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大事なのは「探究心」!クラフトコーラを開発して独立した伊良コーラ・コーラ小林さんに、好きなことで生きていく秘訣をお聞きしました

大手広告代理店を退職し、独自に開発したクラフトコーラ「伊良(いよし)コーラ」を販売するコーラ小林さん。3年前のキッチンカーでの出店にはじまり、2021年4月29日には渋谷・キャットストリートにも新店舗をオープンさせました。コーラが好きでこの事業を始めた小林さんに、自分の好きなことを見つけて突き詰め、発展させていくためにはどういったことが必要なのか、お聞きしました。(文/QUMZINE編集部、永井公成)

一番苦労したのは組織づくり

永井:本日はよろしくお願いします。もともと小林さんは大手広告代理店に勤めておられましたよね。退職して、コーラの製造と販売をするとなった時、職場や家族など周囲からの反対はなかったのでしょうか。

コーラ小林(以下小林):職場では、やはり人によって「うまくいかないんじゃない?」と言う人もいたり、応援してくれる人もいたりで、人によって様々というのが当時の印象です。家族は「自分がやりたいんだったらやってみたらいい」という反応でしたね。

永井:なるほど。そして2019年1月の会社設立から約2年で20名以上のスタッフを抱える組織へと成長されました。どのようにして仲間を巻き込んでいったのでしょうか。

小林:最初は応募ベースで採用していったのですが、うまくいかないことも多かったです。今はオフィススタッフについては、広く募集しつつ、自分から良いと思った人にも直接声をかけて手伝ってもらうようにシフトしました。アルバイトスタッフはこれまで通り広く募るやり方で募集しています。

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永井:どの辺りがうまくいかなかったのでしょうか?

小林:組織にとって必要なスキルと能力を持った人がなかなか来ないということですね。今までで一番苦労したのが組織づくりでした。ベンチャーなので最初は数人で回す必要があり、そのためには一人でなんでもできる必要があります。なので、最初期は器用になんでもできる人を求めていました。スキルや経験はあまり必要ないと思っていて、ある程度器用な人だったら丁寧に教えれば習得していけると考えています。

永井:なるほど、飲食業界やメーカーなどの直接的な経験はなくても自分で学んで身につけるという感じなのですね。今在籍されているのはどういったバックグラウンドの方なのでしょうか。

小林:今在籍しているのは広告代理店時代の後輩や学生時代の知り合い、学生インターンもいます。

美術館や香水のブランド、釣りにインスピレーションを受けた

永井:伊良コーラのブランディングについてお聞かせください。伊良コーラは、店のデザインや提供時の包装、制服などにユニークなデザインを使われていると感じているのですが、小林さんはどういったものにインスピレーションを受けておられますか?

小林:浅草寺や京都など昔の神社や寺などの建築物にインスピレーションを受けることが多いです。空間デザインでいうと美術館もありますね。例えば、近代美術館で展覧会を見にいったり、現代美術などのコンセプチュアルな作品を見た時にインスピレーションを受けます。他にもルイヴィトンなどヨーロッパのブランド、香水のサンタ・マリア・ノヴェッラなどは良いなと思いますね。マーケティングでいうと、生き物の生存戦略など、自然からインスピレーションを受けることがあります。あとは、釣りが好きなのですが、釣りをしていてマーケティングのヒントを得るようなことはありますね。

永井:幅広いことに興味があって、それをビジネスに活かすのは面白いですね。

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コロナ禍でも1対1で人々に喜びを

永井:つい先日までクラウドファンディングのプロジェクトを実施されて、締め切りまでに目標額の2倍の金額を達成されました。結果についての素直な感想や手応えについてお聞かせください。

小林:クラウドファンディングは3回目なのですが、以前に比べると少しずつ支援してくれる人も増えてきたと感じています。1回目の時は知り合いに支援をお願いしても、まだ伊良コーラが得体が知れないものだったので、断られたりもしました。今は支援していただけることも増えてきました。

永井:クラウドファンディングを振り返ってみて、今思われることはありますか?

小林:ここでしか買えないものだったり、単純な応援だけのリターンをもっと出してもよかったと思いました。中には「全額プロジェクトに回して欲しい」というリクエストもあったので、セミナーの開催や手紙だけなど、いただいた支援をプロジェクトに全額使えるようなリターンをもっと用意したらよかったのかなと思いました。

永井:クラウドファンディングはお金を集める以外にも認知度を上げたり、テストマーケティングをするという目的があると思いますが、お金を集める以外の目的もあったのでしょうか?

小林:色々な人を巻き込みたいという目的もありました。お金はもちろんですが、そちらの方が大きかったかも知れません。

永井:クラウドファンディングで集まった資金は渋谷・キャットストリートに新しくオープンされた伊良コーラ渋谷店の店舗設備導入のために使われるとのことですが、この時期にキャットストリートに新店舗を出展される意味について教えてください。

小林:コロナ禍で一番辛い時期だと思うので、1対1で人に喜びを届けるということを今だからやりたいと思って開店しました。コロナ禍でキャットストリートにそもそも人がいないので大変な影響があります。キャットストリートにオープンしたことで、いずれそこに店を構える色々な店舗とコラボレーションできたらと思いますね。

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自分が得意なことに着目すべき

永井:NHKのウェブメディアで、「熱中できて打ち込めるものがなくて社会にアウトプットできていない状態がすごく嫌で辛かった」というお話をされていました。

熱中できて打ち込めるものを仕事にしたいと思っている人は多くいると思いますが、それができない人も多くいると思います。そうした人にアドバイスをいただけますか。

小林:自分が好きなものやりたいものというよりは、自分が評価されること、得意なことという視点を持つことが大事です。とはいえ、すぐにはわからないと思うので、とにかくそれを見つけるためにいろんなことに手を出してやってみるということと、あとは「こんなことやってもしょうがない」「これは無理だろう」という余計な先入観はなくすということですね。とにかく世の中に出してみることです。

永井:大学時代に世界を回られたり、広告代理店時代に色々なプロジェクトに参画されていたというお話もありますが、その辺りも活きていたということでしょうか?

小林:それは逆に自分が得意じゃないことを明確にするために役に立ちました。釣りや魚が好きだったので、YouTubeの撮影もちょっとだけしてみたこともあったのですが、「これじゃ全然ダメだな」と思いました。色々やっているうちにたどり着いた、という感じです。

永井:ちなみに、YouTube以外にはどういったことに挑戦されたのですか?

小林:学生時代は趣味の領域ではあるのですが、ダンス、ギター、DJ、スケートボードなどそれっぽいことに挑戦していました。でもどれも努力しても全く上手くならないという感じでしたね。

永井:なるほど。「自分が評価されること、得意なこと」でいうと、小林さんの場合は独自のコーラを作ることがそれだったということでしょうか?

小林:最近「新しいことに対する適応力がすごくある」ということに気づきました。ゼロベースで新しいことに適応できることが強みなんじゃないかと思います。あとはワクワクするものを作り出すこと、製造の仕組みなどの「仕組みづくり」が得意なのだと思います。一点突破で得意なものがあるということではなく、割と得意なことが満遍なくあって、それは会社勤めの時はそこまで発揮されなかったのですが、自分が独立して事業をやる時に色々なことが実は得意で、それが混ざり合って一つの成果になったのでは?という印象があります。

自分の中で面白いと思えるかが大事

永井:小林さんのコーラづくりはネットで見つけたレシピを元にコーラを作ったところから始まったとのことですが、もし自分がネットでレシピを見つけても、その通りに作って満足して終わってしまうと思うんです。それをもとに独立するという判断はどのようにしてできたのでしょうか?

小林:3つあると思います。1つ目は作業自体、行為自体が楽しいと思えること。2つ目が執念深いところがあるので、次の次元に持っていきたいという探究心が強いこと。3つ目はコーラに対して可能性を感じていたということだと思います。とてつもない可能性を感じてワクワクしていたんだと思います。

永井:可能性を感じるためには、そのための判断基準を持っている必要があると思うんです。それについて詳しくお聞かせ願えますか?

小林:自分の中での「面白い」「面白くない」という軸だと思います。これがもしジンジャエールやお茶だったら面白いと感じなかったと思うんですよ。色々な要素を頭の中で考えて、潜在意識下で色々計算して面白いか否かを判断していたんだと思うんです。例えばコーラのマーケットの大きさ、ノンアルコール飲料のブームなど、色々なことを頭の中で気づかず計算していた可能性もあると思います。

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永井:なるほど。小林さんが面白いと思っている、その「面白さ」はどうやったら気づけて、他人に伝えられるのでしょうか。

小林:もしかしたら、人が気づいていないものに気づける能力が長けているのかもしれないです。例えば、コーラは黒くてよくわからない飲み物なのに、みんな何の疑問も持たずに飲んでいるのは不思議だと思うんです。「みんななぜ謎の飲み物を普通に飲んでるの?」みたいな感じで、誰も疑問に思わないのはどうしてなのかと思ってしまいます。「なんでこうなっているんだろう」と日常の疑問に気づくタイプなのかもしれません。昔から友達には言われていましたが、最近取材で聞かれるようになって自分でも認識するようになりました。

永井:疑問に思ったりすることがビジネスのヒントに感じる時もあるのでしょうか?

小林:もちろんあります。今練っているビジネスのアイデアに、同じように誰も気づいていないというか、「これをやったら面白いな」というものはあります。

動物的感性を研ぎ澄ます

永井:新規事業を作って起業しようとしている人にアドバイスをお願いします。

小林:自分が面白いと思えるかが一番大事かと思います。自分が面白くないと思っているのに他人が面白いと思えるわけがないと思うし、自分が面白いと思っているものは、自然に力を込められると思うし、周りの人も巻き込めるし、ワクワクするのはとっても大事だと思いますね。マーケティング資料などで「ここは可能性がある」となっても、マーケティングは裏付けでしかないので、答えを導こうとすればいくらでも後付けのエビデンスは集められてしまいます。だからこそ、自分がワクワクするかどうかが一番大事だと思いますね。

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永井:人によっては、面白いと思えることがない人もいるかもしれないと思ったのですが、そういう人はまずどこから入ったらいいと思いますか?

小林:面白いと思えるのにはある種の才能が必要なのかもしれないとも思いつつ、そういう人は好きなものに反応するアンテナが弱まっているのかもしれません。本当は自分が好きなものがあってもそれに長い間蓋をしている状態だと思うので、もっと自然に触れて、人間としての動物的な感性を研ぎ澄ませることが大事なのかなと思います。

永井:お話を聞いていると、「これってなんでなんだろう」と疑問を持つところから始めるのも大事なのかなと思ったのですが、いかがですか。

小林:それも大事だと思うんですけど、そもそも性格として疑問に思わない人って結構いると思うので、そういう人にはもしかしたら難易度が高いかもしれません。疑問を抱くために、無人島で1週間食べ物を持たずにサバイバルしてみるとか海外行ってみるとか、アマゾンに行ってみるとかして人間の感性を高めてみるのもいいかもしれません。

あとは、知識のシャワーを浴びてインプットを増やすということもいいと思います。自分の知識がある理由は受験勉強だと思っています。受験勉強は型通りの答えしか出せなくなるというデメリットもあれば、先人たちが明らかにしてきた知識が大量にインプットできるというメリットもあります。自分は受験にあたりいろんな科目を学んだことで、知識が大量にあるし、映画や海外旅行に行った時に色々な種類の知識のシャワーを大量に浴びて好きな分野が色々できました。そうした知識のシャワーがもしかしたらアウトプットに結びついているのかもしれません。

永井:なるほど。興味深いです。最後に読者へのメッセージなどありましたらお聞きしたいです。

小林:今、伊良コーラの組織を大きくしていきたいと考えています。伊良コーラで働くことに興味があればカジュアルにウェブサイトからお問い合わせいただければと思います。

永井:ありがとうございました。


【プロフィール】

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コーラ小林(小林 隆英)
株式会社GRAND GIFT 代表取締役


クラフトコーラ発祥人。大手広告代理店でイベントプランナーとして活躍する傍ら、大好きなコーラ作りの探究を進め、2018年に世界初のクラフトコーラ専門店・専門メーカー「伊良コーラ」を立ち上げる。
https://iyoshicola.com

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