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元ヤンのEC社長から経営学者・入山章栄さんが学んだ、ワルのファッション哲学がめちゃ深かった話(対談#03)

どうもフィラメントの宮内です。
いよいよバースジャパンの石川智之社長、そして入山さん、フィラメント角勝、宮内による鼎談の最終回です。

今回はまさにクライマックス。石川社長が淡々とした表現で「不良というカルチャーへの目線」やビジネスについての考えを語る言葉は、本当に金言の連発です。胸が熱くなります。

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宮内:ヒップホップ系のワルにいったりもあるわけですか?

石川:最初はヒップホップでやりたいなと思ったんですけど、ヒップホップからまたひとつ進んだ差別化ができるようなってなると、もうちょっと不良っぽいデザインのほうが分かりやすいし、やりやすいなと思ったんですよね。

宮内:入山さんはやっぱりハイパーニッチ的なビジネスとかいろいろ見られていると思うんですけど、こんな事例はあまり聞いたことないので相当…。

入山:ないですし、やっぱりすごいなと思ったのが、ニッチなんですけど日本中に薄く需要があるということと、実は石川さんの「不良」というカルチャーをもっと盛り立てたいみたいな、「不良を盛り立てる」というより「不良というカルチャー」への目線。それが素晴らしいなと思って。だって一度は誰もが不良に憧れるわけで。

角:青春の時期、不良に対する憧れをみんなが持つ時期に、これが手に入る。しかも通販で安全に安く手に入りますみたいな。

入山:そういえば、メディアで見る限り、堀江貴文さんってこういう服よく着ている印象ありますよね。いきなりこういうスカジャンみたいなの着てたり。

角:でも世界のヤンキーファッションを総まとめにするってのは素晴らしいですね。

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入山:たしかに知らないですもんね。フランスの不良とか何着てるんだろうみたいな。

角:フランスの不良はなんかかっこよさそうな気がしますよね。ちょっとおしゃれな感じがしますよね。

石川:なのでそういうのがあると、不良はもちろんそうなんですけど、不良じゃない人もいろいろ見にきてくれて。結構みんなバカにされると思うんですけど別にそれはそれでよくて。宣伝にもなりますし。

ただいろいろな人に、不良ってこうなんだよってのを伝えたい。不良ってなんだろうと思った時に見にきてもらえるような、博物館のような状態にしたいんですね。その時に「これっていいな」って思ってくれた人が1人でもいればいい。その時に「じゃあこの国の不良ファッションってこうなんだよ、こんな商品があります」っていうような商品を置いておきたいんですよね。

--日本の不良ファッションは、将来のグローバルハイパーニッチになるかもしれない

入山:そもそもよく考えると「不良」という概念が面白いなと思って。不良って日本独特ですよね。英語で不良って聞いたことないので。

角:なんていうんですかね。不良……。

入山:すごい面白いなと思って。日本では不良がいて、ヤンキーがいて、あとは純然たる職業としてヤクザがいて。僕はアメリカに10年いたので、アメリカだとマフィアかギャングかそれ以外みたいな。そもそも不良っていう概念がないんですよね。

角:不良って広いですもんね。ヤクザほどは本職ではないけど、はしかになるみたいな感じで一時期不良になったりする人もいるし、カルチャーとして変形の制服を着てても別に悪くない人もいますもんね。

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石川:本当に表現方法のひとつだと思うんですよね。かっこよく見せたいとか強く見せたいっていう。悪いことをしちゃう人ももちろんいるんですけど、そうじゃなくて不器用なはみ出してるやつら、まっとうにまともなことがまともにできないやつらですよね。
勉強ができない、仕事ができないとか何かができないけど、自分は自分なんだよって言いたい人の表現方法のひとつとして、不良ファッションがあって。

強く見せたいとか、それが自信に繋がるのであれば応援してあげるのも不良ファッションを売ってる自分のやりがいのひとつなのかなって気はしますよね。

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角:だって地方に行くと、地方の経済回してる方の中には「マイルドヤンキー」といわれるような、かつて本当の不良だったんだけど今はマイルドになりましたみたいな方が山ほどおられて。実際そういう方がすごい今も仕事をして、地方経済が回っていたりしますもんね。

入山:僕もそれがすごい個人的に反省であって。僕はずっと東京にいるので、大企業とかベンチャー企業の社長とかばっかり付き合うわけですよね。だけど日本って当然ながら東京にいる人は1割ぐらいで、9割は地方にいらっしゃって。別に悪い意味じゃなくてマイルドヤンキーで、アルファード乗ってカラオケでEXILE歌うみたいなそういう人たちが、実は日本の経済の中心なので、我々がもっとそういうのを知るべきですよね。

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角:そういう方が実際にはいいお父さんだったりお母さんになられていたりしていて。そういう方が子どもをちゃんと朝学校まで迎えに行くとかそういうのもされていたりしますし。ヤンキーのカルチャーって地方の中ではいまだに息づいてるし、逆にそれが地方の絆になっていたりするようなところもすごくあるんだろうなと思っています。

宮内:ちなみにeコマースの広告を出したりもされてるんですか?

石川:広告はあまり出さないですね。もうニッチすぎて広告を出してもあんまり当たらないんですよ。雑誌広告は前はやってたんです。でもヤクザ系の雑誌がことごとく休刊、廃刊になってしまって、出すところがないんですよ。『チャンプロード』とかなくなりましたし。

入山:いま不良系の人たちってどういうメディアを見てるんですか?

石川:2、3年前までは『実話ドキュメント』とか『実話時代』とかって暴力団の専門誌みたいな雑誌があったんですけど、最近は有害図書になってしまって、なくなっちゃったんですよね。

入山:今の世代はスマホ見てるんですよね、きっと。

角:なるほどな。「実話」ってきたら『実話ナックルズ』が真っ先にくるけど、でもこれぐらいしか残ってないのかな。

石川:『実話ナックルズ』っていうとそういうヤバい人も読みますけど、そういうのに興味がある一般の方も結構読んだりするので、広告出しても全然当たらないんですよ。

入山:僕もたまに一瞬買おうかなと思うことがありますよ。「え?何々組がそんなになってるの?」みたいな、よく分からないけど、ついつい。

角:ライトなノリで手に取っちゃうのが『実話ナックルズ』だから。

入山:もっと狭くなきゃいけないんだ。

石川:そうですね。

宮内:先ほどの話に戻るんですけど、入山先生の講演を聞いてどんなふうに感じられたのかな、と。

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石川:僕はこんなバカそうに見えて本当にバカなので、あまり詳しいことは全然分からないんですけど、イノベーションというものの考え方。近いものを組み合わせても飽和状態だから遠くのものを組み合わせるといいですよっていうのは勉強になりましたし、その時の資料が今ここにあるんですけど――。「弱い結びつきのほうがパフォーマンスが高く発揮できる」っていうのは、なるほどなってすごい感じましたね。

--「弱い紐帯(ちゅうたい)の強さ」。スタンフォード大学社会学部教授のマーク・グラノヴェッターが唱えた概念。詳しくはぜひ、入山さんの『世界標準の経営理論』をご覧ください

入山:この取材も弱い結びつきですので、ぜひいろいろやりたいですね。

角:しかし面白かったな。最後ひとつだけ聞かせてもらっていいですか? コロナの影響ってなんかありました?

石川:最初はやっぱり売上が下がっちゃったんです。2割ぐらい下がったんですけど、最近はだいぶ売上も戻ってきて、去年よりもだいぶ伸びてる感じですね。自粛も解除され始めたのか、給付金効果なのか分からないですけど…。

入山:それもあるのかもしれないですね。

宮内:でもホームページの「ソーシャルディスタンスのバナー」を押して飛んだ先が、全身般若心経のジャージなんですよ。これ新開発じゃなくて旧来からあった商品ですよね。

石川:そうですね。元からあったやつで。それもネタ企画なんですけど、ソーシャルディスタンスって世の中騒いでるので何かウチも乗っかってできないかなっていうことで。だったらこういう格好すればみんな逃げていくんじゃないの?っていう。

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入山:アハハハハ!

宮内:最高ですよ、これ(笑)。

角:面白い!

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宮内:こういう特別なプロモーションの場合に必ず文章が入ると思うんですけど、この文章は全部石川さんが考えるんですか?

石川:大体私が書いてますね。一部協力者の方に書いてもらったりする記事もあるんですけど、大体私が書いてます。

角:文才ありますよね。

入山:文才すごいですよね。

角:ちなみに社員の方って何人ぐらいおられるんですか?

石川:僕と妻とスタッフ、パートさんが1人ですね。

入山:それで回してるんだ。すごいな。

角:商品の数とかすごい多いじゃないですか。Tシャツ、ロンT、パーカー、ボトムスから何からいっぱいあるけど、これを管理するの相当大変じゃないですか?僕その人数でやれる気がしないけどな。

石川:でも品番でわかれてて、大体のところにいくとこの商品があってみたいな感じなので、ものを探したりするのはそんなに大変じゃないですし。ほかにもなくなりそうになったら教えてねって感じで、自社の商品だとなくなりそうになったらフォローで発注追加をかけられるので、在庫の管理で苦労したりっていうのはそこまでないですね。

入山:いつか実店舗を持ってみたいって思われることはあります?

石川:実店舗は前に、2010年とかそれぐらいの時にあったんです。Webメインでやっていますが、お客さんとちょっと交流する場所ができたらいいななんて感覚でやったんですけど。

--D2C(Direct to Consumer)における旗艦店の役割(ブランディングとロイヤルコミュニティ化)と同じじゃないか

石川:まあ変な客しか来ないんですよ! 本当に頭おかしいんじゃないの?っていうようなやつしか来ない。虚言癖とか、取り置きばっかりしてくださいって言うやつとか。嫌になってシャッターしめると、シャッターあけて入ってくるんですよ、そういうやつは。

角:それはちなみに何歳ぐらいの方が多いとか。

石川:でも10代20代、中学生高校生とか20代前半ぐらいの方ですかね。「俺、今月はタイマン十何回はったんすよ。すごくないすか? まじやばいっすよ。俺みたいな悪いやつはいないっすよ」みたいなことを超言ってくるんですよ。それで何も買っていないんですよ、そういうやつに限って。

角:自慢したかったんですね、多分。

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石川:2時間ぐらい自慢話聞かされて何も買って行かない。ありえなくないですか?(笑)

角:ありえない。ありえないですね(笑)。

石川:もうこんな店辞めてやる!と思って、結局それでやめちゃったんですけど。

角:面白い。すごいですね。

宮内:そこまでのビジネスの伸ばし方が、一般的なファッションブランドのeコマース戦略の流れにとても合致しているので、ブランド力が半端ないですよこれ。

石川:ありがとうございます。

入山:今回アレですよね。これはフィラメントさんのメディアで1回取り上げていただくんですよね。これでどんどん広まっていくといいな。

角:広げていきたいと思います。

入山:ぜひラジオ(浜松町Innovation Culture Cafe)に一度お呼びできればと。

石川:ありがとうございます。

角:ありがとうございます。すみません。時間がちょっとおしてしまいましたけれども、本当に本日はいい取材をありがとうございました。


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【プロフィール】

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入山 章栄 氏
早稲田大学大学院経営管理研究科
早稲田大学ビジネススクール 教授


慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で、主に自動車メーカー・国内外政府機関 への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008 年 に米ピッツバーグ大学経営大学院より Ph.D.(博士号)を取得。 同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。 2013 年より早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール准教授。 2019 年より現職。Strategic Management Journal」など国際的な主要経営学術誌に論文を多数発表。著書に「世界標準の経営理論」(ダイヤモンド社)、他。 テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」のレギュラーコメンテーターを務めるなど、メディアでも活発な情報発信を行っている。

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石川 智之 氏
BIRTHJAPAN 代表

1982年生まれ。新潟県出身。高校を中退後、新聞勧誘や悪徳リフォームなどのブラックな職種を経て2006年に起業。
2008年楽天市場に出店。当初は靴やホスト系ファッションを中心に販売していたが2009年頃より極悪系不良ファッションへ路線変更。
自社ブランドの「BLOOD MONEY TOKYO」「INTERMEX」「DIAMOND JAPAN」などの製作を手掛ける。
「店長逮捕●周年セール」「ムショ割」など独自のセンセーショナルなセールを展開し話題を集める。
映画やドラマへも100作品以上衣装提供している。


▼鼎談の模様を収めた迫力のダイジェストムービーも是非ご覧ください!



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