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コロナ以降の組織マネジメントとは? 人・組織のプロ志水静香さんに伺いました 2/2

コロナ禍をきっかけに、企業ではいきなりテレワークの導入を迫られ、経営者も従業員も多くの人が困惑する状況となりました。今回は、人材育成アドバイザーとして活躍される株式会社 Funleashの志水静香さんにご登場いただき、これからのマネジメントや組織のあり方について伺いました。
まず前編では「緊急事態に対応できる組織と、対応できない組織」について、そして後編では「withコロナ・afterコロナで求められる人と組織」について、フィラメントの角勝・佐藤啓一郎と一緒に語り合いました。
(取材・文/QUMZINE編集部、本田 恵理)

コロナ前の環境へのカルチャーショックが起こる?

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角:もともと日本の会社だと、会社が全部決めてあげてしまっているところが多いですが、それは「マイクロマネジメントこそ良し」としてきた、みたいなところがあるんですかね。

志水:マイクロマネジメントをする方が、短期的には結果がでるし、財務的な数字は上がるんですよ。けれど、それで良かったのか?というところ。もっと長期的な目線で行こうよ、と。ガツガツ稼ぐよりも、いろんなお客様やステークホルダー(関係者)から信頼されることが大事ですよね。SDGs的な観点でも、そういう方向性が評価されるようになってきていますし。今、大きな転換期に我々はいる気がするんです。

角:近江商人的な、「三方よし」の方が、サスティナブルじゃないかという。

志水:ヨーロッパやアメリカも、「三方よし」の方向に近づいてきてますよね。そして、今回のような誰も経験したことがないような危機的な状況で、みんな「何が自分にとって一番大事なのか」ということがわかってきていて。そういった感覚とも、やはり親和性がありますよね。組織の駒みたいに働いてきたけど、そもそも会社に行く必要があるのか気づいてしまった。

--確かにボトムアップでの意識の変化は起きていると思うんですけど、管理職の人たちは会社の中に入るとマネージャー側なので、会社の論理にまた戻ってしまう危険性はあり得ますか?

佐藤:今回収束してきたら、「元に戻ろう」という力はとても働くと思いますよ。でも、前だったら全員が全員そうだっただろうけど、さすがに今回は違いますよね。「戻らない」と思ってる人の比率が、多くなっていると思います。

志水:だって、数ヶ月も家にいたわけですよね。元いたところに戻ることって、ある意味、環境のさらなる変化じゃないですか。よく、日本から海外へ赴任して、最初行った時にとてもカルチャーショックを受けて、今度は日本に帰ってくる時に、もう一回カルチャーショックを受けるという話がありますよね。そういう状態になるんじゃないかなって。

角:海外に赴任した時の「わぁ、すごい、進んでる!」みたいな感覚になった後に、戻ってきたら「あれ、すごく遅れてる!」みたいなギャップを感じるみたいな話ですかね。

志水:そうです、違和感がきっとありますよね。面白い話があって、3年くらい日本にいたアメリカ人の上司が、向こうに帰ったら、やっぱり慣れないって言うんですよ。「日本にいたときは、みんな責任感が強く遅くまで残ってでも自分の仕事をやり遂げていたのに、アメリカ人は16時とかにさっさと帰っちゃう!」って。様々な文化の相違の中で、「当たり前」と思ってたことが他国に行って「違う」ことに気づいて、だんだんその国にアジャストしていくじゃないですか。すると戻った時に、アジャストしてきた部分に再度、自国で違和感を感じるんですよね。

佐藤:よく、帰任するとみなさん会社辞めちゃいますよね。

角:テレワークでバリバリやってた人は、会社に戻ると辞めちゃう人も結構いるかもしれないということですか。

佐藤:流動性は高くなるでしょうね。「上司にこんなにコントロールされたくない」とか。

志水:何も考えずにずっとやってたことに、何か考えるきっかけが与えられて、その後元の環境に戻ったら、やっぱり違和感を感じますよね。


「with/afterコロナ」の時代に求められる人と組織とは?

角:これはまさに2つ目のキーワードの話だと思うんですけど、「withコロナ」「afterコロナ」で求められる人と組織について。beforeコロナな組織からは、求められる人がどんどん抜けていってしまいそうですね。

佐藤:辞めないで残って、仕事が与えられない人も出てくるでしょうね。何かに気づいた人、覚醒した人は、会社としては使いにくいから。だからそういう人をどう活かしていくかが、次のステップですよね。

そこで、うまく動いたリーダーをちゃんと活かしていけたらいいですよね。大阪の吉村府知事みたいに、今回のコロナによって、良いリーダーと、良くないリーダーがめちゃくちゃハッキリしたじゃないですか。いろんな会社で、そういう人が出てるんじゃないかと思うんですよね。危機管理が上手い人とか、新しいやり方を生み出していく人とか。

志水:戻ってきた時に、「気づいて変えようと行動する人」「何も考えず元に戻ろうとする人」「ここじゃダメだな、と思って去る人」の3つに分かれると思うんですよね。その中で、吉村さんみたいな「気づいて変えようと行動する人」が、ちゃんと支持される時代になっていくと思うんです。そういう人が、見えやすくなる。

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角:今回の1つ目のキーワードの、「対応できる組織なのか、できなかった組織なのか」って、そういう準備を普段から怠ってないかどうかだとも思います。決断をするためのいろんな情報が、ちゃんと集まってくる組織を作っているかどうか。普段の行いが全て出ますよね。とすると、そこでうまくできるための土台を作っていた人たちに「決められる権限」をより強く与えていかないといけないですよね。「会社が全部決めてあげる」というところからの脱却。

志水:大阪府知事の吉村さんが今回すごかったのは、やっぱり、自分の足を使っていろんなところから情報を吸い上げて、なおかつ彼の元に情報が集まってくる仕組みを創っていたこと。どの人にどういう情報があるのかということを、たぶん彼はよく知っていて、うまく集めてたんだと思います。政府とか組織とか、中央集権型になると、自ら取りに行かなきゃいけないし、時間もかかるし、一般の人たちの目線に降りていかなきゃいけないし。そこのスピード感や透明性が、如実に違う部分ですよね。吉村さんは、自分で決断した。そしてうまく行かなかったら、ちゃんと謝罪もする。そのスピードが早かった。

佐藤:「決めて、説明する」という自分の役割を把握してましたよね。

角:普通は「決めるための情報が集まってこない」とか「指示をして初めて情報を上げてくる」みたいな組織ですよね。けれども大阪府は、普通の役所に比べるとスピードが早かったり、民間との連携が取れていたり。

志水:台湾も、うまくいってますよね。やっぱり、リーダーシップの面で若いリーダーを据えて、民間とも連携を取って、ピラミッド型ではなくプロジェクト型の組織にして、情報を早く吸い上げて、国民からのアイデアをどんどん取り入れて実行して、…というサイクルをやっていたからこそ、あれだけ高い支持率なんですよね。うまくいかなくても、国民をちゃんとそこに巻き込んでいるから、国民にも責任感が芽生えるわけです。スピードは早く、透明性も高めて、下の意見も取り入れて、どんどん回していくという。
だからそういう意味では、冒頭で話したような「管理をするだけの人」って、むしろ邪魔になっていませんかね。

佐藤:関所になってますよね。

角:ピラミッド型で、随所に関所があるみたいな形から、そうではない組織にトランスフォームしていかなくちゃいけないですね。メンバーがどんどん自律的に決断や判断をしていくことで、その人が「熟練」していくのではなく「発達」していくのを促進する仕組みへ。

志水:私は、「熟練」と「発達」は、どっちも大事だと思うんです。けれど、今まではあまりにも「熟練」に重きが置かれていた気がします。熟練は熟練で、大事なんですけど。

角:そこしか評価軸がないのはよくないですよね。そうなると、評価のシステムにも関わってくるんでしょうか?

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佐藤:今までは「アウトプット偏重」でしたけど、本来は「人の評価」ですよね。プロジェクトが失敗したとき、その人のせいではなくても、アウトプット評価だとその人のマイナス評価になっちゃうんですよね。今回はさすがに、みんな同じ事態になってるわけだから違うかもしれないけど。

志水:アウトプット自体より、その人の努力や周りへの巻き込み力などプロセス的な部分を見ていくことも大事なのかなと思っています。

--これまで欧米的な評価がもう30年続いていますが、利益偏重・株主偏重の主義の中には、「評価においてはプロセスは見ません」という要素もありますよね。

志水:一方で、良いアウトプットの要因が必ずしもその人の能力でなく、ラッキーな環境要因であるパターンもあるわけです。だからこそ、その人が、「自分が掲げた目標・仕事」「will」に対してどれだけやり遂げたのかを見ていく必要がありますよね。「will」、大事ですよね。今日のキーワード、「will」「人を見る」「人を知る」

角:判断が適正だったかって、後にならないとわからないこともありますよね。

志水:今回のコロナへの対応の評価もそうですよね。

角:決めたものが、結果的にどうだったのかということの振り返りもしないと、決断の適正性も上がっていかないでしょうね。判断する力を、日々高めていく努力をするところに、緊急事態に対応できる人や組織が作られていく。それが、これからの組織に求められていくことなのかな、と思いました。

志水:上司は、部下に「自分で」決めてもらう機会を作っていかなきゃいけないですよね。リーダーシップは、決めて、進めていくということだと思うので。その過程では、周りの人をうまく巻き込んでいくこともやはり大事だと思っています。

佐藤:誰かに決めてもらうのではなく。

角:そうすると、腹も括ってコミットするようにもなりますよね。今まで組織が怖がって、会社が決めてあげていたのを、そこから変えていかなくちゃいけないということなんでしょうね。

志水:「自分で考える」ということの次は、「自分で決める」です。「考えて、決めて、やる」。考えても、やらなかったら意味がないと思うんです。で、やって、振り返る。

角:考える、決める、やる、振り返るの、サイクル。

佐藤:やってみての失敗も、大事な学びなんですよね。

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【プロフィール】

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志水静香(しみず・しずか)
株式会社ファンリーシュ代表、元ランスタッド 最高人材開発責任者
大学卒業後、日系IT企業に入社後、米国赴任。外資系IT・自動車メーカーなどを経て外資系リテール企業に転職。人事ヘッドとして人事制度基盤を確立。複数の企業においてビジョン策定・浸透、企業文化の変革をリードし先進的な施策の導実績を持つ。
2013年、法政大学大学院政策創造研究科修士課程修了。最優秀論文賞受賞。
2018年 株式会社 ファンリーシュ設立。現在はスタートアップから大企業まで人事制度やシステムなどの導入、風土改革・組織開発・人材育成などのプロジェクトに関わる。経営の視点から「組織と人材」の可能性を引き出せるよう、外部支援を行っている
専門領域:戦略人事,リーダーシップ開発,組織開発, 変革,D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)・エグゼクティブコーチングなど。マインドフルネス, SLII, 組織変革認定ファシリテーター。
執筆・研究:ウルリッチ「人事コンピテンシー」, ウェインベーカー「ソーシャルキャピタル」などのビジネス書を翻訳。「キャリアマネジメントの未来図」共著。

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