。分かりました」みたいな感じでやり始めました。修士の時には、ヒューマノイドにテルミンを演奏させようとしていました。ロボットが太鼓を叩くのはスナップ効かせるなり、打撃するなりしないといけなくて結構難しいんです。

角:難しいんだ、あれ。

水本:人がやるのに比べたらすごい難しいんですね。でもテルミンだと動かすだけでいい。

角:関節とか1個でいけるみたいな感じですか?

水本:はい。手を動かして演奏させるということをやって、その先に人と合奏するという研究をしていました。

その途中で、その時のボスの知り合いの息子が京大で物理学でカエルの研究をしていて、徹夜してカエルをビデオカメラで録音することをずっとやっていたんですが、その人に「もうちょっと科学的なやり方があるはずだから手伝ってくれ」みたいな感じのことを言われてやっていました。屋内の録音をずっとやりながらも野外の録音を始めて、2年ぐらい失敗してデータが取れず、カエルは逃げ、おっちゃんに話しかけられたからデータは使えないみたいな、そういうことがずっとで。

そんな中、カエルが鳴くとLEDが光るデバイス「カエルホタル」を作るアイデアに至りました。それを田んぼにブワッと並べると合唱が見えるんです。それを持って、隠岐島とかオーストラリアのゴールドコースト、屋久島とかいろいろな島に行っては撮りということをやったりしていました。

そのあと、もともとロボット聴覚の研究で共同研究していたホンダの研究所に入って、人のほうのコミュニケーションの分析をやるようになり、今のハイラブルの原形となるものを作って、この技術を使ってスピンアウトするプロジェクトをやるという話が出て、飛び出したという感じです。

当初はこの技術を使って音声認識で議事録を作るという話もあったんですが、自然な会話が取れるほどの性能がなく無理だと思いました。量だけでできる応用先について考えた結果、教育、アクティブラーニングというところに至りました。でも日本ではそういう教育が行われていないのでアメリカに行こうかと思っていた矢先にリアルテックファンドの方に会い、「君らは多分ベンチャーじゃなくて補助金でやったほうがいいと思う」みたいなことを言われました。そしてIPAの「先進的IoTプロジェクト支援事業」に応募したところ、採択されました。それでアドバイザーの方に「アメリカしかないんじゃないかと思ってて」と言ったら、1週間後には埼玉県戸田市というところで実証実験できるように話をまとめていただき、会議の分析をはじめとして、いろいろなコミュニケーションの場に広げていっています。

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角:なるほど。だからコロナの前からそこはやってるということですもんね?

水本:そうですね。4年ぐらいやってます。

角:4年もやってるんだ!じゃあその間に何かいろいろ分かったこととかもあるでしょ?

水本:そうですね。いろんなことが分かりましたね。例えば会話のデータでいうと、よくいうのが「心理的安全性」といって、例えば何人かチームがいたら、成績のいいというか生産性の高いチームは発言権が平等で、みんなが発言してるチームがいいんだみたいな話ってあると思うんです。でも、僕らがハッカソンとかアイデアソンとかそういうやつをとってみると、勝つチームって大体1人が支配してる。つまり短期決戦は独裁政権が勝つって。

宮内:これは真理ですよ。絶対そうです。

佐藤:強いリーダーがいるところですよね。みんなの意見を調整していたらまとまらないから。

宮内:短期決戦でそんなことしてる場合じゃないですよ。言うと時代に逆行するので怒られますけど。

角:水本さんそれはアレですか?ハッカソンとかアイデアソンで実際においてとったデータから基づいて、それをおっしゃってるんですよね?

水本:そうですそうです。というか、そもそも最初は「プロジェクト・アリストテレス」っていうGoogleのプロジェクトがあって、発話量が平等というか発言権が平等なほうが生産性が高いというのを読んで、なるほどねと思ってたんです。だからそんなふうに平等がどうかとれるんですよって話を大体してたんですけど、ハッカソンでとってみたら違う、なぜだと(笑)。

井上:でもハッカソンとかって、災害現場とか課題が目の前みたいな状態と近い状態じゃないですか。だからそこで必要なオペレーションと新しいアイデアとはまた違いますよね。

水本:そう思いますね。

佐藤:もともと意志がある人がやってるから。

角:面白いな。なるほど。それはいい気づきですね。

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うまくいっているグループワークは「一旦黙る」

水本:情報科の授業でグループワークをして、みんなでアイデアを考えるというディスカッションをしてもらいました。その時、時々先生が入って割り込むというか、介入して「今何しているの?」みたいなことを聞いて出ていくっていうようなことをすると、うまくいったチームってその先生に言われた結果、1回黙るんです。しばらく黙ってから急に盛り上がって。よく聞いてみると、1回みんなが考えこんでからアイデアに気づいて盛り上がるようなんですね。そういうチームは結果的に結構ゴールにたどり着いた。

一方で、ずっと同じだけ喋ってて、先生が来たあとも同じように喋ってるチームって、あんまりうまくいっていなかったりもしましたね。こちらは半分雑談してるんです。盛り上がればいいという話じゃなくて、1回黙ってから盛り上がるみたいなダイナミックな変化。そういうのがあるチームは結構うまくいく。

角:ちゃんと統制がとれてるというか、相手の話をちゃんと聞く姿勢があるとか、そういうことなんですかね。

水本:それもあるかもしれないです。その時は、やや怒られてたというか、それまで半分雑談してたので、やや怒られて頑張って考えたっていうところだと(笑)。そのへんは難しいんですが、聞いた結果、介入によって前後に変動があったかどうかはあるかもしれません。なんとなく盛り上がってるほうがいいような気がするんですけど、もうちょっと時間変化を見ていくと、ずっと盛り上がってるよりも1回黙るというか、そういう変化があるほうが実は良いみたいな。

角:なるほどね。アドバイスの受け入れをして、それに沿って動きを変えたみたいな感じですかね。

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オンラインとオフラインでは情報の"帯域"が違う

角:これまでオフラインのコミュニケーションだったのが、オンラインになったことでの気づきなどあります?

水本:学生とかと話したりしてると、実はオンラインになって、ミーティングがすごくやりやすくなったという人が結構いたんです。

それはもちろん雑談とかが減って、ちょっとしたアイデアは減るんだけども、やってる研究をディスカッションする時なんかは、中身を伝えるだけとか伝えたりするディスカッションの時は、余計なものが見えないから集中しやすいって言ってる人もいました。

宮内:なるほど。分かる気する。

水本:フェーズにもよるんでしょうけど。

宮内:だから一般の会議とオンライン会議で比較すると、多分無言の時間が多いんじゃないかとか。でもそれは生産性とか会議のアウトプットには関係ないとすると、人は無言対応性をあげていくべきなんじゃないかみたいな仮説ができますよね。

水本:そうそう。

宮内:無言対応性セミナーとかね。そういうのが必要なのかなとちょっと妄想しているんです。

水本:それについては僕もいろいろそのことを考えたんですけど、対面で話す時とオンラインで話す時って、やりとりをする道がだいぶ違うんだと思うんです。対面で話すと空気で伝わるので帯域は広いし、すごい信頼できる。オンラインのほうは狭いし、あんまり信頼できないので、無言になった時に、帯域が広いときは「無言」という意図があるんだと思えるんですけど、帯域が狭い時は「あれ?止まった」みたいに思ってしまうんです。

角:今の説明いいな。

水本:余計なことを喋らないで言うことだけ言う時は細くても十分だし、いろんな無駄な動きをやりたいとか、いろんなぼやっとした情報を出したい時は帯域が要るんじゃないかなって。

宮内:なるほど。

水本:あれみたいですね。ダイヤルアップとADSLみたいな気がして。ダイヤルアップの時って、必要な時しか繋がらないじゃないですか。

佐藤:もうそのたとえが通じる人が少なくなってる。(笑)

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ハイラブルで経営ガバナンスチェック?

角:最後に、水本さんが次にトライしたいことがあれば教えてください。

水本:「いい会議ってなんですか?」っていつも聞かれるんですよね。これは、シチュエーションによって明らかに違うと思うんです。なので、このシチュエーションの時はこれがいいとか、そもそも良い会議とは何かを定義するというか、見つけ出す必要があるんだと思うんですよね。その目標を決めるところを、人がやるか、データから導き出すか。ということで、会議の良さをなんらかの方法で見つけたいのが次のステップです。

よくあるのが、「このキーワードを言ったら理解が深い」みたいなのなんですけど、これは浅いと思っていて。キーワード当てクイズになってしまうんですよね。そうじゃなくて、こういう流れだったらいい会議だよみたいな、良さが見つけられるといいと。

佐藤:大体の日本企業だと、偉い人の言うことを拝聴するのが会議なので偉い人が言うことと別のこと言ったら駄目なんです。そもそも。

渡邊:半沢直樹の世界ですね。

水本:社外取締役がどれだけ経営にちゃんと口をいれているかを分析することを考えたことはあります。

渡邊:それね、めっちゃいいと思う!

宮内:それ絶対いいと思うよ。

渡邊:それ超いいと思う。

宮内:社外取がちゃんとした意見を言うのはやっぱりいい会社なので、そこを見える化したら結構ニーズありますね。たしかに。ハイラブルを使った経営ガバナンステックみたいなね。

渡邊:内部統制においても、それを可視化することができていないので、テクノロジーとしてすごい面白いんですよ。「DX」っていうのは多分そういうことなんですが、それがやっぱり分かってもらえないんですよね。やっぱりそこってテクノロジーが絶対必要なんですよ。こういう分かりやすくできるものはむちゃくちゃ意味があると思います。

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水本:ありがとうございます。取締役会で何を言ったかというよりも、量とかのところでパターンとして何が起こっているか分かると、全然違う会議でも同じような基準で比較することができます。

佐藤:取締役会が機能しているか機能していないかは、とりあえず分かりますよね。

水本:そうですね。

角:社外取締役が機能してるかどうかは多分一目瞭然なんでしょうね、それって。その機能している率をスコア化して、ちゃんとつけるみたいなやつができたら、取締役会のレベルが分かりますよね。

佐藤:ただの御前会議になっていないかみたいな。

宮内:カラオケみたいな感じでね、会議の点数が出るとか。

井上:「やっぱりあんた喋ってないじゃん!」とか「喋りすぎじゃん!」みたいなのが。

角:これだけ時間使って喋ってるわりに中身めっちゃ薄いじゃないの!みたいなやつも分かるかもしれませんね。

水本:学校とか会社でも面白いのが、よく言うんですけど、「よく喋りすぎの人は自分が喋っていると思っていないし、喋らない人は自分が喋っていないとも思っていない」っていう認知の歪みがある。そこで、レコーディングダイエットみたいな感じで、認知づけると良くなる。

角:レコーディングダイエットのたとえいいですね。まさに。まさにそうだと思います。

渡邊:やっぱりそういう指摘はしないといけないんですね。

水本:そうですね。でも可視化されて状況が見えると自分で気づくんで、角は立たないです。

井上:横でグイグイグラフがあがっていくと、やっぱり喋りづらいですよね。

宮内:でもUI的にZoomの一覧画面のそれぞれに16とか100とかさ(笑)。そしたら相当プレッシャー出るよね。

角:喋りすぎるとだんだん顔が隠れていくみたいなやつとかね(笑)。芸能人格付けランキングみたいに喋りすぎると消えちゃうとか。

佐藤:「角さんまた消えちゃったよ」ってなる(笑)

角:大変面白いです(笑)今日はどうもありがとうございました。


【フィーカ(雑談)タイムについてはこちら】


【プロフィール】

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水本武志
ハイラブル株式会社 代表取締役


2006年に大阪府立工業高等専門学校を卒業し、2013年に京都大学大学院 情報学研究科 知能情報学専攻 博士後期課程修了。博士(情報学) その間、学振特別研究員 DC2 採用、LAAS-CNRS (仏) 滞在。2013年4月から(株)ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン リサーチャ。2016年11月より現職。

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井上浄
株式会社リバネス 代表取締役副社長 CTO


1977年生まれ。博士(薬学)、薬剤師。 大学院在学中に理工系大学生・大学院生のみでリバネスを設立。博士課程を修了後、北里大学理学部助教および講師、京都大学大学院医学研究科助教を経て、2015年より慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授、2018年より熊本大学薬学部先端薬学教授、慶應義塾大学薬学部客員教授に就任・兼務。研究開発を行いながら、大学・研究機関との共同研究事業の立ち上げや研究所設立の支援等に携わる研究者。


本記事に登場する水本さん、井上さん、角は水本さんが所長を務めるおたまじゃくし研究所の研究員でもあります。おたまじゃくし研究所は、研究員の豊富な経験と話し合いの定量データを組み合わせた研究を通して、 様々な話し合いのパターンを発見し、研究で得られた成果を世の中に伝えていくことで、 人々が互いに相手の意見に耳を傾け、自分の意見を伝えられる、ハーモニーのあるコミュニケーションの実現を目指しています。

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