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商工中金とNTT東日本グループが手を組んで共創型ビジネスコンテストを開催!~Shokochukin All-Japan Innovation Program 彩(SAI)最終成果発表会“Demoday”レポート~

中小企業や地域の成長を金融で支援する商工中金は、本業である金融サービス以外にもさまざまな新規サービス開発に力を入れています。2018年からは、ボトムアップ型のアプローチによる新規事業創出にも挑戦。そして2023年10月からは、さらに一歩を踏み出し、新たな取り組みとして異業種間での共創型オープンイノベーションプログラム「Shokochukin All-Japan Innovation Program 彩(SAI)」を開始しました。初回のパートナーとして、NTT東日本グループ(NTT東日本・NTT DXパートナー)を招き、6つの混成チームを結成。実行支援企業であるフィラメントが各チームに対してメンタリングなどの伴走支援を行い、約半年間の活動を経て2024年3月には最終成果発表のピッチイベントとなるDemodayが行われました。本記事では、両社の経営陣も一堂に会したDemoday当日の様子をお届けします。イベントは、ARCH虎ノ門ヒルズインキュベーションセンターで盛大に開催されました。(文・写真/QUMZINE編集部 永井公成)


ガイダンス

ピッチに先立ち、SAIの主催企業である商工中金 未来デザイン室の事務局責任者・佐藤宣幸氏から半年間に渡るSAIの活動の振り返りと本デモデイのガイダンスがありました。

佐藤宣幸氏:商工中金は「中小企業のための金融機関」として、金融を中心に中小企業や地域の皆様に対して成長や発展を支援してきました。これに加えて、現在は金融業界に留まらない、新しいサービスの開発に日々取り組んでいます。2018年より、ボトムアップでの新規事業開発を目指す施策は、社内で合計3回実施されてきました。2023年10月から開始された『SAI』では、異業種の共創型オープンイノベーションを企画しました。初回のパートナーとしてNTT東日本グループをお招きして、金融業界の知見と通信アセットを活用した新しいイノベーションアイディアを生み出すことに焦点を当てています。両社は、中小企業や地域社会の発展を目指す共通のパーパスを持っており、この親和性がプログラムの強みとなっています。

プログラムには、NTT東日本グループから12名、商工中金から12名の合計24名が参加し、所属企業混成の6チームを編成しました。参加者は、セブン&アイホールディングスや全日空商事の関係者とも交流し、メンターと共にアイディアを磨き上げました。

所属企業によって拠点や活動時間も異なるなか、コミュニケーションは主にSlackを通じて行われ、この半年間でに5000件を超えるメッセージのやり取りがありました。当初は、異なる業界や世代で構成されたメンバー間でどうやってコミュニケーションを取ればよいのかわからないという状況もありましたが、プログラム後半には改善され、チームは各々のアイディアを具体化していきました。ぜひ笑顔でピッチを見守っていただければと思います。

商工中金 未来デザイン室 事務局責任者 佐藤宣幸氏

商工中金社長挨拶

続いて、SAIの主催企業である商工中金の代表取締役社長である関根正裕氏から挨拶がありました。

関根正裕氏:私は今年で商工中金の勤務が6年目になります。風通しが良く、明るくのびのびと職員が働ける企業風土にしていくために、アイデアをどんどん取り入れたいと思っています。そのためにビジネスコンテストもこれまでに3回開催して、ボトムアップ型で新規事業の創出をしようとしています。たとえば、働く人たちのマインドは人手不足の時代には非常に重いテーマですが、これを評価して、ソリューションを提供する「幸せデザインサーベイ」が子会社化して事業化していく段階まで来ています。このほかに、前回のビジネスコンテストで入選したアイデア3つもPoCに進んでいます。今回のプログラムがこれまでのビジネスコンテストと異なるのは、NTT東日本さん、NTTDXパートナーさんとのコラボになっていることです。新しいものを作り出すにあたっては、同質性の高い組織だけでは限界があります。テクノロジーの先端を走っておられるNTTさんとコラボできたことも大変うれしく思います。商工中金の職員にとっても大きな刺激になったと思います。いろいろと苦労があったかもしれませんが、様々な価値観がぶつかり合う中で新しいものが生まれていくと思いますので、今回のプログラムの最後にはそれが実現できるのではないかと思います。両社の皆さんには大変感謝申し上げたいと思います。ぜひこれまでの成果を存分に発揮していただけたらと思っておりますので、よろしくお願いします。

商工中金 代表取締役社長 関根正裕氏

審査員紹介

続いて、今回のコンテストの審査員を務める6名から挨拶がありました。
内部審査員は、商工中金の代表取締役社長・関根正裕氏、取締役副社長・中谷肇氏、常務執行役員・山田真也氏、NTT東日本常務執行役員 兼 NTT DXパートナー代表取締役社長・遠藤玉樹氏、NTT DXパートナー代表取締役・長谷部豊氏が務め、外部審査員は日経BP 総合研究所上席研究員・菊池隆裕氏が務めました。

商工中金 取締役副社長 中谷肇氏
商工中金 常務執行役員 山田真也氏
NTT東日本常務執行役員 兼 NTT DXパートナー代表取締役社長 遠藤玉樹氏
NTT DXパートナー 代表取締役 長谷部豊氏
日経BP 総合研究所上席研究員 菊池隆裕氏

ピッチ

さて、いよいよ所属企業や拠点、活動時間も異なるメンバーが混成で作られた6チームが半年間、ユーザーインタビューやワークショップ、メンタリングなど様々な活動を行いながらビジネスアイデアへと昇華させてきた渾身のピッチが始まります。持ち時間は8分、その後10分程度審査員と質疑応答の時間が設けられています。

昨年開催された商工中金の社内ビジコンに引き続き、今回もフィラメントが実行支援企業としてサポートをしています。フィラメントは、今回のデモデイに向けてビジネスアイデアそのものをブラッシュアップするためのオンラインメンタリングや、ワークショップ、Slack上でのテキストメンタリング、ピッチの指導や外部審査員のアテンド、エンゲージ施策、直前期には対面メンタリングまで幅広くお手伝いしてきました。今回のデモデイではメンターも現地参加し、直接チームを勇気づけてピッチを見守りました。

「OMO-KACCHI(オモカッチ)」中小企業の強みに基づく新卒採用支援

まずはOMO-KACCHIチームの発表です。このチームは、中小企業の新卒採用を支援するビジネスアイデアを提案しました。中小企業の経営者にインタビューをすると、素晴らしい思いを持っているにもかかわらず、それを形にして発信することができないため、新卒採用をあきらめてしまっていることがわかったとのことです。このサービスでは、中小企業の経営者と従業員の思いの言語化を支援し、採用コンテンツを制作することで、学生の共感を喚起させ、新卒採用へ結びつけることをサポートします。

「デポ休」物流業界のドライバー休憩所不足解消

デポ休チームは、2024年4月から働き方改革法案が起用される物流業界に向けて休息場所を提供するサービスを提案しました。法改正によりトラックドライバーの休息時間が増えるものの、休息する場所がないという問題が発生します。これにより、駐車違反や近隣からの苦情の発生、過労による事故といった問題も予想されます。これに対して、駐車場をシェアできるようなサービスを提供することで、ドライバーの休息場所を確保することができるほか、そのデータを活用することで、運航管理や休息管理にも役立つという解決策を考えました。

「SoCoDesica(ソコデシカ)」地方観光業のインバウンド販売支援

SoCoDesicaチームは地方の特産品や体験をインバウンド消費に繋げるサービスを提案しました。2030年にはインバウンド消費が日本の主要輸出産業になると予測されていますが、現状では地方の消費額が都市部に比べて低いという課題があります。そこで、地方の魅力を直接伝え、手荷物を気にせず購入できるサービスを考えました。コンシェルジュとインバウンドを繋ぐプラットフォームを通じて、地域固有の情報や商品を紹介し、観光客の消費を促進します。地域経済の活性化と消費拡大を目指します。

「ProBoost」人間関係資産の可視化

ProBoostチームは、職場における人間関係の可視化ツールを提案しました。リモートワークの普及や社会環境の変化により、職場の関係性が希薄化している現状に対応します。コミュニケーションツールのログを利用して社員間の繋がりを自動で可視化し、管理層にレポーティングします。これにより、たとえば取引先との関係が希薄化した時にも管理層が早期に発見することができます。担当者は部下のマネジメントに使えるほか、担当者は前任との関係性を確認して不明な点を聞くべき相手がわかります。

「ココイケ」製造業の新規販路開拓支援

ココイケチームは、日本の自動車関連部品製造業が直面している経営上の課題を対象にしました。かつては品質、納期、コストを気にしていれば受注を得られていたものの、最近では受注が減少しており、かつ新規営業の方法が分からないという問題が生じています。これは、自社の強みや市場適合性が不明確であることが一因です。これに対応するため、企業が自社情報を入力すれば、AIがその強みを可視化し、適した見込み客リストを提供するシステムを提案しました。これにより、中小企業は自身の強みを理解し、新たな市場に進出する手助けを受けることができます。

「AI女将」宿泊業界の人手不足解消

AI女将チームは、地方宿泊業界の人手不足問題に対処し、派遣スタッフの業務を円滑にするためサービスを提案しました。宿泊業界は繁忙期と閑散期の差が激しく、人手不足は深刻な課題です。派遣スタッフは重要ですが、短期間での入れ替わりが多く、その都度の指導には時間がかかります。特に女将は、お客様対応から物品の発注まで多岐にわたる業務を担い、派遣スタッフへの指示出しにも時間を割いています。AI女将は、業務進捗度をリアルタイムで反映し、派遣スタッフに次の仕事を指示するシステムです。これにより女将の負担が減り、より効率的な業務運営が可能になります。

昨年の商工中金のデモデイとは異なり、今回は商工中金とNTT東日本グループの混成チームでアイデアを練りました。そのため、日本全国様々な中小企業にネットワークを持つ商工中金の強みを活かして顧客の課題を発見し、インタビューを行い、NTT東日本グループのテクノロジーに関する知見を活かしてソリューションを考えるという構図が多く見られました。また、所属組織や拠点の異なるメンバーでやりとりするために、直前期には早朝からSlackのハドルミーティングを使ってチームミーティングを行ったり、デモデイの会場に早めに来て発表のリハーサルを行うチームもみられ、どのチームも質の高いピッチを成し遂げました。

リフレクションイベント

全6チームの発表と審査員らによる質疑応答の後、別室で審査会の時間となりました。審査中は、リフレクションイベントと題し、自分が参加していないチームの発表内容について自由に質問したり、説明を受けたりする時間となります。これまで伴走支援してきたメンターや他チームのメンバーと交流することで、それまでピリピリと緊張感で満たされていた会場が一気に和やかなものとなりました。

結果発表

審査会が終わり、審査員が会場に戻ってくると、いよいよ審査結果の発表です。

今回のデモデイでは大きく分けて3つの賞が用意されています。

まずは「フィラメント賞」。3チームが受賞します。フィラメントによる半年間の各チームの伴走支援を通じて、優秀な成果を上げたチームが選ばれることになります。

フィラメント賞:「ProBoost」人間関係資産の可視化

フィラメント賞:「SoCoDesica(ソコデシカ)」地方観光業のインバウンド販売支援

フィラメント賞:「AI女将」宿泊業界の人手不足解消

次に各社賞です。各社賞は、PoC(実証実験フェーズ)には進まないものの、提案されたテーマの選定が秀逸であったり、ソリューションが優れていたりと、両社間のシナジーがあると判断されたプロジェクトに対して、個別に授与されます。まず「NTT東日本グループ賞」です。

NTT東日本グループ賞:「OMO-KACCHI(オモカッチ)」中小企業の強みに基づく新卒採用支援

次に「商工中金賞」です。

商工中金賞:「ココイケ」製造業の新規販路開拓支援

最後は最優秀賞です。
最優秀賞は両社共創のもと、今後のサービス検証、リリース判断などを経て、サービスの立ち上げへと向かっていくことになります。

最優秀賞:「デポ休」物流業界のドライバー休憩所不足解消

講評

クロージングとして審査員から講評がありました。

商工組合中央金庫 取締役副社長 中谷肇氏:

中谷肇氏:皆さん、お疲れ様でした。特に最優秀賞のチーム「デポ休」さん、おめでとうございます。その他のチームも各賞の受賞おめでとうございました。どのチームも非常に素晴らしかったと思います。これまでは商工中金単独でビジネスコンテストを実施していましたが、今回はNTT東日本グループと共同で開催し、より多角的で幅広い視点での検討が可能となりました。審査員にも商工中金以外の方が参加されたことで、違った目線で話を聞くことができ勉強になりました。感謝申し上げます。この5ヶ月半、なかなかコミュニケーションが取りづらかったという話もありましたけど、今では皆にこやかで良い仲間ができたんだなと感じられ、その点でも素晴らしい体験になったと思います。「デポ休」チームについて少しコメントをしますと、まさに商工中金は物流業界との取引が多いということで、そこの労働問題に向き合っていくものだと思います。審査員の皆さんから、「これはまだ本質的な課題解決につながっていないんじゃないのか」「もっと大きなところで考えることがあるんじゃないのか」というご質問をいただきましたが、まずはできることからということで、休憩に着目していただいて、NTT東日本グループと一緒にやらないと発想できなかったことも組み合わせながらプレゼンいただいた点が素晴らしいと思います。

また、商工中金賞を受賞した「ココイケ」チームについては、強みを可視化するというアイデアで、お客様から要望いただいていることについて着目して検討したことが素晴らしいです。他4つのチームの皆さんも、両社の特徴を生かした素晴らしいプレゼンでした。どのチームも今日の発表に至るまで大変だったと思います。お疲れさまでしたと思うと同時にここがまたスタートですのでぜひつなげていただきたいと思います。楽しい時間をありがとうございました。

NTT DXパートナー代表取締役 長谷部豊氏

長谷部豊氏:皆さんお疲れ様でした。そして、おめでとうございました。私が感じたことをお伝えしたいと思います。

新しい事業を立ち上げる時に、トップダウンで「あの会社と組みたいから何か事業アイデアを考えろ」という話によくなります。でもそれでうまくいった試しがないんですよね。そうした、「手段やシーズありきで何かを考える」というプロセスに少し課題感を感じていました。今回は「商工中金とNTT東日本グループという大手グループ2社が組んで何かする」という見方をされる懸念も少なからずあったわけなんですけども、私は皆さんの発表を聞いて、今まで経験してきたネガティブな感じは一切なかったです。商工中金さんが日々常に顧客である経営者と対峙されていて、そのことが今回のビジネスアイデアの出発点になっているというところが今回のビジネスコンテストがうまくいった一番大きなポイントだったかと思います。顧客に対してしっかりと向き合って、何回もインタビューをして、納得して、「ここにペインがある」ということを発表で伝えてくれましたし、チームとしてそれらを自ら確かめようしたのだと思います。聞いていて、「こんなペインがあったんだ」とか、「この角度からのアイデアが来たか」とか、良い切り口でそれぞれアイデアが出てきたなと思いました。どのチームもまだ先に進んで良いんじゃないかというのが正直なところです。皆さん志が高くて、業界をすべて変えていきたいと思っているのか、プラットフォーム型のアイデアが多かったように思います。外部審査員の菊池さんからも質疑応答でお話がありました通り、プラットフォームビジネスの難しいところは「鶏卵問題」が発生することです。これを解決する方法としては最初一つの方に対してしっかりと価値を生み出していき、ある程度進めたらもう一つの方に対してその価値を見せていきます。実は最初は泥臭く情報や参加者を集めていく必要があるんですよね。この泥臭さは商工中金さんもNTT東日本グループもあると思います。そうして最初のデータや参加者を集めていく。その際、ファーストカスタマーと一緒にやる信頼感とか、そこにしっかりリソースを動かして投資をできるのが私たちの会社だと思っています。そういう意味で、先は明るく希望はあると思っていますので、ぜひ絶対に最後まであきらめずに一緒にやっていければと思います。ありがとうございました。

この後、参加者はARCHに併設されたARCH CAFE & BARにて懇親会に出席しました。参加者やメンター、審査員が飲み物を片手に、これまでの活動をねぎらいました。
参加者の皆さん、お疲れ様でした!


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