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経団連で議論白熱! AIより人間の理解がうれしい―― 「エンジン!日本の未来と出会う場所」レポート

経団連と財務省・財務局、金融庁、経済産業省の共催で、シンポジウム&ミートアップ「エンジン!日本の未来と出会う場所」が2019年1月24日に開催されました。副題は「オープンイノベーションの更なる深化に向けて」。オープンイノベーションの推進や地域経済エコシステムの形成に日々奮闘している企業や行政の担当者が、北は北海道、南は沖縄まで、300名近くも参加して会場は満員御礼でした。

会場は経団連カンファレンスセンター。俳優で株式会社リバースプロジェクト代表の伊勢谷友介さんがトップバッターとして創業手帳株式会社 代表取締役社長 大久保幸世氏との「特別対談」に登壇、「宇宙人の視点で地球を見ると」という切り口で会場を沸かせました。続いてのパネル1「大企業とスマートニッチ・スタートアップ企業との連携」は、「ポケモンGO」のナイアンティック アジア・パシフィックプロダクトマーケティング シニアディレクター足立光さんがモデレーター。大企業はどう動くべきか、大企業にどう向き合うべきか、各パネラーがそれぞれの立場で活発に発言していました。

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■「地域エコシステム」の現在と未来。企業、金融、行政の担当者が議論

シンポジウムを締めくくったのが、パネル2「オープンイノベーションと地域経済エコシステム」。オープンイノベーションを生み出すには各地域での経済エコシステムが有効的に機能することが重要です。それを踏まえ、各地で活躍している企業、金融機関、行政機関のみなさんが語ります。

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モデレーターはフィラメント代表取締役CEO角勝さん。関西地方の読売テレビ制作番組「そこまで言って委員会」の進行スタイルを借り、3つのテーマについて各パネラーのキーワードを発表。そのキーワードから発言を始めるスタイルで進みました。その模様をかいつまんでレポートします。

パネラー紹介
銭本 慧 氏(合同会社フラットアワー 代表社員)
冨田 勝 氏(慶應義塾大学先端生命科学研究所 所長)
安喰 哲哉氏(株式会社山陰合同銀行 執行役員地域振興部長)
今井 早苗氏(株式会社セールスフォース・ドットコム 執行役員)
寺西 康博氏(財務省四国財務局徳島財務事務所 企画係長)

モデレーター
角勝氏(Filament,Inc. CEO)

パネルディスカッションは、角さんの自己紹介から。「なぜ大阪市役所に入ったか。世の中を良くしたかったから、ではなくて、ラクができると思って」と、場の空気を和ませる話でスタート。「でも公務員はラクじゃない。いろいろ大変な思いをしていたとき、大事件が起きます。子供が生まれたんです」。子供のために世の中を良くする、これが本来の生きる意味だと気付いた角さん。そこで、自ら手を挙げてイノベーション創出支援の部署に異動。「公務員がスタートアップに“やれ”と言っても説得力がないので、世の中を良くするために力を尽くそうと思い起業したのが4年前でした」。

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直前のパネル1について「あまりにも面白くて、参加したくてうずうずして聞いていたんです。一つだけ言わせてください」と角さん。パネル1でモデレーターの足立さんがパネラーにした質問「オープンイノベーションの最高の成功事例はなんですか」を引き合いに、「最高のオープンイノベーション事例がまさに、足立さんが勤める会社・ナイアンティックの『ポケモンGO』」だと指摘します。任天堂という大企業が大事に育ててきたIPと、ナイアンティックというベンチャーの位置情報ゲームノウハウ。お互いのリソースを出し合ったからこその実現で、「オープンイノベーションで生み出そうとしていないから、オープンイノベーションと言われない。オープンイノベーションはあくまで手段。目的ではないんです」と紐解きます。

 それを踏まえ角さんは、このパネル2ではオープンイノベーションが目的化しないよう「オープンイノベーション」という言葉を使わないと宣言。「オープンなプロジェクト型ビジネスを実践されている方々に知見を披露してもらい、どうしたら地域のつながりの中で新たなビジネスを創っていけるのか」に迫っていくことになりました。

「みなさんに聞いた一問目の質問はこちら!」

「あなたが地域で果たしている役割をひとことで言うと?」

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この質問に対して皆さんの答えは……。

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「着火剤」(寺西さん)
寺西さん「燃焼を助ける、地域に起こっている火をより燃焼させる、それを着火剤と表現しています。徳島県吉野川市の職員と手を組み、エディブルフラワー(食べられる花)を活用した新産業を作ろうとしています。それを進めるうえで、地域のさまざまな主体が入るほうが確実にプロジェクトの価値が上がります。その火がバラバラに燃え上がるより、一同に集まって燃え上がれば明らかに価値が上がります。その着火剤の役割をわたしは果たしたいんです」

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地方創生☆政策アイデアコンテスト2018で地方創生担当大臣賞を受賞

角さん「財務省の職員が着火剤の役割を果たしていると。熱意大事ですね、さすが着火剤!」


「つなぐ」(今井さん)
今井さん「南紀白浜にサテライトオフィスを作ったのですが、(東京のスタッフが)釣りのテクニックを教えてもらうことなどで社員の気持ちが変わりました。仕事の効率性が上がり、無駄な会議が減っています。飲み会もウェブ会議でやっていて、3時間もみんなで盛り上がっていたそうです」

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和歌山県のWebサイトもセールスフォースの事例を紹介

角さん「僕、やって盛り上がったことないですよ。セールスフォースのテクノロジーがすごいから盛り上がる?」


■「マーケットとの接点」(銭本さん)
銭本さん「長崎県対馬で釣った魚をSNSなどを使って直販しています。これまで、捕った魚を水揚げするだけでしたが、直販を始めてから消費者の反応が漁師のやりがいになっています。自分が生産したプロダクトが誰かのためになったとわかった瞬間、自分の仕事に誇りを持てます。飲食店などの声をニューズレターにして漁師さんにフィードバックしています」

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「持続可能な水産業の実現」をミッションに掲げる合同会社フラットアワー

角さん「地域をつなぐ、地域と都会をつなぐ、に対して、マーケットとの接点、情報交流の接点という意味が加わったんですね」


■「アレンジャー」(安喰さん)
安喰さん「地域の課題問題を解決するために、地域商社とっとりを鳥取市で作りました。我々の地域には加工業者がたくさんいらっしゃいます。それらの業者つなぐことをミッションとしています。リスクを取って事業を起こしました。我々の地域で人材をどうやって作っていくかも大きな課題。地元の子供たちを育てようとしています。私塾を作り、観光学、論語を学んだり、地域の歴史や風土、偉人を学んだりしています。ほかにも1カ月の英語圏への短期留学など。最終的には人につながるので、人を小さい時から作っていこうよ、と取り組んでいます」

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地域の事業者・生産者のサポートする地域商社とっとり

角さん「いろいろな会社をつなぐところから、人をつくって人をつなぐところまでやられているから、アレンジャー、ということなんですね」


■「地域のためではなく世界と勝負」(冨田さん)
冨田さん「地域創生というと、自分たちの地方をどう活性化させるかを考えますよね。よくあるのは、他の地域にある工場を誘致すること。すると一瞬で潤う。それを地域同士でやると、日本国内で見るとプラスマイナスゼロ。こんなことをやるのはダメだと言い続けるのが僕の仕事です」

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第68回河北文化賞を受賞した冨田氏

角さん「めっちゃいいこと言いましたね! サバイバルゲームをやったところで、それって子供たちに残したい未来なのかと」
冨田さん「そこで世界に向けてなにができるかを考えようと。山形県鶴岡市から70億人を対象にした世界に貢献する。世界をマーケットにしてうまくいくと、結果として地元が潤う。豊田市のトヨタ、日立市の日立、を目指さないとダメだと言い続けています」
角さん「すばらしい! つないでいく、が結果として世界にもつながっていく。そういう役割をみなさんは担ってらっしゃるのかな、と思いました」


■「人間を理解し理解される」でプロジェクト型ビジネスを創る

次のQUESTION.2では「あなたが携わっているプロジェクトが成功した(しつつある)もっとも重要な要素は?」、最後のQUESTION.3は「あなたのプロジェクトを他地域で再度行うとしたら最初にするアクションは?」と続き、盛り上がりをみせたパネルティスカッションでした。

パネル2は角さんが次のようにまとめ、締めくくりました。

「みなさんがやってらっしゃることは、人間が一つのビジネスのパーツとしてどう立ち回っていくのか、人としての関係性の流れをどう作っていくのかが基盤になっています。人間がAIより優れていると僕が思っているのは、人間は人間にとっての最高のインターフェースだという点です。人間のことは、人間が一番わかっていて、しかも人間に理解してもらえることが一番うれしい! これが地方でビジネスを創っていく、プロジェクト型のビジネスを創っていくための一番基礎的な部分なのかと思いました。そして、みなさんのご発言から、謙虚な学びの姿勢をもって進めることの大切さ、尊さを改めて感じました。みなさんありがとうございました!」

■仕掛け人の財務省担当者「パネリストの経験を引き出すモデレーションに感謝」

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 終了後、イベントの仕掛け人の一人であり、司会も務めていた財務省 大臣官房地方課 総務調整企画室長の小林剛也さんにお聞きしたところ、日本でいま最も必要だと考えるのは「イノベーションと地方創生」。産業界の代表である経団連と組み、多様な参加者が集まる信頼のネットワークを作りたい、という思いから開催したそう。「イベント終了後、多くの登壇者と参加者同士がものすごい勢いでコンタクトを取り始め、連携を開始しておられるのを見て、開催して良かったと素直に思っています。今後も地方でどんどん展開していきます!」と語る小林さんは、大きな手応えと、さらなる今後の展開に確信が得られたようです。

 モデレーターを務めた角さんの印象も、小林さんにお聞きしました。出会いは昨年2018年11月に開催した「QUM BLOCS@大阪」への参加。テンポよく進行する「そこまで言って委員会」方式が面白く、しかも地方創生の深くまで斬り込む角さんのモデレーションに感銘したそうです。「角さんも運営に加わっていただいた『エンジン!』では、パネリストの皆様のご経験を最大限引き出すモデレーションをしていただき感謝です」と、イベント成功の立役者の一人である角さんの労をねぎらいました。


ライター:生崎文彦(いくざき・ふみひこ)

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(19/02/14)

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