“秘書は経営者のコーチだ” 世界一明るい視覚障がい者として著名なコンサルタントの秘書 ~涌井里菜さんインタビュー~(1/2)
世界一明るい視覚障がい者として著名なコンサルタント 成澤俊輔さん。現在は50~60社のコンサルティングする超多忙な毎日を送られています。今回は、成澤さんの秘書を務める涌井里菜さんにインタビューを敢行!
営業支援、勤務管理、情報収集など多岐にわたる仕事内容や仕事の進め方から、涌井さんと成澤さんならではの仕事の進め方「ナリクション」(!?)まで盛りだくさんの内容です。上司あるいは部下との仕事の進め方に悩む方、秘書業務に興味がある方、ぜひお読みください。(文/土肥紗綾)
■現在に至るまでのキャリア
QUMZINE編集部(以下、Q): 本日のゲストは涌井里菜さんです。涌井さんは、世界一明るい視覚障がい者として著明なコンサルタントでいらっしゃいます成澤俊輔さんの秘書を務められています。
涌井里菜(以下、涌井):実は取材を受けるのは初めてで、今めちゃめちゃ緊張していまして(笑)。それに加えて、成澤さんの隣にいて私が一言喋ると大体成澤さんがその補足をしてくれちゃうので、結構喋らずに生きてこれたっていうのが今まであったんです。けど、「自分からも発信していけるようになったら、よりお互いのシナジーを出していけるんじゃないかな」と最近思うようになってきたので、ちょっと自分でも喋っていこうと思っています。
Q:まさにこちらのオンライン秘書シリーズがそういう企画なんですよ、これが!ぜひ発信をお願いします。
早速ですが、現在に至るまでのキャリアを教えて下さい。
涌井:大学4年のときに内定先のIT企業の社長が代表をしている障がいを持っている方の就労支援をしているNPOにインターンに行かせてもらって、そこで成澤さんといっしょにお仕事をさせてもらったのがきっかけです。
成澤さんと一緒にいるといろいろな人にお会いする機会があったり、いろいろな場所に一緒に行かせてもらえたりするのがすごく新鮮で。もともと新しいことを知ったり体験するのは好きだったので、これはすごく楽しい仕事だなと感じました。
成澤さんと働く中で必要とされる経験をすごく実感したんです。何かして「ありがとう」と言われることはあると思うんですけど、「本当にあなたのおかげでめっちゃ助かった!」って言われる機会ってなかなかないじゃないですか。
私はそういう機会があんまりなかったと感じていたのと、あとはとても自己肯定感が低かったので感謝されたとしてもそれに気づけていなかったところもあったんだろうなって今振り返ると思います。
そんな感じだったので、成澤さんから常に「何かしてもらって助かったよ」とか「ありがとう」というのをすごくすごく受け取る機会があったので、こんなに何もできないって思っていた自分だけど役立てることがあるんだなって思わせてもらったのはありがたい経験でした。
Q:涌井さんがそのように感じられたというのは、ボスである成澤さんが感謝などの気持ちを言語化して伝えられることが多いということでしょうか?
涌井:そうですね。成澤さんは言ってくださることが多いです。
Q:思っていても、照れくさいのもあってうまくそういうことを言語化できない方もいる中で、ちゃんと言語化して伝えてくれる人はすごくいい上司ですよね。
涌井:本当にそう思います。多分、成澤さん自身がアウトプットをする方法としてチャットやメッセンジャーではなく、喋るか電話なので、主にテキストではなく声に出して相手に伝えるというのもあるかもしれません。
あとは成澤さんは視覚障がいがあるので、相手の表情から察するみたいな部分がない分、より言語化されることは多いんじゃないかなと思います。
Q:なるほど。涌井さんは大学でも福祉関係を専攻されていて、インターンを経て現在に至るということでしょうか?
涌井:全然、福祉とかは関係ない学部でした。
内定先はIT企業でエンジニアか営業になる流れだったんですけど、NPOでインターンをするうちに「成澤さんの下で働いていきたいな」とすごく思うようになったので、成澤さんに「一緒に働きたいのでなんとかならないですかね」とお願いをさせてもらって。
で、成澤さんが上司の方とかと調整をしてくださって、本体所属でNPOに出向というかたちで採用してもらいました。
Q:成澤さんは、NPOの親会社さんに対して「涌井さんがいないと僕やっていけないよ!」みたいなプレゼンテーションをしてくださったわけですね。
涌井:多分言ってくださっていたんじゃないかなとは思うんですけど・・・!あとから聞いたら、その時NPOは赤字で採用する余裕は全然なかったみたいなんですけど、うまいことやってくださったみたいです。
■現在の秘書業務
Q:次は涌井さんが今現在秘書としてどういったお仕事を日常的にされているか業務内容を教えてください。
涌井:大きく3つにわけると、①営業支援、②成澤さんのセルフケアの支援、③情報収集ですね。
①営業支援のところは成澤さんが今伴走させてもらっている50~60社ぐらいの企業さんたちとのやりとりで必要なところのフォローをしています。毎月実施している定例の日程調整とか、ミーティング同席をさせてもらう時は話し合いの中で出たURLをお送りするとか。
カレンダーはこんな感じなんですけど、オンラインミーティングが多くて、オンラインの時は基本的に1時間のミーティングをセットして、その間私は別の業務を進めて、終わったらまた次のミーティングをセットしてというのが繰り返される感じです。
Q:もうほぼ毎日ずっと終日詰まっていますね・・・!②セルフケアについてはどのようなお仕事内容でしょうか?
涌井:②セルフケアだと、成澤さんの勤務時間の管理。管理というか、週どのくらい動いているかを確認しています。
成澤さんは予定が詰まっていることが多いので代休をいれます。土日に出張が入っているときは前後の週で振替。予定が空いているところをひとまずブロックする場合と、あとは成澤さんに「こことここ空いていますけどどうしますか?」という場合があります。
判断しきれない時は聞きます。「ここにこのスケジュールをいれたんですけど、前後の予定こんな感じなのですがどうですかね?」みたいな感じで。無理やり入れちゃってもいいのかどうかを悩んじゃうことが多いので、その時は聞いて入れるようにしています。
Q:特に経営者の方とかだと、もう無理やりでも入れてほしいみたいな人いらっしゃいますもんね。
涌井:そうなんですよね。タイミングや人によるんですよね。
あとは、今のオフィスはお昼ごはんを作れる環境があるので、必要な時はランチを作るとかもやっています。
Q:いいですね!今まで秘書シリーズのインタビューの中で手料理は初めて登場しました!
涌井:本当ですか(笑)。あとは③情報収集だと、成澤さんが使っているガラケーでは閲覧できないウェブ記事とか、私が成澤さんが興味がありそうと思った記事、これは知っておいてもらったら面白そうだなっていうのをいろいろなサイトから引っ張ってきて、メールで本文にコピペして貼ったものを成澤さんに送っています。
Q:成澤さんはメール受信したものをどうやって読まれるんですか?
涌井:成澤さんは今らくらくホンを使われているんですけど、らくらくホンの読み上げ音声を倍速〜4倍速にして聞いているのでメールは普通に読んでくれます。
Q:すごい!自分で読むよりも読み上げてくれたほうが移動中も聞けて楽な気もしますね。
■苦労している部分、難しい部分
Q:では続いての質問、今お仕事されている中で難しさを感じる部分があれば教えて下さい。
涌井:さっきも少しお話した、スケジュールをいれる時に悩んじゃって、結構時間をとってしまうところがあります。あとは、仕事をやりかけて、あっちもあっちもみたいな感じでやりきれないっていう(笑)。
Q:お仕事内容が多岐にわたってますもんね。お仕事の優先順位ってどうやって判断しているのでしょうか?
涌井:優先順位はですね、成澤さんから毎日当日中にやってほしいことが10〜20個ぐらい飛んでくるんです。その優先順位を高くしているのと、あとは私に連絡がきて日程調整するものは忘れないように早めにやっています。
結構、連絡が来てボールを持ったままもう投げれないみたいな感じだったんですけど、それじゃあ駄目なんだって最近すごく感じたので、なるべく早く返せるように、持ったらすぐボールをパスできるように意識してやっています。
Q:なるほど。ほかにはこれは難しいなというお仕事はありますか?
涌井:難しいというのはあんまりないんですけど、成澤さんの代わりにミーティングに参加するときに、本当は私から何かご提案だったり問いかけだったりをしてみたりして、ミーティングを進められたらいいんだろうなと思います。
基本的に成澤さんが隣にいる感じだったので、そういうスキルを身に着けなくてもなんとかなってしまったこともあって。「これはここで喋っていたアレですね」みたいな補足するのはできるんですけど、やっぱりミーティングをファシリテートするところまでは全然できていないですね。
(2/2はこちら)
【プロフィール】
涌井 里菜(わくい・りな)
長野県出身。
明治学院大学卒。大学在学中より障がいを持つ方の就労支援を行うNPO法人にてインターン、新卒で就職をし現場での支援員業務・サポート業務などに従事。その後九州へのUIターンを支援する人材紹介会社へ転職。現在は一般社団法人Yourchoiceにて秘書業務を行う。1児の母。好きなことは食べることと映画・舞台鑑賞。