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カリフォルニア・LA在住の起業家 下村拓哉(しもたく)さんが語るリクルーティングに必要な「人間力」について

フィラメント公式の雑談タイム「フィーカ」に、DeNAや某大手外資系IT企業で人事を経験し、今年グローバルな採用を支援する「Lraough(ラフ)」を設立した「しもたく」こと下村拓哉さんにお越しいただきました。多くの人が知っているようで知らない人事の仕事についてお話いただいたり、面接をするはずが全く違った方向で着地したりとユニークなお話をお聞きしました。(文/QUMZINE編集部、永井公成)

世界中で働いているTech業界コミュニティを運営

下村:下村拓哉と申します。幼い頃から「しもたく」と呼ばれています。よろしくお願いします。海外は3カ国目でして、イギリスに2年、シンガポールに2年、そしてアメリカにきて今年で5年目となります。去年子供が生まれて、今年に入ってからアメリカで起業出来る準備が出来たので、前々からやりたかった事業をやろうと思い2021年1月にLraough(ラフ)という会社を立ち上げました。同時に、ロサンゼルスの日系企業子会社のHRマネージャーもやっております。

角:Lraoughは何をする会社なのでしょうか。

下村:2つあります。1つは、toCとして、海外に住んでいるエンジニアやデザイナー、アントレプレナーの日本語コミュニティを作っています。1月に登記したばかりですが、すでに30名を超える方に参加頂いてまして、ロサンゼルス、サンフランシスコ、バンクーバー、ニューヨークをはじめとして、シンガポール、バングラデッシュなどのアジア周りのほか、ヨーロッパにお住まいの方にもジョインいただいています。日常的にはSlackを使ってTech系の話題を提供いただいたり、現地での就職状況をインタビューしてまとめるなど、コンテンツを盛り上げて行きたいと考えています。もう一つは、toBとして、エンジニアやデザイナーを募集しているアメリカの会社に対して今まで培ったリクルーティングの知見を用いて採用や、オンデマンドでリクルーティングのお手伝いをするサービスを提供しています。実はつい数時間前に初契約が結べたばかりでとっても嬉しいです!(笑)

角:契約が取れたのはアメリカの会社ですか?

下村:日系のアメリカ現地法人から契約をいただきました。アメリカでエンジニアやデザイナーを雇いたいという要望があり、そのリクルーティングのお手伝いをすることになりました。

角:それはどういう感じのオファーなんですか?日本人を募集しているのか、あるいは日本語がわかる人なら誰でも良いのでしょうか。

下村:日本人でなくてもよく「日本語が話せれば良い」という感じです。

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長い目線で採用活動をすることも

角:人事の仕事って意外とどんなことをするのかイメージできない人が多いと思うんですよね。しもたくさんから簡単に教えていただけますか。

下村:人事の仕事はある程度の規模になってくると必ず必要な機能になります。大きな会社だと人事だけで数百名いると思います。

仕事内容を大きく分けると「攻めの人事」と「守りの人事」に分けられると思います。制度を作ったり、みなさんが辞めないような施策を講じたり、給与を払ったりと、いわゆる日本の人が思い浮かべやすい人事が「守りの人事」ですね。その一方で、僕が得意としてきたのは「攻めの人事」で、これは会社をドライブするのに必要な人材を外部から見つけてくることです。GAFAをはじめとした外資系の場合「攻めの人事」を内部で持つことが多く、所謂「ダイレクトリクルーティング」と呼ばれる採用のスタイルを取っています。その第一線に立たせてもらったのが2013年くらいで、DeNAではそのチーム作りをやらせて貰いました。会社の看板を自分達が背負ってスカウトしに行くので、会社=自分のような感じでガンガン声をかけていきます。「こんにちは」から始め、相手の好きなところ、気になっていること、課題となっていること、家庭状況などまでも伺って、「うちに来てこのポジションをやるのがいいよ!」とポジティブに巻き込みをしていくのがリクルーターの仕事です。それをずっとやってきたので「ダイレクトリクルーティング」の分野で起業しました。

角:「最初にたくさん声をかけておいて、繋がった人は繋がり続ける」といった風なコツがあると思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか。

下村:メインの仕事は「リクルーティング」なのですが、本当に友達づくりのような感覚でやっていたこともありました。当時採用のスカウトをたくさん送っていた時にあった話なのですが、レジュメを見て自分と同じ「たくや」という名前で、しかも同じ誕生日の人がいたんです。その人と面接をしたのですが、全く面接にならず(笑)、ただひたすら30分間誕生日と名前が一緒ということを話していました。その人とは今でも日本に帰ったら毎回飲みに行く仲となり、一生の友達だと思っています。こういうやり方をするリクルーターは稀だと思いますし、短期で見ると仕事になってない様な気がしなくもないのですが、彼に紹介してもらった人でその後採用できた人とか、その人が別の人を連れてきてくれたりしたので、自分はそういうところに時間を割いて、長い目で採用をできたらいいなと考えていました。「しもたくが声かけた人が5年後に入ってくれた」という話もありましたね。

一番最初の人あたりだけは悪くはないだろう(笑)という自信はあるので、もちろん「嫌いだ」と言われる事もあるんですが「一番最初に会った人が好印象だったからそのあとその会社を選びました」というケースは往々にしてあります。良い会社でリクルーティングできれば、すごく楽しいリクルーターライフがおくれると僕は感じているので、これからの会社はそういう環境づくりも大切になってくるでしょうね。

角:会社の看板を背負ってる人が、接してて気持ちがいい人であることが重要なんですね。

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リクルーターは「ロジカルさ」、「人懐っこさ」、「その人自身の経験値の深さ」が大切

下村:リクルーターはどんな人が向いていますか?とインタビューで聞かれることがあるのですが、僕は語彙力がなくてよく「人間力です」とまとめてしまいます。「人間力がない人はやらないほうがいいだろうなぁ」というくらいで考えています。

角:なるほど。
では、人間力を細かく3つに割って説明すると何ですか?

下村:「ロジカルさ」、「人懐っこさ」、「その人自身の経験値の深さ」ですかね。それこそ海外に行った経験だったり、過去に「いじめ」などの辛い経験をしたこともあるんですけど、色々な経験を持ってることが人事をする上でとても大事だと思います。

リクルーティングの観点だけでいうと、面接官と話して30秒で面白くないと思われると基本的にはその後ずっと詰まらない時間が過ぎていくわけです。どうにかして楽しく面白くなってもらう、「しもたくって人の話聞いたことあるな」、「しもたく、私も知ってるよ」と感じてもらいながら、こちらが知りたいこともちゃっかり持って帰ることがキーですね。

角:しもたくさんの「いじめられていた」という経験はどこかで活きるんですか?

下村:マイノリティの人と話するときは活きると思います。大人になると挫折している人の方がエッジが効いてて面白いと個人的には感じています。サラリーマンはどちらかというと普通の人が多いですけど、アントレプレナーやエンジニア、デザイナーは、エリートキャリアの人ももちろんいますけど、そういう人たちばかりじゃなくて反骨心や起業家精神はそういう経験から生まれてくるかもな。とか、今更ですが最近『鬼滅の刃』を読んで実感したりしています。痛みを理解して乗り越えていく、みたいな。

角:『鬼滅の刃』で思うんだ。なるほど(笑)

強いリクルーターとは

佐藤:ちなみに以前僕がいた会社には人事専任者が少ないんです。多分2、30人しかいなくて、「守りの人事」の人がメインです。「攻めの人事」は各部門でやります。なので採用は自分たちで動く必要があります。研究者やエンジニアでネットワークが広い人は人事部の名刺を持って色々な大学をまわったりするんですよね。僕もデザイナーとして大学まわりをしてました。僕は美大卒じゃないので美大以外もまわるようにしてたんです。そしたら、工学系卒がやたら増えた。

下村:その形も一つの良い型だと思います。人事部の中にリクルーティングの部署を持つことも大事なんですけど、リクルーターがどこと仲良くすべきかというと、大事なのは外だけじゃなく中なんですよね。社内の事業責任者とどれだけ深い関係になれるかがキーになります。事業責任者やその上の人たちがどんな会社づくりをしていきたいか、どういう事業の方向性に持っていきたいかと事業経営者レベルで理解できているリクルーターはとても強いんですよ。会社のWillとか未来も語れるし、どんな人材が欲しいかも理解できるし、漫画ばっかりですがキングダムの参謀ポジションにいるのが人事だと僕は思ってて。中の人を動かしたり、外から中の人が強くなる人を持ってくるみたいな動きができるかどうかが大事なんですよね。HRBP(ヒューマンリソースビジネスパートナー)と呼ばれる職種はまさに中にフォーカスしていますが、これに外部から強い人材を持ってこれるリクルーティング力が加われば鬼に金棒です。

佐藤:人事部にいる人って将来を期待された人出世候補の人が多いんですよ。人事部から次のステップで経営企画や戦略に行く人が多いです。

角:企業の最小構成単位は人ですからね。人との組み合わせが企業な訳で、どういう人を取るかでどういう会社になるかは決まってくるというのは納得がいきますね。

下村:それでいうとフィラメントはむちゃくちゃうまいなと僕は外から見て思ってますね。なんと著名な人間を角さんは引っ張ってくるんだろう、よくやるなあと。世間からの見え方とかすごく大事だなと思っているので、そういう意味ではフィラメントうまいなと思ってたんですけど。

佐藤:大阪という地方にいるから、黙っていると埋もれちゃうんですよね。定期的に発信しないと埋もれちゃうので、その焦りはあります。最近やっと「東京の会社だと思ってた」という人が出てきました。急に東京の会社から「今から来社いただけますか?」と言われたりすることもありますね。そこはCOOの渡邊さんが東京にいるので、フォローしていただいていますね。

角:やっぱり東京にいないと、すぐ蚊帳の外になってしまうというのはさっき佐藤さんがおっしゃった通りですね。イベント登壇依頼が来て、「いいですよ」と答えても「東京じゃないんですか、すみません」と言われることもありますね。オンラインで登壇することは普通になったと思いますけど、そうじゃないところもまだあるみたいなんですよね。
あの感覚のアップデートが早く進めばいいなとは思っていますけどね。

下村:世の中の考え方がリモートワーク中心になってきて、地方だからこそ良いということもあるかと思います。フィラメントは関西にVCやアクセラレーターが沢山あれば埋もれてしまう可能性もあったかとは思うんですが、競合が少なくて伸びたのではないかなと勝手に分析しているんですけど。

角:おっしゃる通りです。関西では競合をあまり意識しなくて済みますし、だからこそ独自の価値観を発展させてこられた面もあります。それに東京に比べて大阪ではメディアを意識してアクションしている人があまりいない気がするんですよね。

下村:そうなんですよね。どこでエッジを効かせるかというところはとても大事で、自分もTech、海外、リクルーティングという3軸を極めてそれ以外は知らないというパラメータの振り方をしているからまだ気にかけて頂いているとは思うんですが、そういうものを持ってないと今後厳しいかなという気はしてますね。

角:なるほど。3軸を極める、3つくらいタグが付くくらいがいい感じなんですか。

下村:元々はT型人材というように左右と上下だけで良かったんですが、それに奥行きを持たせて3軸かなと勝手に思っています。

角:ハイヤリングするときに3軸がある方が決まりやすいということはあります?

下村:そこまで絶対的なものではないですが、ただ便利かなとは思います。1軸だけでも極めてる人は本当に尊敬しますし、2軸の方が3軸より不利ということは全くないです。逆に3軸やろうとするとそれぞれが中途半端になってきたりしますし。国内にいたら全く芽が出ない人間だったと思うので、それもその人自身の生き方だと思います。僕はそのやり方があってたというだけです。タグ付けしていると引っかかってはもらいやすいですかね。

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角:なるほど。わかりました。最後にLraoughからのお知らせはありますか?

下村:今はコミュニティ作りに力を入れているので、グローバルなエンジニア、デザイナー、アントレプレナーなどTech業界にいる人には世界中からお声がけ頂きたいと思います。何かしらのアウトプットは提供できるかと。

グローバルなTechプロフェッショナルと繋がれることで、孤独な海外生活に彩りを添えることも出来ると思いますし、実際にモチベーションも維持出来るという声もあり、そういう意味では良いコミュニティが創れたな感じています。ぜひそういう人がいたら参加して欲しいです。
toBの方ではグローバルな採用を展開しているTech系の企業やスタートアップなどあればご相談に乗れると思います。グローバルに事業をアクセラレートしたい起業家、人事責任者がいらっしゃいましたら日本の会社でもお手伝いできますので、気軽にお声がけいただけると嬉しいです!

角:ありがとうございます。


【プロフィール】

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下村拓哉(しもたく)
Lraough LLC. Founder/CEO

1985年生まれ、大阪府出身。立命館大学卒。
大学在学中から海外を旅して人の繋がりの大切さを知る。2年で脱サラ→イギリスで起業した後日本で廃業。某大手外資IT企業の中でリクルーターとして働き、メガベンチャーや大手企業の本社、海外子会社で人事として従事。3ヵ国(イギリス・シンガポール・アメリカ)約10年間の海外経験とTech/Recruitingを武器に、2021年Lraoughをカリフォルニア@LAで創業。現在は「面白い人と人を繋ぐ」を生業としている。




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