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バッファローの監視から妖怪探しまで。衛星データ活用の事例について、sorano me CMO中村友弥さんにお聞きしました

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イーロン・マスクの「Starlink」やZOZO創業者の前澤さんの宇宙旅行など、少しずつ宇宙に関連したビジネスについて聞こえてきたこの頃。今、宇宙ビジネスではどのようなことが行われているのでしょうか。

フィラメント公式の雑談タイム「フィーカ」に、株式会社sorano meのCMO中村友弥さん、そして井上大夢さんがお越しになり、今回はsoranomeを代表してCMO中村さんにミニ講演をしていただきました。

株式会社sorano meは、「わたしたちの日常を、宇宙ビジネスで豊かにする。」をビジョンに、宇宙ビジネスに特化した伴走型コンサルティング、伴走型MVP開発をサービスとして提供しているのだそう。

中でも、中村さんはCMOということもあり、まさに"宇宙ビジネスの今"を理解している方と言えそうです。今回はそんな中村さんに、「宇宙ビジネスの今」についてお聞きしました。

衛星データビジネスとは?

宇宙ビジネスの国際市場38兆円のうち、衛星データや衛星サービス、通信、衛星テレビなどの「衛星サービス」が38%を占め、それを支える地上設備衛星関連のサービスの34%と合わせて宇宙ビジネスの7割と大部分を占めています。

データを集める衛星は3つに分けられます。天気予報などに使われる地球観測衛星、衛星放送や飛行機内や船内のWi-Fiに使われる通信衛星、地図やカーナビなどに使われる測位衛星です。

今日は特に地球観測衛星に着目します。地球観測衛星は、いわば国境関係なく、定期的に地上を撮影する超高性能カメラです。衛星データは大きく分けて「光学」と「SAR」に分けられます。

「光学」は宇宙空間を周回する超高性能カメラで、可視光以外にも赤外線などいろいろな波長をとらえることができます。ものによっては400㎞先の家や車の数を数えらるほどの高い分解能を持つ衛星や、宇宙から小麦とケシの違いが分かるほど地上の物質の特徴を細かく把握できる衛星もあります。


その一方、「SAR」はコウモリが超音波を使って獲物を捕まえるように電波の跳ね返りを活用して地上の変化を観測するもので、雲があっても地上の状態がわかるのが特徴です。地上に何があるかわかるだけでなく、地表の沈没や隆起もわかります。これを活用することで、例えば水害時の浸水状況の把握を高速化でき、保険金支払いを迅速に行うことができます。定期的な船の位置情報を把握するのにも役立ちます。


宇宙技術のフル活用!?環境×衛星データの事例

衛星から得られたデータは様々な用途に使われていますが、衛星データや宇宙技術をフル活用しているといえるユニークなプロジェクトがあります。マイクロソフト社が実証を進めている「Space Cowsプロジェクト」は、Starlinkのような低軌道通信衛星コンステレーションの利用と衛星データを交えた面白い事例です。このプロジェクトは、マイクロソフトと豪政府が手を組んで4年間で5億円の予算で進められています。
(なお、詳細がわからないところもあるため、推測も含みます)

このプロジェクトが行われているオーストラリアは、面積が日本の20倍ですが、人口密度は日本の120分の1。さらに、日本ほどの地上の通信設備は整っていない環境にあります。

その場所での課題は、「開拓農民が放牧していたバッファローの野生化」です。バッファローが在来の生態系の破壊、放牧牛の駆逐、疫病の感染源などの原因となっており、監視が喫緊の課題となっています。そこで宇宙技術をフル活用することで監視を試みています。

具体的には、以下のように行います。

① バッファローの耳にGPSタグ付き環境センサを付与して位置情報と温度湿度を確認し、インターネット経由で収集
② 地上の通信設備が整っていない場所でも、センサのデータを衛星を介して遠隔地から取得
③ 解像度の高い地球観測衛星から耳にタグのついていないバッファローの位置も捕捉

これらのことを行うことで、「この時期にこういう温度変化をすると、ここにバッファローが行きやすい」ということが予測でき、あらかじめその場所にいる牛を逃がすという判断ができます。

星が綺麗に見え、 ロケットの打ち上げも観測できる場所は熊本県に1か所だけ!?

お話しいただいた中村さんは熊本県のご出身で、衛星データプラットフォーム「Tellus」のオウンドメディアである宙畑の編集長。そんな中村さんが熊本県で「夜は星がきれいでロケットの打ち上げも観測できる場所」を見つけたいと思い、衛星データをもとに探してみたというお話もいただきました。

「星がきれい」というのは、
夜に周辺の光が少ない
標高が高くて空気が澄んでいる
晴れている日の割合が高く予定が狂いにくい こと

「ロケットが観測できる」というのは、
視界を遮るものがロケットまでの直線上にない こと

それぞれの条件をもとに、具体的な条件を決定していきました。
その結果、衛星データから夜間光の輝度が0.41W/cm2/sr以下、標高600m以上、晴天率50%以上、種子島のロケット打ち上げが見える場所をプロットしていきました。

また熊本の地名で、公園、展望台、神社、高原といった天体観測スポットとなりうる場所を669か所を緯度・経度情報と合わせてリストアップしました。

すると、夜間光の輝度が0.4W/cm2/sr以下の場所は66か所、標高が600m以上の場所は53か所、晴天率が50%以上の場所は408か所、ロケットが見える場所は58か所あることがわかりました。

これらの情報を総合すると、熊本県の天体観測スポットとなりうる場所669か所の中で、すべての条件を満たす場所は1か所のみということが判明。

それが『二本杉展望所』というところで、中村さんは行ける日を楽しみにされているそうです。

中村さんはこのほかにも、妖怪の研究をされている方に、鬼や河童が住む条件を取材して、「鬼や河童がいる可能性がある場所」を衛星データから推定することも試みたそうです。衛星データをユニークに活用されていて面白いですよね。

衛星データを幅広くビジネスに活用しているというお話も面白いですが、異なる分野に応用することで、衛星データをより自分の身近に感じることができました。妖怪の居そうな場所を衛星データから推測するケースは、地域振興にも活用できそうですね。中村さん、そしておつなぎいただいた井上さんありがとうございました!

【プロフィール】

中村 友弥 
株式会社sorano me CMO

熊本県出身。sorano meでは、宇宙アセットを用いた新規ビジネス企画と開発を主に担当。大学卒業後は株式会社オールアバウトのメディアビジネス部門にて、編集、企画、広告などを経て、現在は同社で動画コンテンツやメディア発リサーチサービスの企画など新規事業を推進。オールアバウトに勤めながら、2018年12月から宇宙ビジネスメディア「宙畑」の編集長に就任。


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