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蛯原健 × KiNG × 村上臣(友情出演)× 角勝【緊急鼎談/テクノロジー思考とアート思考】#5/6

昨年立ち上がったLinkedIn(リンクトイン)編集部が主催するミートアップ、「これからの働き方、生き方」を通底のテーマにした、コラボレーション・イベント。 10/16(水)に丸ビル カンファレンススクエアにて、LinkedIn x Filament, inc.のミートアップが開催されました。


SNSは人々の課題を解決しているか?

角:お金がいっぱいあったら未来の到来って早くなったりしますか?

蛯原:物質的には多分早くなるんじゃないですか。ただ精神的には分からないですよ。むしろそこで孤独感にさいなまれ、フェイスブックがめっちゃ儲かるみたいなことはありうる。

村上:暇や孤独を解決する手段としてフェイスブックが生まれた説もありますけれども、結局ソーシャルメディアがやってるのって「寂しさを再生産すること」なんですよ。例えば人の「映え」みたいなものを見ると「私大丈夫かしら?」とか不安になったり、「みんなが呑んでるけど私誘われてない。超寂しい」みたいな。寂しさが再生産されるわけです、ソーシャルメディアによって。みんなが満足していればソーシャルメディアは大きくならないんですよ。それを見ることによって再生産が加速度的にされてるんで、フェイスブックが大きくなったとも言えます。

角:たしかにそうだ。

村上:だから「暇と孤独」という課題は解決してないんですよ。逆に増えている。

KiNG:増えてますね。

村上:エンドルフィンが増大している。拡散しているだけ。

蛯原:それを明確に意図してやってますからね。そういう設計をしている。

村上:ザッカーバーグの論文を見てください。ソーシャルネットワークに関する論文とか、AIに関していろんな論文を学術的に出している。

角:それを見ると、あえて倍化する方向性でアルゴリズムを組もうとしているってことですか?

村上:解決するという意思は見えないですね、僕からは。

蛯原:ひと昔前のソーシャルゲームもそうですよ。いかにアディクトさせて、儲けて、ソシャゲ廃人をいっぱい出してみたいなことをやってたわけで。

村上:一応社会問題化して業界自主規制という流れにはなりましたけどね。それはどこの業界でもそうですよね。

蛯原:大体成功しているビジネスモデルって、「サイコロ需要」をうまく使っている。消費者金融も基本的にはそうじゃないですか。いかに貸し込んでみたいなことを…ダークな話になるのでこのへんでやめましょう(笑)。

日本のアートマーケットをいかに仕掛けるか

KiNG:日本のアートはマーケットがすごい小さいんですよ。3000億円しかない。

村上:グローバルから見ると日本はアートマーケットがないって言われる。

KiNG:ほぼない。7、8兆円ある中で0.5%ぐらいなので、あまりにも小さい。その中で未来をどう生成するかという意味では、逆にじゃあやりますって思ったらできると思います。だってそれぐらいの規模だから。

蛯原:みんなやればいいのにっていう感じ?

KiNG:だったら仕掛けちゃおうかなって思わなくもない。みなさんだったらその規模を考えたらいけるんじゃないですか。

角:でもセンスがいるんじゃないですか? 才能のようなものが。

村上:ゴールをどこにするかでしょうね。ビジネスにするのであれば、フレームワークがあるわけで、それをうまく捉えたのが村上隆さん。外から見えるオリエンタリズムとか日本の立ち位置を分析した結果、売れるアートを逆算的に作って成功されたわけですよね。

蛯原:さっきの話でテクノロジーはだいぶ先の未来まで確定してるって言っていたので、アートはどうなんですか?

KiNG:霧の中みたいな感じですよね、でも逆に見えているといえば見えている。観測者しだいなので。

村上:相対性理論みたいな感じですね。

角:現代アートや現在のアートシーンは今これが主流みたいな流行り廃りはあったりするもんですか?

KiNG:もちろん。確実に一緒で。もとをたどっていけばふたつぐらいしか筋がなくて。

角:どういうことなんですか?

KiNG:『アートのお値段』を見たことある人はいますかね。ユーロスペースでやっている映画。それ見てください。そこに全部答えが書いてあります。

角:じゃあ、アートのマーケットもある程度コントロールされてるってことですか?

KiNG:例えばZOZOの前澤さんがバスキアの絵画を買ったのは二次市場なんですよ、オークションなので。作家さんから直接買ったわけではなくて、何回か購入履歴がついたものだから価値があるとされていて、ほかにも欲しい人がいますよって仕組まれて、引くに引けなくてあの価格を出すっていう。

村上:シードラウンドシリーズAみたいな(笑)。 スタートアップと同じで、誰が最初に投資したかでバリュエーションがあがっている。

KiNG:そういうことです。7兆8兆の市場の大部分はそれが占めていて。決して一次市場のアーティストさんに直接お金が入っているわけじゃないんですよね。

蛯原:日本は買い手も売り手も両方少ないんですか?

KiNG:少ないですね。私も美大卒業ですけど、私が卒業して数年後ぐらいから定員割れしてる学校はあるって言ってましたね。買い手も少ないから、アーティストは食べていけない。

村上:美大の半分が情報系、どちらかというとIT業界がデザイナーを求めていたりっていう流れがありますよね。

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角:僕、東村アキコさんの美大を受験するまでのマンガ(『かくかくしかじか』)しか知らないんですよね。

KiNG:もちろんそういう世界もあります。デッサンやるのはすごい大事なんです。けど、情報デザインとか、それをやらなくてもいいジャンルもある。多様化しているので、自分で絵が描けるよりも、ITツールをどう使うかやプレゼンテーションの方が大事って切り替えなきゃいけないのに、授業内容がスマホ以前のまま。

角:じゃあ絵がまったく描けなかったとしても、アートが作れる?

KiNG:もちろん。『アートのお値段』でジェフ・クーンズが言ってます。アシスタントが死ぬほど描いてるのに、ここを描いたのは私ですって言い張るんですよ。

角:さいとう・たかをプロみたいな話なんでしょうね。

村上:ゴルゴ13。あれもチームでやっているので。

角:レンブラントも工房で弟子が書いたりしていた。

村上:ファミリービジネスみたいな感じ。

アートとパトロネーゼのお話

蛯原:アートは人類にとってのR&Dだとすると。テクノロジーにおけるR&Dのパトロンは、もはや国家からGAFAとかに移ってるじゃないですか。アートの場合ってそういうことは起きてるんですかね。

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KiNG:アートは個人投資家がメイン、一番すごい人は3000億ぐらい投資してます。でもそれって一次市場のアーティストのためではなくて、二次市場以降で儲けるためのお金なんですよ。

村上:そういう意味だとアートに関しては一次市場に対するパトロンが今はあまりいないっていう状況が問題。昔は貴族がパトロンになっていましたけど。

KiNG:私この間、シャーロット・ロスチャイルドさんのコンサートと懇親会に熊本へ行ったんです。彼女はイギリスのロスチャイルド家の当主で、女男爵、バロネスなんですけど、ソプラノ歌手でもあって本当に素晴らしいんです。60歳を過ぎているんですけど、本当にピュアな表現をされていて。それで、彼女のおばあちゃんかひいおばあちゃんの先生がショパンだったという(笑)。

角:すごい話だ、びっくりした。

KiNG:だから「ショパンはウチが作りました」ですよね。日本は戦後にいろいろな権威が解体されてしまって。

村上:旧財閥創業家や貴族がパトロンでしたからね。

KiNG:財閥や貴族によるパトロンもそうだし、昔の文化のエコシステムって職人さんたちが任侠だったりとか、宵越しの金を持たないとか、そういう感じで大福帳での経済システムがちゃんとあった。それを日本は考え直さないといけない。

村上:だから日本が取り入れるべきなのは、相続税100%ですね(笑)。 人口の4分の1になろうとしている後期高齢者が、100兆を超えるタンス預金で一番お金を貯めこんでいる。何かあったら困るので抱えているけれども、相続税を100%取りますよって言ったら多分バンバン使うと思う。

角:生きているうちに使ってしまったほうが、もっと豊かな人生になるかもですよね。子孫もそれをあてにせずに自分で稼ぎましょうみたいな。まさにそこから未来が生成されていくんじゃないですかね。

蛯原:無理にエンディングに持って行こうとしている感じが…。

角:(笑)。今日参加している人たちもすごい面白そうなので、ちょっとインタラクションも最後やりたいなって気持ちがしてまして。

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