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仲山進也氏、竹林一氏が登壇!『“組織のネコ”からはじめるイノベーション入門』イベントミニレポート

なぜ大企業の新規事業創出はうまくいかないのか?
日本のイノベーションを阻む究極の問いを「組織のプロ」と「伝説のイノベーター」が徹底解説!

2021年12月21日に、『「組織のネコ」という働き方』の著者・仲山進也さん(がくちょ)と、12/24に自身初の単独著書『たった1人からはじめるイノベーション入門』を出版する竹林一さん(しーさん)という二大巨頭をゲストに迎え、モデレーターをフィラメント角勝がつとめるYouTube Liveのオンラインイベントを開催しました。本稿では、その模様を簡単にレポートします!(文/QUMZINE編集部 永井公成)

イベントでは、フィラメントが新規事業創出の最前線で見てきた新規事業によくある悲劇10選を事例として紹介し、ゲストの仲山進也さん(仲山考材株式会社 代表取締役、楽天グループ株式会社 楽天大学学長)、竹林一さん(京都大学経営管理大学院 客員教授、オムロン株式会社イノベーション推進本部 インキュベーションセンタ長)それぞれの視点から大企業の新規事業がうまくいかない本質的原因を深掘りしていただきました。

新著紹介

そもそも今回のイベントタイトル「“組織のネコ”からはじめるイノベーション入門」は登壇されたお二人の新著のタイトルを半分ずつ足して作られました。仲山さんが11月に発売した著書のタイトルは『「組織のネコ」という働き方 「組織のイヌ」に違和感がある人のための、成果を出し続けるヒント』

そして竹林一さんが12月24日発売する著書のタイトルは『たった1人からはじめるイノベーション入門 何をどうすればいいのか、どうすれば動き出すのか』です。

仲山さんの『「組織のネコ」という働き方 「組織のイヌ」に違和感がある人のための、成果を出し続けるヒント』について、角は「まず4象限が新しい。組織の犬がすごくなるとライオン、犬の反対のネコは自由人、それがすごくなると虎になる。豊富な事例が掲載されていて、会社員だけでなく銀行員などにもあてはまることがわかるので、誰でもネコになれるという希望を与える本だと思った。読後すがすがしい気持ちになれる。自分を振り返ると、公務員時代はイヌっぽかったけど、独立してからネコになり、トラになったと思った。」と感想を述べました。

仲山さんご自身は、著書について、「イヌがダメでネコがいいわけではなくそれぞれ持ち味が異なります。皆違って良いから、すり合わせて仲良くチーム作れるといいねという本です。しーさん(竹林さん)の本でいうと、物事を立ち上げる「起承の人」がネコで、運用が上手な「転結の人」がイヌの人になりますね」と紹介しました。

竹林さんの著書「たった1人からはじめるイノベーション入門 何をどうすればいいのか、どうすれば動き出すのか」は、ZENTech主催のイベントで心理的安全性について講演したものがログミーで掲載され、仲山さんがSNSでシェアしたことで話題となり、出版社の方から声がかかって書籍になったとのことです。

竹林さんによると、自身の著書は「新規事業を起こすためには、立ち上げを行う起承型人材と運用を行う転結型人材のどちらも重要」ということや、「プランをきっちり作って進めるのではなく「わらしべ長者」のような進め方でも事業は立ち上がってくる」といったことが書かれているといいます。

新規事業によくある悲劇10選

ここからは、登壇者がアイデアを出し合いまとめた、「新規事業によくある悲劇10選」を披露しつつ、コメントを加えていきます。この10選については、フィラメントのコーポレートサイトにまとめられているので、詳しくはこちらをご覧ください。本稿ではそれぞれについて、登壇者のコメントを短く掲載していきます。


その1:意思決定権限がない

仲山さん:新規事業の担当者が外部イベントに参加して、主催者がレポートを公開しようとなった時に、広報の確認が必要、という例が実際にありました。新規事業なんて担当者からしたらどんどん口コミしてもらいたいのに、自分で確認してオッケーを出せないというのはだいぶ厳しいですよね。

角:本当は許可を取る必要はないのかもしれないけど、「あるのかもしれない」と思った時に動きがとまってしまうんですよね。


その2:人・お金がつけてもらえない

竹林さん:かつて6000人月の巨大なプロジェクトの構想設計のために人が必要となった時に、お金はどれくらいかけられるか聞くと「ない」といわれたんですよね。そこでSIerに行って、「走り出したら巨大なプロジェクトになるけど今はお金がない。先行投資としてSEを3人出してくれないか」ときいてみたら、「分かった、出す。」といってくれました。金がないならないで頭を使うというのも手なんですよね。2つの考え方があって、「お金をちゃんとつけて損失の範囲を見ながらコントロールする」ということと、「金がないならないで自分でもお金をとってくる」という両面があると思うんですよね。


その3:本業と同じKPIで評価してダメ出し

角:本業と同じKPIなので、売上高などの数字ということになると思います。本業の数字と比べると新規事業の数字が誤差みたいなものになるんですよね。

仲山さん:そもそもKPIって、うまく行く方法が分かったあとに、その進捗の指標として定めるべきものなんですよね。

角:一つの物差ししか知らないからそういう悲劇が起きるのかもしれないかなと思いますね。


その4:新規事業チームが“新規事業資料作成チーム”に変貌

角:これで苦労するネコの人はたくさんいるんじゃないでしょうかね。いつのまにかイヌの仕事になってるんですよね。

仲山さん:資料作っても売り上げ1円にもなりませんからね。

角:意思決定権限がないから、クリアしようとすると新規事業資料作成チームになるんですよね。そうなると、上司と話して得られた過去の成功例も資料に追加していって、いつのまにかお客さんの方から遠ざかるんですよね。


その5:制約条件が後出しじゃんけん

角さん:領域も選ばないしアイデアはなんでも良いといわれていたのに、「それうちの強みをどこで活かせるんだっけ」と言われるやつですよね。

仲山さん:ルールについてのとらえ方を「組織の動物4タイプ」それぞれで考えてみました。ライオンにとってルールは「群れを統率するために自分で作るもの」、イヌにとっては「守るべきもの」、ネコにとっては「息苦しいので嫌いなもの」、トラにとっては「自分たちのパフォーマンスを上げるための約束事」です。ライオンやトラは「OBライン型」のルールを作ります。「このラインを超えなければ何をやってもOK」という自由度の高いルールです。イヌが作るルールは「こうしなさい」という「正解一択型」になりやすいです。ライオンやトラは自分の中に世界観や美意識があって、それをもとにOBライン型のルールを作れるんですが、それがない人にはOBラインが引けないんですよね。


その6:新規事業の立ち上げにそぐわない労務管理

仲山さん:土日にイベントをやる事業なのに土日は休めと言われるんですよね(笑)

角:本業のKPIに合わせなくちゃいけないのと同じ根っこな気がしますね。20%ルールは機能するのかという話もありますよね。

竹林さん:外資系の20%ルールを取り入れているところに、「20%ルールやってますか?」と聞きに行ったら「全員はやってません」と言われたんです。ネコの人はルールがあろうとなかろうとやっていて、イヌの人はやってない。全員が20%ルールでクリエイティブのための時間をとってるわけではないが30%くらいの人は20%ルールで動いていると言われました。20%ルールは彼らがつぶされたり、上司が変わった時につぶされないために作った制度なんです、と言われました。

角:制度の趣旨がバッファを作るため、ネコの社員を守るためなんですね。


その7:人事異動や通常業務の優先でチームが解散

角:新規事業をやっているうちは大丈夫でも、だんだんと兼務がかかってきたり、人事異動でリーダーがチームから抜けてしまうということはよくありますね。事業開発よりキャリア開発が優先される感じなんですね。

竹林さん:自分のところはけっこうやらせてもらえていますけど、アライアンスを組む時が大変ですよね。相手側が変わってしまうということはありますよね。でも例えば3年間いるとして、その間にやりたいことをあらかじめ決めてくるチームがいるんですが、そういう人たちと当たるとすごい掛け算が起こるんですよね。だらだらいる人よりも結果をだしたりします。起承転結理論でいうと、いつまでも「起」の人にやらせ続けるのもよくないんですよ。別のことに興味を持ちだしますから。


その8:立ち上げの人が評価されにくい構造

仲山さん:立ち上げの時は数字が上がってきません。いわゆるJカーブを描いてのびていくわけですが、ネコの人は、のびる前の「潜っている状態」が楽しいわけです。伸ばしていくだけのフェーズになると飽きてしまうんですよね。新規事業を立ち上げる時は、どうすればお客さんに喜んでもらえるかを試行錯誤して、丁寧に価値を作り込んでいく必要がありますが、軌道に乗った後、伸ばすフェーズになると細かいことは気にしない人の方が数字を伸ばすのが得意だったりするんですよね。そして、数字を伸ばしたその人の方が評価されがち。

角:「これまで赤字だったのが黒字になってすごい!」と言われたりするんでしょうね。

仲山さん:風が吹くと桶屋が儲かるということわざがありますが、「風吹かせ仕事」と呼んでることがあります。風が吹いてから桶屋が儲かるまでに何ステップもありますが、桶を売った人ばかり評価されて、風を吹かせた人はだれも覚えてない、みたいなことがありがちです。風を吹かせなかったら桶屋が儲かることはないと理解している人じゃないとゼロイチとか事業を生み出すことはできないですよね。


その9:PoC 地獄

竹林さん:PoC貧乏という言葉を使っていました。むやみやたらにプログラム作ったり、いもしないペルソナを設定作ったりして貧乏になっていくことはありますよね。

角:失敗をさせてもらえないパターンもありますよね。


その10:日経に載らないと評価されない

角:逆に、日経に載ったら急に評価されるということはありますよね。

竹林さん:知り合いに、日経でたくさん勉強会をやって、トレンドにさせた後、役員のところにいって、役員に「この記事のことじゃない?」とマッチポンプ的に話をさせていた人がいましたね。ラジオの番組までするようになりましたね。

角:上司の人が確実に読んでいるところに載せに行くわけですから、確実性はあるんでしょうね。日経に載るように動くと評価されると考えるといいのかもしれませんね。


おわりに

これまでのトークの中で、仲山さんは「20%ルールがネコの人が生きやすくするためのルールだ」ということ、そして竹林さんは「風吹かせ仕事」と、本記事では未収録ですが「猫の心理学者」の話が心に残ったようです。

イベントのアーカイブはYouTubeで視聴することができます。ぜひご覧ください。

参考リンク

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