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8ヵ月にわたる常石グループの新規事業人材育成プログラムが完結!成果発表会レポート
2023年12月5日、常石グループは8ヵ月間にわたる「新規事業人材育成プログラム」の成果発表会となるデモデイを迎えました。常石グループの複数の企業から編成された9名・3チームは、フィラメントが提供するビジネス創出講座やワークショップ、伴走メンタリングを受講し、それぞれの新規事業のアイデアを磨き上げてきました。デモデイ当日は、各チームによるピッチをはじめ、社内外のコメンテーターによるピッチへのフィードバックを行ったほか、全ての参加者が自分の言葉で8ヵ月間の学びを振り返るなど、研修の集大成として非常に充実したイベントとなりました。(文・写真/QUMZINE編集部 永井公成)
研修の振り返り
常石グループの「新規事業人材育成プログラム」は、これまでにもQUMZINEでその取り組みの一部を紹介してきました。今回のデモデイは、8ヵ月にわたるこの研修プログラムの集大成として位置づけられています。
イベントの冒頭、フィラメント代表取締役CEO角勝が、8ヵ月間の研修の振り返りを行いました。
角:今年の4月、ツネイシホールディングス人事戦略部の主導で、常石グループの社員を対象にした研修プログラム「新規事業人材育成プログラム」がスタートしました。
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このプログラムは、新規事業立ち上げに不可欠な実践的な知識を兼ね備えた人材を育成することを目的としています。その達成のため、参加者はフィラメントが提供する座学講座、メンタリング、そしてワークショップに参加しました。これらの活動を通じて、新規事業創出のプロセスを実体験し、事業を成功させるための視点や方法、具体的な手法を習得しました。
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プログラムの上期では、まずチームビルディングを行いました。常石商事、ツネイシCバリューズ、ツネイシホールディングスから9名のメンバーを3つのチームに分け、フィラメントは新規事業創出のスペシャリスト2名を各チームにアサイン。メンターは、新規事業アイデアをチームと共に考え、隔週でメンタリングを行いました。
キックオフとなる4月のオンサイト研修では、ビジネス基礎知識とマインドセット習得の為の講座を行いました。
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5月と6月はリサーチとインタビュー技術の習得に焦点を当て、オンライン講座を通じて新規事業立ち上げのためのリサーチ技法、仮説構築、そしてインタビュー手法について学びました。7月には大阪で商工中金の新規事業ビジネスコンテスト入賞チームとのディスカッションを実施。また、LINEヤフーのオフィスでトータル4時間にも及ぶアイデア創出ワークショップを行い、NTT西日本のQUINTBRIDGEでは事業アイデアに関係するキーパーソンとの意見交換を実施しました。8月には、これまでの成果を「事業アイデア明確化ワークショップ」で発表。参加者は自らの事業アイデアをプレスリリース形式で言語化し、幹部に向けてプレゼンテーションと質疑応答を行いました。
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上期は新しい挑戦に苦戦する場面も見られましたが、下期にはプロジェクトの動きがスムーズになりました。下期の目標は、新規事業プランの役員への最終発表と、新規事業人材としてのスキルアップでした。上期では外部企業との交流が刺激となり参加者のモチベーションを高めたことから、下期では企業間交流を積極的に増やしました。10月には大阪でのオフサイト研修を実施し、近畿大学の学生起業家のピッチや、LINEヤフーでの新規事業に関する経験談を聞きました。11月にはMusashino ValleyでLenovo Japan 執行役員 COO山口仁史氏の講演や、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部学部長でMusashino Valley代表である伊藤羊一氏のワークショップに参加しました。
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この8ヵ月間、参加者は本業をこなしながら新規事業創出に挑戦し、その努力の成果を本日発表します。これらの発表を楽しみにしていただきたいと思います。
コメンテーター紹介
続いて、今回のデモデイでフィードバックコメントを行うコメンテーター5人から挨拶がありました。コメンテーターはLenovo Japan 執行役員COO 山口仁史氏、常石商事 取締役会長 綿谷伸二氏、ツネイシホールディングス 取締役 西嶋孝典氏、ツネイシCバリューズ 社長 津幡靖久氏、そしてフィラメント代表取締役CEO 角勝です。
ピッチ
いよいよ3チームによる発表が始まります。チームの持ち時間は8分間で、その後12分間の質疑応答が行われます。
最初に発表したチーム1はツネイシCバリューズの細谷昭さん、常石商事の三谷優貴さんと永江賢さんです。
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チーム1がピッチで話したのは、世界規模の課題について、身近なところから解決することを目指す事業アイデアでした。ピッチ後の質疑応答ではコメンテーターから、「長期戦略についても言及されており、正直追加でコメントをする必要があまりない。実現するために壁になりうるところはいくつか考えられるが、おそらく世界中でハードルになっているところを乗り越えられるだろうという意味においても、常石グループがやる意義はあるだろうし、面白い」というコメントをいただいたり、ビジネスアイデアのポテンシャルに関する質問が出た際にも、事前に準備していた試算結果を回答したりと、しっかりとした受け答えをしていました。
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続いて発表したチーム2は常石商事の山下晃裕さんと大森悠尊さん、ツネイシホールディングスの清水亜也子さんです。
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チーム2は22社に対しおよそ70時間のインタビューを行い、ビジネスアイデアを練りました。内航船業界の課題について掘り下げ、その課題に対するソリューションを考えました。プレゼンの最後は「一緒に内航海運の未来を作りましょう」と元気よく締めくくったのも印象的です。ピッチの後、質疑応答でコメンテーターからは、「課題に対し、異なる解決策を実施した方が良いのではないかと思ったが、プレゼンを聞いていくうちに腹落ちした。」というコメントや「近い将来、グループの中で存在感を示してくれるだろうこの事業の社長は、3人のうちの誰がやるのか?」といった、場が盛り上がるような質問も出ました。
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最後に発表したチーム3は、ツネイシCバリューズの児玉直さんと高橋賢次さん、ツネイシホールディングスの貞森俊輝さんです。
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チーム3はキャッチーなサービス名を付け、プレゼンのタイトルに持ってくることでオーディエンスの耳に残るようにし、印象付けました。現在実際に発生している課題を例に挙げ、DXを進めることでその解決を試みます。既存事業でのネットワークを活かして成長できるビジネスアイデアであることから、自分たちが取り組むべき事業であると強調しました。ピッチ後の質疑応答ではコメンテーターから、チームのアイデアをよりよくできるような追加サービスや組み先などの提案があり、さらによいビジネスアイデアへと昇華させていました。
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個人の学びの振り返り
ピッチが完了したのち、参加したメンバー9名がそれぞれご自身の言葉でこの8ヵ月間を振り返りました。本業に加え、今まで知らなかった知識を学んだり、課題に挑戦したり、ワークショップに参加したり、直前までピッチの準備をするなど、決して楽な道ではなかったとみられますが、参加者からは「メンタリングはアットホームな雰囲気で、メンターは『先生』というよりは『先輩』のような感じで接していただきました」「とにかく物事を面白がってみて、しっかり調べて学んでいくことは今後も取り入れていきたいと思いました。後輩にも伝えたいです。」「学生起業家やメンター、ワークショップの講師など様々な人に出会い、スキルだけでなく、今このときを全力で生きる姿勢も学べたのが良かったです。」といった前向きなコメントが寄せられました。
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コメンテーターによる講評
参加者による振り返りの後、コメンテーターによる講評をいただきました。
まずはゲストコメンテーターのLenovo Japan 執行役員 COO 山口仁史氏が講評を述べました。
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山口氏:皆さん、まずはお疲れ様でした。今日、3つのチームのプレゼンを聞いて共通して思ったことがいくつかあります。まず、ビジョン、顧客ニーズ、そして何よりも、常石グループとしての視点が全てのプレゼンに入っていたことです。これは新規事業を展開していく際に非常に大切なポイントだと思います。もちろん、障壁やチャレンジ、確認しなければならないことはまだ多いと思いますが、この3点をブレずに押さえていれば成功に導けると確信しています。
私たちはプライベートでは20年前には存在すらしなかったスマホなど「新しい環境」に順応していますが、仕事ではそれに対して不安や辛さを感じることがあります。しかし、新しいことにチャレンジしなければ、世の中から置いていかれることになります。仕事の中でも新しいことにチャレンジすることは必要不可欠です。
今回皆さんがチャレンジした新しいことは、今後大いに生きてくると思います。新規事業の3つのうちどれから実現されるかはわかりませんが、どれも絶対に今後に役立つと思いますので、引き続き頑張ってください。今日は非常に面白く、役に立つ話を聞かせていただき、ありがとうございました。
次に、ツネイシホールディングス 取締役 西嶋孝典氏が講評を述べました。
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西嶋氏:フィラメントの皆さん、サポートいただきありがとうございました。今日の発表を通じて、ここ8ヵ月間で皆さんがどれだけ素晴らしい出会いを経験し、成長してきたかが伝わってきました。皆さんそれぞれがこの研修を通じて、大きく成長したことは明らかです。また、今日の発表を聞いたオーディエンスの皆さんにとっても、大きな励みになったことでしょう。皆さんの成長ぶりを目の当たりにして、自らもそうありたいと思った人が多いはずです。今の皆さんがうらやましく思われることこそが、この研修の成果であり、私も大いに学ばせていただきました。非常に面白く、有意義な話を聞かせていただき、ありがとうございました。お疲れ様でした。
最後に、常石商事 取締役会長 綿谷伸二氏が講評を述べました。
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綿谷氏:皆さん、8ヵ月間本当にお疲れ様でした。今回のピッチイベントを聞いて、非常に楽しい時間を過ごしました。自分では考えないようなアイデアばかりで、若い皆さんの新鮮なアイデアには感心しました。フィラメントの皆さんはツネイシにない、いろいろなことに興味を持つとか、面白がるとかという気づきを持っていると思います。これはぜひ明日からも続けてほしいですね。新規事業開発では、何と言っても情報収集が非常に重要です。市場の動向や競合の分析など、情報はビジネスの生命線です。また、新しいアイデアを思いついたり、気づきがあったりすることも大切ですが、重要なのは、こうしたアイデアを実際の行動に移すことです。
そこで、2つアドバイスがあります。1つは、皆さんが出張に行く際には、ただ仕事をこなすだけでなく、その土地の新しい情報を収集して実際に足を運ぶよう努めてください。今やっている仕事と直接関係がなくても、新しい知見を得ることは有益です。2つ目は「行動する」ということです。PDCAサイクルを回す際には、P:計画だけでなくD:実行にも重点を置いてください。計画だけでは何も生まれません。できることから行動を起こさないと見えてこないです。失敗を恐れずにまずはやってみるのが大事です。明日から実行してほしいです。8ヵ月の努力を生かして、今日から新たなスタートを切りましょう。初めからすべてを完璧にこなす必要はありません。小さな一歩から始め、失敗から学んでください。失敗を恐れることなく、積極的に挑戦してください。
総評
最後に、総評を行いました。
まずは、ツネイシCバリューズ 社長 兼 ツネイシホールディングス取締役(人財戦略担当)の津幡靖久氏が総評を述べました。
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津幡氏:この新規事業開発の研修を開始した際、参加者には「これは戦いに向けた訓練だ」と伝えました。訓練を重ねなければ、現実のビジネスの世界ではすぐに挫折してしまう可能性があります。今回の研修を通じて、参加者全員、よく鍛えられたと感じています。それぞれに改善点や成長の伸びしろはありますが、ほぼ全員が新規事業に携わる人材として合格レベルに達していると思います。
来年も、この研修プログラムの後輩たちを育成する計画を立てており、今回の研修で感じた反省点を踏まえてさらに改善していくつもりです。皆さんには、新規事業のフロントランナーとして、後輩たちをサポートしていただきたいと考えています。
苦戦する姿も見られましたが、研修を通じて、大変さの中にある楽しさを実感してもらったと思います。その経験が逆に後輩への貴重なアドバイスになると確信しています。来年はいよいよ実践舞台。私と一緒に、新たな事業の創出を実現してもらいたいと思います。さらに困難な道が待っているかもしれませんが、それだけに楽しさも増すはずです。来年もさらなる成長を期待しています。本当にお疲れさまでした。
そして、フィラメント代表取締役CEO角勝が総評を述べました。
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角:皆さん、本日はご参加いただき、誠にありがとうございました。9名の発表者はもちろん、会場に集まった皆様もありがとうございました。
今日、皆さんの発表を聞いていると、課題の内容がすごくクリアだったんですよね。 それぞれのチームが話す課題の質は様々で、世界中でみんなが解決しなくてはいけないものだったり、実はまだ課題として知られていないものだったりします。何気なく暮らしていたら絶対気づかないようなところにズバッと切り込んでいるものもあり、そこに気づけるような人たちにこの8ヵ月で育っているのが、何より僕にとっては嬉しいことです。
今後も、このプログラムをさらに充実させていく予定です。苦労や困難を乗り越えた時、新しい事業のアイデアが生まれ、会社にとって価値あるものとなります。
本日発表された皆さん、お疲れ様でした。来年も引き続きのご参加をお待ちしております。ありがとうございました。
来年、1期のメンバーがこれまで8ヵ月間練り上げた事業アイデアを常石グループでどのように羽ばたかせるのか、今後に期待しています!
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