NTT Com「Dropin」で、鎌倉市は"働くまち"に変化する 〜テレワークの普及で見える新しい地域社会〜
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NTT Com「Dropin」で、鎌倉市は"働くまち"に変化する 〜テレワークの普及で見える新しい地域社会〜

2021年6月7日に、鎌倉市はNTTコミュニケーションズと「コワーキングスペース・宿泊施設・カラオケ施設等を活用したテレワークの推進に係る実証実験に関する協定書」を締結しました。
この協定により行われる実証実験は、テレワークスペースを利用したい事業者または個人と、コワーキングスペースや宿泊施設、カラオケ施設などテレワークスペースの提供を希望する店舗をNTTコミュニケーションズ株式会社(以下 NTT Com)のワークスペース即時検索・予約・決済ができる「Dropin」によりマッチングすることで、住民のテレワーク実施率や、実施時間、効率性、テレワークスペースに対するニーズなどを調査するものです。今回は、鎌倉市の松尾崇市長とNTT Comイノベーションセンターの山本清人さんと湊大空さん、そしてフィラメント角勝が対談し、この協定の締結に至った経緯や鎌倉市がこのサービスに期待すること、今後実現したいことについてお聞きしました。(文/QUMZINE編集部、永井公成)

ワーケーション分野では鎌倉市初の民間協定

角:鎌倉市様はワーケーションの分野で民間企業と協定を結ばれることは、これまでにもありましたでしょうか?

松尾:こうした働き方の分野では鎌倉市としては初めてのこととなります。

角:そうなのですね。では改めて、今回の協定の締結に至った背景と経緯についてNTT Comの山本さんからお話いただけますか。

山本:今回は弊社NTT Comの中でも前例がないほどのスピード感を持った協定締結と報道発表、ニュースリリースに繋がりました。フィラメントの角さんには、以前より新規事業のメンタリングという形で、「Dropin」の壁打ちや外部パートナーの方をご紹介いただいています。その中で、コロナ禍の前後でワークスペースの使い方に変化があるのではないかという話になりました。具体的には、都内に通勤してその隙間時間にワークスペースを使うというケースよりも、在宅勤務をしたいものの自宅では集中できないという方がご近所のワークスペースでお仕事するというケースの方が増えているのではないかということです。では都内へ通勤されている方にとってアクセスがいいところはどこなのだろうかと話していた時に、角さんから鎌倉市様のお話が出ました。そこで、松尾市長ともお知り合いということでゴールデンウィーク明けぐらいに角さんからアポイントを取っていただいて、1か月かからないぐらいで協定の締結とニュースリリースができました。

角:市長は今回のお話をどのように受け止められましたか。

松尾:鎌倉市としてはコロナ禍となる前からテレワークを推進していくために「テレワーク・ライフスタイル研究会」というのを立ち上げていました。そのため、テレワークできる場所も鎌倉市内に少しずつ増えてきているという状況はあったのですが、このコロナ禍になってそういう場所が飽和状態になっており、増やしていけないかという課題感はありました。

今回このお話は、まさに鎌倉が今抱えている課題を解決する良い手段になると思い、非常にありがたかったので、より早く進んだのではないかと思います。

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角:なるほど。市長の課題意識にフィットしたサービスだったということですね。

今回の実証実験では、費用負担の部分で、店舗側も利用者側もかなり安価もしくは無料で「Dropin」を利用できるようになっていますよね。それも含めスピード感をもって社内を説得するのは大変だったのではないでしょうか。

山本:そうですね。通常「Dropin」は、ワークスペースの利用料金を利用者の方からいただいて、手数料を差し引いたかたちでワークスペースをご提供いただく店舗に利用料をお支払いする流れになっています。

今回は鎌倉市内でテレワーク率を向上させる目的もありますので、実証実験の期間中は、利用者の利用料金の半額をNTT Comで負担します。店舗側は、通常利用料金の20%をシステム手数料としてご負担いただいているのですが、これを0%にさせていただいて、その分の費用負担はすべてNTT Com「Dropin」が負担します。

社内の説得という意味では、今回の施策の意義を説明し、また、「Dropin」を活用してテレワークを推進する自治体としては今回が初の協定となり、プロモーションにもなるため、費用負担の多くを弊社が行うことで承諾を得ることができました。

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コロナ禍以前から鎌倉市はテレワーク普及に取り組む

角:先ほど鎌倉市さんの取り組みとして「テレワーク・ライフスタイル研究会」をコロナ禍以前からされていたということですが、その当初の設立の目的を教えていただけますか。

松尾:鎌倉という特性もありますが、例えば朝サーフィンしてから出社するとか、ハイキングコースを少しジョギングしてから出社するといったことをFacebookなどで発信される方がいらっしゃいました。こういう働き方は多くの人が憧れますが、一方では多くの市民は毎日通勤のため、都内まで満員電車で揺られているという現実があります。これだけテクノロジーが発展しているので、この状況からなんとか解放することができないかという課題意識があり、民間の企業のみなさんにもお知恵をいただきながら解決したいと思っていました。この研究会の最大の目的は、「その人が望む生活、生き方、働き方が実現できる」ことで、その一つがテレワークだと思っています。

角:なるほど。まさに憧れの働き方ですよね。
テレワーク・ライフスタイル研究会は、NTT Comさんも関わりを持っていらっしゃるとお聞きしています。

山本:そうですね。2018年に鎌倉テレワーク・ライフスタイル研究会が発足された時に、鎌倉テレワークライフスタイル研究会と、長野県の信州リゾートテレワークが新聞記事になりました。ちょうどDropinの事業を検討し始めたのがそのタイミングで、その時はまだコンセプトしかなかったのですが参加させていただき、研究会の目的や趣旨を議論しました。

当時はまだワーケーションの考え方が浸透しておらず、自治体によってそれぞれ打ち出し方に違いがありました。例えば軽井沢だと「リゾートテレワーク」という感じの打ち出し方だったのですが、鎌倉市の場合はテレワークとライフスタイルを並列して出されていたんです。単に働くというところだけじゃなくて、楽しみながら働くとか、働くことによって生活がまた豊かになるとか、そういったところも目指されていました。単に働く場所だけにフォーカスされていなかったのが当時から良いと思っていました。

角:今回は協定の締結、そして実証実験の建て付けの検討、プレスリリース発出まで1か月ぐらいで進んだということでしたが、2018年のテレワーク・ライフスタイル研究会の発足当初から参加されていたというところも相互理解が早く進んだ一因になっていたりしますか?

山本:そう思います。実は大きな都市でもワークスペースがあるところは意外と少ないんです。「仕事をする」というと東京に通勤することが前提になっていましたので、住む場所があっても、働く場所がありませんでした。日本全国のコワーキングスペースの8割ぐらいは東京23区の、さらに都心の5区の中に収まっていて、それ以外が2割以下です。その一方で、8割以上が都心以外に住んでいるんです。それでコロナ禍となってテレワークが非常に増えてくるとワークスペースが非常に足りないという課題が出てきていて、今少しずつ整備されていっているんですけど、なかなか需要に追いついていません。

でも鎌倉市様は以前から取り組みをされていらっしゃったので、先ほどお話したライフスタイル・テレワーク研究会様に参加されているワークスペースの事業者様も非常に多いんです。そういった意味合いでも、ぜひ今回協定を結ばせていただきたいと思っておりました。

角:なるほど。住宅の周りのワークスペースの不足というものが、コロナで住宅にいる時間が長くなった時に顕在化してきて、しかも設備投資がいるものなので急に増やすこともできなくて、ニーズが吸収されづらい状態になっていたということなんですよね。

山本:そうですね。

角:一方で、やはりコロナ禍になって観光業や飲食店、カラオケ店などは収入がなくなって大変厳しい状況にさらされていると思います。鎌倉市だと観光客がたくさん来られるような場所もあるかと思いますけれども、やっぱり厳しい状況にさらされている方々も多かったりしますでしょうか?

松尾:はい。一昨年と比べると6割減少と、過去最低の観光客数になりました。市内を見てもだいぶ閉店するところが増えてきています。もともと多くの観光客の方が来られるような場所は家賃も高くて、継続的に売上をあげていないと維持できない状況とのことです。

今までは鎌倉市でオフィスを探すにも家賃が高すぎて借りられないということがありましたが、今回のサービスのようにカラオケ店やカフェやホテルなど、これまで観光客がターゲットだった施設に働く人が行くようになるのは鎌倉市が"住むまち"だけではなく"働くまち"にも近づくことに繋がり、非常にありがたいことだと思っています。

角:緊急事態宣言下においては、住民の方がオフィスとして地域の飲食店などを利用されて、地元経済にお金が回ることに少しでも寄与できたらというのはご紹介した時に私も思い描いていたことでもあります。

仕事と生活を分断させない行動スタイルに

角:「Dropin」が地元経済へどういう影響を与えられるか、イメージされていることがおありでしたら教えてください。

湊:今後「Dropin」の機能としてさまざまな機能を検討しています。ワークスペース利用料金以外の支払い、例えばお土産の購入や別のサービスの購入ができても良いと思っています。そういったところを足がかりとして、地元の関係人口を増やしていくことに繋げられるようにしていきたいですね。

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角:コロナ禍においては、自宅の近くで働くというニーズがあると思いますけど、そこから先もちゃんと見据えていらっしゃるということなんですね。

湊:そうですね。

山本:よく「Dropin」の利用ユーザーさんのインタビューをさせていただいているんですけど、行動スタイルが、自宅からランチを食べるタイミングで外に出て、ワークスペースでお仕事が終わったあとにお風呂もしくはフィットネスに行ってから帰るとか、ご飯を食べてから帰るみたいなかたちで、生活と一体化しているんですよね。今までの行動スタイルだと通勤して、働く場所に行って仕事をして、生活の部分は帰ってきてからと完全に分離されていましたが、それがすごく変わってきています。

ワーカーは生活者でもありますので、我々のソリューションで、仕事と生活を分断させずに、個人の生活者としての消費行動に繋げられる導線づくりもできると思いますし、それが店舗や地域への貢献に繋がれば良いと思います。ワーケーションの文脈でも活きていくような流れにしていきたいと思っております。

角:なるほど。この展望の話は今市長も初めてお聞きになられたと思いますけど、どう思われますか?

松尾:すごく可能性を感じました。夢が広がる感じですね。地域に住んでいてもそこまで地域のものを消費しているかとか、地域での人の繋がりがあるかというとそうでもない人もいると思います。それが実現できると本当に豊かな生活ができると思うので、ぜひさらなる展開を一緒に進められればと思います。

角:素晴らしい。ありがとうございます。

近所で働き、地域の活動に参加してほしい

角:僕らフィラメントは「Dropin」の新規事業チームがまさにコンセプトの頃からずっと伴走してご支援しているんですけれども、「Dropin」という1つのプロダクトが環境の変化とともに大きく成長していっているのを今目の当たりにしています。社会の環境の変化にあわせて実装する機能とか、求められているものに対して答えを出していこうとするその姿勢が素晴らしいです。

これから鎌倉で「Dropin」の実証実験が始まっていきますが、どんな方に使っていただきたいですか。

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湊:鎌倉市や周辺都市に住んでいて、素晴らしい自然と引き換えに、都心への通勤時間が長くなるのを耐えてきた方が多数いらっしゃると思いますが、そういった方々が少しでも報われたら良いと思います。鎌倉市内にあるコワーキングスペースで働いて、地元のご飯を食べて、夕方早めに帰って、家族と団らんする。たまには都心に出るんでしょうけど、通勤で摩耗することなく、地場で過ごすことでご近所でワークをするところの楽しさ、気持ちよさを味わっていただきたいと感じていますね。

角:なるほど。「Dropin」側としてはそういう感じで思っていらっしゃるようですけど、鎌倉市として「Dropin」に対する期待と、課題があればお聞きしたいのですがいかがでしょうか。

松尾:これまでなかなか有効活用されていなかった部分がまさに今回の取り組みで非常に可視化されて、市民にとって新たな地域の気づきに繋がっていくと、より"鎌倉愛"というのが醸成されていくと思います。

働く世代の人たちが地域にいるからこそ住んでいる地域にも関心が行くようになり、自分でこの街を良くするために地域の自治会やPTA、NPOで行動するというところにまで広がっていくと街がさらに良くなっていく、繋がっていくということに大変期待しています。

角:よく分かりました。

僕は、2018年当初に「Dropin」のチームとお話していて、「東京オリンピックが開催されると海外の観光客の方がいっぱい来られて、交通機関とかも飽和状態になって、東京の会社の人たちはテレワークする需要が生まれるはずだ」と思っていたんですけど、まったく逆の状態になりました。そしてそれにもかかわらずテレワークの需要はすごくあるという、不思議な状態だったんですよ。

ただ1個変わったのが、テレワークの需要が発生する場所です。そこが近郊になっているということが非常に面白い。これを機にまたいろいろな流れが変わっていくんじゃないかなと思っています。その中で鎌倉市と「Dropin」の実証実験が日本全国に波及していくような新しい動きになるといいと思っています。

新たな鎌倉の観光のかたちをつくる

角:今回の実証実験をどういった貢献意識をもって実行していくのか、そしてその後の展望についてお聞かせくださいますか。

山本:はい。NTT Comが取り組む意義としては、まず鎌倉市や湘南、三浦半島付近の地域の住民の方のワークスタイル変革の支援をすることです。そして、利用者の方のテレワーク率の向上に加え、地域の事業者の方や、店舗事業者の方がコロナ禍となり影響を受けた分の収益面での貢献というのも目的です。

その中で「Dropin」は、利用者やワークスペース提供店舗に募集をかけてマッチングをし、利用者やワークスペースのテレワークのニーズや課題を把握し、市にもフィードバックをして、より良い"働く街"としての環境づくりに貢献するという意義があると思っています。

企業が本気でテレワークを推進しないと、会社に「出社しなさい」と言われたら出社せざるを得ない状況はなくならないと思っています。実のところ、在宅勤務日を設定されている企業さんで、自宅だと集中できないといった理由から、実はこっそり費用を自己負担して、ご自宅の近くのワークスペースでテレワークをやっているという人も結構いたりするんですね。

そういった状況にある中で、東京も含め全国の企業が職場と自宅以外の場所も含めてテレワークできる場所を整備していかないと、利用率は上がっていかないと思っています。今回そのスタートが鎌倉市様ですので、今回のテレワークの実証期間で得たノウハウや知見をもとにほかの自治体様にも展開していって、地元のワークスペースで、しっかりとお仕事ができる環境をつくっていきたいと思っております。

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角:なるほど。なかなか力強いメッセージがきましたね。
鎌倉市からみてこの活動の貢献や、これからの展望についてもお聞かせ願えますか。

松尾:テレワークを在宅でしかしていないという方が、NTT Comさんの「Dropin」によって選択肢を得られるということが非常に重要だと思っています。そして市役所側からすると、どういうところのニーズがあるのか、どういうところに人気があるのかという動向やデータも共有させていただけるというところは、鎌倉をさらにテレワークの街とするために大変重要なポイントになるかと思っています。

そして、今までまさかワークスペースとして考えていなかったような店舗やホテルなどがそういう可能性を得ることによって、鎌倉の観光の在り方自体が変化し、働くこと、もしくはワーケーションとセットで考えていくことで、新たな鎌倉の観光のかたちをつくっていくことができるんじゃないかと思っています。

角:なるほど、よくわかりました。本日はありがとうございました。


【参考情報】

Dropin


NTT Comと鎌倉市による「コワーキングスペース・宿泊施設・カラオケ施設等を活用したテレワークの推進に係る実証実験に関する協定書」の締結について


【プロフィール】

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松尾崇(Takashi Matsuo)
鎌倉市長

昭和48年鎌倉市生まれ
会社勤務を経て、鎌倉市議会議員と神奈川県議会議員を通算約8年間勤め、
平成21年より鎌倉市長(現在3期目)
家族は、妻と3人の娘(8歳10歳14歳)。
趣味は山登り、ジョギング。座右の銘は『温故知新』

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山本清人(Kiyohito Yamamoto)
NTTコミュニケーションズ株式会社 
イノベーションセンター プロデュース部門/新規事業開発担当

ITベンチャーのインターネット事業、新興系の通信会社などベンチャー企業での経験を経て、2003年NTTコミュニケーションズ株式会社入社後、大手法人営業に従事し、グローバル企業のコミュニケーション・コラボレーション改革を推進。
2018年より現職で新規事業開発を担当。ワークスペース提供アプリ「Dropin」やワーケーション施設「ハナレ軽井沢」の企画運営 など次世代のワークスタイルをテーマとしたを事業立ち上げを推進中。

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湊大空(Ozora Minato)
NTTコミュニケーションズ株式会社 
イノベーションセンター プロデュース部門/新規事業開発担当

2014年にNTTコミュニケーションズ株式会社入社後、クラウドサービス系の部署でエンジニアとして開発に参画。2018年からは現部署にて「Dropin」開発リーダーを務める傍ら、ビラのデザイン、動画制作、顧客サポート、店舗営業等を色々こなすなんでも屋。

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角勝 (Masaru Sumi)
株式会社フィラメント CEO

2015年より新規事業開発支援のスペシャリストとして、主に大企業において事業開発の適任者の発掘、事業アイデア創発から事業化までを一気通貫でサポートしている。前職(公務員)時代から培った、さまざまな産業を横断する幅広い知見と人脈を武器に、必要な情報の注入やキーマンの紹介などを適切なタイミングで実行し、事業案のバリューと担当者のモチベーションを高め、事業成功率を向上させる独自の手法を確立。オープンイノベーションを目的化せず、事業開発を進めるための手法として実践、追求している。

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