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常石グループ×学生起業家が織りなす未来ビジョン交流会〜化学反応を生み出すピッチセッションレポート〜

2024年9月25日、広島県福山市に拠点を置き、海運、造船、環境、商社・エネルギー、ライフ&リゾート事業を展開する常石グループの新規事業・CVC担当者と、近畿大学の学生起業家たちが集まり、「未来ビジョン交流会」が開催されました。このイベントは、常石グループの新規事業人材育成プログラムの一環として実施され、昨年度の成功を受けて、今年も継続開催に至ったものです。セッションでは、両者が互いに事業アイデアを披露し、ビジョンをぶつけ合い、未来志向の議論が展開されました。本記事では、このピッチセッションの熱気あふれる様子と、交流会に込められた意図をお伝えします。


近畿大学発ベンチャー起業支援プログラム(KINCUBA)が、大学発ベンチャーの創出と産学連携の新たな形として注目を集めています。KINDAIとINCUBATIONを組み合わせた造語であるKINCUBAは、学生起業家の育成から企業との協業まで、包括的な支援を提供しています。

この日、同プログラムの拠点「KINCUBA Basecamp」で開催された「未来ビジョン交流会」では、学生起業家と常石グループの社員が互いの事業アイデアを発表し合う革新的なピッチセッションが行われました。


近畿大学発ベンチャー起業支援プログラム「KINCUBA」〜革新的な学生起業支援の取り組み〜

まずは、近畿大学 経営戦略本部 起業・関連会社支援室 垂見俊秀氏より、KINCUBAの取り組みについての紹介がありました。垂見氏は近畿大学を卒業後、民間企業に務め、現在は近畿大学 経営戦略本部 起業・関連会社支援室に勤務されています。

近畿大学が推進するKINCUBAは、2022年の「スタートアップ創出元年」を契機に立ち上げられた先進的な起業支援イニシアチブです。全国の大学で同様の取り組みが行われる中、近畿大学では専門施設や専任スタッフの配置など、充実した支援体制を整えています。具体的な支援内容としては、法人登記・開業支援プログラムがあります。このプログラムでは、法人登記時に必要な設立資金最大30万円の費用を大学が負担し、学生の金銭的負担を軽減しています。また、年に一度開催される近畿大学ビジネスコンテストでは、優秀なビジネスアイデアに対して賞金などの支援が提供されます。また、今回のピッチセッションの会場でもある近畿大学のインキュベーション施設「KINCUBA Basecamp」では、前述の法人登記のサポートから専門家によるアドバイスまで、起業に必要な様々なリソースにアクセスでき、しかも、施設は24時間利用可能という理想的な環境が整っています。

KINCUBAの特徴は、近大発ベンチャー117社のうち学生起業家の割合が多い点です。この学生起業家の多さは、他大学と比較しても際立っており、近畿大学の学生起業支援への強いコミットメントが表れています。

学生起業家の事例はさまざまで、たとえば、「インフルエンサーとフリーマーケットを組み合わせたイベント企画」、「大学での専攻とは異なる分野での起業(理工学部生によるたい焼き販売など)」があります。規模としては社長一人で運営しているスモールビジネスが多くなっています。自分で経営をすることで学生のうちに小規模であっても、経営という1つのサイクルを実体験することは、卒業後に就職活動の場合にも役立ちます。

KINCUBAの狙いは、単に起業を促進するだけではありません。小規模ビジネスでの実践的な経験を通じて、学生たちに「失敗のリスクが低い環境」での挑戦機会を提供し、将来のキャリアにも活かせる貴重な経験を積ませることを目指しています。
近畿大学は今後、近大ビジネスコンテストの規模拡大など、さらなる支援強化を計画しています。このプログラムは、学生に実践的な起業経験を提供するだけでなく、日本の大学発ベンチャー支援の新たなモデルとしても注目を集めています。

学生たちに起業という選択肢を提示するとともに、社会に出てからも活かせる実践的なビジネススキルを養う場を提供するという革新的なアプローチが、日本の次世代起業家育成にどのような影響を与えるか、今後の展開が大いに期待されます。

常石グループの事業とCVCとは

続いて、ツネイシホールディングス株式会社 齋藤爽夏氏による常石グループについての説明と、常石商事株式会社 橘高啓介氏による同社のCVC事業についての説明がありました。

齋藤氏:
常石グループは、広島の東の端、岡山寄りの福山市に本拠地を構えています。 昨年創業120周年を迎え、「未来の価値を、いまつくる。」というスローガンを新たに掲げました。「社員の幸せのために事業の安定と発展を追求する」というグループ理念を軸に、「地域、社会と共に歩む」という強い使命感を持って事業を展開しています。さらに、常石グループは「顧客価値を問う、変化に適応する、信頼に応える」という行動指針を掲げています。

常石グループは常にチャレンジを繰り返しながら成長してきました。1903年に海運事業からスタートして、1917年に造船事業もスタートしました。そして、石油需要が高まっていた1952年にはエネルギー事業を開始。また、船の廃油処理を行うために、環境事業を1967年に開始しています。このように、海運・造船・エネルギー・環境と展開したのち、「顧客を家族のように大切にする」という考えから迎賓館としてホテルを設立し、今ではリゾートホテルや豪華客船にまで事業の幅を広げています。このような5つの事業を行っていくことに加えて、新たな6本目の柱となる新規事業を創出する人材となるために日々勉強しているところです。

齋藤氏:
また、サステナビリティの推進にも取り組んでおります。2022年にツネイシホールディングスでは、グループ会社を横断したサステナビリティ推進委員会を設置しました。環境保全・地域社会との信頼作り、人材にとっての働く喜びなど全社でサステナビリティ意識の調整に取り組んでいます。

橘高氏:
続いて、常石商事が担うCVC事業の説明をしてまいります。投資対象ステージは基本的に特定のステージに限らずに、1社あたり3000万〜5000万という投資サイズで幅広く各スタートアップに投資をしています。

ポートフォリオについては、スタートアップ投資として1~3号のファンドを運用しており、1番古いもので2011年設立となっております。1号、2号については、新規の投資は終わっており、モニタリング、事業支援、投資回収のフェーズとなっています。3号については3年前に設立し、まだ投資余力があるので新しい投資先を発掘のうえ、投資の検討を行っています。投資先については、先ほど特定の業種等は定めてないとお話しした通り1~3号ファンドで約50社の多様な業種に投資をしています。その中には、グループの事業シナジーを狙ったものもあれば、純投資を目的としたものもあります。

橘高氏:
スタートアップ向けの投資ファンドとは別で、今年1月に新たに立ち上げた新規事業ファンドがあります。常石商事における新規事業創造を目的にグループから15億円の資金を集めていて、社内起業であったり、成長が見込まれる事業へのM&Aなどに出資していきます。今年立ち上げたファンドですが、すでに2件の出資案件が決まるなど、事業開発の意思決定を大胆かつスピーディーに行うことができており、当社の事業開発を加速させています。

常石グループと近大生のピッチがスタート!

常石グループと常石商事のCVC事業についての説明の後は、いよいよピッチがスタート。近大生と常石グループが交互に8分間のピッチをおこないます。大盛りあがりのピッチの様子は写真でお届けします。

ピッチを終えて

大盛りあがりのピッチを終え、最後は総括です。
ピッチを見ていた皆さんから一言ずつ感想をいただきます。

マグチグループ株式会社 取締役COO 川田宏之 氏:
今日はたくさんの方に発表いただき、ありがとうございました。学生の発表を見ていただいて感謝しています。鋭いツッコミが学生にとっていい勉強になったんじゃないでしょうか。
我々は年間1000件ぐらいメンタリングをしていて、1人1人の成長に合わせて、どうやって育てるか、どんなお客さんを紹介するかを考えています。今日はフィラメントさんのおかげで、いろんな観点を教えていただいた気がします。また、常石グループさんがさまざまなことに取り組まれているということもよくわかりました。
発表全体を見て、「ターゲットをどこに絞るか、マーケットがどこにあるか」が最も大切なことで、これがアイデアをマネタイズできるかというときの1番のポイントじゃないかと思います。色々な世代がいて、たとえば今日発表してくれたZ世代である近大生の若い皆さんの意見や望んでいるものをちゃんと見ないといけませんね。もちろん、小さいお子さんを対象にした場合も、グローバルな仕事である場合も同じです。すべてを網羅しながら、そこにはどういうニーズがあるのかをしっかり掴んで事業を作っていかないといけないと思います。

現在、日本は新しいものを取り入れていかないといけない時期になっているんじゃないかと思います。既存事業だけではなく、新たな事業が世の中を塗り替えていく時代です。お互いに切磋琢磨しながら、日本を元気にしていくためのスタートアップを目指しましょう。今日は本当にありがとうございました。

株式会社フィラメント CEO 角勝:
今日のピッチを聞いて、私がピッチについて考えていることをお話ししたいと思います。僕はピッチの本質とは、「まだ他の人が気づいていない課題に気づいて、それをみんなに披露すること」だと考えています。そして、その課題に対してどう解決するのか。課題が解決された未来を素晴らしいと思うからこそ実現したい。これが大切なホラ(夢)だと思います。
ピッチは夢を語り、その夢を実現すべく自分の時間やリソースを投下していくという決意表明の場です。ピッチの面白さは、どんな課題に気づいたのか、そしてそれに対してどんなホラを吹くのかということです。ホラが吹かれていないものは全く面白くありません。
今日、若い人たちは事実ベースの話をしがちでした。もっと、「自分はこう信じているんだ」という、自分が信じる道や願いの話をしてほしいと思います。そういう話を聞くと、協力したいという人が出てくるんです。

皆さん、特に常石の皆さんには、自分たちの会社で協力者が生まれるためのピッチを考えてほしいと思います。今日はたくさんの良いピッチを聞かせていただきました。懇親会では、よかった点や細かな質問など、交流を深めてほしいと思います。皆さん、お疲れ様でした!ありがとうございました!


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