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50代で新規事業開発!トゥッティ細川晃良さんはなぜ今クラシック音楽の動画配信で起業したのか?

トゥッティ・ミュージック・エンターテインメントの代表取締役・細川晃良さんは、スカパーJSATから“出向起業”という社内ベンチャー制度を活用し、50代で新規事業を立ち上げられました。これまでのキャリアにおいて数々の新規事業開発を経験されてきた細川さんが、なぜあえて“今”新たな挑戦に立ち向かおうとするのか?そこに至るまでの苦労やこれから目指すもの、事業開発の中で今感じていることについてお話を伺いました。(文/QUMZINE編集部、永井公成)

モノを売るには、買い手にどういうメリットがあるのかを提示することが重要

角:これまでにどのようなお仕事をされてきましたか。

細川:横浜国立大学工学部を卒業して新卒で伊藤忠に入りました。化学が専攻だったので、化学製品の担当になると思っていたのですが、エレクトロニクスの担当となりました。入社後に部長に「なぜエレクトロニクスの部に採用いただいたのか」と聞くと、「同じ中学出身だったから」と言われました。当時の伊藤忠は部長がどの人を部署で採用するか決める強い決定権を持っていたようで、そう言われたら「そうですか」と言う他ないですよね(笑)。

角:そうだったんですね!(笑)

細川:はい。エレクトロニクスの部署で半年くらい普通の仕事をしていたのですが、その部長がずっと新規事業の担当をしていたので、その分野へついていくことになりました。それからずっと35,6歳ごろまで衛星通信に関連する業務をやっていたのですが、その後「カートゥーン・ネットワーク」や「スターチャンネル」など衛星を使った放送に関連した部署に移り、そこで10年ほど仕事を続けていました。その後、伊藤忠に戻って別の新規事業をして、J-SATに出向してきたという感じです。商社なので開発に携わることはなく、ひたすら営業畑を進んできました。理系に行きましたけど、結局使ったのは掛け算くらいですね(笑)

角:なるほど。商社の中で営業をされていたということですが、その時はどういった気づきやご苦労がありましたか。

細川:物を売るのは簡単なことじゃないということですね。既存のものを売るのは楽ですが、新しいものを売るのはものすごく大変だと日々感じていました。

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角:その中で、例えば、どういったものを売るのが大変でしたか?

細川:衛星通信で自分が担当したのはデータ通信や移動体通信でしたが売れると思っていませんでした。売ってる本人が売れないと思ってて売ってるのですから、やっぱりほとんど売れませんでしたね。ニーズに合わないものを売ろうとしても売れません。

角:おっしゃる通りだと思います。でも「スターチャンネル」などは一般化しましたよね。売るためのコツなどあったりしたのでしょうか?

細川:売れないものは何をやっても売れませんが、ある程度売れるという商品だと、買う側にどんなメリットがあるのか提示することが重要だと思います。買う側は自分でその商品の価値を深く考えている訳ではないので、言われたことで判断することになりますから。あとは、「誰が買ってくれるか」が分かっていることも大事です。そういう意味で、「スターチャンネル」などのチャンネルはまだ考えやすかったです。

ニッチで、かつビジネスが成立する分野を探した

角:それでは現在やられているトゥッティ・ミュージック・エンターテインメントの会社とビジネスの概要を簡単に教えてください。

細川:ご存知のように、今やテレビ局などの送り手が一方的に動画を送っていくビジネスモデルは厳しい時代になり、インターネットを介して見たいコンテンツを選択して見るのが一般的な時代になってきました。その中で、有料の映像をインターネットで提供する事業においては、グローバル化が進みすぎていて競争相手が国内のテレビ局ではなくNetflix、Hulu、Amazonという海外の企業になってきています。「彼らとは勝負をしない」と考えた方がいいと思います。したがって、彼らがこないところを攻めるしかないと考えました。彼らがこない分野となると、スポーツか音楽となります。調べてみるとスポーツは権利料が高くてビジネスが成り立たないことがわかりました。同様に音楽でもポップス系は権利料が高いことがわかったので、クラシック音楽の配信の分野で起業することにしました。

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角:オーバーザトップ系の企業に真っ向から戦って勝てるわけないから、ニッチな分野を探して、かつビジネスとして成立するものを探したらこうなったという感じですね。
トゥッティは現在何人で運営されているんですか?

細川:今はスカパーからの出向の三人で運営しています。
もともと社内公募で募集があり、これに自ら応募してこの事業をやることになりました。私と同じようにこのビジネスを面白いと思った人が二人目のメンバーとして入りました。

角:3名の少数精鋭で運営されているのですね。これまで伊藤忠商事という大きな会社でご活躍されていたので、起業するときに、「年齢を重ねているので、今更もう苦労しなくてもいいのでは」と周囲に言われませんでしたか?

細川:自分も苦労はするべきではないと思っていますが、もともと新規事業に従事することを苦しいとは思っていません。伊藤忠時代に普段からやっている普通の仕事という認識です。でも実際にゼロからやってみると、ここまで苦しいとは思っていませんでしたね(笑)

角:なるほど。トゥッティにおいて、事業のKPIは何になるのでしょうか?

細川:サブスクリプションサービスなので、加入者を増やすことがKPIです。サブスクリプションサービスは番組の数を増やさなくてはいけません。「スターチャンネル」を扱っていた時はハリウッドが映画を作るとどんどん積み上がっていました。しかし、ヨーロッパはコンサートが多く流通しているのですが、日本はNHKのN響のアーカイブがあるくらいで、実はあまりコンテンツの数がないことがわかりました。そうするとコンサートする側が動画を制作する機運にならないと番組が集まりません。そんな中、コロナ禍によって動画のコンテンツを作る動きが起こり始めました。

角:コロナ禍によるオンラインライブの一般化はこの事業においては追い風ですか?

細川:完全に追い風ですね。演奏者自身が「オンライン配信をやっていかなくては」という意識になっています。お客さんに少し需要があるだけではなく、コンサートを開く側が「オンラインライブ取り入れるべき」と考えるようになってきています。そうなると一気に物事を進めた方がいい状態になってきます。

角:大規模なコンサート以外にも、個人による動画コンテンツも扱うのでしょうか?

細川:はい。ピアノくらいになりますけどね。

角:それはどういうルートでアクセスしていくのですか?

細川:吹奏楽の関係者にアドバイザになってもらって、その方に紹介いただいています。
吹奏楽は高校生の部活がメインですが、保護者が自分の子供の演奏を見たいというニーズは確かにあります。どちらかというと芸術ではなく保護者ビジネスですね。学校の吹奏楽の動画はサブスクとはフィットしない気がするので、1回買いきりのサービスにしようと思っています。学校の吹奏楽の場合、DVD化する業者が既得権益者になると思います。著作権法上はカメラを撮ってる人が著作権を持っているので、これまでDVD化を担当していた業者の横にもう一台カメラを置く必要が出てきます。そうなるとDVD化する業者のテリトリーを荒らすことになり、彼らに「来るな」と言われることになるんですよね。

人脈はゼロから作るとイメージすべき

角:トゥッティの事業で一番ご苦労されている部分はどんなところですか?

細川:既得権益を持つ人との戦いですね。これは実際にやってみて初めてわかりました。彼らは自分のテリトリーを守っているので、そこによそ者が入り込むとなると大変です。権利の商売だからということもあるのですが、これまでやってきた仕事の世界はここまでドロドロしておらず、もう少しビジネスライク的にできたんです。それがトゥッティの事業では既得権益を持っている人から「うちのシマに入ってくるんじゃない」、「既存の商流に入ってくるな」と言われます。「そもそものパイが小さいのに取っていくな」という話ですね。

角:やはり権利系の事業だと既得権益を持つ人との戦いとなるのですね。
この事業で、これまでのお仕事で取り組まれてきた経験や勘は生かされていますか?

細川:生きればいいんですが、実際はやってみないとわからないというところです。既得権益を守っている人は、いつまでもそれを守っている時代ではなくなっており、また彼らも少しは挑戦しようとしているので、彼らが挑戦する前に自分たちが挑戦しないといけないと思います。結局は新しい秩序を作っていくことになるので、早くやった方がいいということになりますね。配信サービスということに対して、お客さん側も慣れてきていますし、動画を提供する側もチャレンジしようという機運が出てきています。

角:経験や人脈は事業の中でいかせますか?

細川:新しい世界なので人脈はゼロから始まります。むしろ「ゼロから作っていく」とイメージしないと無理です。「人脈があるからビジネスをやる」と思わない方が良いでしょう。私が伊藤忠の新規事業担当時代よりきついというのはそういうところですね。想定外のことばかり起きるので、「寝て起きて、またゼロからやろう」という心持ちでいます。

角:そうなのですね。年齢を重ねた方の新規事業では人脈などが活かせると思っていましたが意外でした。

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いろいろな人から話を聞き、すぐに決断してスピードで勝つ

角:今の事業をやっての気づきや学びはありますか。

細川:日本は既得権益の構造がひどいことになっているということですね。日本がそういう国なのは残念なことです。

それから、「完全に想定外のことばかり起きる」ということです。もはや想定するだけ無駄という感じで、これは割り切っていくことしかないですね。あとは勝てるのはスピードしかないのでここを意識することですね。コツは「こっちの方がいい」と気がついたらすぐやることです。買いそうな商品に気づいたらすぐに仕入れに行く等ですね。まず早く知るということが重要で、そのためには自ら動いていろんな方の意見を聞くしかないです。

角:大変参考になります。スピードで他社と勝つべきで、そのためには色々な人から話を聞くことが重要なのですね。
同年代で起業を考えている方に対してメッセージをいただけますか。

細川:あまりアドバイスをする立場にないと思っていますが、何をするにせよ年齢は関係ないと思います。会社が「若い人にやらせたい」などの理由でなかなか認めてくれないというのは事実としてある思いますが、それに負けないくらいこちらがやってれば会社も認めてくれると思います。

角:事業において今後の展望について教えてください。

細川:わかりませんね。ただとにかく成功したいなと思います。でも、成功するかしないかは自分で決めることではないので、自分でやれることを尽くしたいです。クラシックが好きな人は一定層いますので、その方々にいかにアプローチして、いかに満足していただけるかを考えていきたいです。

角:ありがとうございました。最後に読者へのメッセージがありましたらお願いします。

細川:クラシックが好きな人はぜひ「トゥッティ」を利用して欲しいです。

【プロフィール】

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細川  晃良(ほそかわ・あきよし)
トゥッティ・ミュージック・エンターテインメント株式会社
代表取締役社長

横浜国立大学工学部卒業後、伊藤忠商事に入社。
最先端の電子技術を活用した通信衛星を利用した新規事業開発、衛星デジタル放送業界での新規放送チャンネル立ち上げと新規商権確立に従事。
スカパーJSAT株式会社に転籍後も新規事業開拓に従事したのち、出向起業に至る。
趣味は旅行とゴルフ。家には猫が1匹。金沢市出身。

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