コロナ禍で伸びたペット産業の最前線!『インターペット ~人とペットの豊かな暮らしフェア~』レポート
経済産業省が今年3月に公開した記事によると、コロナ禍ではペットを飼い始めた人が多いようで、緊急事態宣言が出された2020年以降、ホームセンターで販売されたペット・ペット用品の販売額は8期連続の増加となっているとのことです。(出典:経済産業省『ペット産業の動向 -コロナ禍でも堅調なペット関連産業-』)
そんな今注目の業界ともいえる、ペット業界の国内最大級の規模の展示会『インターペット ~人とペットの豊かな暮らしフェア~』が東京ビッグサイトで開催されるということで、取材にやってきましたよ。QUMZINEの読者が「面白い!」と思えるような、先進的でユニークなサービスや商品を展示しているブースをいくつか紹介していきます。
petyes ROOM
人間用も欲しい!と思ったのがpetyesから発売されている「petyes ROOM」。イヌやネコ向けの床冷暖房付きのルームです。
床部分には15~35度まで設定できる冷暖房が内蔵されており、イヌやネコが快適に過ごすことができます。ネコは季節に応じて快適なところを探しますから心地いい温度なら好んで入りたくなるでしょうね。実際にイヌやネコを飼っている家庭では「人がいなくてもペットのために冷暖房や炬燵の電源を入れている」ということがあると思いますが、このデバイスがあることで、ある程度はそうした状態を減らせるかもしれません。
特にすごいと思ったのがROOMの中に5種類のヒーリング音楽が流れる機能。海や森林などの音楽が流れることでペットがくつろぐことを意図しているとのことです。人間と同じようにイヌ・ネコもこうした音楽でリラックスするんですね。ほかにも浄水機能付き給水機「petyes AQUA」が展示されていました。
NEC/JARMeC waneco talk / PLUS CYCLE
NECとJARMeC(日本動物高度医療センター)が共同でブースを出していました。「PLUS CYCLE」はJARMeCが開発した活動量計。首輪につけるデバイスで、加速度計と気圧計が内蔵されており、活動量とジャンプ数を記録し、アプリでそのデータをスマホに同期できます。
見た目では気づきにくい活動量の低下などをアプリがアラートでお知らせすることで、いち早くペットの異常に気付くことができます。また獣医側が対応していればデータを獣医に送り診察時に参照することもできます。
そして、「waneco talk」はこの「PLUS CYCLE」で得られたデータをNECのAIが分析してLINEのメッセージに変換するサービス。LINEトーク内の「ペットの様子を聞く」ボタンを押すことで、現在の活動量計から得られた情報をもとに、今どのような状態なのかを、人の理解しやすいメッセージとして返信します。飼っているイヌやネコからLINEが送られてくるような感覚になりますね。昨年12月にリリースしたサービスで、クラウドファンディングサイト「Makuake」では1000人以上が応援購入したとのことです。
データだけだと無味乾燥なイメージですが、これを多くの人が見慣れたLINEのメッセージに変換することでよりエンターテイメント性の高いものにしたのがこのサービスの特徴と言えるでしょう。この活動量計を楽しく使い続けるための仕組みとして役立ちそうです。
Panasonic スマ@ホームシステム HDペットカメラ
パナソニックからはペット家電として、空間除菌脱臭機「ジアイーノ」、ペットの毛が絡まないサイクロン式コードレススティック掃除機、そしてペット見守りカメラ「スマ@ホームシステム HDペットカメラ」が展示されていました。どれもデモ機が設置されており、多くの来場者が実際に試していました。
特に気になったのは、スマ@ホームシステム HDペットカメラ。自宅に設置しておくと、お出かけ中もイヌやネコの様子がスマホで見ることのできるカメラです。動作検知と赤外線センサが搭載されており、ペットの動きを検出した方向にカメラが自動的に動きます。また、あらかじめ水飲み場など見たい場所を登録しておくことで動画ファイルを抽出できる「行動ログ」機能も搭載。動画はSDカードに保存され、スマホなどでのシェアにも対応しているとのことです。
個人的に一番すごいなと思ったのが「転倒防止構造」。底面部分に特殊な吸盤を搭載しており、イヌやネコが横から押しても倒れにくく、しかし上方向に持ち上げると簡単に持ち上がるようになっています。実際に会場で試してみたのですが、横方向から押したときの「倒れにくさ」と、上に持ち上げたときの「持ち上がりやすさ」には驚きました。この技術は特許も取得済みだそうです。家族が安価なペット見守りカメラを使っているのですが、真新しいものに興味を持つネコが、カメラをつっついて倒してしまったという話を実際に聞いたので、この機能は良いと思います!
NGA Pet
「Pet」はその名の通りペットに関する総合アプリ。昨年11月に初公開されたばかりのアプリなのですが、ペットの動画や画像を投稿できるSNS機能に始まり、ペットと同伴できる施設(レストラン、サロン、病院、ホテル)の検索や予約、ペット商品のオンラインショッピング、里親募集まで一つのアプリにまとまっています。運営会社のNGAは2021年に法人が設立されたばかりの会社ですが、すでに9人のエンジェル投資家から資金調達をしているとのことです。
会場に設置されたデモ機で少し触ってみましたが、まだ公開されてから半年ほどにも関わらず、かなりの盛り上がりを感じました。
SNSは写真や動画を投稿でき、もちろん「いいね」もつけられます。ユニークなのが「投げ銭機能」で、動画を見て「おやつ」と称された投げ銭を送ると、受け取った側はアプリ内のショッピングで利用できます(近日搭載予定とのこと)。
また、「ペットナンバーカード」として、ペット固有のナンバーを取得して身体的特徴やワクチン接種情報もあわせて記録できます。マイナンバーのように、一度ペットのナンバーを発行しておけば、いろいろな場面で使えるということのようです。
ペットを軸にした総合的なアプリの「Pet」。公開から半年とは思えない充実ぶりで驚きました。
プライムページ Scamee!
「Scamee!」はQRコードでペット情報を管理できるデジタル迷子札。QRコードが印刷されたシールとタグがセットになっている商品です。
飼い主が事前に愛犬についての情報(名前や生年月日、ワクチン接種記録、投薬記録、飼い主情報など)を登録しておけば、QRコードを読み取りサイトにアクセスするだけでそれらの情報を参照することができます。ペットサロンや病院などで急にそれらの情報が必要になってもすぐに参照できるのが便利ですね。
また、愛犬が迷子になった時も、見つけた人がQRコードを読み取るとメッセージをスマホの位置情報付きで送信する機能があるため、見つけた人は迷子になったペットがどこにいるのかを飼い主に送信することができます。いずれの機能もアプリのダウンロードは不要で、ブラウザのみで完結するのが便利です。QRコードのみなので電池も不要ですね。
ラングレス イヌパシー
「イヌパシー」はハーネス型のデバイスで、愛犬に装着すると心拍数の変動を解析して、「リラックス」「ドキドキ」「ハッピー」「興味」「ストレス」 のいずれの感情か、LEDの色と光り方で教えてくれます。毛皮の上からでも心拍数を測れるセンサーを採用しているところがユニークですね。心拍から対象の状態を可視化するのは日米で特許を取得したとのことです。
4月14日からはクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」にて新たに加速度センサーもつき、首輪型になったモデル「イヌパシー・カラー」も公開するとのこと。心拍数と行動ログをアプリで取得し、健康モニタリングするのに役立ちます。
ペットを飼っていると、「今どんなことを思っているんだろう?」というシーンはよくありますので、そういう時にこのデバイスがあると良さそうですね。
メニコン &D
どうしてもスマートデバイスばかりを取り上げがちになってしまいましたが、最後に取り上げる「&D」はいうなれば「ペット保険」のジャンルです。といっても、このサービスは「ペットが疾病になったときに補償するもの」ではなく、「ペットの飼い主に何かあった時に対応するもの」。とてもユニークなサービスだと思い記事にすることにしました。
まず、「&D基本サービス」として、飼い主のけがや万が一の賠償に備える保険、関連施設の優待、24時間の獣医師相談が含まれます。保険には「飼い主のお散歩時などの事故によるけがの場合の傷害補償」「飼い主の事故によるけがのための入院で飼育ができなくなり、ペットホテル等へ預け入れた場合の費用を補償」「買っているペットが他人や動物をかんだりした場合の法律上の損害賠償責任を補償」が含まれます。
また、「犬との暮らし方教室」として、「イヌがしつけを学ぶ」のではなく「人がイヌについて学ぶ」ための動画コンテンツが利用できます。イヌの手作り薬膳ご飯教室の動画もあり、ペット薬膳国際協会認定ペット薬膳管理士の先生が体調や症状に合わせてどんな食材を与えればよいのか、わかりやすく教えてくれるそうです。
また、「犬のみらい保障」は、飼い主が死亡したり施設へ入居した場合に引き取ってくれたり、飼い主が長期入院したり災害に罹災したりした場合に一次預かりをするというもの。「自分が亡くなった時に愛犬はどうしたらいいのか」という心配に応えられるものとなります。預かり先となる「&HAUS」は廃校を利活用した施設で、ドッグランを7つ備えているそうです。
運営しているのはコンタクトレンズ総合メーカーのメニコン。ブースにいたスタッフに、なぜコンタクトレンズメーカーがイヌ関係のサービスを行っているかについてお聞きすると、もともと2000年からイヌ・ネコの眼内レンズに子会社のメニワンが参入していたことに加え、サブスクのサービスも参入済みだったこと、そして社長が愛犬家だったことによるとのことでした。本当に愛犬家じゃないとこのサービスは生まれないと思いました。
全体を通して
400を超える企業が出展しているとのことで、取り上げるべきブースを探すだけでも一苦労です。「一通り見て回ってからめぼしいところを改めて取材しよう」と思い、一通り見て回るだけでも1時間ほどかかりました。
おおよそのジャンルごとに分かれてブースが配置されているのですが、ざっと見た限りでは、ペットフードのブースが多いように思いました。素材や産地などいかにこだわって作られたかを解説する展示が多く、愛犬家にアピールしていました。次いで、イヌ用の服や首輪などイヌが身につけるグッズに関するブースが多く、会場で商品を販売していました。
ペット産業の展示会ということもあり、入場者はペットを連れて参加することもできます。ざっと見たところ、連れてこられたペットの9割以上がイヌでした(ネコはそもそも連れて歩く人が少ないのでしょう)。鳥を連れている人も一人だけ見かけました。出展している企業も、そういう事情を知ってか、飾りや照明でインスタ映えするイヌ用のフォトスポットをブースに設けているところが多くありました。
実は、取材にある程度めどがついたら個人的にもブースを回ったり、各社が実施しているイベントに参加したいという下心もあったのですが、あまりの広さに取材だけでその日のイベント終了時間までかかってしまいました。さすが国内最大級というだけはありますね。
今後も、各業界のトレンドを知る「QUMZINE展示会レポート」を執筆していく予定ですのでお楽しみに。
株式会社フィラメント/Filament Inc.