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経営層も積極的に参加! NTTコムの「Fun to Work!」な新規事業プログラム「DigiCom(デジコン)」の舞台裏

NTTグループの中でも中核をなすビッグカンパニー、NTTコミュニケーションズ株式会社がグループ会社横断で開催している新規事業プログラム、「デジコン」。今年開催されたデジコンでは、参加者650名超、約100チームが参加。これだけの参加者を集め、盛り上がるのはなぜでしょうか? 理由を探るべく、庄司哲也社長、デジコン主催チームの皆さんを交えた座談会を行いました。後編では、実際に運営で工夫していることや、庄司社長の組織に対する考え方についても語っていただきました。

*本記事は、2018年12月に㈱フィラメントのコーポレートメディアで公開された記事の再掲です。

前編はこちら↓


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デジコン準備も業務時間

角:藤岡さんはデジコンを推進していく役割として、現場とのコンフリクトとかいろいろ調整することも多いと思うんですけど。

藤岡:そうですね。でもやっぱり、最初に庄司さんを中心にこういうチャレンジをしていくっていう会社の雰囲気づくりをしていただいているので、基本的にはそれを現場もサポートしていくっていう風土があります。ただ、実際は現業との兼ね合いが出てくることもありますから、それは私や福田が、現場の人とその上長に話をして調整します。それも基本は、現業とデジコンをどううまく進めて行くのかという調整です。スケジュールを長めに引いてやっていくとか、別の組織と連携して協力してもらうだとか、そういう前向きな議論ができています。

角:いいなあ。僕も大阪市の職員時代に新規事業提案制度に何回か応募したことがあるんです。そのときに「これは業務時間中にやっちゃ駄目ですよ」って言われたんですよ。なんだ、この制度は?って思ったんですけど、その辺ってどういう仕切りになっているんですか?

藤岡:もちろん業務時間にしてくださいと言っています。もしかしたら時間外でやる場合もあるんですけど、それも時間外の手当を付けてやってくださいということ。ちゃんと全社周知をして、それを業務としてサポートしてくっていう形になっています。

角:普通、20%ルールって形骸化しがちじゃないですか。120%仕事するから20%ルールがあるみたいな感じになりがち。実際は120%仕事されているのかもしれないですけど、でも楽しんでやってる120%な気がするんですよね。なおかつ、それが業務としてもちゃんと位置付けられてるのは素晴らしいです。

庄司:HR的にいうと、デジコンも業務時間でしょうということになりますが、それ以前に会社が求めているある種の運動論に参加してくれているわけですよね。だから当然、労働対価を払うべき時間ということです。

角:でも普通の会社だと、まだ収益になってないアイデアは君たちの遊びで、だから部活動やろみたいなことを言う会社も多いと思います。だから、庄司さんが自ら発しているメッセージと一致してるんですよね。メッセージと会社がやることが一致してるっていうことが、一番大事だと僕は思うんです。

庄司:「Fun to Work!」の精神ですね。社員の本業でのミッションも、こういう社内コンテストでのチャレンジも、同じ「ワーク」だと思っています。それをどっちも楽しくする、あるいは両方やることでもっと楽しいのが理想です。社員にいろんな刺激を与えられますし。なのでマネージャーには部下に対して、それはお前の仕事じゃないとか、自分の時間を割いてやってとかはなるべく言わないでねとお願いしています。

角:それも言ってはるんですか。マネージャーにも配慮して「なるべく言わないでね」って言うあたりが、本当に素敵な表現だと思います。

庄司:そう言わないと、部下も隠れてやったり、家に持ち帰ってやったりということになっちゃうんです。いいんだ、堂々とやれ、と。

角:「Fun to Work!」。その精神、働き方改革にも通じますね。

庄司:そうです。ここまでが業務時間だとか、残業しないで早く帰れとか、そういうことだけでは、働き方改革ってうまくいかないです。ワークとライフのバランスを取るのももちろん大事だけど、ワークが楽しければ、別にライフの時間が少なくてもいいやって思うかもしれないし、ライフで発想したものがワークにもなるはずです。そういう自律的な働き方がある改革がいいですよね。

角:「Fun to Work!」っていうこの言葉は、庄司さんが考えられたワードですか?

庄司:そうですね。

角:やっぱ、キャッチコピーがぽんぽん出てくる。言われる言葉が、すごくシンボリックなんですよね。

新しいことをやっていいんだって文化を培う

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角:デジコンのときも思ったんですけど、庄司さんも副社長の方々もめちゃくちゃ忙しいはずなのに、時間を割いて、1日いるじゃないですか。

庄司:ええ、大丈夫なんですかねえ、経営的に(笑)。

角:(笑)。いや、やっぱりあれだけ社長が真剣に携わっているからこそ、周りの人たちも賛同していくんだと思います。

斉藤:第1回のデジコンで「Fun to Work!」っていう言葉をすごく打ち出したんです。そしたら、その言葉を聞いた人たちが、「あ、仕事って楽しんでいいんだ」みたいな気持ちになってくれたみたいで。アイデアソン部とデモの部の参加チームが両方で40チームだったので、すべて庄司さんから表彰していただいたんですよ。

角:素晴らしい。

斉藤:参加者が「え? 社長が表彰してくれるの?」という感じで、すごく驚いていた気がします。

角:社長と会ったことがない人とか、当然いますもんね。すごいうれしいでしょうね、

斉藤:第1回がそんな雰囲気でスタートできたので、それもあって社内に浸透させることができたんだと思います。

角:デジコンはどんどん大きくなって、今年で4回目ですが、また来年もすごくなるんでしょうね。すでに650人が参加していて、それをコンテスト形式でやるから、審査が大変って聞いています。

斉藤:そう。福田さんは3日間、審査し続けていましたね。

角:お疲れさまでした。審査もそうですけど、そこからビジネス化までの道のりを福田さんは担っていて、今のところビジネス化まで至ったみたいなものは?

福田:ビジネス化の一歩手前みたいなころですね。ビジネスの卵が産まれつつあるステータスです。

角:僕もメンタリングとしてこないだミニ講演をさせてもらって、サービス化のフェーズごとに陥りがちな悩みを10個ほどあげて話したんですけど、みなさんすごく熱心に聞いてもらえたのが印象的でした。福田さんはこれからどんな感じでチームをサポートしていきたいと思ってらっしゃいますか?

福田:どこの会社も悩まれてると思うんですけど、やっぱりイグジットが大事です。ここまで経営層を含めて盛り上げてきたコンテストなので、最終的なサービス化にどう結びつけるかというのが、まさに私のやる仕事かなと思っています。やっぱり参加者はみんなパッションがものすごくあって、それはベースとして重要なところではあるんですけども、やっぱりそれに伴って必要になってくるスキルをどんどん習得してもらえる環境も用意する必要があるんです。その両面がないと、本当の事業化はできないです。「Fun to Work!」がベースにありながらも、事業化するにはいい意味での緊張感みたいなものが大事ですね。

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ビジネスの卵「議事ロック」
新規事業プログラム「デジコン」は、決してただの“祭り”では終わらない。
デジコン参加チームのうち数チームが事業化に向けて継続開発に取り組んでいる。(フィラメントは伴走型サポートという形でブラッシュアップにもジョイン)
そのうちのひとつ、議事録作成アプリ「議事ロック」は、社内会議や取引先での「議事録にかかる労力を削減したい」という現場ニーズから着想を得たもので、ストロングポイントは、圧倒的な「高精度」と「汎用性」。アプリで自動チューニングを行い、ハードウェア(マイク、ICレコーダー、スマートフォン)に依存しないサービスを目指す。すでに他社の外部イベントにも参考出展し、多くの来場者からの反響・問い合わせを獲得。
また並行してPoC(実証実験)を進行中。サービスローンチに向けて、精力的な動きを見せている。

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角:ここから先のビジネス化の部分で、庄司さんがサポートしなくちゃ駄目だなって思ってらっしゃることとか、こんな風になってほしいって思ってらっしゃることはありますか?

庄司:ビジネス化とは少し話が異なりますが、我々が60年前に電電公社時代に、タイのバンコクに電気通信訓練養成所って施設を作ったんですね。それは電柱を立てて電線を張って、こうやると電気と同じように電話や電信ができるんだよっていう技術を、当時はまだ電話会社というよりも電気通信所っていうタイの役所が運営している施設の技術支援をしていました。講師も学校施設も全部、当時の電電公社が作ったんですけど、その卒業生や訓練生がタイの電気通信を支えてきました。その電気通信訓練養成所が、今ではタイ王立工科大学(モンクット王工科大学)になっているのです。

角:ええっ!?

庄司:日本における電気通信大学や東京工業大みたいなタイの大学の母体が、実は電電公社だったんですよね。そういうすぐには成果にならない広がりや課題解決って、いまの我々にだってきっとできるはずで。デジコンに参加して、仮に事業化にまでいかなかったとしても、後輩にそういう刺激を与えるとか、チームのファシリテーターやメンターとしてサポートするとか、そういう積み重ねによって新しいことをやっていいんだって文化を培っていければいいですね。もちろん本当にリアルビジネスや、プロジェクトとしてマネタイズできるようなものができたら、なおさら刺激になります。

トップが変われば組織も変わる

角:新規事業を作るってのは、学びそのものだなっていう話を福田さんとも以前していました。それができる人を作っていくという意味では、このコンテスト自体がアカデミアっぽい。一方でアカデミアっていっちゃうと、学びは学びとしていいけれども、事業は作らないのかってなるから、ややこしくもあるんですけど。ある意味、日本の企業はそういう先行投資が全然できずに20年、30年たっちゃってる気がするんですよね。それって、どうしたらいいのかなと思っています。

庄司:参考になるか分からないですが、私が座右の銘にしているマリオ・アンドレッティというF1やインディで優勝した伝説的なレーサーの言葉があります。"If everything seems under control, you're not going fast enough. "「もし全てがうまくコントロールされているように見えるなら、まだスピードが足りないということだ。」という意味です。私はこの言葉が本当に好きで、会社のパンフレットにも載せているんです。

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角:いい言葉ですね、これ。深い。

庄司:多分、日本の失われた20年間っていわれる期間も、日本経済はある意味快適な状況だったと思うんですよ。だけど、その間に外の世界は変わっていって、経済面でもいつの間にか諸外国に抜かれて。とどまっているっていうこと自体はなんのリスクもないし、すべてがコントロールできていて満たされていたんだけど、結果として変わっていく世界に取り残されたってことですよね。

角:そうですよね。日本経済って全然成長していない

庄司:だから安住しちゃいけないんです。

角:NTTコミュニケーションズってインフラの会社だったはずで、インフラの会社だと安全指向になることが多いじゃないですか。でも、その社長に庄司さんが就かれて、この言葉を発信されてるっていうことがすごく頼もしいです。やっぱり、社長になったら守りに入る人も多いから、その快活なマインドセットが続いている秘訣が知りたいです。

庄司:本当はなんでもやっていいはずなんですよね。だけど、みんな「たが」にはめたがる。

角:そうなんですよね。忖度であったり、事なかれ主義であったりが根強い。

庄司:そう。組織をいい方向に持っていくのも悪い方向に持っていくのも、トップの影響力ってすごく大きいなと思うんです。せっかくいい素質を持ってる人でも、枠にはめられたり、ここから出ちゃ駄目ってことになる。それだと安全かもしれないんだけど、人は成長しないですよね。

角:まさにそうだと思います。

庄司:チャレンジをしないし、失敗を恐れちゃう。私の経験でいうと、うちの娘が高校生の時に「学校、やめようかと思う」って言われました。よくよく話を聞いたうえで「やめるのもいいけど、それに対して問題提起をしたのか」と聞いたら、「していない。言っても無駄だし」と言うので。「じゃあ、お父さんがPTAに出て発言してもいいか」ということになって、PTA総会のときに質問をしたんです。

「昔、小学校に入った時には自由な校風であったのに、今は随分変わってしまいました。私はそれがすごく親として心配だし、本学の精神が本当にそうなのでしょうか?」と発言したら、期せずして父兄から拍手が起きました。

角:おおっ!

庄司:あとで聞いたら、私の発言の後に学校側の集まりが急遽開かれて、喧々諤々の議論になっていたそうなんです。だからトップが変われば変わるんですよ。いい方にもなるし、悪い方にもなる。それに対しても、事なかれ主義でいてはいけない。

角:すごいドラマじゃないですか。でも庄司さんが社長になられたので、NTTコミュニケーションズはいろんなことが変わりそうな気がします。これから会社をこうしていきたいという「次の一手」みたいなものがあるとしたら、どんなことをやっていきたいですか?

庄司:自分たちの会社という枠だけでは、これからはできないことが増えてくるんじゃないかと思っています。よく言うんですけど、社外の方とのネットワーキングや刺激を受けたりすることが大事。会社というファミリーの中は安住なんですけど、違うものを受け入れたり、知るっていうことで新たなものが生まれる。新しい化学反応を求めて、いろんな出会いや刺激を求めなさいってことは伝え続けたいと思います。実はビジネスにおいても言えることで、クラウドのような我々のインフラも、パートナーのアセットと組み合わせることで新しい可能性が広がる。それはチャンスでもある。

角:すごいです。それをどんどん率先している庄司さんが、多分これからのトップのロールモデルみたいになるんじゃないかなと思います。今日は本当に、楽しいお話をありがとうございました。

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