Teamsで参加者200名超のオンラインワークショップを開催するコツ
コロナによる外出自粛・在宅ワーク期間中に、ビデオ会議ツール「Teams」を使って参加者200名を超えるオンラインワークショップを開催しました。
ワークショップの目的は「新規事業開発」。
しかも相手は社員1万人を擁する国内屈指の大企業。
従来オフラインで実施してきたワークショップをウィズコロナの時代に合わせオンラインへと全面的に移行し、さらに大企業ならではのさまざまな工夫を加えることで、なんとかやり遂げることができました。
本記事では、その時に行った工夫やTipsを実践に基づいて共有します。
(取材・文/QUMZINE編集部、永井公成)
200名を超える大規模オンラインワークショップ
「オンラインワークショップ」と聞くと、みなさんはどんなものを想像されますか?
一口に「オンラインワークショップ」と言っても、みなさんが想像されるであろう小規模のワークショップばかりではありません。
今回、私たちフィラメントが開催した「オンラインワークショップ」はこんな感じ↓
参加者総数は200名超。
大手ICT企業を対象に、大人数の参加者でも成立するワークショップを提供することになったんです。
ちなみにワークショップのメンバーは、参加者、メンター、事務局スタッフ含め、全員リモート参加。これぞまさにニューノーマル。
ワークショップの「ファシリテーション」は対面であっても難しいと言われますが、それがさらに遠隔ともなれば尚更ですよね。
大企業ならではの前提条件
実は今回のオンラインワークショップ開催にあたっては、大きく3つの大企業ならではの前提条件があったんです。
・ワークショップで使用するビデオ会議ツールは「Teams」に限定する
・参加者全員がオンラインツールの操作に慣れているわけではない
・お互いにオフラインで顔を合わせたことのない社員が多数参加している
ぶっちゃけた話、「Zoom」を使ったオンラインワークショップの手法やプロセスは、すでに山ほど開発されていると思います。
ブレイクアウトルームのようなグループワーク専用機能を使えば、チーム単位でのディスカッションやワークがオンライン上で可能になります。個々のリテラシーに差が無い、オンラインワークショップ慣れした参加者ばかりであればそういったテクニカルな運用も容易でしょう。
しかし、前提条件はグループワーク専用機能の無い「Teams」を使ってオンラインワークショップを成立させること。
そして私たちの最大のミッションは、オンラインワークショップ慣れしていない参加者を含めた全員、誰一人の「脱落者」も出すことなく、この新規事業ワークショップをやり遂げることでした。
「オンラインの壁」を取り払う工夫
全体の建付けは、従来1日で全て行なっていたワークショップをDAY1~6の6日間に分け、6週間にわたって、各回60〜90分を週1回のペースで実施。
6日間のワークショップのうち、最初の2回(Day1、Day2)はフィラメントCEOの角勝とゲストスピーカーによる「新規事業開発」をテーマにした講演が行われました(なのでワークショップとしては実質4回に分けて行ったことになりますね)。これはマインドと視座を高め、日常業務のしがらみから離れてもらうことを意図して企画したものです。
Day3~6のオンラインワークショップでは、フィラメントが独自開発した「ストーリーカードメソッド」というアイディエーションワークを実施。通常オフラインで提供しているプログラムに加え、今回はオンラインならではのさまざまな工夫を随所に織り交ぜてみました。
尚、オンライン開催にあたって使用したツールは以下の通り。
■オンラインストレージ:
・ワークショップの課題提出
■ビデオ会議ツール:
・ワークショップのレクチャー配信
・参加者とメンターの個別相談会
■ビジネスチャットツール:
・テキストチャットによる壁打ち
・事務局の連絡
■コンビニプリント:
・配布物のプリントアウト
工夫①:自己紹介シート
ワークショップに臨むにあたっての事前準備として、参加者全員に「自己紹介シート」を紙に手書きで書いてもらい、それをスマホで写真に撮ってオンラインストレージにアップロードしてもらいました。
これによって、メンターや事務局のメンバーがワークショップ参加者の意気込みやパーソナリティを知るキッカケになるだけでなく、参加者自身も今後の課題提出時に必須となるオンラインストレージの操作に慣れることができるんです。
また「事前検証」も兼ねているので、万が一、操作に関する問題や不具合が発生した場合も、ワークショップ本番までには解消することができますよね。
工夫②:場づくり
ワークショップのレクチャーは、ビデオ会議ツールによるオンライン配信で行いました。
メンターや事務局のメンバーは、ワークショップの開始20分前にはあらかじめビデオ会議ツールに入室しておいて、挨拶したり雑談したりすることで、参加者がリラックスしたムードでワークショップを始められるように心がけました。
また、ちょっとしたTipsですが、ワーク中にできるだけ無音の時間を作らないようBGMも流したりしました。無音の時間が続くと参加者もネットワークや配信の不具合かどうか状況がつかめなくなって、不安になっちゃいますからね。BGMは必ず著作権をクリアしておきたいので、著作権フリーの音楽サイトからの無料ダウンロードがおすすめです。(※ここめっちゃ大事)
工夫③:配布物と準備物
今回のオンラインワークショップで実施した「ストーリーカードメソッド」には、物理的なカードやワークシートの事前準備が必要です。これをオンラインで実施するための工夫として、配布物を参加者自身が自宅近くの「コンビニ」で簡単にプリントアウトできるようにしました。
最近では自宅にプリンターを持っていないという方が多いのではないでしょうか?あらかじめ各コンビニのプリントサービスに配布物のデータを登録しておくことで、参加者はパスワードのみで印刷ができるようになります。社用PCではUSBメモリが使えない会社も多いので、コンビニプリントを使うことがメリットに。このほか、コンビニプリントでは領収書が発行できたり、家庭用プリンタでは出力できないA3サイズも印刷できたりと、なにかと便利ですよ。
参加者にはポストイットとペンの他に、コンビニでプリントアウトした用紙をハサミでカットして、カードを準備してもらいました。(アナログ大事)
工夫④:オンラインファシリテーション
オンラインワークショップの難しい点は、参加者がワークでつまずいたり、迷ったりしている状況が把握しにくいということにつきます。
オフラインワークショップで各テーブルを回って声をかけたりサポートしたりするのと同様に、オンラインでもビデオ会議ツールの「手挙げ機能」を活用したり、こまめに共有されたものを確認することが重要です。この点はオンラインもオフラインも関係ないですよね。
タイムキーピングについても然りです。参加者の作業状況に応じて時間を延長するなどフレキシブルに対応する「思いやり」が求められます。
ワーク前の説明はなるべく細かく丁寧に行い、ワークのアウトプットのイメージを伝えるデモンストレーションのサンプルも、あらかじめ多めに準備しておくと安心ですよ。
工夫⑤:フィードバック
今回のオンラインワークショッププログラムでは、メンターから参加者に対して3パターンの方法でフィードバックを行いました。
1:ワークショップ時間内のリアルタイムフィードバック
2:ビデオ会議ツールを使った個別相談会でのフィードバック
3:ビジネスチャットツールを使ったテキストよるフィードバック
ワークショップの時間内ワークでは、課題ができた人から順次ワークシートをスマホで写真に撮って、オンラインストレージにアップロードしてもらいました。メンターは提出された課題の中から任意のワークシートをリアルタイムで画面共有し、公開フィードバックを行います。
その際は、なるべく参加者にもWEBカメラをONにしてもらうことで、心理的な安心感と円滑なコミュニケーションの促進を心がけました。オンラインであっても中身は人間。ヒトとヒトです。
ワークショップ終了直後には、わからなかったところや気になったことを気軽に質問できるフリートークの時間も長めに設け、参加者一人一人の理解度向上を丁寧にサポートしました。
さらに上記に加え、ワークショップのインターバル期間には、
・次回ワークショップまでにチーム単位で取り組む「課題」
・ビデオ会議ツールを使った参加者とメンターの「個別相談会」
・ビジネスチャットツールを使ったテキストチャットによる「壁打ち」
など徹底的に参加者に寄り添ったサポートプログラムをオンラインを通じて提供しました。
ちなみに、4週間連続開催で実施したビデオ会議ツールによる「個別相談会(20分/回)」の回数と総時間を計算してみると・・・
回数:71回
時間:1,420分(71回×20分)
相談会参加人数:341人
⇒ のべ相談時間:484,220分(1,420分×341人)
という驚きの結果でした。
プログラムの「質」はもちろん、「量」に関してもいっさい手は抜きません。
これらの細かい工夫と努力を重ねることで、従来のオフラインで行ってきたワークショップのクオリティと満足度を下げることなく、シームレスにオンラインに移行することに成功したんです。
大企業・大人数の参加者でも、工夫次第でオンラインワークショップは必ずやり遂げることができます。
DMいただければ、もちろんフィラメントが相談にも乗りますよ~