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企業が「強いブランド」を育てるべき確固たる理由 ~レノボ・ジャパン越智道夫さんに教わるブランド・エクイティの重要性~

「ブランドがビジネスにもたらす価値を説明してください」
と言われたら・・・あなたならどう答えますか?


こんにちは、フィラメント/QUMZINEの平井です。
みなさんいつもQUMZINEをお楽しみいただきありがとうございます。

僕らの会社フィラメントが社内公式雑談タイムと題してほぼ毎日実施している「リモートフィーカ」。今回はそんなリモートフィーカのスペシャルゲストとして、レノボ・ジャパンのマーケター越智道夫さん(マーケティング統括本部 コンシューマーマーケティング本部長)にお越しいただきました。

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宣伝・マーケティング業界の方ならご存じかもしれませんが、実は越智さん、ロレアル、ユニリーバのLUX、資生堂といった名だたるグローバルブランドのブランドマネージャーを渡り歩いて来られた知る人ぞ知るめちゃくちゃスゴイ方なんです。(※余談ですが、越智さんは僕のガチ地元の先輩ということがこの日判明しました)

ちなみにロレアル在籍時には、日本で月100本しか売れなかったヘアオイルを、中身は変えずにパッケージやマーケティングのやり方のみ変えてリローンチしたところ、なんと2ヶ月で20万本売れる大ヒット商品になったそう。

現在はPCメーカーのレノボ・ジャパンで働きながら、大学や社会人向けにマーケティング講座をやられていたりもするのですが、今回はフィラメントの“面白がり力”に共感した越智さんが、フィラメント社員だけに向けた「ブランドマネージャー育成講座」を特別に開講してくださいました。大感謝。

ということでQUMZINE読者のみなさんにも、越智さんの特別講座をさわりだけちょこっとおすそ分けしたいと思います。

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強いブランドは「利益」をもたらす

ブランドマネジメントは難しい。
なぜならブランドをマネジメントすることがビジネスにどう影響するのかを説明するのが非常に難しいからである。しかしシンプルにビジネスサイドの人に説明するのであれば「利益が出るから」というのが正しい答え。

強いブランドほど不況の時でも利益率は下がらない。そしてブランド力が高いほど利益の回復も早い。景気が良いときに利益が出るのは当たり前であり、悪い時にも利益の回復が早いというのが強いブランドの証拠とも言える。その傾向はリーマンショックのときにも見られた。強いブランドを持つとは、すなわち「利益を出す」からなのである。

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実はこのあたりの本質をしっかり話せる人は意外と少ない。“社内においてブランドが果たす役割”といったパーパス的な話をする人もいるが、一方で「パーパスでメシは食えない」と言うビジネスサイドの人も非常に多いので、ブランドを持つ理由を説明するときは「利益が出るから」と伝えるのが一番良い。

「発散型」のブランドと「吸引型」のブランド

ではなぜブランドを強くするのか?

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「発散型」のブランドとは弱いブランドのこと。いわゆるモテない男と同じ。モテない男ほど、いい服を着て、自分から相手のところまで行って少しでも話をさせてくれないかと交渉して、プレゼントを買って、いいクルマを買って送迎をする。これをやると非常にコミュニケーションコストがかかる。ブランドでいうと「モテないブランド」。

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「吸引型」のブランドとは強いブランドのこと。相手が勝手に寄ってくる状態。つまりコミュニケーションコストが殆どかからない。この状態をいかにつくるか、これが強いブランドをつくる意味。

ブランド・エクイティの3分類

人間の脳に入ってくる情報はどういった分類がなされているのか、つまりどういったブランド・エクイティ(ブランドの価値)に分類されるのか?

それらは「想起性」「意義性」「差別性」の3つに分かれる。

想起性
ブランドがぱっと思い浮かぶか
・Top Of Mind(TOM)
・非助成想起

意義性
ブランドがニーズや嗜好を満たしているか
・ニーズにあっているか
・ブランドへの親和性

差別性
ブランドに違いを感じるか
・製品機能
・イノベーション
・トレンド

日本企業の多くは「製品機能」の違いだけにフォーカスしてやろうとする傾向が強く、その製品が「イノベーション」や「トレンド」を感じるか?という部分に関しては非常に弱い。

これら想起性・意義性・差別性の3つを組み合わせてみると色々とビジネスに貢献する値が見えてくる。

*参考論文:The Meaningfully Different Framework
https://www.ashokcharan.com/Marketing-Analytics/documents/MeaningfullyDifferentFramework.pdf

ブランディングがビジネスに与える貢献値

ビジネスへの貢献値を伝えるときに大事な指標が2つある。

・ブランド力(POWER)
個数をたくさん売って、シェアを取るときに見る指標 *金額は関係ない

・プレミアム(PREMIUM)
高い値段で売れるブランドか?高く売れる素養を持っているブランドであるか?の指標

「想起性・意義性・差別性」と「Power(世の中のシェアを取ろうとすること)・Premium(金額を高く売ろうとすること)」との関係性は非常に大事。

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例えば、「Power」つまり数を売ってシェアを増やそうとする場合は「意義性」と「想起性」が一番重要で、逆に「差別性」はそこまで重要ではない。
多くの企業がなんでもかんでも「差別性」を出そうとするが、実はすごく安くてコモディティなものは「差別性」ではなく、「意義性」と「想起性」なのである。(プロダクトの差別化はそこまでPowerに影響しない)

一方、「Premium」つまり価格に影響する要素として「想起性」はたいして影響しない。(知ってもらうためのアクティビティはそこまで必要ない)むしろ「意義性」と「差別性」をどのように伸ばしていくかを考えていかなければPremiumなブランドにはならないということが言える。

ブランディングに対するこのあたりの考え方は非常に曖昧になっている。
自分たちのアクティビティがなにをしているのか?どんなことをしているのか?ビジネスのどこに影響しているのか?ということを答えられる人はあまりいない。しかし、こういったことがきちんと整理されてくると、企業がブランディングに取り組む意味がすごく出てくるのである。

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いかがでしたか?レノボ・ジャパン越智さんの特別講座。
今回はさわりだけのご紹介でしたが、ブランド・エクイティについてもっと詳しく知りたくなったのではないでしょうか。

越智さんは色々なところで講座を持たれているので、もし直接受講できるチャンスがあれば、是非みなさんも思い切って飛び込んでみてください。(越智さんめっちゃいい人です)

越智さん、大変勉強になりました。ありがとうございました~!!!
by フィラメント一同


【プロフィール】

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越智 道夫(おち・みちお)氏
レノボ・ジャパン コンシューマーマーケティング本部 本部長 部長
NECパーソナルコンピューター コンシューマー事業本部 マーケティング部長
ミイダス 執行役員CMO


大学卒業後、日本の化粧品メーカーに新卒で入社するもグローバルな経験を求め退社。
日本とオーストラリアのロレアルで13年間マーケティングに従事した後、ユニリーバではLUXのシニアブランドマネージャー、そして資生堂ではグローバルHQのブランドマネージャーを歴任。
約20年の化粧品業界におけるマーケティングやブランドマネジメント経験の後、現在はレノボ・ジャパンにて、コンシューマー マーケティング本部長としてLenovoとNECの2つのブランドマーケティングを統括。
また、HRテック企業のミイダスにて新しい業界でのマーケティングにも挑戦中。
その他、マーケティングやブランディングの講演やコンサルタントとしても活動中。

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